フィアットのEV『500e』に試乗/世界初!「CCS1→CHAdeMO」アダプターは大丈夫?

欧州でも大人気、フィアットの電気自動車『FIAT 500e』が待望の日本デビュー。プレス向け試乗会に参加してきました。編集部として気になるのは、急速充電用に「CHAdeMOアダプター」を採用していること。ご担当者に「大丈夫?」を確認してきました。

フィアットのEV『500e』に試乗/世界初!「CCS1→CHAdeMO」アダプターは大丈夫?

値段以外は「ちょうどいい!」〜待望のコンパクトEVでした

フィアットとして、さらにはFCA(ファット・クライスラー・オートモービル)グループ初となる電気自動車として、欧州で2020年に発表された『FIAT 500e』が、ついに日本にも導入されることが発表されました。先日更新したばかりのヨーロッパにおけるプラグイン車シェア速報の記事でも紹介したように、2020年の車種別販売台数では、テスラ『モデル3』、キア『Niro EV』に次いで3位に入る大人気。そもそも『500(チンクエチェント)』は日本でも根強い人気を誇るモデルなので、EVに生まれ変わった「チンク」の日本デビューを待望していた方も多いはず。何を隠そう、私もそのひとりでした。

初試乗の感想は「そうそう、これでちょうどいい!」という、ハンドルを握っていて思わず笑いがこみ上げてくるような好印象でした。

何が「ちょうどいい!」のか。まず、500ならではのコンパクトなボディサイズです。総電力量42kWhのバッテリー容量、WLTCモードで335km(欧州値は320km、EPA換算推計値約285km)の一充電走行距離もちょうどいい使いやすさと感じるし、87kW(118PS)のモーター出力も気持ちいい。試乗したグレードの「Icon」には、アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキーピングアシスト(LKA)などの先進機能も標準装備。しかも、急速充電性能は欧州仕様と同じ最大85kWです。バッテリーの液冷システムを搭載しているということだったので、夏場のロングドライブでもちょうどいい急速充電性能を発揮してくれるはず、です。
(スペック表は記事末に紹介)

走りの詳細な評価などについては、複数のジャーナリストに寄稿をお願いしているところなので、追ってお伝えします。とにかく、EVユーザー目線で試乗した 500e は、褒めるところしかありませんでした。

インテリアの質感やインターフェースの使い勝手なども、ちょうどいい! 感じでした。

ただ、日本導入発表時にお伝えしたように、欧州(イギリス)での価格は42kWhモデルの廉価バージョンで356万円〜(当時の換算価格)ですが、日本での価格はACCなどが割愛された「Pop」で450万円(税込)〜、フル装備の「Icon」は485万円(税込)〜となりました。EVsmartブログ流の電池単価を計算すると、Popが約10.7万円/kWh、Iconで約11.5万円。最近登場する新型電気自動車は8万円台/kWhあたりが激戦区になっているところでもあり、kWhあたり1〜2万円、「あと50万安かったら絶賛レベル」だったのに、というのが正直な感想で、値段だけは「ちょうどいい」とは言いがたいところです。まあ、でも個性満点の「500」ですから、魅力的なモデルを自分のものにするための加算額としては許容範囲かな、とも感じます。

先日、最新情報をお伝えした2022年度の経産省CEV補助金では、給電機能やV2Hには非対応モデルとしては最大の65万円となったことが公表されています。

また、日本での500eは、このモデルの販売強化のために開始された新たなサブスクリプション型カーリース「FIAT ECO PLAN」と、すでに提供中の「パケットFIAT」という、2種類のカーリースのみとなることが発表されています。リース&サブスクのみとしたのは、将来的なバッテリー再生などに向けた管理や残価管理のため、ということでした。

急速充電用アダプターについてじっくり確認

充電口はCCS1規格を採用。

さて、すでに公開されている日本向けの車種紹介ウェブサイトを確認すると、急速充電について「専用のアダプター(標準装備)を接続することでご利用できます」と記載されています。EVユーザーのひとりとして、私がとくに「疑問」を感じ、気になったポイントです。残念ながら、アダプターの実物は「まだ量産モデルを調達中」ということで試乗車には車載されていませんでしたが、試乗を終えた後、ステランティスジャパンのFiatプロダクトマネージャー、生野逸臣(せいのいつおみ)氏に、いろいろと教えていただきました。

