リースのみはもったいない〜FIAT 500eで箱根往復の電費は7.9km/kWhでした!

「チコちゃん目」のフロントアイコンが印象的な『FIAT 500e』。5月某日、ステランティス・ジャパンの厚意により広報車を借りることができたので、箱根へ日帰りしてきました。電費性能などを中心にレポートしたいと思います。

リースのみはもったいない〜FIAT 500eで箱根往復の電費は7.9km/kWhでした!

日本でも増えてほしいコンパクトEV

借用したのはFIAT 500e OPENというカブリオレタイプ、ソフトレザートップで、屋根が解放できるモデルです。ルーフを完全に開放できますが、両サイドはピラー、ルーフレール、ウィンドウが残るので高速道路でも風が必要以上に入り込むことなく快適でした。

ルーフはここまで開く。
ルーフは電動開閉。走行中も操作可能。

主なスペックをカタログから拾うと、全長3630mm、全幅1685mm、全高1530mm。車両重量は1360kg。モーター定格出力は43kWと控えめですが、最高出力87kW(118ps)・最大トルク220Nmは、コンパクトでもスポーツタイプやちょっとした2Lクラスのエンジン車の動力性能と同じくらいです。

バッテリー容量は42kWh。航続距離はWLTCで335km。電力消費率は128Wh/km(WLTC)。日本の電費表示でおなじみのkm/kWhに換算すると約7.8km/kWhとなります。
※欧州WLTP値は320km、EPA換算推計値約285km(約6.8km/kWh)

小さい輸入車の双璧のひとつだった「MINI COOPER」が、現在4メートル超えの全長(3ドアは3.8メートル)となっています。500eの3.6メートルというコンパクトサイズは日本の住宅事情にはうれしいのではないでしょうか。

かくいう筆者は自宅駐車場が小さいので、テスラやアウディe-tron、メルセデスEQAは入りません。先代リーフZE0ならなんとか収まったのですが、現行のZE1では微妙に門が閉まらないほどです。したがって次期マイカーEVは、プジョー「e208」か「ホンダe」か、この「500e」など候補が限られています。

狭い自宅駐車場に余裕で入る。

なおこの試乗の直前、日産と三菱自動車から「サクラ」と「eKクロスEV」が発表となりました。サイズ的にはこの2車も候補に加わりました。

余談ですが、欧州ではiD.3(VW)、ZOE(ルノー)、スプリング(ダチア)、CAT(GWM ORA)などコンパクトサイズのEVも充実しています。欧州日産は「マイクラ」(マーチ)のEVをアナウンスしました。自宅駐車場の関係で所有するクルマが制限される我が家にとって、コンパクトカーでもEVが選べる市場はうらやましい限りです。

小型EVは価格面でビジネスにならないと言われますが、コンパクトカーはグローバルでもボリュームゾーンであり日本車が得意とするセグメントです。特定セグメントに特化したメーカー以外は、いずれ手当が必要となる市場です。日本でも、この500eや日産・三菱自動車の軽規格EVのように小型EV市場の盛り上がりに期待がかかります。

DC急速充電は変換アダプターが必要

スペックで次に気になるのは電費です。42kWhというサイズ的には十分なバッテリー容量を持ちながら、車重が1.3トンとEVの中では軽量級です。ガソリン車と比較してもカローラと同程度の重さしかありません。WLTCの消費率で7.8km/kWhはカタログスペックとしても高電費と言えます。

航続距離300km以上というのは、ちょっとした旅行やドライブにも使うとなると、重要な目安ですが、実際にEVを運用してみると、航続距離そのものよりも、実用電費と急速充電性能のほうが使い勝手を左右することがわかります。

充電ポートはCCS1。上の丸い部分が普通充電用コネクター。CHAdeMO用アダプターは開発中(5月現在)。
トランク下には空気入れとAC普通充電ケーブルが収まっている。

今回の試乗では、この点にも注視したいと思っていたのですが……。今回、日本に導入された500eの充電ポートはCCS1(北米向けコンボ規格)となっています。DC急速充電(コンビニや高速道路SA/PAに設置されている充電器)を利用する場合、CHAdeMOからCCS1にプラグを変換するアダプターが必要となりますが、残念なことに変換アダプター付きの充電ケーブルは試作品の段階で日本にはまだ入ってきてないとのことでした。6月の正式発売には間に合う予定とのことですが、試乗車を急速充電する術がありません。

