トヨタ『bZ4X』で関西遠征【復路編】EVが高性能になると充電インフラがより重要になる

バッテリー残量の%表示が追加されたトヨタの電気自動車『bZ4X』で関西遠征。少し時間が経ってしまいましたが、復路編のレポートです。EVとしての性能が高まると、充電インフラへの期待がますます大きくなることを実感できました。

トヨタ『bZ4X』で関西遠征【復路編】EVが高性能になると充電インフラがより重要になる

4泊5日の関西遠征で行った充電は?

5月30日に【往路編】を公開した、アップデートモデルの『bZ4X』で関西遠征。往路では東京を出発して約230kmにある新東名浜松SA下り線で約30分間の急速充電1回で、三重県伊賀市内のホテルに到着したのは前回レポートした通り。日々押し寄せるEVニュースに翻弄されてすっかり時間が経ってしまいましたが、復路編として、4泊5日の関西取材と東京への復路における充電などをレポートしておきたいと思います。

関西遠征を行ったのは、5月20日(土)〜24日(水)の4泊5日。伊賀で一泊以降の充電は、こんな感じでした。日付ごとに説明します。

● 5月21日(日)

21日は奈良市内でEVに関する講演を依頼されていました。奈良市内にはEV充電できる手ごろな宿があまりなかったので、以前も奈良で講演した際に宿泊&充電したことがある「ルートイングランディア和蔵の宿伊賀上野城前」をチョイス。出力3kWの普通充電で、SOC20%台からの開始になったため、夜8時過ぎのチェックインから翌朝8時前の出発まで約12時間で、SOCの回復は78%まででした。

EVのバッテリーが大容量になると、今回のように宿泊先で充電しても「一晩で満充電にならない!」というケースが多くなります。ルートインチェーンでは、全国214店舗にENECHANGEの6kW充電器を導入することを発表しています。早くからEV充電設備を導入したルートインチェーンのホテルにはEVで遠距離移動する際に好んで泊まってきましたが、今後、6kW充電器の導入で、EV旅にとってますます頼もしい宿泊施設になってくれることを期待します。

念のための情報を付記しておくと。ホテルで充電開始しようとしたところ、最初うまく充電が始まらず……。まさかと思って確認すると充電スケジュールが設定されていました。タイマーやスケジュールを設定したままだと、その他の時間に充電器に繋いでも充電がスタートしないのでご注意ください。あと、bZ4Xくらいの高級車なら「GPSを活用して拠点ガレージ以外ではタイマーをキャンセルする(もしくはアラートを出す)」くらいの優しい小技を搭載してくれると素敵です。

奈良での講演を終えた後は、大阪市内(ミナミ)のビジネスホテルで3泊しました。

伊賀〜奈良〜ミナミの移動でSOCは48%に。翌日は堺市内のイオンモールで「放電」の取材(関連記事)をする予定になっていたので、泊まるホテルに近いメルセデス・ベンツ本町の90kW器で充電。30分で26.1kWh充電できて、SOCは87%に回復しました。

ちなみに、EV充電ENECHANGEアプリで検索しても、大阪市内のトヨタディーラーに急速充電器は見つかりません。また、日産ディーラーにも50kW以下はたくさんあったけど90kW器はありませんでした。なんというか、「さすがベンツ」です。

最大150kWでの急速充電性能を備えたbZ4Xを発売したトヨタが、今後、自社ディーラー網の充電インフラをどうしていくのか。先日の「アルファード/ヴェルファイアのPHEVモデルが急速充電に対応」という記事でも懸念と提言を提示しましたが、トヨタは早急にビジョンや具体的な計画を示すべきでしょう。

● 5月22日(月)

この日は堺市内のイオンモールで放電取材。時間に余裕をもってミナミのホテルを出発したので、道すがらの日産ディーラーで注ぎ足し充電を行いました。SOCは90%超え。放電を終えてミナミのホテル(近くのコインパーキング)に戻ってもSOCはまだ70%以上。翌日の取材移動を含めて充電の必要はありません。

● 5月23日(火)

23日は、大阪府北部の箕面市にあるビーライト小野社長へのインタビュー(この記事もまだ書き上げられずに抱えたままです……)。ミナミから箕面市の取材先までは片道20kmちょっとなので、バッテリーは余裕です。