北米の「CCS1」から「CHAdeMO」に変換

標準装備されるアダプターは、北米や欧州で採用されているコンボ規格の給電口で、日本国内に普及しているCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電器を使えるように変換するものです。日本仕様の500eには、北米規格であるCCS1の給電口が採用されています。

同じコンボであっても、交流の普通充電を行う際に使用する上部コネクターの形状が、北米のCCS1は「5ピン(日本提唱の Type1)」で、欧州のCCS2では「7ピン(ドイツ提唱の Type2)」となっています。日本国内には5ピンのType1コネクターによる普通充電設備がすでに普及しているので、今回、日本向けの500eの給電口には、CCS1の給電口を採用。CHAdeMO規格の急速充電器を使用するためのアダプターを開発した、ということです。

車載の普通充電ケーブルのプラグは、日本でもおなじみの Type1。充電性能は欧州仕様のままなので、普通充電も最大11kWに対応しています。

車両のデザイン優先でアダプターを採用

日本ではCHAdeMO規格の急速充電器が普及しているのですから、車両にもCHAdeMO規格の充電口があればアダプターなんて必要ありません。なぜ、アダプターを採用したのか。その理由は、車両のデザインや、コンパクトな車体の中で配線を増やすデメリットを避けるため、ということでした。

CHAdeMO規格では、急速充電と普通充電の充電口を別々に設ける必要があります。先行して導入されているインポートEVでは、急速充電口と普通充電口がボディの左右に分かれていることも多いように、2つの充電口を付けるのは少々面倒な対応になります。まして、車体がコンパクトで、デザイン自体がクルマとして大きな魅力である500eにとって、欧州向けに1カ所の充電口で設計されたデザインや構造を変えるのは大きなリスクともなります。

そこで、せめて普通充電は日本に普及しているタイプ1のプラグがそのまま使えるように、CCS1の給電口に付け替える(欧州仕様は当然CCS2)のが、フィアット、500ブランドの許容範囲としてぎりぎりだった、と理解できます。

アダプターで、最大出力は大丈夫?

CHAdeMO用のアダプターといえば、テスラが思い浮かびます。ただし、専用のスーパーチャージャーでは最大250kWという超高出力で充電可能なテスラ車も、アダプターでは最大50kWに制限されています。

500eのアダプターは大丈夫? と質問すると、カタログスペック通り、最大85kWに見合った出力で急速充電できることは確認済みということでした。

搭載するバッテリーの総電圧が352Vなので、最大200Aの90kW器での実際の最大出力は「352V×200A」で、おおむね70kW程度(42kWhの電池には十二分でしょう)になるのではないかと思います。

この日の試乗車に車載されていたのは普通充電用ケーブルのみ。急速充電用アダプターの実物を見て使ってみるのが楽しみです。

急速充電器との相性は?

大黒PAに設置された最大90kW&ブーストモード搭載の新型6口器で、数々の不具合が報告されているように、ことに輸入EVにとって、CHAdeMO急速充電器との相性は長年悩ましい課題になっています。まして、CCS1→CHAdeMOのアダプターというチャレンジングな方法で、使えない急速充電器続出、なんてことにはならないのかという点も、直球で質問してみました。

生野氏の回答は「大丈夫です」と瞳がキラリ。生野氏自身、各地の急速充電器を実際に使って検証を重ねてきたそうです。実は、500eの日本導入はもっと早い時期を目指して進められていたそうですが、高速道路SAPAなどにも多く設置されている一部充電器との相性がよくないことがわかり、日本発売を延期して対策を万全にしたとのこと。

今、日本には全メーカーの急速充電器をまとめてテストできる施設などはなく、ステランティスでまだ未確認のレアな充電器で不具合が起こる可能性がないとは言い切れないものの、急速充電器との相性にも問題はなし、といってよさそうです。

新型6口器での使用は早急に確認

ひとつだけ、私が「大黒PAの機種はテストした?」とあまりにもしつこく質問したもので、生野氏から「それは、そんなに重要ですか?」と突っ込みも入ったのですが、大黒PAに設置された新型6口器については、まだ未確認だったようです。

輸入EVで不具合が続出している上に、今年以降、e-Mobility Powerでは全国各地のSAPAにこの新型6口器を増やしていくことを計画中。最大85kWを誇る500eの充電性能を気持ちよく活かすためにも、とても大切なポイントだと思います。ということをお話すると「今日にでも確認に行く」ということでした。この点は改めて確認して、報告したいと思います。

コンボ→CHAdeMOのアダプターは世界初!

