最大180kW対応の最新機種『Terra 184』を採用
昨日、台湾に本拠を置くデルタ電子が最大出力100kWの急速充電器をローンチしたことをお伝えしたばかりですが、さらに、高出力の充電インフラが拡充しそうだという、日本のEVユーザーにとってうれしいニュースが飛び込んできました。
日本充電サービス(NCS)の事業を承継することがすでに発表されて、今後、日本の電気自動車とプラグインハイブリッド車充電インフラの拡充を担う株式会社 e-Mobility Power(イーモビリティパワー)が、スイスに本社を置くグローバルなテクノロジー企業であるABBが発売した最新型の高出力急速充電器を採用して、「全国の電気⾃動⾞市場のインフラを最新化し、持続可能なモビリティへの移⾏を加速」させることが、ABBのニュースリリースで発表されたのです。
『Terra 184』は、2020年7月2日に発表されたばかりの最新機種。スペックとしては最大出力180kWということですが、ABBの広報ご担当部門に確認したところ、今回採用される日本のチャデモ対応器は「最大90kWのケーブルを2本出し、2台が同時に充電できる仕様になっている」そうです。
また、「欧米規格のCCS(Combo)では1本のケーブルで最大180kWにも対応可能」ですが、「日本のチャデモ仕様で180kWに対応することはできない」そうです。
機種新発売のリリースを見ると「CCS、CHAdeMO、ACを含む市場に出回っているすべての充電規格をサポートし、最⼤920Vのすべてのバッテリのニーズに対応」、「カスタマイズされたクレジットカード決済端末」を搭載し、パワーモジュールを進化させてコンパクトに設計されていることで、コンパクトに設置できるといった特長がアピールされています。
ユーザビリティの高い充電ソリューション構築を目指す!
ABBが発表したリリースの中で、イーモビリティパワーの四ツ柳尚子社長は「ABBとのパートナーシップにより、⾼出⼒&2台同時充電が可能で、国際標準プロトコルであるOCPPによって遠隔からの制御・保守等も可能な急速充電器の導⼊は、eMPの掲げるミッションの実現に向けた⼤きな前進と確信します」とコメントしています。
設置計画の台数は「250台を超える数」。「混雑エリアへの新増設はもとより、更新時期を迎えた低出⼒充電器をTerra 184に交換」する計画で、「納⼊は今年秋に開始される予定」とされています。具体的な設置予定場所などが聞けないかとイーモビリティパワーのご担当部署に電話で問い合わせてみたのですが「まだ具体的に公表できる段階ではない」とのこと。
とはいえ「イーモビリティパワーは、すべてのドライバーが、いつでも、どこでも、ストレスなく利用できる充電ステーションの拡充を目指しています。海外での充電器運用事例なども参考に社内で議論しながら、よりユーザビリティの高い充電サービスの提供を目指していきます」と、力強いコメントをいただくことができました。
また、今まで日本の充電インフラ拡充の事業を行ってきたNCSでは、設置事業者に補助金を出し、認証課金サービスを提供していましたが、イーモビリティパワーでは「設置者とネットワーカーを統一してユーザーのみなさんにより便利なサービスを提供できるよう、独自設置も進めていく」とのこと。
6月に『イーモビリティパワーがコスモ石油とEV充電インフラ拡充の連携協定締結』という記事でお伝えしたように、さまざまな事業者との「最適なカタチを模索していく」ということです。
イーモビリティパワーには、日本国内に、より便利で理に適った電気自動車充電インフラを実現してくれるよう、心から期待しています。
行政もメーカーも、電動化に腰引けてる場合じゃないんじゃない?
