ステランティスが年頭会見でフィアット『500e』の日本発売を発表〜EVなど電動車4モデルを導入

ステランティスグループのFCAジャパンとGroupe PSA Japanは2022年の年頭会見を行い、2021年の販売実績と、2022年に日本に導入予定の電気自動車(EV)などのラインナップを発表しました。ラインナップの中には、一部の人が待ち焦がれた『フィアット500』のEV版、『500e』も含まれています。会見の内容をお伝えします。

EVの比率が10%を超えているモデルも

FCAジャパンとGroupe PSA Japan両社の社長兼最高経営責任者(CEO)、ポンタス・ヘグストロム氏は2022年1月18日にオンラインで年頭の合同記者会見を行い、2021年の両社の販売台数が前年比10%増の約45000台で、過去最高になったことを発表しました。

ヘグストロム社長は会見で2021年を振り返り、「半導体不足とコロナ禍がビジネスに暗い影を落としている。タイムリーに製品を届けることが難しくなっている」としつつも、ステランティスグループの各ブランドは「他社に比べれば供給を確保しつつ顧客の要求を満たすことができた」とコメントしました。

また、ヘグストロム社長は、日本市場でもFCAとPSAを統合し、2022年3月1日にステランティスジャパンを設立することを明らかにしました。

今回の記者会見で語られた内容の中で、EVsmartブログとして注目したいことが2つありました。ひとつは、待ちに待ったというか、ようやくというか、フィアットの小型EV『500e』が2022年中に日本で発売される可能性が高まったことです。

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2つ目は、すでにEVをラインナップに揃えているプジョーとDSオートモビルでは、EVの比率が非常に高いことです。例えばDSオートモビルのEV、『DS 3 クロスバック E-TENSE』は、『DS 3』の販売台数の21%を占めるそうです。

発表資料より引用。

またプジョーのEV、『e-208』は『208』シリーズの10%、『e-2008』は『2008』シリーズの13%を占めます。同様にプラグインハイブリッド車(PHEV)の比率も高く、プジョー『3008 ハイブリッド4』や『508 ハイブリッド』は、同モデル全体の15~16%を占めます。

発表資料より引用。

こうした状況を踏まえ、ヘグストロム社長は、今後も日本市場にEVやPHEVを増やしていく方針を明示しました。日本では新車のEV比率が1%にも満たないことを考えると、ステランティスグループの割合には驚くしかありません。

ここ数年、というよりも2020年から2021年にかけて、ヨーロッパのEV市場では大きな変化が起きています。日本市場がこれに追随するのかどうかですが、今のところ日本で購入可能なEVのバリエーションが少ないので、大きく変化するとしても少し時間がかかりそうです。

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今年こそフィアット『500e』が日本に導入されそう

さて、今回の記者会見では、『500e』の日本導入にあたって、ハッチバックの『500e』と、コンバーチブルの『500e カブリオ』の2グレードを用意することが発表されました。ただ、発売時期や価格など、詳しい情報は明らかになっていません。

話は少しそれますが、『500e』は1月5日~8日にラスベガスで開催された「CES 2022」で、限定版の『(500)RED』が展示されました。

『(RED)』は、AIDSのパンデミックと戦うために、U2のボノと国際NGOのボビー・シュライバーによって設立された基金です。現在はコロナによって影響を受けたコミュニティなどを緊急支援する活動をしています。そういえばiPhoneにも設定がありました。

今回、フィアットは支援活動に協力するため『パンダ』など主要なモデルに『(RED)』バージョンを用意する中で、『500e』(英語版のリリースでは『NEW 500』)にも『(RED)』を設定しました。ミラーカバーやフロントグリルのロゴなどが赤で、内装も赤基調になっているほか、シートまで目に鮮やかな赤を選べるのが特徴です。

なんなら真っ赤っかに近い内装にもできます。パンデミック支援という意味もありますが、さすがフィアット、デザインをはずしません。赤好きな人にはたまらないバージョンでしょう。はっきり言って、筆者は好きです。せっかくなので日本にも来てほしいですね。

ところでCES 2022で展示した『500e』について、フィアットのプレスリリース(英語)では、「従来の電気の壁を打ち破り」、1回の充電での航続距離がWLTPモードで最大320kmになっているなどと紹介しています。このためか、バッテリー容量が増えて航続距離が伸びたと紹介している記事も見かけました。

でも『500e』は当初から航続距離は320kmで、バッテリー容量は24kWhと42kWhの2種類でした。24kWhは、EVsmartブログの記事でも紹介したように都市部でカーシェアに慣れたミレニアル世代のユーザーを想定しています。そんなわけで、2022年モデルは『(RED)』が追加になったものの、動力系の基本スペックは変わっていません。

