テスラ『モデルS』と『モデルX』が驚愕の「アップデート」〜PRが控えめなのも常識破り

テスラの『モデルS』と『モデルX』が大幅に「アップデート」されました。2020年Q4の決算報告でアナウンスされ、公式サイトの車種情報は日本向けを含めてすでに更新されています。モデルS Plaid+は0-60mph加速が2秒を切るという、驚愕のモデルチェンジです。

テスラ『モデルS』と『モデルX』が驚愕の「アップデート」〜PRが控えめなのも常識破り

フルモデルチェンジをPRすらしない

2月に入り、創業以来初めてとなる通期黒字を達成した2020Q4決算のレポートをお届けしたテスラ。その決算報告の中に「Updated Model S and Model X launched in January 2021」=「2021年1月に、アップデートしたモデルSとモデルXをローンチしました」というアナウンスがありました。

まず驚いてしまうのが、テスラ自身が今回の「改良」を、「モデルチェンジ」ではなく「アップデート」であるとしている点です。この後、明らかになっている詳細をご紹介しますが、その変化は従来の自動車メーカーであれば「フルモデルチェンジ」として、大々的にPRするだろうという大幅な改良です。でも、ほとんどPRすらしていないのがテスラ流。

車両の改良は日進月歩。できることをできるタイミングで着実に行っていく、というスタンスを貫いているということでしょう。2年に一度マイナーチェンジ、4年に一度フルモデルチェンジを行って販売促進に繋げていく、といった、旧来の自動車業界の常識なんて知ったことではないのです。

もちろん、テレビCMに莫大なコストを使うこともありません。常に最新で最良の1台を届けることにさまざなまリソースを集中する。そしてイーロン・マスクのSNSをはじめ、テスラを支持するユーザーのネットワーキングで周知を広げていくのが「テスラ流」ということですね。図らずも、このEVsmartブログの記事もそうしたテスラ流PRの片棒を担ぐことになるわけですが。

【関連サイト】
テスラジャパン公式サイト(モデルS車種ページ)

Plaid+には新開発の「4680」セルを採用か

すでに、日本向けのウェブサイトでも刷新されたモデルが紹介されています。まず、新たなモデルSとモデルXの日本向けラインナップと、主なスペックや価格を整理しておきます。

 駆動方式航続距離(EPA)0-100km/h加速最高速度価格
【MODEL S】
ロングレンジデュアルモーターAWD663km3.2秒250km/h¥10,699,000〜
PlaidトライモーターAWD628km2.1秒322km/h¥14,999,000〜
Plaid+トライモーターAWD837km<2.1秒322km/h¥16,999,000〜
【MODEL X】
ロングレンジデュアルモーターAWD580km3.9秒250km/h¥11,699,000〜
PlaidトライモーターAWD547km2.6秒262km/h¥14,999,000〜

『Plaid』が正式に発売開始

ラインナップを一見してわかる点からチェックしていきます。まず、『S』『X』ともに、正式に『Plaid(プラッド)』がローンチされたことです。価格もアナウンスされています。

駆動方式は「トライモーターAWD」、つまり3つのモーターを搭載した全輪駆動。トータルの最大出力はモデルSおよびXの Plaidで1020PS、モデルS Plaid+で1100PS、とアナウンスされています。

日本語公式サイトでは「トルクベクタリング機能を備えたトライモーターAWDプラットフォームの特徴は3つの独立したモーターです。各モーターにはカーボンスリーブローターがあり最高速度まで最高出力を維持します」と説明されています。トルクベクタリングとは、ステアリングの操作に応じて四輪のトルク配分を調整する機能のことで、モーターの数が増えたことで、より高度な制御が可能になっているであろうことが予想できます。

「カーボンスリーブローター」というのは、ブレーキのローターかと思ったのですが、説明の文脈では駆動に関わることのようです。どういうパーツなのか、引き続き調べてみますが、ご存じの方いらっしゃればぜひご教示ください。

一充電航続距離が837km!

