テスラ「67万台リコール」への対応をユーザー目線で解説

2021年の大晦日、アメリカでテスラが大規模なリコールを届け出たことが日本でも大きなニュースになりました。新たなモデル3オーナーの方々など、少し不安を感じているのかも。長年のテスラオーナーで翻訳者の池田篤史氏が「どう対処すべきか」を解説します。

テスラ「67万台リコール」への対応をユーザー目線で解説

モデルSはボンネットの問題

「あなたのお車はリコールに該当するかも知れません」。年の瀬の12月30日にテスラから私の元へ1通の英文メールが届きました。

メールの内容は、大雑把に言ってしまうとこうです。

「2014~2021年式のモデルSの一部車両は、ボンネットの補助ロックの位置が悪くて、正しく機能しないかも知れません。実際にボンネットが開いて事故が起きた事例は当社では把握していませんが、無料で点検・修理するのでサービスの予約をしてください」

また、こちらがNHTSA(米国道路交通安全局)で公開されているリコールの内容です。該当の可能性があるのは約12万台。中国でも同様の理由でモデルSおよびモデル3が20万台リコールされています。このサイトには「オーナーへの書面での通知は2022年2月18日に行われる」と書かれているので、来月あたりテスラから日本語で通知が来るのかも知れません。

では、実際に写真で現物をみてみましょう。
(※これは2017年2月製造モデルです。年式によって各部の形状が異なりますが仕組みは同じです)

指で触っている部分が補助ロックです。写真では見えないですが、この下にメインロックが隠れており、それがボンネットを固定しています。万が一メインロックが外れても、補助ロックがボンネットを止めてくれるので、走行中に開いてしまうのを防げます。

この補助ロックの位置が、後ろに寄りすぎている可能性があるとのことだったので、ギリギリまでボンネットを閉めて、位置を確認してみました。

確かに結構後ろに寄っていますが、補助ロックは掛かっているようです。次に、ボンネットを開けたままで車を走らせようと、Dレンジに入れてみると、このような警告がメーターパネルと、大型タッチスクリーンに表示され、けたたましい警告音も鳴り響きました。

一応走行はできましたが、うっかり閉め忘れて発進するということはないでしょう。また、恐らくこの警告と同時に補助ロックも作動したようで、ボンネットを開けようとしてもビクともしませんでした。

最後に、自動でボンネットを開閉する社外パーツを取り付けられている方は十分ご注意ください。中国製のパーツはボンネット開放の信号線に変なノイズが乗った際に、予期せずボンネットが開くことがあるそうです。その際に補助ロックがうまく作動しないお車は大事故に繋がりかねません(日本製の某有名メーカーのものは、その辺りがしっかり対策されているそうです)。

モデル3はリヤカメラに不具合の可能性

次に、35万台が影響を受ける可能性のある、モデル3の問題を見てみましょう。こちらもNHTSAの公開情報から見てみましょう。

「2017-2020年式のモデル3は、トランクの開閉を頻繁に行うことで、バックカメラの配線が断線する可能性がある」とのことです。該当車輌は無料でハーネス交換+配線のプロテクターを設置してくれます。

こちらが2019年式の車両です。

そしてこちらが2021年式です。

見た感じ、配線の取り回しは変わっていなさそうなので、考えられるのはカメラの同軸ケーブルがより強いものに置き換えられた、もしくは電動トランク(2020年10月頃~)の採用と共に何かしら改良された、という感じでしょうか。

こちらに関してはバック中に突然カメラが消えても、一旦止まってから目視でバックを続ければ良いので大事故に発展することはなさそうですが、真後ろを子供が歩いていることも考えられるので、十分にお気をつけください。

リコールは実際、騒ぐほどのものなのか

日本では電気自動車やテスラへの注目度が高まっているためでしょう。大手メディアもテスラのリコールを大きく取り上げていました。ワイドショーなどでは、年間販売台数に匹敵する大量リコールという論調で、テスラ車の信頼性にまで言及していたのも気になります。はたして、今回のリコールはどのくらい大変なことなのか、少し冷静に考えてみます。

リコールはメーカーに関わらず頻繁に公表されています。2016年には日産もアメリカでボンネットの不具合で約180万台をリコールしていますし、日本のニュースであまり目にすることはありませんが、トヨタやホンダも大規模なリコールを出しています。

では、世の中は欠陥車だらけで、どのメーカーも信用ならないのかというと、そうではありません。重要なのは、どのレベルの不具合なのかということです。前述の日産の場合、メインロックが錆びて故障するため、そのロックを使っている車は全て対策部品に交換しなくてはなりません。さらに、ボンネット開放レバーが給油口レバーの隣にあるため、ガソリンスタンドで気づかずボンネットを開けてしまい、そのまま走り出す可能性もあります。

Nissan Owner Channel Youtubeより引用。

一方で、例えば工場のラインで定期的にツールを較正(測定値の調整など)しなくてはいけないのに、較正の日に偶然作業員が風邪で休んで、規定より1日長くツールを使ってしまったとします。この場合、工場長は「国交省やメディアに叩かれるぐらいなら特別損失を計上して該当ロットをリコールしよう」という判断に至ります。生産されたパーツは使用上、問題ないと思われますが、性能が保証できないため廃棄されることもあります。

このように、実際に事故に発展するケースから、ほぼ間違いなく何の問題も起きないケースまで様々です。テスラの今回のリコールは冒頭のレターにも書かれているとおり、テスラ側でまだ事故につながったケースが確認できていません。しかし様々な不幸が重なって事故に発展する前に、該当車輌をお持ちの方は点検を受けるべきです。