ところで、前述したEVsmartブログの関連記事でも示したように、実は昨年のFCAジャパンの年頭記者会見ではヘグストロム社長が、2021年中に『500e』を日本に導入予定と発言していたそうです。それがかなわなかった理由は明らかではないのですが、2022年モデルは今度こそ日本に入りそうです。

というのも、フィアットのプレスリリース(英語)にも、2022年に『500e』を日本で発売する計画が記されていたからです。リリースによれば『500e』はこれまでにヨーロッパ、イスラエル、ブラジルで販売していて、新たに日本を追加します。

本来の予定より1年遅れではありますが、そこはイタリア時間ということで、今年に期待しましょう。こうなったら日本のCHAdeMO仕様にもきちっと対応して、フルパワーで充電できるようになっているといいなと思います。

2022年には4モデルを日本に導入予定

年頭会見では、ステランティスグループは2022年に13モデルを日本に投入予定であることも発表されました。このうち4モデルが、EV、またはプラグインハイブリッド(PHEV)のモデルになります。そのひとつが、『500e』です。

他の3モデルのうちのひとつ目は、1月7日に発表されたシトロエン『NEW Ë-C4 ELECTRIC』です。

【関連記事】
シトロエン『Ë-C4 ELECTRIC』を日本発売~個性派電気自動車の選択肢が拡大(2022年1月7日)

2つ目はPHEVのプジョー『308/308 SW ハイブリッド』です。最高出力225bhpのシステムと8速ギアボックスを組み合わせたPHEVで、1kmあたりのCO2排出量は26g(WLTP)と公表されています。

3つ目は、アルファロメオのSUV、『トナーレ』のPHEVです。2019年のジュネーブショーでコンセプトカーが発表されて以来、なにかと話題に上がっていた『トナーレ』が、2022年に市販されます。日本にも早い時期に入ってくる可能性があります。クラス的にはメルセデス・ベンツの『GLA』などの対抗馬になりそうです。

『トナーレ』は最近になって、市販前のスパイショットやスペック予想を掲載するメディアも出てきました。例えばMOTOR AUTHORITYではジープの『レネゲード』を引き合いにして、それ以上の動力性能になるのではないかと予想しています。

【関連記事】
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アルファロメオは昨年、2027年までに100%がEVになるという道筋を示しています。そのためか、アンパラートCEOは「アルファロメオのDNAはドライバー中心、それはEV時代でも不変だ」と日本メディアに対して発言したりしています。アルファサウンドは確かに小気味いいので、それが電動化でどうなるのかは、とても気になります。

すでに発売されたシトロエン『Ë-C4 ELECTRIC』以外は、発売時期は明確ではありません。それでも日本投入は確実なので、今はとりあえず、刮目して待ちましょう。

何はともあれ、個人的には『500e』がどのくらいの価格設定になるかが最も気になるのであります。はたしてヨーロッパでの、42kWhモデルで300万円台中盤という価格が日本でも実現するのかどうか。もしこの価格になれば、現行の『500』の市場をかなり食えると思うのですが、どうでしょうか。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. マンション住まいだと充電がネック。またチンク欲しいなぁ。一台目フィット500は事故で廃車.2台目アバルト500は結婚とともに、泣く泣く手放し。今は仕方なくフォレスター。

    1. ケンジ様、コメントありがとうございます。
      チンクエチェント、人気ですよね!
      ご参考までに、マンション等でも充電器は設置できるケースがあります。ある程度働きかける必要はありますが、将来を見越して検討されてみても良いかもしれません。今はまだマンション等でも充電器設置に補助金が出ます。
      https://blog.evsmart.net/charging-infrastructure/home-charging/

  2. 日本での販売。
    うむ!
    仮に自分がフィアットの最高責任者だとしたならば、此れならば日本産のEVシステムを組み込んで販売するね。
    日本にはEVを向かい入れる素地は有るし、日本独自の気候変動と言うものも有る。
    アフターと言う物を考えた場合、国外システムは部品供給とかでも支障をきたす場合も有り得るしね。
    フィアットは日本では結構コアな人気があるメーカー。
    EVシステムが日本産で日本のアフターを受けられるならばかなり人気は出そう。
    そう思わない?

    1. 郷に入れば郷に従うのが始まりの基本 様、コメントありがとうございます。

      >>日本産のEVシステム

      チャデモということでしたら、ほぼ間違いなく対応してくると思います。そうしないと長距離移動が難しくなるので。

  3. > ところでCES 2022で展示した『500e』について、フィアットのプレスリリース(英語)では、「従来の電気の壁を打ち破り」、1回の充電での航続距離がWLTPモードで最大320kmになっているなどと紹介しています。このためか、バッテリー容量が増えて航続距離が伸びたと紹介している記事も見かけました。

    これは恐らくアメリカだとすでにカルフォルニア州限定で旧プラットフォームを流用したfiat 500eが古から発売されていてそれの航続距離と比較してと言うことかと思います。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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