刮目すべきなのが、モデルS Plaid+の航続距離。なんと、837kmです。USサイトを確認すると、実用に近いアメリカEPA基準で「520+mi」となっています。バッテリー容量などは公表されていませんが、おそらく130kWh程度の超大容量バッテリーに刷新されていると思われます。

ちなみに、現時点(2/4)では、日本のサイトでも航続距離はアメリカEPA基準をkmに換算した数値が紹介されています。しばらくするとWLTCに変更されて、さらにアナウンスされる距離が延びるかも知れません。

今まで、モデルS/Xにはパナソニックの「18650」と呼ばれる小径サイズの電池セルが使われていました。モデル3には、やや直径が大きな「2170」セルが使われているとされています。そして、テスラは昨年のバッテリーデイでさらにエネルギー密度やコストを改善した「4680」セルの開発を発表しています。

Q4決算報告では、バッテリーとパワートレインについて「バッテリーパックとモジュールの両方が完全に再設計」されていること、また「モデル3とモデルYのモーター技術を全体に採り入れている」ことが説明されています。推測ではありますが、ロングレンジとPlaidは従来通りの18650、もしくはモデル3などと共通の2170セルを採用。モデルS Plaid+には、新開発の4680セルが搭載されるのではないかと思われます。

0-60mph加速は2秒以下!

日本語サイトでは「2.1秒以下」とされている0-100km/h加速。もちろんとてつもない加速性能であり、USなど英語圏のサイトでは「0-60 mph < 1.99 sec」つまり、0-60マイル(約96.6km/h)加速が1.99秒以下であると紹介されています。

Q4決算報告では「1/4マイル加速(いわゆるゼロヨン)が9.3秒未満」であること。そして「今まで最速の量産車であるブガッティシロンより速い」と説明されました。ゼロヨン10秒以下とか、もうドラッグレースの世界のタイムです。価格が3億円オーバー、500台しか生産しないとされるシロンを「量産車」と呼んでいいのかはさておき、日本でも「たった」1700万円くらいで買えるモデルS Plaid+は、激安のスーパーカーといえるかも知れません。

地球上で最も優れた空力性能を実現

パワートレインを含め、Sのみに『Plaid+』グレードが設定された以外、アップデート内容はSとX、ほぼ共通です。

エクステリアデザインについては、ホイールが変わったな、という印象程度ではありますが、空力性能もかなり改善されたということで、モデルSで「0.208」、SUVのモデルXでも「0.25」というcd値が発表されています。モデルSには「地球上で最も低い空気抵抗を誇る車」、モデルXには「地球上で最も低い空気抵抗を誇るSUV」という説明が添えられています。

おそらく、下回りなどの構造も改良されているのでしょう。ポルシェタイカンやアウディe-tronも高い空力性能を誇っています。空力への有利さもまた、出っ張った部品が少なくて済むBEVのアドバンテージ。エンジン車ではなかなか実現できない領域に進化しつつある印象です。

インテリアが大幅にリフレッシュ

「え、そこまでやりますか?」と驚くのは、インテリアの刷新です。これはもう「フルモデルチェンジじゃないか!」と感じる大幅な変更、というか、今までの自動車の常識を覆すポイントがいくつも盛り込まれています。

ウインカーなどのレバーが、ない!

まず注目すべきなのが、ステアリングの周囲からウインカーなどのレバーが消え去っていることです。日本語公式サイトでは「ドライビング フォーカス〜レバーやシフトをなくして究極の運転環境へ。Model S(X)はドライブに最適な車」になると説明されています。

写真を見ると、ステアリングの左側に矢印があるので、ウインカーはこの「ボタン」で操作するのでしょう。これなら、国産車から乗り換えたとき、間違えてワイパーを動かすこともない、っていうのは些末なことですね。

レースカーのようなD型ステアリングを採用

レバーの有無以前にぱっと見で驚くのが、F1マシンのような、いわゆる「D型ステアリング」が採用されていることです。最近は市販車でも緩やかなD型を採用する車種が増えてはいますが、今回のテスラが採用したのは、まるでゲームのコントローラーかと思うほど大胆に上下をカットしています。円形ステアリングの場合、メーターパネルの視認性がステアリングに妨げられたりすることがありますが、これなら邪魔になりません。

とはいえ、狭くて曲がりくねった山道を走る時や、車庫入れなどで大きく据え切りする場合などの操作性はどうなんでしょう。ちょっと使いにくい局面もありそうですが、これは、実際に試乗してみないとなんとも言えません。