個人的には、ラゲッジなど使い勝手のよさそうなハッチバックモデルに物欲発動。

私の知る限り、コンボ→CHAdeMOのアダプターは世界で初めての登場です。先行して日本に導入された欧州メーカーのEVでは、欧州コンボ規格では100kW以上といった高出力急速充電に対応しているにも関わらず、CHAdeMO対応は最大50kWへとスペックがダウンしてしまうケースが多くありました。でも、500eが採用したアダプターで、日本国内でもコンボ(CCS1)の給電口のままでOK! ということになれば、欧州や北米仕様のEVを、給電口はそのまま日本に導入しやすくなります。給電口や車載の急速充電用ハードウェアを換装するより、アダプターのほうがコストも安いことでしょう。

フィアットとしては、急速充電器のプラグをそのまま挿せない使い勝手を、ユーザーがどう評するかという点を懸念しているそうですが、欧州仕様そのままの出力受け入れ性能を日本でも享受できるなら、アダプターを使う手間なんてまったく気にならない、と感じます。

500eの急速充電用アダプター。もしかすると、日本のEV普及にとって、エポックメイキングな出来事になるかも知れません。来月あたりには、取材用の貸出車両(広報車)が配備される予定とのこと。改めて、ロングドライブのレポートなどをお届けしたいと思います。

ちなみに、生野氏はキャリアの中で、数々の輸入EVの導入に関わってきた経験をお持ちでした。充電対応について取材していて、こんなに深く説明をいただけたのも希有なこと。生野さん、本当にありがとうございました!

FIAT 500e スペック等

モデル500e
Pop
500e
Icon
500e
Open
型式ZAA-FA1
ボディタイプハッチバックカブリオレ
全長×全幅×全高3630×1685×1530 mm
駆動方式FF
ホイールベース2320mm
トレッド(前/後)1470/1460mm
車両重量1320kg1330kg1360kg
乗車定員4名
タイヤサイズ195/55 R16205/45 R17
最少回転半径5.1m
最高出力87kW
最大トルク220Nm
動力用種電池
総電圧352V
セル個数192
総電力量42kWh
一充電走行可能距離
(WLTC)
335km
一充電走行可能距離
(EPA換算推計値)
約285km
主要装備(抜粋)
LEDヘッドライト×
FIATモノグラム
エコレザーシート
×
ガラスルーフ××
衝突被害軽減ブレーキ
(歩行者検知機能付き)
クルーズコントロール××
ACCなどの先進機能×
リアパーキングカメラ×
価格(税込)4,500,000円4,850,000円4,950,000円

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. 車両側がアダプターを携行するより、充電器にアダプターを付けた方は効率よくないですか?
    アダプターというか、チャデモとCCSのケーブル2本出しにすればいいだけ。
    GSに行って、レギュラー、ハイオク、軽油のホースがあるみたいな感じ。
    3つ出していいならテスラ用も追加して3本出しとか(笑)
    EVの数と充電器の数を比較すると、絶対に充電器の方が少ないはず。
    まあ、将来的にはという話なんでしょうが。

  2. 前から、日本メーカーのBEVも含めて、「コンボ→CHAdeMOのアダプター」でいいと思ってたので、これを実現した会社に拍手を送りたい。

    1. shibata さん、コメントありがとうございます。

      アダプター、発表見て「えっ、大丈夫?」って感じたけど、コンボ仕様の高出力で使えるなら、むしろこうして欲しい、くらいに感じます。

      あとは、ダイナミックコントロールとかブーストモードとか、ニッポン仕様との相性がどうなのか。引き続きほじってみる所存です。

  3. >先日、最新情報をお伝えした2022年度の経産省CEV補助金では、給電機能やV2Hには非対応モデルとしては最大の65万円となったことが公表されています。

    給電機能やV2Hは非対応なのでしょうか?あるいは未だ情報無しでしょうか?
    欧州モデルだと給電機能有りというネット記事も散見し、気になっています。

    1. サティアン さま、コメントありがとうございます。

      CCSもV2X対応へ、といった製品のニュースは見たことがありますし、たとえばホンダが欧州でのV2Hに取り組んだりしているようですが。日本向け500eは、給電を含め非対応としてCEV補助金額が決定されています。

      V2Hはチャデモ規格のアドバンテージのひとつだとは思いますが。世界に広がるための強みにはならなかった、ようですね。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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