価格は実質400万円台でお買い得!
2023年8月24日、ボルボ・カー・ジャパンがコンパクトSUV『EX30』の日本発売を発表しました。EV専用に開発されたボルボのEVならではの魅力を満載。車両本体価格は559万円(税込)で、プレミアムブランドの新型BEVとして「お買い得」です。
特徴をおさらいしていきましょう。EX30については、今年6月にイタリアで行われたワールドプレミアや、その直後に東京で行われた1日限りの実車公開(欧州仕様)をお伝えしてきましたが、いよいよ日本仕様車が正式に発表されました。右ハンドルで、充電口はCHAdeMO(急速充電)+J1772(普通充電)。もちろん、インフォテインメントシステムも日本語に対応しています。主要諸元は欧州仕様と同じです。
EX30はボルボ史上最小・最速を謳うコンパクトSUVです。全長4235mm、全幅1835mm、全高1550mm。よくある立体駐車場のパレットに収まるサイズ。バッテリー容量は69kWh、モーターの最高出力は200kW/272ps。後続距離は480km(欧州基準のWLTP)。ボルボブランドということもありますし、ユーザーへのアピール度は高そうです。
日本ではまず、NMCバッテリー搭載のリアシングルモーター・エクステンデッドレンジのモデルを販売します。価格は559万円(税込)。CEV補助金や各自治体の補助金などを考えれば、実質400万円台半ばですね。11月中旬に受注を開始して、年内のデリバリー開始を目指すそうです。
また、月額9万5000円のサブスクリブション(300台限定)が提供されることも発表されました。任意保険や諸費用が含まれていて、契約期間は最長24か月。EVを試してみたいという人にはいいかもしれません。サブスクは通常販売に先行して10月2日から受付がスタートします。
発表会でも注目度の高さが印象的でした
プレス発表会が開かれたのは東京・南青山の「Volvo Studio Tokyo」。EVに特化した体験型のブランドスペースを訪ねると、布をかけられた2台のEX30が準備されていました。ボルボ・カー・ジャパンはトップ交代を発表したばかり。中国全体を統括する販社の代表に就いたマーティン・パーソン前社長が最初に舞台に上がり、新社長の不動奈緒美さんを呼んでバトンタッチを演出。にこやかに舞台に上がった不動さんは車のコンパクトさを紹介しつつ「まるで日本のために開発されたEVだと感じています。日本にベストフィットな車。ワールドプレミアから2ヶ月でお披露目できるのがうれしい」と挨拶しました。
ジャーン、とアンベールされた日本仕様のEX30は、クラウドブルーの車体でした。自然をイメージしているという微妙な色合いで、光線の具合によっては白に見えたりして、カメラマン泣かせです。でもいい色。会場にはクリスタルホワイトの欧州仕様車も並べられていました。車体色は5色。内装は4種類の組み合わせがあると紹介されていましたが、配布資料によると日本仕様はブリーズとミストという設定のようです。
ボルボの戦略モデルであるEX30というクルマの特徴について解説してくれたのは、続いて舞台に登ったフランチェスコ・スペチアーレさん。本国でEX30コマーシャル部門の責任者を務めているそうです。
強調していたのは環境負荷軽減。ボルボ史上最小・最速であると同時に、史上最小のカーボンフットプリントを実現しているそうです。C40/XC40 Rechargeと比べて25%少なくできたとのこと。リサイクル素材の利用率も過去最多で、アルミニウムの25%、スチールとプラスチックの17%がリサイクル素材だそうです。2040年に企業グルーブとしてクライメート・ニュートラルを実現することを宣言しているボルボの本気度を示す新型車であることが、よく伝わってきました。
コストパフォーマンス高く「ボルボの新しいEV」を具現化
さらにボルボ・カーズでインテリアデザイン部門の責任者を務めるリサ・リーブスさんも登壇。EX30の特徴的なインテリアについて説明してくれました。6月の実車公開にお邪魔した時は基本的に外観のみ、インテリアは撮影禁止だったので、かなり注目していましたが、ほんとうに独特です。じっくり見ていきましょう。
まずは、眼前にはハンドルだけというスッキリ感。テスラ モデル3やモデルYのユーザーにはおなじみかもしれませんが、運転席のメーター類がなくなって、12.3インチのセンターディスプレーのみ。かなり大胆なデザインであることは間違いありません。インフォテイメントシステムはGoogle搭載で5Gにも対応とのこと。少し前に試乗したC40 Rechargeのシステムは使い勝手が抜群だった(関連記事)ので、これも期待できそうです。