センターディスプレイが横型に

さらに目を引くのが、センターディスプレイが横型になっていることです。日本語車種サイトでは「17インチ シネマティック ディスプレイ〜2200×1300の解像度、高い輝度、リアルな色合い、優れた応答性と左右チルト機構を兼ね備えた、新しいセンターディスプレイ。どこにいても最高のスクリーンを楽しめます」と説明されています。

さらに、後席にもモニターを配置。「ワイヤレス コントローラーとの互換性により、どの座席からでもゲームに参加」できることがアピールされています。

スマートフォンとフレンドリー

2台のスマートフォンをワイヤレス充電できるトレイを備えている点も注目です。USBポートは「ノートパソコンにも十分な充電能力を備え」ているとのこと。

ドリンクホルダーの配置とかはさておき、今どきの次世代車にとっては情報ツールであるスマートフォンといかにフレンドリーであるかというのは、利便性を左右する大切なポイントになっていると感じます。新しいモデルS/Xのスマホトレイは、角度も工夫されていて、視認性が良さそうです。

充電性能は最大250kW

急速充電(スーパーチャージャー)の最大出力は250kWとアナウンスされました。モデルS Plaidの場合で「1回の充電で663kmの航続距離」であることと「スーパーチャージャーで15分で最大322km分まで充電」できることが記されています。つまり、電費としては6.33km/kWhで、15分で322km分ということは約50kWhが充電可能ということになるので、コンスタントな充電出力としてはおよそ200kW程度を想定した例示となっています。

予約金は1万5000円〜

アトランダムに、さらに気付いた点を列記しておきます。

●アクティブノイズキャンセリングが付いた960Wのオーディオシステムで、22個のスピーカーを搭載。

●センターディスプレイはチルト付き、後部座席ではメディア・ゲーム・空調コントロールが可能。

●モデル3と同じように、エアコンの吹き出し口がスリットに変更されている。

●後席アームレストでもスマホのワイヤレス充電が可能。

対生物兵器モードではなくなって、HEPA空気清浄システムという呼称に。

●FSDは米国サイトだと10000ドルに値上げされているが、日本では871000円。サブスクリプションの言及もなし。日本では完全自動運転はまだ対象外、ということかも知れません。

●PlaidとPlaid+は、インテリアのカーボンファイバーデコールもかっこいい。

●そういえば、モデルSの7席はなくなっているみたい。

ほかにもいろいろあるでしょうが、長くなるのでまずはこのくらいで。

新しいモデルS/X。アメリカではモデルSロングレンジとプラッドが3月から、Plaid+は2021年後半から、モデルXのロングレンジとPlaidが4月からのデリバリーとされていますが、日本ではいずれも「2022年」の納車予定となっています。

すでに日本でも予約は受け付けていて、全額払い戻し可能な予約金は1万5000円ポッキリ(モデルS Plaid+のみ12万6000円)です。

うーん、ポルシェタイカンにするか、モデルS Plaid+にするかって、悩んでみたいものですね。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. テスラの株お持っていながら、テスラの車🚙が無いから、早くテスラ車がほしい。

  2. 一般公道では路面の摩擦係数は1.2μを超えることないから、どんなハイグリップタイヤで何千馬力あろうが、物理的に0-100km/h加速は2.36秒が限界になるんで、アップデートで2秒切るなんてのは、ドラッグレース場で専用タイヤ履かなきゃ無理ですw

    1. とおりすがり 様、コメントありがとうございます。実際にちょっと計算してみるとμは1.4くらいないと2秒切れなさそうですね(笑)

  3. 新しいモデルSに搭載されているAMDのチップはFSD用なのか、完全にゲーム用なのかご存知ですか?

    1. モデル 様、コメントありがとうございます。テスラは、FSDを始めとするオートパイロットと、ナビやゲームをするインフォテイメントは別システムになっており、ゲームはインフォテイメントになります。AMDと噂されているのはインフォテイメントだと思います。ハイパフォーマンスなゲームをするために、よりゲームコンソールやPCに近いハイパワーなチップが要求されているのだと思います。 ここに少し詳しい情報がありました(未検証)。
      https://videocardz.com/newz/amd-navi-23-gpu-block-diagram-for-tesla-2021-infotainment-system-has-been-leaked

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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