デルタ電子100kW器の記事で「台湾からの『黒船』ともいえるデルタ電子の意欲的なチャレンジが、ニッポンのカンフル剤になってくれるといいのにな」と書きました。ニッポン人として気になることに、今回のABBも『黒船』です。
個人のライフスタイルを振り返ると、使っているパソコンはマックだし、スマホもiPhone。オフィスで使ってるBluetoothスピーカーはANKERで、などなど、今さらメイドインジャパンへのこだわりはさほどありません。でも、日本発の規格であるチャデモを提唱し、10年前はEV先進国だったはずのニッポンは、いったいどうなっちゃうのかかなり不安を感じます。
今、日本市場で発表されている高出力器は、新電元を除き、SIGNET(韓国)もポルシェの150kW器(ABBと共同開発)もデルタ電子(台湾)も、すべて海外メーカー製品です。グローバル市場が相手なので、当然CCSにも対応していて、ついでに「チャデモにも対応しておきました」的なニュアンスもあります。
一方で、日本国内に既設の急速充電器は、2010年ごろからの数年間で、電池容量24kWhの初期型リーフを想定しつつ開発&設置された機種がほとんど。「チャデモ対応した輸入EVを急速充電器に繋ぐとエラーが出るといった不具合は、そもそも充電器の側が現在の輸入EVのような大容量電池への対応を想定していなかったのが原因のひとつ」と聞いたことがあります(小耳に挟んだ噂なので「そんなことはない!」と理由などを説明いただける方がいらっしゃれば、ぜひコメントをお願いします)。
※なんとか輸入車メーカーなどに取材したいのですが……。
この噂が本当だとすると、既設の充電器メーカーは対応してアップデートするべきだと思うのですが、どうやらそんな様子もありません(私が知らないだけかも知れないので、これも実情ご存じであれば教えてほしい!)。そして、世界的な大容量化に対応した急速充電器の高出力化にも、どうやら日本の充電器メーカーは及び腰? というのが実情です。
なぜでしょう。理由はシンプル。日本国内で購入できる電気自動車の車種が少ない=日本の自動車メーカーのほとんどが本腰を入れて電気自動車を開発していない、からですよね。日産はリーフで頑張ってるし、アリアも発表したじゃないか、という思いはわかりますが、日産だけで世界と戦えと求めるのはちょっと酷。
日本が「2030年にプラグイン車(電気自動車とプラグインハイブリッド車)を全体の30%に」という目標を掲げたのは2018年のこと。欧州各国ではすでにプラグイン車シェアが10%を超えつつあるけど、日本はまだ「たった0.7%。これはキビしい……」というアメリカからの翻訳記事も、7月14日にお届けしたばかりです。
なかなか電動車の普及が進まないのに、政策の「アップデート」はほとんどありません。自動車メーカーも充電器メーカーも腰が引けてるままでは、本当に世界の自動車市場でプラグイン車が主流になる時には日本は壊滅。「iPhoneの部品の多くは日本製!」的に強がるしかなくなっていくのではないかと心配です。ニッポンはいつからこんなに、アップデートできない国になっちゃったんでしょう。私はもういいオヤジなので寂しく死んでいくだけですが……。
ん、話が愚痴に逸れました。イーモビリティパワーとABBの新たなチャレンジ、応援してます!
(取材・文/寄本 好則)
そういえばこの件はどうなったのでしょうね?250台導入だからPA、SAに優先導入すると思ったのですがニチコン製を導入するようですね。
https://www.e-mobipower.co.jp/news/2020/2020-1001/
電力業界人ですので詳しく語ります。
ABBといえば最近話題のHVDC(高圧直流送電)の企業じゃないですか!! 現在データサーバーの電源装置を直流化する企業が増えているから気が付きました。
従来の交流電源だと装置ごとに直流へ変換しているしCVCF/UPSなどで交流と直流を複数回変換しているため損失が大きく空調費が莫迦になりませんが、それをDC400Vにすることにより全体(計算機+空調)の2割ほど削減できるとか。
さらにDC400Vは電気自動車(日産リーフ)の蓄電池(360V)に近い値。それに太陽光発電のパワーコンディショナーもDC400V設計なのでデータサーバーの電源にソーラー発電+V2H+EVで停電時のバックアップを行うケースも出てきました!!コレは見逃せない。
交流電源は意外に扱いが難しく、リアクタンス(交流抵抗)やキャパシタンス(コンデンサー)による無効電力の存在が電力ケーブル容量を圧迫しますし、日本の電力系統も完全に同期していないと北海道のようにブラックアウトしてしまう危険もあり、さらには蓄電も困難です…ただ変圧器で電圧を簡単に変えられるし電力遮断装置も小さく出来るメリットは有りますが。
ただ今や電動機でさえインバータで動かせますから、遮断制御さえうまくできれば今後高圧直流は普及するかもしれません…変換装置がまだ高い難点はありますが、直流ケーブルで数百kmを送電した実績のあるABBだから自動車急速充電器などお手の物でしょう!
日本で直流電化といえばNTTの電話(DC48V)とJRに代表される鉄道の世界(DC1500V)が主流でしたが、今後はDC400Vが成長分野といっても過言ではありませんよ!?
最速90kWの充電器があっても現在車側が対応しているのはリーフe+とテスラのみなのですが、
テスラはCHAdeMOアダプターが50kW制限になっていて活用できません。
アダプターもテスラジャパンで開発しているわけでは無いため新型が出るかは日本では分からないそうです。
最近自宅近くにも90kW機が出来たので充電器メーカーが高速対応のCHAdeMO→テスラ変換アダプターを出してくれると有難いのですが。