話題の大黒PAで記念撮影:DC充電用のCHAdeMOアダプターが間に合わず急速充電のテストはできず。

25kW、50kW、90kWといくつかの急速充電器の充電性能を試したかったのですが、今回のレビューは普通充電のみとなってしまいました。DC充電ケーブルが届いたらぜひ詳しく調べてみたいと思います。なお、車両に付属する普通充電用のケーブルはリアトランクに収納されています。ここには空気入れもありますが、ガソリンスタンドに行かないEVはエアチェックや冬タイヤ交換などを気軽にスタンドに頼むことができません。空気入れ付属はユーザーにとってうれしい配慮です。

【編集部注】 4月8日掲載の記事『フィアットのEV『500e』に試乗/世界初!「CCS1→CHAdeMO」アダプターは大丈夫?』に、「チャデモアダプターの不具合が見つかり、納車する時期は未定との連絡があった」旨のコメントをいただきました。ステランティス・ジャパンに状況を確認中です。何か情報がありましたら、記事に追記、もしくは新たな記事としてご紹介します。

普通充電の性能を実感するべく箱根まで往復

実は、急速充電が可能だったら、別件の仕事の用事もあったため名古屋までの往復で、急速充電の性能および長距離移動のテストをしようかと思っていました。予定を変更して、1日でSOC10~20%くらいまで減らして、一晩の普通充電でどれくらい回復するかをチェックすることにしました。また、高速道路での長距離テストではなく、市街地やワインディングを含めたさまざまな走行パターンでの電費やその他の装備や機能をなるべくチェックすることにしました。

コースは、車両を借りた都内から一般道、大井町から首都高を経て大黒PA。そこからK7を使って東名高速道路(青葉JCT)に抜けます。さらに御殿場ICまで足を延ばし、箱根を目指します。目的地を芦ノ湖スカイラインにある三国峠とし、帰路は湖尻、元箱根を経由して箱根湯本から小田原厚木道路・東名高速道路の横浜ICで降ります。そこからは自宅のある川崎市北部まで一般道を使って戻りました。

芦ノ湖スカイラインの三国峠にて。ちょうど雲が出てしまった。雲がなければ富士山がよく見える。

走行距離は237kmでした。自宅でAC200V 3kWの普通充電を一晩行い、最後は自宅から車両返却のため出発地点までの23kmほどを一般道と首都高を走行しました。

SHERPAモードでカタログWLTC通りの電費

結論からいうと、返却までの260kmでの電費は7.7km/kWh(260kmに対してSOC表示で80%=33.6kWhの消費)でした。普通充電をする前の自宅到着時で7.9km/kWh(237km、71%=29.82kWh)と8km/kWhに届くかという数字でした。

行程走行距離
(km)
区間距離
(km)
SOC
(%)
消費
(%)
電費
(km/kWh)
区間電費
(km/kWh)
スタート(貸出)0-100---
三国峠14414446546.36.3
自宅(川崎市)2379329177.913
※普通充電-99---
ゴール(返却)260239097.76

走行条件を補足すると、スタートから自宅までの走行は「SHERPA」モードまたは「ECO」モードという回生ブレーキの効きを強くしてアクセルオフで完全停止までするモードを多用しました。これらのモードは切り替え時にエアコンもOFFになり航続距離優先の走行モードとなります(手動でONにできる)。また、高速道路では追従型クルーズコントロールを80~90km/hの設定で追い越し車線はほとんど使わない走行でした。

三国峠付近での記録。スタートから140kmほど走行しSOC47%まで消耗。峠を登ってきた直後なのでメーターの電費は6.9km/kWhとWLTCより悪くなっている。

また、当日の天候は晴れ。気温25~27度。窓全閉ではエアコンが必要ですが、500e OPENはルーフトップが2段階で開放できます。高速走行でもルーフ部分のみの開放だと、風が顔にあたるのも最小限で走行ノイズも少なくラジオが聞ける状態です。エンジン音がしないだけでこれだけ違うのかびっくりしたのですが、この季節のオープン走行は非常に快適だったので、復路はほとんどこの状態で走行しました。

