多様なEV展示が目立っていたLAオートショー
日本では11月11日にオンラインでの発表となったSUBARU初BEV『SOLTERRA(ソルテラ)』。11月下旬には、米国ロサンゼルスで開催された「LAオートショー」にて、実車(プロトタイプ)がアメリカでも初めて公開されました。
筆者が出かけたのは11月17-18日に開催されたプレスデーで、その2日間は『AutoMobility LA』という名称で、業界およびメディア関係者を対象とするイベントです。その後、10日間の日程で一般来場者向けのLAオートショーが開催されました。(この記事では総称してLAオートショーと記載します)
筆者がLAオートショーに取材に行くのは今回が初めてでした。10月末から渡米して、JCCS(日本旧車集会)、SEMAショウ(世界最大の自動車アフターマーケット見本市)などのクルマイベントを取材して11月17日にLAオートショーに足を運びました。
COP26の直後に開催されたLAオートショーは、ほぼ「EVショー」という印象で、とにかくEVの出展がとても多く「Imperium Motor Corp.(IMC)」(DSGグローバルの電気自動車部門)や「ELECTRA MECCANICA」(カナダ・バンクーバーのスタートアップ)、「BILITI ELECTRIC」(インドとアメリカに本社を持つ電動三輪自動車トゥクトゥクのメーカー)、そして、EVに特化したベトナム初の自動車メーカー「VINFAST」など、日本ではほとんどその存在を知られていないメーカーやブランドも多数出展されていました。
欧州に比べるとEV販売率はまだまだ低いアメリカですが、今年1月に就任したバイデン大統領が「2030年までに新車販売の50%をZEVにする」という大統領令に署名しており、さらにカリフォルニア州は11月に開催されたCOP26にて「2035年までに主要市場で、2040年までに全世界市場でガソリン車の新車販売を禁止する」という宣言にも署名しています。今後は大都市がけん引役となって電動化が急速に進んでいくことが考えられます。
SUBARUブースには2年掛かりの「鍾乳洞」も!
そして、数々の新しいEVがお披露目されたLAオートショーの中でも、もっとも注目を集めていたのは間違いなく11月11日に世界に向けてオンラインで発表されたSUBARU『ソルテラ』です。
LAオートショーにはトヨタ、日産、マツダ、ホンダなど複数の日本メーカーがブースを構えていましたが、作りはかなりシンプルで広々としたスペースにただ新車を並べただけ、という印象です。フォード、GM、JEEPも同様、屋内展示ブースには試乗コースなどが併設されていてそれは新鮮でしたが、SUBARUのような凝った作りのブースは唯一といっていい印象でした。
SUBARUブースには鍾乳洞を模した展示やログハウス風の建物が設置され、メインブースの演出も凝っていて、時間とお金をかけたであろうこだわりが圧巻です。展示品には本物の植物や樹木がセットされており、バルサムの木の香り? クリスマスツリーの良い香りが会場全体に漂っていました。
明らかに他とは違う凝った展示について質問したところ、後日、米国法人であるSubaru of America, Inc.(SOA)を経由して回答が届きました。
2019年以来、Subaru of America(SOA)は米国の主要オートショーで、米国国立公園への支援への誇りとNational Park Foundationとのパートナーシップへの敬意を表現する、他にはない展示を行ってきました。interactive cave (洞窟の展示)を含む新しい展示は今回のLAAS(LAオートショー)で初めて公開したもので、その制作には2年程の期間をかけています。
ブースを訪れた方は、ショー会場にいながらにして、アメリカの素晴らしい国立公園の大自然の光景、匂い、音、そして感覚を体験することができます。この体験は、SUBARUのお客様のアウトドアアドベンチャーへの愛をたたえることを目的としてデザインしました。展示の制作にあたっては、環境の持続可能性を考慮して、可能な限り持続可能で再利用可能な素材を使用しています。
SOAでは米国の主要オートショーで毎回、このような他にない展示を行っているとのこと。筆者が最初に気になった「鍾乳洞風の洞窟」はなんと2年の歳月をかけて制作されて、今回初公開されたものでした。
LAオートショーから1か月。ソルテラへの評価は?
SUBARUブースのメインはもちろん、ソルテラの全米デビューを伝える発表です。ショーブースのフロアには映像コンテンツを流せるLEDディスプレイを配置、本当に森の中にいて小川が足もとを流れているような映像が絶え間なく表示され、これが本当に美しくリアルでした(じっと見ていると酔いそうになりましたが)。
12月末現在、LAオートショーが閉幕してちょうど1か月が経過し、全米のSUBARUディーラーでは詳しいスペックやグレードごとの装備などもディーラー各社の公式サイトで公表されています。AWD(全輪駆動)で220マイル(約352km ※EPA基準。日本のWLTCではAWD車が460km前後と発表されています)以上の航続距離を実現。レベル1充電用の標準的な120Vコンセントで動作する充電器が付属しており、さらに高速充電のための240Vレベル2充電器を設置することが可能とされています。
価格の発表はまだですが、アメリカでの評判はどのようなものだったのでしょうか?
