ますます元気な電気自動車『ABARTH 500e』にイタリアで日本人一番試乗!【吉田由美】

2023年10月の日本デビューが予告されているアバルトブランド初のBEVである『ABARTH 500e(アバルト チンクエチェント・イー)』に、カーライフエッセイストの吉田由美さんがイタリアで日本人初試乗。キュートでホットな電気自動車の走りをレポートします。

ますます元気な電気自動車『ABARTH 500e』にイタリアで日本人一番試乗!【吉田由美】

※冒頭写真はアバルト公式サイトから引用。

アバルト初の電気自動車に期待感マックス

10月予定の日本発売を前に映画『ミッション:インポッシブル』とコラボしたキャンペーンも実施していました。

いよいよ今年10月初旬に日本でも発売される予定になっているのが、アバルト初の電気自動車「ABARTH 500e」。実は私、今年の5月にイタリアで試乗してきました!今回は日本から、2人しか行かなかったので、任務重大です。

「アバルト」はフィアットをベースにしたチューニングブランドですが、今回の試乗はフィアットからすでに発売され、日本にも導入されているフィアット初のBEV「フィアット500e」のアバルト版「アバルト500e」です。

アバルトの創業者であるカルロ・アバルトは、もともとはフィアット車でレースに参加したり、パーツを作ったり、改造車を販売していました。いろいろ苦労して立ち上げた会社が1971年にフィアットに吸収され、現在はステランティスグループの一員として、フィアット車をチューニングしたモデルをラインナップしています。

アバルト500eの試乗場所はミラノから約70㎞。バロッコ村にあるステランティスグループのテストコースです。もともとはアルファロメオのテストコースでしたが、現在はステランティスグループで共有し、フェラーリやマセラティなど他ブランドもここでテストを行うそう。私はこちらも初来訪なので楽しみすぎます。

アバルトらしい存在感が魅力的

それなのにそれなのに、残念ながら試乗日は雨。

ただ、イタリアはこの日、F1グランプリが中止になるほどの豪雨に見舞われたので、私の「晴れ女効果」があってこの程度で済んだのかも!?

しかし、たとえ天気が悪くてもここで初対面となったアバルト500eは、めちゃめちゃ「可愛い♡」!

もともとフィアット500eのエクステリアデザインが超お気に入りの私は、アバルトのデザインにも大注目! フィアット500eで特に印象的なのは「チコちゃん」風の目&フロントデザインですよね。基本的なデザインは共通ですが、アバルトでは楕円形のLEDヘッドライトの上部分が黒くなっているので、まるで女性がメイクで目を強調するためにアイラインを入れてるみたいで、より「目」のように見えます!

そしてアルファベットの「ABARTH」のロゴが燦然と配置されています。この部分、フィアット500eでは「50e」(500の最後の「0」が「e」と組み合わされた)の車名のエンブレムでした。なるほど。まさに、顔のど真ん中で、アバルトブランドが強調されているってことですね。

そしてボディカラーも鮮やか。試乗会場の受付脇にはコミュニケーションカラーのヴィヴィッドなイエロー「アシッドグリーン」と軽やかなイメージの「ポイゾンブルー」が展示されていて曇天の下でも存在感がありました。

アシッドグリーンといえば、「アバルト」のシンボルは創業者カルロ・アバルトの星座であるサソリ(スコーピオン)デザインのエンブレムです。電気自動車(BEV)のアバルト500eには、ボンネットやアクセル/ブレーキペダル、フットレストに通常のスコーピオンが使われていいるほかに、ボディカラーと同じアシッドグリーンに黒の斜めストライプ&雷が落ちたようなデザインの「電気サソリ」が、リアのパネル、ホイールキャップ、インテリアではエンボス加工されたヘッドレスト、ハンドルの真ん中などにあしらわれていました。

雨中の電気サソリ。

フィアット500eとの違いは、フロントグリル、ヘッドライトのほかに、リアディフューザー、専用バンパーなどで、キュートさが際立つフィアット500eに比べると、スポーティでクールになった印象。

ボディサイズはフィアット500eと比較すると全長3673㎜(+41㎜)、全高1518㎜(-9㎜)、フロントオーバーハングが774㎜(+42㎜)、リアオーバーハング546㎜(-1㎜)、そして車両重量は1335㎏(+45kg)。つまり、ちょっとだけ長く低くなって、前部分が長くなって重くなりました……、と言っても見た目にはほぼ違いはわかりませんが。

バッテリーは「フィアット500e」と同じ42kWhのリチウムイオンを搭載しています。モーターは最高出力155ps、最大トルクは235Nmに強化され、パワー、トルクともに向上し、0-100㎞/h加速は7秒でアバルト最速。航続可能距離は265㎞(欧州WLTP)とのこと。

アバルト695を凌駕する加速が快感!

