テスラ『メガパック』を使ったオーストラリアの巨大蓄電施設で火災が発生

オーストラリア南東部のビクトリア州にある、テスラの大容量定置型蓄電池『メガパック』を使った巨大蓄電施設で火災が起きました。幸い怪我人などはなく、原因はまだ調査中です。『CleanTechnica』から全文翻訳記事でお届けします。

テスラの大容量バッテリー『メガパック』を使ったオーストラリアの巨大蓄電施設で火災が発生

元記事:Tesla Megapack Battery Caught On Fire During Neoen’s Testing, No One Injured by Johnna Crider on 『CleanTechnica
※アイキャッチ画像はテスラのメガパック。テスラ公式サイトより。

バッテリーのテスト中に火災が発生

昨日(7月30日)、オーストラリアのビクトリア州ムーラブールに新しくできたビクトリアン・ビッグ・バッテリーで、テスラのメガパックに初めて火災が起きました。メルボルンの『ニュース7』が燃えさかるメガパックバッテリーの画像をTwitterでシェアしています。巨大バッテリーユニットで影響を受けたのは2つだけだったようです。

火災の原因は分かっていませんが、テスラと『Neoen』(フランスを拠点とする再生可能エネルギー発電会社)は救急サービスと状況を治めるために動いています。Renew Economyはバッテリーのテストが始まったばかりだったと指摘しており、Neoenオーストラリア代表取締役のLouis de Sambucy氏は「今日の10時~10時15分頃、初めてのテスト中に、ビクトリアン・ビッグ・バッテリーにあるテスラ・メガパックの1つに火災が起こったと確認が取れました。全員避難し、怪我人は出ていません。状況を治めるため、Neoenとテスラは現場で救急サービスと密接に動いています。現場とグリッドの接続を切りましたので、電気の供給に影響はありません。さらに詳細が分かりましたら共有します」と話しました。

ジーロング・アドバタイザーは消防が午前11時頃に呼ばれたと報道しています。広報は「火を封じ込め、他のバッテリーに飛び火するのを防ぐために隊員が動いています」と話しました。

また記事によると、オーストラリア国内で電力網レベルの蓄電施設においてこのような事態が起こるのは初めてだということです。

電力供給に火災の影響が出なかったのは良い知らせでした。シドニー・モーニング・ヘラルドに話した広報によると、蓄電施設の所有者、ビクトリア州電力ネットワークビジネス、その他関係機関と事態の対処に動いているとのことです。

心配なのは有毒ガス

シドニー・モーニング・ヘラルドは、火災後に有毒ガスの警報が出されたと報じています。救急サービスはべイツフォード、ベル・ポスト・ヒル、ラブリー・バンクス、ムーラブールに有毒ガスの警報を出しました。住民は屋内に留まって窓や換気扇、暖炉用煙突を閉め、ペットも屋内に移すように指示を受けました。2020年にエクソンがバトンルージュで起こした(爆発ではないと言い張った)爆発事故の際も似たような警告がありましたね…… のちに有毒ガスは出ていなかったと分かりましたが。

バッテリーは化学物質と金属でできています。今回のように稀なケースで火災が起こった場合、その影響をどうやって最小限にとどめるか、テスラとエンジニアが学ぶ良い機会となったでしょう。バッテリービジネスに携わっている他の企業もです。化学を扱う会社は火災のリスクを背負います。2018年にRiskMethodの顧客に送られた統計分析では、化学業界が最も火災や爆発の影響を受けていると報告されています。

終わりに

テスラに関する他のすべての事柄と同じく、大胆な仮説に飛びつかず、実際の火災原因が分かるまで待つ方が良いでしょう。化学産業では、悲しい事に火災がよく起こるものです。石油産業もプラントで火災が起こることで知られており、今年はメキシコ湾を火の海にし、地獄への入口を開けてしまう事態になりました。

テスラがいかに安全性にフォーカスしているかを鑑みれば、火災の原因を突き止め、将来同じことが起きないように、できる事をすべてやっているはずです。もしかしたらテスラの技術が原因ではないかもしれません。テストがされていた状況で、その詳細も分からないのです。逆に、テスラの設計に欠陥があった可能性もありますが、(そうであれば)テスラがそれを修正するであろうことは確実です。メガパックは、たった1基で何百万ドルもする商品なのです。

また、私達は新しい時代に突入しています。バッテリーに火災は起きます。ただディーゼルやガソリンよりも頻度や速度は低く、恐らくそのせいでバッテリー火災が起こると必ず世界中のヘッドラインに取り上げられるのです。一方で車やガソリンスタンドの爆発は、毎回は扱われません。みんな、後者には慣れてしまっており、前者は小説に感じられるのです。

数日前の満月の夜、自宅の電気が落ちました。空はクリアで、嵐ではありませんでした。後に分かったのは近くのガソリンスタンドで火花が散り、結果電力網が落ちたということでした。これは地元のニュースにも取り上げられませんでした。よくありすぎるからです。

(翻訳・文/杉田 明子)

【編集部注】ガソリンスタンドの爆発は……

記事後半、おそらくは筆者の方がテスラの理念などに共感していて、明確な原因がわかるまで大騒ぎしないでほしいという思いを伝えたかったのでしょう。ガソリンスタンドの爆発や、自宅の停電が「よくあること」と表現しています。

でも、少なくとも日本ではそうそうガソリンスタンドは爆発しないし、もしガソリンスタンドで爆発火災が起きたら結構大きなニュースになるでしょう。都市での停電も天災でもなければそうそう起こらないですし、「よくありすぎる」ことでもないよな、という点は少し気になりました。

「原因究明と、この事故を教訓として対策を進めることが大切」という主旨を理解いただければ、と思います。

(編集部追記/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 北海道にもメガパックの設置が正式にリリースされましたが、安全性も含め、日本でも蓄電ビジネスが、発展する事に期待しています。
    電力会社と上手く連携してくれると良いですね。

  2. 他のメーカーの同一車線自動運転技術を使った車両の事故のニュースに比べ、テスラのオートパイロットを使った車両の事故の比率のニュースが割合多いと感じていて、このブログでは何故テスラにとって都合が悪いニュースは紹介しないのだろう?書き手読み手ともにテスラファンが多いブログなので記事が偏っているのかと、今まで疑っておりました。

    今回、ご紹介頂いた事に敬意を払うとともに、今やバイアスの掛かっていない公平なブログであると認識を改めさせて頂きます。
    今後も業界各社の良いニュース悪いニュースの御紹介を期待しております。

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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