LAオートショーのブースには大変多くの方にお越しいただき、非常にポジティブなフィードバックをいただいています。LAオートショーで実施したソルテラの米国発表は、プレスデーからメディアの皆様に注目いただき、報道でも数多く取り上げていただきました。更新情報の入手や車両の詳細に関心を持っていただきSOAにコンタクトされた方も、大変多くいらっしゃいます。
SUBARUのお客様はアクティブなライフスタイルをお持ちで、アウトドアで過ごすことを楽しまれる傾向があります。
そのため、環境や環境を取り巻く問題に対しても高い意識や関心をお持ちです。
EVであることに加え、8.3インチの最低地上高、AWD、Grip Controlを備えたXモードにより、SUBARUらしい走破性を備えたソルテラはこの両方の関心にお応えするクルマです。
特定の機能や技術ではなく、環境に配慮した車であり、且つ走破性を備えたSUBARUのSUVであるということに、SUBARUに乗られているお客様やこのような種類の車に関心をお持ちの方から共感いただいていると考えています。SUBARUの安全性や耐久性に対する評価も、ソルテラの好評につながっていると考えます。
なるほど、なかなか好評のようです。安全性、環境性能、悪路走破性能も高いSUBARU車は近年、米国での評価が非常によく「コンシューマー・レポート」(非営利の消費者組織が1936年に創刊した権威ある消費者情報誌)が2021年春に発表した「自動車ブランド評価」では1位Mazda、2位BMWに続く第3位を獲得。また、素晴らしい10台のクルマに与えられる"10 Top Picks of 2021"においてもフォレスターとアウトバックの2台が選出されています。2年ほど後には、ソルテラがこの10台に入るのは間違いないでしょう。
プロトタイプのソルテラに触ってみた!
展示されていたソルテラはプロトタイプであるため、量産モデルとは異なる部分はあると思いますが、ソルテラの気になる部分を確認してみました。
①充電口のレイアウトは?
LAオートショーに出展した米国仕様車では、充電口は左側フロントフェンダーにありました。
②運転席インターフェースや目新しいポイントは?
12.3インチの巨大なタッチスクリーンがまずは目を引きます。アップルCarPlayを標準装備し最も先進的なマルチメディアシステムを採用しています、また、ステアリングの上から見るタイプのメーター(トップマウントメーター)がインパネ上部に配置されており視線移動の低減を図っているようです。
③電池残量などに関するドライバーへのインフォメーション機能は?
プロトタイプなので現場での確認はできませんでしたが、電池残量や走行距離については、メーター内に表示されるとのことです。
④ACコンセントの電源出力は装備されてる?
それらしきキャップはありました。が、SUBARUに確認したところ「現時点で公表している情報以外の詳細については、回答を控えさせていただきます。」との回答でした。
⑤駆動用バッテリーの調達先は?
ソルテラではPPES(Prime Planet Energy&Solution)製及びCATL製バッテリーを採用していますが、仕様ごとにどのバッテリーを採用しているか等の詳細については「回答を控えさせていただきます」との回答でした。
⑥SUVとしての使い勝手は?
アメリカで好まれるSUVは単なるスタイルだけではなく、ちゃんと悪路で使える走破性を備えていることが重要です。SUBARUが北米でとても高い評価を得ている理由の一つに「タフで悪路走破性が高い」ことが挙げられますが、ソルテラは8.3インチ(21.08センチ)の最低地上高を確保しており、オーバーハングも短いことで、起伏の多い地形でも簡単に操作できそう。従来のEVでは通常到達できない場所にも行くことができるでしょう。
ヒルアセント(おもに上り勾配路での速度調整機能)およびディセントアシスト(急勾配の下りにおけるブレーキ自動制御機能)を備えた標準のX-MODEを使用すると、道路状況に合わせて完璧なトラクション設定を選択し、安定性とさらなる制御が可能となります。
また、リヤゲートの使い勝手にも要注目。電動リアゲートは展示車両では手動となっていましたが、もっとも上まで開いた時のリヤゲートの高さが驚くほど高いのです。恐らく一番高い部分は2.5mくらい?
大柄なアメリカ人でもこれくらいの高さがあれば余裕でリアゲートを開放して大きな荷物を取り出すことはもちろん、オフロードバイクやMTB用のヘルメットを被ったままでも、リアゲートに頭をぶつけることもなさそうです。
(写真に写っている息子の身長は188cmですが全く余裕です)
とはいえ、この高さは日本の駐車場では問題ないのでしょうか? また、展示車両にはハッチを下ろすためのヒモが応急的に付けられていました。SUBARU広報担当者に聞いてみたところ「リヤゲートを開けた際の高さは任意にユーザー側で設定可能です。工場出荷状態では、開いた際の高さに仕様ごとの差はありません。なお、LAAS展示車両は工場出荷状態の高さではありません」という回答でした。
任意に設定ができるのであれば、高さに制限がある場所でも安心して使うことができそうです。
米国仕様のソルテラは2022年半ば以降、2023年モデルとして販売が予定されています。
(取材・文/加藤 久美子)