吉田由美とホットな毒サソリEV『アバルト500e』の6日間〜急速充電は大丈夫?

日本カー・オブ・ザ・イヤーでも10ベストカーに選出された魅惑的な毒サソリ電気自動車『ABARTH(アバルト)500e』に、カーライフエッセイストの吉田由美さんが6日間たっぷり試乗。アダプターを使ったチャデモ規格での急速充電も試してみたレポートをお届けします。

吉田由美とホットな毒サソリEV『アバルト500e』の6日間〜急速充電は大丈夫?

はたして、チャデモとの相性は改善しているのか?

なぜか? いえいえ、当然! 日本でも人気の「アバルト500e」。この車に乗った人のほとんどが「楽しい」「イイ!」と絶賛するものだから、その期待は高まるばかり。口コミって大事ですね!

私もイタリアの試乗会(関連記事)から、日本での発表時など、そのあともちょこちょこ試乗する機会はありましたが、すべてチョイ乗り。自分で充電をしない程度の試乗でした。

実は、アバルト500eのベース車両は『フィアット500e』で、デザインはめちゃめちゃかわいいので気分は盛り上がるも、充電でテンションが下がるという繰り返し……。最悪の事態は免れていますが、専用のアダプターを使って行うチャデモ急速充電器との相性が合わなくて充電できないことがしばしば。充電可能な充電器なのを確認して動画のライブ配信をしたのに、充電できずにライブ配信を中止したり。しかも何度かチャレンジすると充電できることもあれば、全く充電できないことも。まるで気まぐれな女子に振り回されてる感じ(笑)。

可愛いから許される部分はあっても、日々の生活を共にすると考えると、ちょっと考えちゃう……というのがフィアット500eの吉田由美的充電の印象でした。

イタリアでのアバルト500eの試乗会の時に、開発陣にその不安を投げかけてみると、「チャデモの話は知ってます。ちゃんとやってるから大丈夫」との返事。アダプターもアップデートしているとのことでした。

チャデモ急速充電用のアダプター。

走って楽しい! 魅惑的なEVに仕上がっています

というわけで、その真相を確認する機会がやってきました! アバルト500eの広報車を6日間お借りして、急速充電を含めてたっぷりと試乗することができたのです。

アバルト500e(カブリオレとクーぺのバリエーションがあります)のおさらいをすると、バッテリーはフィアット500eと同じ42kWhのリチウムイオン電池を搭載。最高出力は27kW(37ps)大きい114kW(155 ps)。最大トルクは235Nmで15Nmアップ。航続距離はハッチバックで303㎞(FIAT500e ICON、OPENは335km)、カブリオレで294㎞と少し減少。0-100㎞/hは7秒で、とくに20㎞/h~60㎞/hの中間加速が速くて楽しい。

サスペンションはフロントがスタビライザー付きマクファーソンストラット、リアはスタビライザー付きトーションビーム。ブレーキとリア共にディスクブレーキですが、強化されたブレーキによって安心しながら楽しくアバルトらしいドライブすることができます。また、回生ブレーキも最大限に活用し、ワンペダル走行が可能。

タイヤはブリヂストンと共同開発の「ポテンザスポーツ」で前後205/40R18。アバルトの方が1インチアップされています。

ドライブモードはツーリズモ、スコーピオンストリート、スコーピオントラック。ツーリズモとスコーピオンストリートは回生するので、下り坂やブレーキを踏むと電気が回生されます。

スコーピオントラックは俊敏さを増して運転は楽しいけれど回生をしないので電気の減りが早く、あまり長くは使えない感じ。私はほとんどをツーリズモモードで走行し、加速を強化したいときにスコーピオンストリートモードを使用しました。高速巡行ならスコーピオンストリートモードの方がよいかも。

さらに、フィアット500eに比べてトレッド幅を60㎜、ホイールベースを24㎜拡大したり、重量配分を57:43にし、加えてバッテリを床下に搭載する低重心ということなどもあり、とにかくコーナリングが楽しい!