ラフに運転しても7km/kWhはキープできる

つまり、自宅までの移動は、電費を意識した走行と言えます。では、電費を強く意識しないと7km/kWhの電費は出ないのかというと、そうでもなさそうです。往路の高速道路は一部「NORMAL」モード(オートエアコンが作動し、回生ブレーキの効きも少し弱くなる。クリープ機能あり)も使っています。また、返却のための自宅から都内への移動23kmは、すべてNORMALモードでエアコンの温度設定も低めの22度または23度としました(外気温は25度)。走行時も加減速をしっかり行うようにメリハリのあるアクセル操作を意識しました。

SHERPAモードだけの走行では電費の参考にならないので、この23km区間(一般道および首都高)は、むしろ電費に悪い運転です。その結果が6km/kWhでした。比較的電費を意識した箱根までの往路(ワインディングの登りあり)が6.3km/kWhだったので、かなりラフな運転をしても6km/kWhを切ることはなさそうです。実用域利用で7km/kWh後半で運用できそうです。

なお、箱根の山越えはすべてSHERPAモードで行いました。御殿場ICからは、国道138号線(乙女道路)を使わず県道401号線の長尾峠方向に向かい芦ノ湖スカイラインに入るルートで三国峠を目指します。峠の駐車場に着いた時点でSOCの表示は46%になっていました。山登り前の数値の記録を取り損ねており正確ではありませんが、御殿場ICを降りたあたりでは50%以上あったはずです。

箱根湯本まで降りてきたときは48%まで回復(SHERPAモード)。

EVは下りで回生ブレーキをうまく使えば充電することができます。三国峠から箱根湯本までも国道を使わないルートを選びました。芦ノ湖スカイラインを湖尻で出て、県道75号から732号(旧東海道)をつないで箱根湯本で国道1号線に合流しました。こんなルートを選んだのは、小回りの利く500eは長尾峠の登りを軽快に走ってくれて、オープントップで箱根街道を抜けるのが楽しかったからです。旧東海道の「七曲り」も回生ブレーキによる程よい減速Gがリズムよくいなしてくれました。SOCは48%まで回復していました。

自宅普通充電はAC200V 3kWコンセントでも十分

自宅の普通充電器は、初代リーフのころディーラーが取り付けてくれたパナソニックのAC200V 3kWタイプのもっとも基本的なコンセントです。AC200Vのコンセントは、簡単な工事ですぐに増設できます。大型冷蔵庫やエアコンのために屋内にブレーカーや配線がすんでいる家なら屋外用にひとつ増設するだけで工賃も数万円から可能です。

500eの充電ポートはCCS1という海外仕様のソケット形状ですが、普通充電用のソケットは日本の普通充電用プラグと同じです。500e付属充電ケーブルのACプラグを壁コンセントに挿し、反対側の充電プラグを車両側の丸いソケットに挿せば充電が始まります。多くのEVと同様、500eも充電スケジュールをタイマー設定できます。タイマーを設定しておけば、プラグを指しても時間にならなければ充電は開始されません。満充電または設定時間になれば自動的に停止しますので、帰宅したらとりあえず充電プラグを挿しっぱなしにしておいても無駄な充電を気にする必要はありません。

自宅到着時で29%まで消耗。充電レベル3だと満充電まで20時間との表示。
この時点で充電レベルを5に設定すると11時間半まで短縮。だが、しばらくレベル3で充電して様子を見る。

自宅到着直後、SOC表示は28%でした。プラグを差し込んでインパネの表示を見ると100%までの推定時間が20時間14分と表示されました。42kWhのバッテリーの72%ほどの充電として約30kWhだとすると、20時間かかるという予想は普通充電の出力が1.5kWくらいしか出ていない計算になります。翌日使う予定がなければこれでも問題ないですが、翌朝ほぼフル充電にしておきたい場合は少し困ります。

設定画面をみると、充電レベルを設定できる画面を発見しました。センターコンソールのタッチディスプレイの左側メニューの「車両」を選び、「電気自動車」というタブを選ぶと充電関係の詳細メニューが選べるようになります。「充電設定」を選ぶと5段階の充電レベルが選べるようになります。この設定が3になっていました。ここで設定を変えようかと思ったのですが、夜の8時くらいだったので家の照明やエアコンなど電力を使う時間帯だったので、ブレーカーの様子を見るためしばらく3のまま充電を続けました。

