マツダ初のPHEVを繰り出す『CX-60』日本仕様を初公開〜内燃機関の可能性を信じつつ脱炭素へ

マツダ初のプラグインハイブリッド車をラインナップする『CX-60』のプロトタイプ試乗会が、山口県のマツダ美祢自動車試験場(かつてのMINEサーキット)で開かれた。日本では2022年初秋の発売を予定している。

マツダ初のPHEVを繰り出す『CX-60』日本仕様を初公開〜内燃機関の可能性を信じつつ脱炭素へ

新プラットフォーム採用の「ラージ商品群」で電動化も推進

MAZDA CX-60 e-SKYACTIV PHEV AWD プラットフォーム
MAZDA CX-60 e-SKYACTIV PHEV AWD プラットフォーム

マツダは今回日本初公開された『CX-60』のために新しいパワートレーンのみならず、エンジン縦置き用のプラットフォームを新設した。この新プラットフォームに、仕向地によってMHEVとPHEVの両方あるいはどちらかを搭載して販売する。同社は2030年以降、現在のMX-30が用いる「スモール商品群」のみならず、CX-60などの「ラージ商品群」にもBEVを追加する予定だが、それまでの期間を今回開発したMHEV、PHEVを駆使して各国の燃費基準等に対応する。

CX-60は2.5L直4ガソリンエンジンを搭載するPHEVモデルのほかに、48Vのマイルドハイブリッドシステム付き直6ディーゼルターボエンジンモデルがラインナップされる。

PHEVモデルは、最高出力191ps/6000rpm、最大トルク261Nm/4000rpmのエンジンに、同175ps/5500rpm、同270Nm/4000rpmの電気モーターが組み合わせられる。エンジン、クラッチ、モーター、クラッチ、そして8速トランスミッションが直列に配置され、後輪もしくは4輪を駆動する。

システムとしての最高出力は327ps、最大トルクは500Nmと強力で、トヨタRAV4PHVや三菱アウトランダーPHEVを上回る。車重は約2100kg。駆動用のリチウムイオン・バッテリーはホイールベース間の左右に分けて搭載される。総電力量は17.8kWh。EV走行可能距離は61〜63km。燃費は66.7km/ℓ(WLTC ※EV走行可能距離のEPA推計値は50km程度)。燃料タンクは50ℓ(ハイオク仕様)となっている。

ICEっぽさを感じさせるPHEV

電力残量が十分である限り、モーター駆動を基本とするのは他社のPHEVと同じ。またモーター駆動である限り、EV同様の静粛性とスムーズさを味わうことができる。RAV4PHVやアウトランダーPHEVがプロペラシャフトを持たず、前後それぞれの車軸にモーターを備えるのに対し、CX-60はモーターは1基。ATからプロペラシャフトを伸ばして後輪に駆動力を伝え、ATの途中から前方へ向かって伸びるトランスファーによって前輪にも駆動力を配分する。

このメカニズムの違いによって、RAV4PHVやアウトランダーPHEVはEVっぽさを、CX-60はモーター駆動ながらどこか従来のICEっぽさを感じさせる。絶対的なパワーは十分。発進時の力強さはディーゼルと同等だが、80km/h以上のスピードの伸びは圧倒的にPHEVが上回る。

サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンで、リアがマルチリンク。サスペンションの作動軸が前後で揃えられているのが最大の特徴。それによってピッチング(車両の前後がそれぞれに揺れる動き)の動きを抑え、快適な乗り心地を目指したという。

多くのクルマはピッチングセンター(仮想軸)がホイールベースの間に存在するが、CX-60では車両を飛び出してかなり後方にある。このため路面から入力を受けた際、ピッチングではなくバウンシング(車両の前後がそろって上下する)するようにチューニングされている。また先般ロードスターに初めて採用された、コーナリング時に内輪のリフトを抑える効果があるKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)も備わる。さらに前後重量配分がディーゼルで55:45、PHEVで51:49と理想的。

これらの効果が相まって、加減速時、旋回時、そしてそれらが組み合わさった動きの時、要するに走行中は常に、ドライバーが意図した通りに車両が動いてくれ、運転が非常に楽しい。バッテリーの存在が車両の低重心化に寄与するため、旋回中もどっしりとした動きに終始し、車両がぐらつくような動きがないのがよい。乗り心地は快適だ。

内燃機関の将来性、可能性を信じた取り組み

CX-60 インテリア(日本仕様)

ここへきて6気筒ディーゼルターボエンジンを新開発するなど、マツダの次世代に向けた取り組みは、まだまだ内燃機関に将来性、可能性があると信じた取り組みになっている。が、当初の構想にはなかったとされるPHEVも開発し、BEV中心時代への橋渡し的存在としての役割を担わせようとしている。

小型車については、現時点ではガソリンを自着火(正確には火花点火制御圧縮着火)させることでリーンバーン領域を拡大したスカイアクティブXエンジンを搭載したモデルで対応しているが、必要に応じて提携先であるトヨタからTHS技術の供与拡大も検討する考えのようだ。

(取材・文/塩見 智)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 小生5年ほど前に三菱アウトランダーPHEVに乗っておりました。夫婦で旅行に出掛けるための車でしたが、いいとこ沢山〔1.5kwのコンセントやフルフラットになるトランク部と後席など〕有りましたけど、家内が乗り降りにヨイショと掛け声がいるのが大変と運転のし易さや視界の良さを無視していってたことが手放す理由になりました。非常に後悔していますが、息子がアクセラからCX8にに乗り換えた事でまたSUVに興味が戻ってきました。良い車が出たなあと興味がありますが、ハイオクと車幅は馴染めませんが。

    1. アウトランダーPHEVは2012年末に登場し、すぐに電池の不具合で生産が止まり、翌年再開しましたが、当時まだほとんどの人がPHVの真価を理解できていませんでしたが、その後に登場したPHVのほとんどの特徴や価値が、すでにアウトランダーPHEVに備わるものだったこともあり、じわじわとこのクルマはすごいんじゃないかという流れになったように思います。現行のアウトランダーPHEVはさらに高性能になっているので、乗ると気に入ると思います。

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					塩見 智

塩見 智

先日自宅マンションが駐車場を修繕するというので各区画への普通充電設備の導入を進言したところ、「時期尚早」という返答をいただきました。無念! いつの日かEVユーザーとなることを諦めません!

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