実は試乗は「アバルト500e」の前にガソリンエンジンの「アバルト695」で同じコースを試乗しました。これはこれで楽しい! アバルト695の、ガソリンエンジンの楽しさを再認識。やっぱりいいよね! エンジン音もあるし。

そしてアバルト500 e。
ドアを開けると、運転席前のメーターパネル内に電気サソリのウェルカム画像が映し出されます。スイッチをオン/オフする時にはロックギター音の「アバルトジングル」が流れるとのことですが……、私、気が付かなかったかも。

今回の目玉が「アバルト695」のエグゾースト音を再現する「サウンドジェネレーター」。コースインするまえにスイッチをオン。ただし、このオン/オフは止まった時にしかできないので、これは少し残念だと思いました。

本国では「アバルト500e」と「アバルト500eツーリスモ」の2グレードがあり、今回の試乗車は装備が充実している「500eツーリスモ」。また「ハッチバック」と「カブリオレ」があり、私が試乗したのはアシッドグリーンの「500eツーリスモ カブリオレ」でした。

ヒーター付きのフロントシート、ワイヤレス充電パッド、リアビューカメラ、死角警告表示など快適性を高めたり、安全装備が充実しています。オーディオシステムはJBLプレミアムオーディオシステムが採用され、音にもこだわっています。日本で発売されるローンチエディションも、快適&安全装備充実に違いないと期待。

さて、アバルト500eに乗ると、アバルト695でも加速に勢いがあると思っていましたが、さらに気持ちいい加速が味わえました。

最初のスタートダッシュがめちゃっ速い。バッテリーが床下に搭載されているので安定感があるし、特に0-60㎞/hぐらいまでの低中速が滑らかかつ力強い加速で、気持ちイイ。しかも試乗コースはコーナーの多いハンドリングコースなので、ブレーキがしっかり利いた減速後の立ち上がりの速さや、切り遅れの無いハンドリングをたっぷり楽しめました。加減速の繰り返しでクルマとの一体感を満喫しつつ、思わずニヤニヤしてしまいます。

足元を支えるタイヤはブリヂストンと共同開発。

ドライブモードは「ツーリスモ」「スコーピオン・ストリート」「スコーピオン・トラック」があります。ツーリスモがいわゆるスタンダードモードで、ツーリスモとスコーピオン・ストリートモードでは回生ブレーキが強くなり、ワンペダルドライブを楽しめます。テストコース試乗では、全部のモードを試してみつつ、でもなんとなくスコーピオン・トラックモードを多めに走ってしまいがちでした。その後の一般道試乗では、オフィシャルカメラマンの撮影をしていたら試乗時間がかなり短くなり……。しかもサウンド・ジェネレーターをオンのままにしていたら轟音が静かな街中で響き渡ってしまって慌てたり(笑)。

残念ながら、今回の試乗では充電を試すことはできませんでしたが、欧州仕様では最大85kWの急速充電に対応し、約35分で80%の充電が可能とのこと。日本ではもちろんCHAdeMOに対応します。

しかし、フィアット500eは急速充電のチャデモアダプター問題で苦労したようですが、そこは大丈夫なのでしょうか? 開発者に質問すると「今回は大丈夫!」との頼もしい答え。ただし、フィアット500eと同様に、チャデモでの充電はアダプターを使い、最大50kW(125A)になると思います。このあたりは、気になる価格とともに正式な発売の発表を待ちましょう。

テストコース脇の充電設備。

テストコース脇には、黒地に電気サソリが描かれた充電器が並んでいたのでチェック。屋根部分にはソーラーパネルが設置されていました。イタリアのENEL X社のもので、AC(普通充電)はTipe2、DC(急速充電)はCHAdeMOとCCS2の3つのアダプターが一つの充電器にあります。が、今回はイタリア・ミラノ空港とトリノの街、途中の道路からしかイタリアの充電事情を垣間見ることはできませんでしたが、充電インフラはかなり少ない印象。ほとんど見かけません。雰囲気的には日本よりも少ない印象でした。

ちなみにイタリアの電力構成は、火力が全体の55%ほどで、水力(20%)、太陽光(17%)、風力(8.5%)、地熱(0.7%)など、最近はとくに再生可能エネルギーの比率が高まっているようです(2017年時点。海外電力調査会のデータ参照)。原子力発電は国民投票で否定されたとのこと。

日本と同じようにエネルギー資源が乏しいので、電気自動車で脱炭素をより効果的に実現するためには、再エネ電力の比率をさらにアップすることが大切ですね。

ともあれ、アバルト500eの走りは期待通りでした。今回の試乗は欧州仕様車だったので、早く日本仕様でも試乗したい!

もうすぐ……、ですね。きっと。

取材・文/吉田 由美

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 500eのチャデモアダプターの場合は、最高40kWしか出ませんけど。アバルトは50kW出るんですか。同じアダプターと想像しますけど。

    1. わっきー さま、コメントありがとうございます。

      500eのアダプター、定格は「500V×125A」で、実際には50kW器で110A程度に制御されているようだ、と認識しています。

      一般的に、400Vシステムで最大125A対応の場合、「最大50kW」と表現するのが慣例になっていて。明確に「アダプターは最大110A(40kW)対応」と確認が取れればいいのですが、未確認です。

      (125A)を追記しておきます。

      ちなみに、既にご承知かも知れませんが、500eのチャデモアダプターについては大間遠征時に木野さんが詳報してくれています。

      待望の『FIAT 500e』用急速充電アダプターが登場〜ロングドライブで使ってみました
      https://blog.evsmart.net/stellantis/fiat/500e/long-drive-with-fiat500e/

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					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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