ドア内側のシンプルさも際立っています。ドアオープナー以外何もありません。窓の開け閉めやミラーの調整はどこでやるんでしょう、と探してみたらボタンをセンタートンネル部に発見しました。ハンドル部の上下左右ボタンとペアで使うそうです。
ドアにはオーディオのスピーカーすらありません。ダッシュボード上を端から端まで覆っているのが「サウンドバー」という新しいオーディオシステムです。これのおかげでドア部分からスピーカーを無くすことができたそうです。集中化は徹底しています。発表会に続いて不動社長やリサさん、フランチェスコさんたちにグループインタビューをする時間もいただいて、この集中化とシンメトリーのデザインがじつに理にかなったことなのだと、気づかせてもらいました。
「プライスを下げて新しい顧客層にアピールできるようにデザインと設計をしています。スマートで収納スペースも増えますし、工程や部品点数も減る。二重の効果があるんですよ」とフランチェスコさん。なるほど、コスト削減にもつながるんですね。中心部に集中化することで配線など電装品が減る。ドアオープナーも左右が同じものだそうです。
ただ、安っぽくならないのがさすがボルボ。詳しくは聞きませんでしたが、実際にはリサイクル品の方がコストアップする素材もあるはず。エコロジカル、エシカルといったテーマをラグジュアリー感とうまくシンクロさせるのは、北欧デザインの真骨頂。これを嫌いだという人はあまりいないんじゃないでしょうか。ヘラジカのモチーフが隠れた場所にさりげなく配置されているのも、オシャレな趣向です。
安全性の向上についても説明がありました。ボルボは安全機能向上の取り組みを続けていて、EX30では「レーンチェンジ・アシスト」「ドア・オープニング・アラート」「レーンオフセット・アシスト(トラック)」などが新機能として採用されているそうです。聞きなれないトラックのレーンオフセットが気になって聞いてみたら、走っていて隣に大型トラックが来たとき、車線の範囲内で少し距離を空けてくれるのだとか。クルマはどんどん賢くなりますね。
なお、新情報として特記しておきたいのは、欧州でラインアップされているLFPバッテリーのシングルモーター・スタンダードレンジと、ツインモーターを採用したAWDのパフォーマンスも、来年日本導入が計画されていることです。スタンダードレンジとエクステンデッドレンジでは100万円近い差があります。つまり日本に導入されれば、補助金込みの実売価格では300万円台のEVになる可能性も。AWDは逆に高いですが、積雪地域やハイパワー好みなどニーズはありそうです。
ちなみに、急速充電は「最大153kW」に対応とのこと。数値が中途半端になっている謎は現在確認中なので、回答をいただけ次第、追って紹介したいと思います。
ボルボが長年取り組んできた「安全と環境」という企業精神を、じつに現代的にリーズナブルな価格で具現化したEX30。年内2000台の受注を見込んでいるそうですが、爆発的なヒット車種になる予感がします。
EX30 | Ultra Single Motor Extended Range |
---|---|
全長×全幅×全高 | 4,235×1,835×1,550(mm) |
ホイールベース | 2.650mm |
最低地上高 | 175mm |
車両重量 | 1,790kg |
車両総重量 | 2,065kg |
最小回転半径 | 5.4m |
定員 | 5名 |
駆動方式 | 後輪駆動 |
モーター | 永久磁石同期電動機 |
最高出力 | 200kW/6,500-8,000rpm |
最大トルク | 343Nm/0-4,500rpm |
一充電航続距離(欧州WLTP) | 480km |
EPA推計値 | 約428km |
タイヤサイズ | 245/45R19 |
駆動用バッテリー | |
種類/セル数 | リチウムイオンバッテリー(NMC)/107 |
総電力量 | 69kWh |
【編集部追記】
「急速充電は最大153kW」という中途半端な数値になっているなど、EX30の充電性能について、広報ご担当部署に確認して回答をいただきました。
現状、EX30の充電性能は、急速充電(DC)が最大153kW、普通充電(AC)は11kWとされていますが、これは欧州仕様の参考値とのこと。ボルボでは現在、CHAdeMO急速充電器での動作確認などを行っているところで、急速、普通ともに正式な対応出力などは11月の発売までにお知らせする、ということでした。(2023年8月26日)
取材・文/篠原 知存