数時間後レベル5にして残りを一気に充電する。

3時間ほど充電しブレーカーが落ちることもなかったので、充電レベルを最大の5に設定しました。すると、満充電までの予測時間が8時間15分になりました。この時点で残量52%まで回復していたので、残り48%(約20kWh)が8時間かかるということになります。計算すると出力は2.5kWほどです。もう少し吸い込んで欲しい気もしますが、3kW出力に対してマージンを20%ほどとっているので安心ではあります。実際、翌朝8時前に車両を確認したところ、充電は終了しており100%まで回復していました。

充電レベルの設定は、契約アンペアやそのときの電力消費によってブレーカーが作動するような場合に充電電力を調整するために使います。ちなみに我が家は40Aの契約ですが、リーフ、テスラ(テスト充電なので100%までは行っていない)、ホンダeの普通充電でブレーカーが落ちたことはありません。500eも問題なく充電できました。

若い人こそコンパクトEVを

FIAT 500eを200km以上試乗し普通充電も試したわけですが、EVとしての基本性能は問題ないと言えるでしょう。とくに電費が7km/kWh以上というのはかなりいい数字です。急速充電性能が試せなかったのが心残りですが、バッテリーの冷却機能も備わっているというので、90kW機の出力を最大限に生かせるなら、遠出の継ぎ足し充電も問題はないでしょう。

42kWhというバッテリー容量も、3kWの充電設備でも一晩程度での満充電が問題なく行えるので、充電設備のための出費も最小限に抑えられます。全長4メートル以下で2ドアなので、実質2人乗りですが、コンパクトなサイズは駐車場や日本の狭い路地でも取りまわしが楽です。ワインディングでも非力さを感じさせない力強い走りと、安定性と俊敏性を備えた運動性能は、高速道路でもストレスフリーでした。

どのモデルも価格が400万円以上と、決してリーズナブルではないですが、FIAT500は、もともと個性的で扱いやすいクルマです。いまの欧州コンパクトは細部の作り込みもできています(筆者が若いころのイタリア車は新車で雨漏りしても驚いてはいけないクルマだった)。サブスクなど用意されたプランを活用して、若い人にこそ魅力を楽しんでほしいと感じるコンパクトEVでした。

(取材・文/中尾 真二)

【編集部注】 私自身、試乗会で走りなどの気持ちよさを実感して次期マイカー候補にリストアップしているのですが……。急速充電アダプターの状況が心配です。あと、5年リースが終わったら今のところ「車両は返却」という縛りがかなり迷うところです。本当に魅力的なコンパクトEVだと思うので、まずは「フィアット(ステランティス)頑張れ!」ですね。(寄本)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 私はi-MiEVに乗って8年半、累積走行距離が18万kmに迫っています。コンパクトEVを次期選択肢の筆頭にしているのですが、(本気で売る気の)国産コンパクトEV無し。マーチEV?やbZ1X?を待望しています。
    サクラ/eKクロスEVは、残念ながら肝心の電池がi-MiEV発表から13年に相応しいワクワク感をもたらしませんでした。
    そして、(往復200km程度の)ロングドライブ? でも疲れない車内スペース(特に幅方向)はi-MiEVでは不足です。価格面で諦めてサクラ/eKクロスEVを選ぶかもしれませんが、とにかく選択肢が欲しいです。
    200V充電ですが、充電電流を車体側で選択できるのは素晴らしいですね。自宅充電では、他の電気機器との競合で充電を控えることがあります。また、太陽光発電を利用するにも(10年過ぎの)我が家のパネルではピークで3kW、1時間平均ではその半分程度です。無闇に倍速充電を誇るのでなくユックリ充電が欲しいです。

  2. CCS1→チャデモアダプターは今回も貸し出しはなく急速充電出来ていないので、納車止められてる者としては、そこが一番興味があり心配しているところです。シェルパモードで8弱の電費だと、リーフZE1エアコン無しとほぼ同じ感じでしょうか?
    アダプターに関しての詳細わかりましたらよろしくお願いいたします。

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この記事の著者


					中尾 真二

中尾 真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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