取材終わりで30年振りくらいに箕面大滝を訪れて、名物「もみじの天ぷら」をいただきました。

17時ごろ、ミナミに戻ったSOCは62%。翌日は最終日で、京都で取材を経て東京へ戻るので、できれば満充電にしておきたいところです。EV充電ENECHANGEアプリで検索すると、ホテル近くのタイムズ(コインパーキング)に普通充電器がありました。専用サイトでの会員登録などが必要ですが、ありがたい。すでにスケジュール設定はキャンセルしてあったので、スムーズに充電開始できました。

● 5月24日(水)

遠征最終日は、京都市が開催する集合住宅向けEV充電設備設置の説明会を取材して、東京へ戻ります。

タイムズの充電器は出力3kWだったけど、SOC60%程度から15時間以上駐車&充電していたので、朝8時の出発時には余裕で100%満充電になっていました。

今回宿泊したホテルはミナミ(アメリカ村)のど真ん中にあり、ホテル専用の駐車場はありませんでした。こうした都市部のコインパーキングに、EV用充電器を設置してくれるのは本当にありがたいです。

EVsmartブログの運営会社であるENECHANGEをはじめ充電サービス企業には、EVユーザーが使いやすい場所、実際に使いたくなる場所への設置を進めてほしい! と改めて希望しておきます。

私は兵庫県出身で、京都や奈良へは小学校の修学旅行でも行ったけど、実は、まだ金閣寺に行ったことがありませんでした。京都市の説明会は午後だったので、午前中は早めに京都に到着して金閣寺と石庭で有名な龍安寺(こっちも行ったことなかった)を見学。

SOCは80%くらいあったけど、金閣寺観光を終えてもまだ時間に余裕があったので復路に備えて京都府庁の急速充電器を利用しました。bZ4Xの充電口は左前にあってケーブルが届かないので、駐車枠を無視した変則的な停め方をするしかありませんでした。

最大30kWの中速充電器ですけど、まあ時間つぶしには有効です。20分ほどで95%となり、ランチを食べてちょうどいいくらいの時間になったので充電終了。

京都市の説明会(関連記事)取材を終えて、京都〜東京の復路では、新東名浜松SA上り線にピットイン。SOCはまだ32%残っていましたが、このまま駿河湾沼津を目指すのはややリスキー。何かの事情がない限り、前後のSAPAにある50kW器や口数の少ない90kW器を選択する気にはなれないので、高出力複数台設置のお手本のような浜松SAを選ぶ機会が増えますね。

90kWブーストモード器30分でSOC78%まで回復。

SOC13%で海老名SA上り線に到着。自宅まではぎりぎり帰り着けるかなという感じでしたが、翌日、トヨタにクルマを返却するときに電池があまり減ったままなのはカッコ悪いし、0%に近い状態からだと私の自宅コンセントで一晩充電しても50%ほどしか回復しないので、トイレ休憩がてらの充電です。

と、思ったら……。EV充電用&待機用区画にトラックがアイドリングしながら停まってました。

海老名SA上り線は、この2台の先、ガソリンスタンドの手前にもう1台の充電器があるのですが、そちらの区画にも別のトラックが停まってました。私はなんとか縦列駐車のようにして90kW器の充電区画に入れたのですが、直後、もう1台別のリーフがやってきて。先の充電区画にもトラックが停まっているのを見て呆然とされていたので、NEXCO中日本お客様センター「0120-922-229」に連絡。ほどなくパトカーがやってきて、トラックに移動を促してくれました。

ことに、東名や新東名における夜間のトラック無法地帯問題。2020年に『東名や新東名、深夜の高速道路でトラックのマナー違反が電気自動車ドライブにも悩ましい件』と題する記事にしたこともありますが。充電インフラ整備とはまた別ながら、深刻な問題であることを痛感します。

【追記(2023.8.25)】
コメントでSOCと合わせて距離を知りたいというご指摘をいただきました。たしかに長距離一気走りした京都〜東京は、充電スポット毎の区間距離があったほうがわかりやすいと思うので追記しておきます。

走行区間距離SOC推移推定消費電力推定電費
京都市内→浜松SA上り線約220km92%→32%(60%)38.4kWh約5.73km/kWh
浜松SA上り線→海老名SA約192km78%→13%(65%)41.6kWh約4.62km/kWh
海老名SA上り線→自宅約40km69%→59%(10%)6.4kWh約6.25km/kWh

bZ4Xのバッテリー容量はNET値の64kWhで計算しています。やはり、120km/h区間が多い浜松-海老名間は、かなり電費が落ちますね。
(追記、以上)