もちろん、アバルト500eのユニークな個性を際立たせる「サウンドジェネレーター」も時々響かせてみました。通常はオフのほうがBEVらしく静かでよいのですが、シーンによっては大きなエンジン音を響かせると気分がアガります。システムは車両の速度、アクセル開度、ステアリング角度の情報を基にスピーカーからサウンドを流します。ただし、走りながらの切り替えはできないので、要注意。

とはいえ、開発陣が6000時間もかけてアバルトの象徴である「レコードモンツァ」の音を忠実に再現したという遊びゴコロは一聞の価値あり! 迫力あるサウンドの演出で、より楽しいドライブを演出します。

気になる急速充電の使い勝手は?

そして充電。私がこの車を借りた時点では、満充電の100%で航続可能距離は220㎞と表示、この時点での車両の総距離は2700㎞でスタート。

まずは、富士吉田での試乗会に行くことに。すでに走行分+横浜の自宅から100㎞超の距離で、家を出たときには余裕が+50㎞分ぐらいありました。でも、大井松田付近から上り坂が続くルートで、電池残量はどんどん減っていく傾向に。とりあえず帰りのことも考えて往路の東名高速道路足柄SA(下り)で急速充電。

ここには出力40kWの充電器が2台ありますが、私が行ったときにはすでに1台は埋まっていて、もう一台の充電器を利用。ちなみに止まっていたのは日産サクラでしたが、同じエリアで開催中の別の試乗会に行くメディアの方々でした。足柄SAの急速充電器は2台ですが、1台づつ充電待ちのスペースがあるのは好印象です。

30分の充電で26%→65%、航続可能距離は47㎞→120㎞(+73㎞)に回復。ここまでの走行距離は152㎞。

2度目の充電は試乗会後、高速に乗る前に近くの甲斐日産自動車 富士吉田店へ。

ここは50kWの充電器で、30分の充電で43%→88%、航続可能距離は78㎞から180㎞(+102㎞)。足柄からここまでの走行距離は48㎞でした。

ちなみにここまでは充電器との相性は100%!

しかしその後、横浜に戻ってから2か所の90kW器で使用できず。なんとか、神奈川日産 中央店に設置された44kW器で、30分×2回の充電で25%から93%、航続可能距離は199㎞へ。

そして1日空けて次の日はまたまた富士スピードウェイへ。デジャブのように東名高速道路 足柄サービスエリア(下り)で47%、81㎞から30分の充電で86%、177㎞に。

そのまま自宅~東京・田町のステランティスへというアバルト500eとの時間になりました。走行距離は6日間で577㎞。急速充電回数は5回。

充電にはCHAdeMo専用のアダプターを使用しますが、これが重い! これに充電ケーブルを差し込んで使うのですが、90kWのケーブルを差し込もうとすると、女性一人では大変。差し込みにくいし、外すときはさらに大変! なかなか外れないことも。そして、車の止める場所の関係でアダプター自体をアバルト500eに挿しにくい場合もあります。アダプターの下に敷く敷物を用意するのがよいと思います。

以前の、充電できないケースに何度も遭遇したフィアット500eに比べると、今回は「ああ、充電できてよかった」という印象。とはいえ、横浜市内で90kW器で充電できなかったりもして、まだ改善の余地はありそうです。次はまた改めて、フィアット500eで新しいアダプターを使って確認してみたいと思います。

でもやっぱり、EVを上手に使うには自宅に普通充電器があるのがベストということも改めて実感。

去年は、軽自動車の電気自動車『日産サクラ』&『三菱ekクロスEV』で実用的なBEVが登場し、今年はアバルト500eで楽しいBEV登場という感じ。電気自動車でも、こういうクルマだと楽しいな! これぞ趣味のクルマ! カーライフを豊かにしてくれそう。

取材・文/吉田 由美

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 充電の相性の問題は国産車でもありますから
    まぁ、仕方ない部分もありますが
    高速道路でこれは流石に困りますよね。

    このクルマ、馬鹿でかく無いしリースではなく普通に販売して欲しいものです。

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					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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