テスラオーナー向け情報/リコール点検の受け方

現在、テスラの整備拠点は非常に限られており、予約を入れても入庫日が相当先になる可能性があります。もちろん、テスラも昨年、川崎や板橋サービスセンターを立ち上げ、販売台数に合わせて今年も拠点を増強すると見られます。一部のオートバックス店舗でもテスラの点検が可能になったため、これらを活用するのも手です。

もう一つの可能性として、モバイルサービスがあります。オーナーの自宅や勤務先まで出張していただき、そこで作業するのが一般的ですが、実は最近ではオーナー主催のオフ会にモバイルサービスをお呼びして、そこで一気に対応する事例が増え始めています。モバイルの整備士も1軒ずつお客様を訪問しなくても効率よく作業ができるし、オーナーも休日にディーラーに車を預けなくても、友人と楽しく時間を過ごしているうちに点検が済みます。

このように、メーカーもオーナーも柔軟な発想で苦境を乗り越えていこうとするのはとても先進的で、重整備をほとんど必要としないEVだから実現したのだと思います。テスラの後を追うEVスタートアップのRivianやLucidもモバイルサービスを導入しており、オーナーの連帯感も強いため、もしかしたら次世代のスタンダードに発展するかも知れませんね。

(文/池田 篤史)
※冒頭写真はギガファクトリーテキサスの車体製造ライン(テスラ決算資料より引用)

この記事のコメント(新着順)9件

  1. 正月のニュース特番でこの問題を大きく取り上げていましたね。
    その時コメンテーターの方々は「アメリカではEV 開発促進のために安全性が軽視されている。逆にトヨタのようにEV普及に慎重な会社は酷いネガティブキャンペーンに遭っている」と言っていました。EVの問題ではないしトヨタを擁護する話でもないと思いますが・・
    日本の検査不正でもトヨタ以外は全部やっていたという風に語られていますが、実はトヨタもやっていたことが後から分かりました。
    「日本は危ないんじゃないか」というのがニュースに対する反応を見た感想です。

    このサイトでもっと早く取り上げられても良かった気もします。

    1. hatusetudenn様、コメントありがとうございます!
      テレビ見ないので知りませんでした(汗)

      >>アメリカではEV開発促進のために安全性が軽視

      そんなことを言った人がいるんですね。もう街中での雑談レベルをテレビは放映しているのかな、、と少しだけびっくりしました。安全性という意味では、公的な格付けにより、テスラは123位を取っていますし、ポルシェやアウディのEVもやはり良い成績を残しています。

      日本においては、背の高い車両を許容することで、死亡者が増えている現状を、その方々はどう思っているのでしょうかね。日本は、速度が低いのに横転事故が多く、悲しい気持ちになります。
      リアシートベルトに最後まで抵抗したのも日本なら、サイドエアバッグも日本が最後。リアシートベルト装着警告音や、助手席エアバッグ解除は未だに無し。少し工夫すれば走行中にテレビの視聴が可能。色々な意味で、決して米国のほうが安全基準が低いとか、EVは安全でないとかは言えないように思います。

  2. フロントボンネットの問題はあり得ない!
    車の基本でしょ。
    レース仕様にした方が良いですね!

    1. デスラ様、コメントありがとうございます!

      >>フロントボンネットの問題はあり得ない

      実際、こちらはロックが2段化されていますので、2段めのみの問題であるならば、通常の使用において開いてしまうことはないのと、実際には事故等は発生していないとのことですね。
      記事の趣旨としては、燃料漏れ等のクリティカルなトラブルよりも比較の問題として軽微である、という点をご理解いただければと思います。

      https://toyota.jp/recall/
      リコールはたくさんあります。こちらはトヨタさんの非常にわかりやすいリコール説明ページですが、どういう項目でリコールされているのか、どのくらいの確率なのか、実際に発生した場合、事故や怪我の程度はどの程度か、を想像する必要があるでしょう。

  3. JDパワーで現状最下位争いしつつ大きな修理が必要な場合何週間どころか一ヶ月以上待たされる可能性が高いこと考えるとやはり庶民が気軽に買うのは厳しいメーカーですね…

    1. N様、コメントありがとうございます!

      そうですね、修理やサービスに関する点は課題で、特にサービスセンターが遠い場合はある程度の覚悟が必要だと思います。

      JDパワーのサーベイは
      https://insideevs.com/news/489178/tesla-bombs-jd-powers-dependability-study/
      確かに悪いんですが、数値的にはレクサスの2倍くらいのトラブル回数ってわけで、まあそこまで劇的にダメなわけじゃないようにも思います。完璧を求めるならもちろんダメですね。
      一方、Consumer Reportsの所有者満足度調査では、これらの故障やサービスの問題があっても、4年連続で一位なんですよね。
      https://insideevs.com/news/486130/tesla-consumer-reports-owner-satisfaction-win-2020/

  4. モデルXは問題ない様ですが後付けでフランク電動開閉装置を取付けしてあります。
    アメリカ本国から取り寄せ自分で取付しましたがどうなんでしょう、メイドインチャイナかなぁ?
    正直フランクを閉める時ものすごく大変なため導入しました、今のところ不具合は出ていません。

    実際テスラのリコール問題が出ると家族や友達だけではなく取引先の方から『テスラ67万台リコールだってよ大丈夫』と言われてしまいます。
    デカくて目立つクルマですがリコールでも目立ってしまうのは仕方がないのでしょうか。

  5. 年間販売台数に匹敵するリコールってそりゃ4車種しかない上に部品も大部分が共通化されてるんだから問題があれば全部リコールすることになるわな

    1. モデルSとX、そして3とYは「大部分が共通化」されている車なのに、XもYもリコールが出ていないから、構造由来だったり、共通パーツじゃないという可能性もありますね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

執筆した記事