ポルシェ Taycan Turbo(タイカン ターボ)のEPA航続距離が201マイルと発表

12月11日(米国時間)、アメリカでポルシェ「タイカン ターボ」の航続距離がEPA基準で201マイル(約323km)であることが明らかになりました。搭載する電池容量は93.4kWhであるにも関わらず、予想されたよりも短い航続距離に、やや失望を込めた報道が目立っています。

ポルシェ Taycan Turbo(タイカン ターボ)のEPA航続距離が201マイルと発表

テスラモデルSやジャガーI-PACEよりもかなり短い

日本時間の今日未明、ポルシェ「タイカン ターボ」のEPAレンジ(航続距離)が発表されると、アメリカではさまざまなメディアが記事を配信しました。

たとえば、『TechCrunch』は「TurboのレンジはTesla(テスラ)のModel Sなど他の競合車両に遥か遠く及ばない」と論評。『The Verge』のタイトルは「just 201 miles on a full battery=フルバッテリーでたった201マイル」、『electrek』のタイトルには「efficiency disappoints=その効率に失望」という言葉が選ばれるなど、かなり「がっかりだね……」という論調が目立っています。

ポルシェでは今回のEPAの発表について正式なリリースなどは発表していません。でも、アメリカ向けのウェブサイトの車種情報ページを確認すると、さらりとEPAレンジが「201mi」であることが紹介されていました。

アメリカのポルシェ公式サイトより

また、航続距離についての詳しい説明を見ると、「購入を決める前に毎日の運転ニーズに十分であることを確認してください」、「航続距離は運転条件、個人の運転と充電の習慣、およびバッテリーの寿命などによって異なる場合があること」とともに、「ポルシェでは AMCI Testing に依頼した公道でのテストで、275マイル(約443km)の航続距離を達成している」ことが伝えられています。

さらに、『TechCrunch』の報道では、今回の発表に対するポルシェ側のコメントとして「タイカンは、ポルシェらしいパフォーマンスや走りのために作られた驚くべき車」であり「がっかりしていない」ということを伝えています。

つまり、ポルシェとしてはEPA基準のテスト結果がどうであろうと、ポルシェ自身が日常生活に十分な航続距離性能であることを確認しており、それよりも、ポルシェならではのパフォーマンスに注目してほしい、ということでしょう。

競合と思われる車種とのレンジ比較

『TechCrunch』にも出てましたが、アメリカのEPA基準を検索できるウェブサイトで、タイカン、モデルS、アイペイスの電費や航続距離を比較してみました。『TechCrunch』ではモデルSが19インチホイルでしたが、あえて21インチにしています。

車名電池容量航続距離kWh/100mikm/kWh
ポルシェ
タイカン ターボ
93.4kWh201mi
約323km
49kWh/100mi3.46km/kWh
テスラ
モデルS パフォーマンス
100kWh326mi
約525km
35kWh/100mi5.25km/kWh
ジャガー
アイペイス
90kWh234mi
約377km
44kWh/100mi4.19km/kWh

電池容量も入れて、kmに換算した表にしてみました。電気自動車の効率という点で、ポルシェやジャガー(その他のいろんなメーカーも)に比べてテスラが先行していることがわかります。

タイカン ターボの電費は、約3.5km/kWh。電気自動車には「エコロジー」という価値もあるので、たしかにかなり厳しい数値という印象です。まあ、100%再生可能エネルギーの電気で充電すれば、気にすることもないのですが。

ちなみに、ポルシェが独自テストの結果として提示している275マイル(約443km)で計算すると、電費は約4.74km/kWhとなり、モデルSにも迫る数値になります。ポルシェのアメリカウェブサイトでの説明にもあるように、電気自動車の電費はエンジン車の燃費よりもナーバスで、乗り方次第で大きく変動する印象があります。

はたして、タイカンの航続距離はリッチなユーザーを満足させるために十分なのか。そのあたりは、実際にデリバリーが始まり、ユーザーが気ままに乗り始めていく中で、評価が定まっていくのでしょう。

WLTPとEPA

以前から愛読いただいている方はすでにご存じの通り、EVsmartブログでは電気自動車の航続距離について、原則として「必ず」EPA基準を明記するようにしています。EPA値が発表されていないケースでは、「WLTP値/1.121≒EPA値」として推計値を算出します。

EPAというのは「United States Environmental Protection Agency=アメリカ環境保護庁」の略であり、現状の国際基準であるWLTCや、日本独自基準のJC08に比べて、より実際の使用時に近い数値が示されている特徴があります。

【詳細解説記事】
『電気自動車の燃費=「電費」とは? を徹底解説!』

自分が購入する電気自動車を選ぼうとするユーザーにとって、WLTP(日本ではWLTC)で示された航続距離を実際にはとても走りきれないことや、WLTPとEPAの数値が大きく異なっていて、何を基準に判断すればいいのかよくわからない、という現状が、少々やっかいなことではあるのです。

電気自動車ユーザーとしての成熟度は「電池残量と残り航続距離、目的地までの道路状況などを適切に判断してスムーズな充電を実行できるかどうか」というスキルによって推し量ることができるほどです。もっとも、テスラではこうした点でもかなり正確な情報をクルマから得ることができるのですが。

話が横道に逸れました。WLTPとEPAの違いについてです。

たとえば、今回の主役であるタイカン。ポルシェのラテンアメリカ向けサイトでは、このように表記されています。

WLTPレンジは388-412km

これは最上級グレード「ターボS」のWLTP値ですね。

日本とイギリス向けサイトでは、こんな感じ。


同じ「ターボ」を選択したのですが、イギリスでは「206マイル(約332km)」、日本では「348km」と表示されます。つまり、なんだかバラバラでよくわかりません。
(選択しているホイールのサイズが違うことに公開してから気付きました。なにはともあれ、諸条件でいろいろ違う、ということです)

実は、2019年9月のワールドプレミアの際に発表された航続距離(WLTP)は、ターボが「381-450km」、ターボSが「388-412km」でした。

個人的な感想としては「まあだいたいこんなものだよ」と提示されている印象です。さらに言うと「そんなに正確な航続距離を知ることが大切かい?」と問いかけられてもいるような。

実際、電気自動車を本当に使いこなす上で、現実とはまったく違うWLTP値にはあまり意味がないようにも感じます。航続距離をどのようにユーザーに伝えるのが電気自動車時代のルールとして定まっていくのか、大きな課題の存在を改めて感じるニュースでした。

ターボSのEPAレンジは「192マイル」

(2020.1.16 追記)

年が明けて、EPAのウェブサイトを確認すると、タイカン「ターボS」(2020 Porsche Taycan Turbo S)のEPAレンジが発表されていました。192マイル(約309km)です。

参考までに、同じタイカンの「ターボ」、さらに、テスラ「モデルS ロングレンジ」「モデル3 ロングレンジAWD」の4車種のデータを並べて表示してみました。

細かくて読みづらいかもしれないので、クリックで画像を表示する設定にしておきます。こうして比較すると、タイカンとモデルSが「別の理想」を求めた電気自動車であることがよくわかりますね。

(文/寄本 好則)

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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