トヨタのEVがさらに魅力的になるために

バッテリー容量64kWh(NET値 ※総容量は71.4kWh)という大容量リチウムイオン電池を搭載したbZ4X。5日間で1000km以上を移動した充電結果を並べると「いっぱい充電してるなぁ」と感じるかも知れませんが、使い勝手の実感としては「もう充電回数や一充電航続距離を恐るるに足らず」です。

スムーズにEVを活用するためのポイントとしては、今回、大阪市内のメルセデス・ベンツディーラーの90kW器を利用させていただいたように、「充電できる時に効率よく充電しておくのが吉」ってことくらいでしょうか。

ただし、繰り返しになりますが、bZ4XはトヨタのEVなので、トヨタとして「EVユーザーの利便性を高める充電インフラをどうするか」という課題を解決するためのビジョンを示すことは重要です。

一方で、往路編でも書いたように、メーターにSOC表示が追加されただけで、bZ4Xはまったく別の、出来のいい電気自動車に生まれ変わった印象です。専用アプリがあれば、充電中の出力確認ができるなど、さらにユーザーフレンドリーにEVの魅力を堪能できる(今回はアプリは利用しなかったので推測ですが)はずです。

SOCが表示されないという根本的な不満が解消したおかげで「ACCを設定していて御殿場あたりの上りコーナーへ突っ込む時には自動で速度調整してくれる」といった、先進運転支援機能のスムーズな使い心地や出来の良さに気が付くこともできました。

やればできる、ですね。

とはいえ、車両価格にして600万円オーバー&リースのみであるbZ4Xだけでは、日本におけるEV普及の様相を動かすことはできません。

ボルボがEX30を投入するように、BYDがDOLPHINを繰り出してきたように。次はいよいよ、トヨタが本気になった大衆車EVを世界に問うべき時期になってきていると感じます。バッテリー容量は50kWh以下でいいので、300万円以下で買えるヤリスEVとか登場すれば、日産サクラもびっくりの支持を集めるのではないかと思います。

頑張れトヨタ、頑張れニッポン、です。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 大型トラックで仕事してますが、この手のドライバーは困ったものです。
    国の法律で止まらないといけない、でも止まる場所はない、でも止まらないとデジタルタコグラフで法律違反したことが記録され給料を減額されたりする・・・(法定休憩時間になると止まらないと延々と「休憩してください」という自動音声が流れ続けるウザ仕様なトラックもあります)。というジレンマに陥るので、気持ちは分かるんですが、やめてもらいたいですね。
    駐車枠争いでドライバー同士の喧嘩もちょいちょい起きてます。
    更にこれ、逆バージョンもありまして、充電待ちのEVやPHEVが大型枠を専有して休憩できない事がちょくちょくあります・・・。
    今回のお盆期間はかなり酷かったです、大型枠に停めといて横で休憩してる冷凍車のドライバーに「うるさいからエンジンを切れ」(エンジンを切れば冷凍機が止まって中の積荷が全部駄目になるので切れない)とクレームをつけて喧嘩になってるトラックドライバーとEVオーナーも見かけました・・・。
    EVはアイドリングがなくて静かな上、冷凍トラックはエンジンに加えて冷凍機が稼働する轟音も加わるので余計に気になるのでしょうが・・・それはちょっと。
    お互いにマナーを守って気持ちよく利用したいですね。
    ネクスコさんそのために出来る限りの設備投資をお願いしたいですね。

    1. dara さま、コメントありがとうございます。

      >お互いにマナーを守って気持ちよく利用したい

      本当に、その通りですね。
      また、それぞれドライバーの心がけだけではどうにもならない問題でもあると思うので、充電インフラ整備とともに、大型車休憩スペースの確保についても、NEXCOや国交省などに対策を急いでほしいところです。

      深夜の新東名などでは、インターチェンジ合流の加速車線にまでトラックが列をなして停まっているようなケースも散見するし、このままじゃ危ない、ですよね。。。

  2. bzxには、走行距離計が付いてますよね
    soc%には距離メーターの数字を添えてほしいものです
    あまりにも感傷的なレポートやね

    1. evファン さま、コメントありがとうございます。

      今回レポートの主題が関西遠征で感じた「充電インフラの課題」だったので、あまりに細か過ぎる充電レポートにならぬよう、だったのですが。

      たしかに、最終日の京都〜東京は区間距離があったほうが理解しやすいですね。
      追記しておきます。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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