電気自動車の仕組み

電気自動車の仕組みを簡単に解説します。実は中身も簡単なので説明も簡単。エンジン車にあるものがなかったり、ないものがあったりと面白いです。

目次

  1. 電気自動車はどうやって走る?
  2. 電気自動車の仕組み
  3. 電気自動車で不要になる部品

電気自動車はどうやって走る?

そんなの電池とモーターで走るに決まっていますよね!

モデルSのシャーシ
モデルSのシャーシ
エンジン、ガソリンタンクはありません。大きな電池を搭載して、その電池を自宅や会社、高速道路などにある急速充電スポットや、モール・ホテル・旅館などにある充電スポットで充電します。どのくらい大きな電池かというと、例えば85kWhのバッテリーを搭載しているテスラモデルSの場合、一般家庭が1か月で消費する電力量は300kWh程度ですから、約8.5日分の電気を蓄えられるだけの量、ということになります。そして、バッテリーはこの写真のように車体下部全体を占めており、シャーシと一体化されています。これよりバッテリーの高さを厚くしてしまうと車に乗り込むときに大変になります。すなわち、このバッテリーのサイズは、この大きさの車(ちょうど、メルセデスのSクラスセダンくらいの大きさの車体です)では「限界」ということになります。これ以上バッテリーを搭載するには、フロントかリアのトランクスペースに積むという選択もできますが、重量のバランスが悪くなりますので設計は難しくなります。このバッテリー、約550kgあると言われており、車重が2.1tですのでバッテリーは26%を占めています。

モデルS モーターのレイアウト
モデルS モーターのレイアウト
モーターは写真で赤く表示されている部分です。この写真は四輪駆動の場合ですが、後輪駆動の場合には片側(写真では右側のモーター)だけになります。エンジンと比べると圧倒的に小さく、これだけでポルシェ911と同じくらいの加速が得られるのです。

走行するときは電気自動車もアクセルを踏みます。すると、バッテリーから、アクセルを踏んだ量に応じた電気がモーターに行って車は走行します。アクセルを離すと、タイヤの回転に伴ってモーターが強制的に回され、モーターは発電機になりますので、発電した電気をまた電池に戻して充電します。このように、電気自動車は加速・減速するたびにバッテリーから電気を取り出したり、逆に充電したりして走行します。もちろん、電気の出し入れに対して総合的に約30-40%くらいのロスが発生しますので、永久に走行できるわけではありません。

ほとんどの電気自動車にはリチウムイオン電池という電池が使われています。これはスマホなどに使用されているものと同じ種類のもので、電池としては大変性能のよいものなのですが、自動車用に使うと限界が見えてきます。具体的には「容積密度」と「充電速度」が大きな課題。容積密度というのは、電池が場所を取るということです。先ほどのモデルSの例でも、車体下部全体に搭載して85kWh、走行可能距離にして約400kmとなり、現存の技術で800km走行できる車を作ることはまだ不可能です。

充電速度については、リチウムイオン電池の形式でLTOタイプである東芝のSCiBでは、6分間で80%まで充電できますが、テスラが使っているNCAや日産が使っているNMCタイプでは、30-40分で80%となります。
NCAやNMCはLTOに比べ上記の容積密度が高く、同じサイズの車により多くの容量を詰め込めるため、走行可能距離が伸ばせるのですが、充電速度をこれ以上上げることは現時点では難しいのです。これを解決するため、移動中に高速に充電するための急速充電インフラに加え、自宅や会社などの常置場所での充電(自宅充電)、ホテルや旅館など行き先での充電(目的地充電)インフラが必要となり、現在急ピッチで整備が進められています。

電気自動車 充電スタンド急速充電と、自宅やホテル・旅館等での普通充電は、方式が異なります。バッテリーは直流(プラスとマイナスがある)で、モーターは(究極的には:直流モーターもありますが、直流モーターは内部にブラシがあり、プラスマイナスを切り替えているので)交流で動きます。
急速充電器は、もちろん電力会社の電力網に接続されているわけですが、電力会社は交流しか供給しないので、その交流を充電器内で直流に変換し、バッテリーに直結して充電します。
普通充電器は、構造を簡単に(=コストダウン)するために、交流のまま車に電気を供給します。ということは、バッテリーに充電するためには車内で交流を直流に変換する必要があり、そのために車載充電器が搭載されています。
もう一つ、車が減速するときにはモーターからバッテリーに電気が戻ってきますが(回生といいます)、回生時もやはり交流から直流に変換する必要があります。急速充電時、バッテリーが大きいほうが同じ時間でたくさんの電気を充電できるわけですが、回生時も同じで、バッテリーが大きいと、長い下り坂などでも無駄なく電力を回収できます。

電気自動車が走るのは電池から電気がモーターに行って走るだけ、と思いきや、案外複雑な仕組みですね。

電気自動車の仕組み

では電気自動車のブロック図を見てみましょう。電気の元から見ていきます。

電気自動車のブロック図
電気自動車のブロック図
まず中央部に駆動用バッテリーがあります。この中は複数のモジュールに分かれており、モジュールの中にはセルという最小単位の電池が入っています。リーフでは24モジュール、192セル(1モジュール内に8セル)構成、モデルSでは16モジュール、96グループ(1モジュール内に6グループ)、7104セル(1グループ内に74セル)という構成です。バッテリーにはバッテリーマネジメントユニットが接続されており、バッテリーを管理しています。また駆動用バッテリー内にはバッテリーを切り離すコンタクターが内蔵されており、コンピューターの指示でいつでも駆動用バッテリーを切り離すことが可能です。電気自動車に乗り込むと「カチャ」という音が聞こえますが、これがコンタクターの作動音で、エンジン車であればこの音がエンジンのかかる「ブォーン」に相当します。

駆動用バッテリーから出た400Vの電気は、高電圧ジャンクションボックスに入ります。ここから、高圧の電気はモーターに、、おっと、モーターへはインバーターを介して接続されます。インバーターには二つの役割があり、バッテリーからの直流をアクセル開度に応じて適切な周波数の交流に変換してモーターに流すこと、そして減速時にモーターで発電した交流を直流に変換して駆動用バッテリーに返して充電することです。
モーターはトランスミッションもしくはギアを介して車軸を駆動します。現存するほとんどの電気自動車は、トランスミッションは1速固定となっており、シフトやCVTの概念はありません。モーターはトルクバンドが非常に広く、毎分0回転から18000回転(18,000rpm)まで安定したトルクを供給できます。

Automotive battery isolated電気自動車にも12Vバッテリーは搭載されています。ヘッドライトやカーオーディオ、カーエアコン、車載のコンピューター等は12Vで動作する部品が多く、常時駆動用バッテリーのコンタクターを開きっ放しにして12Vを作るよりも、12Vバッテリーを持ったほうが効率が良いようです。また事故などの緊急時にはFMVSS 305の規定によりコンタクターを開いて高電圧回路を遮断しなければなりませんので、12Vバッテリーがないと、事故の瞬間にすべての電装品が使えなくなり、ドアも窓も開かないしハザードも点灯できなくなってしまいます。12VバッテリーはDC/DCコンバーターという、直流の電圧だけを変換する機器を介して、自動的に駆動用バッテリーから充電されています。このDC/DCコンバーターは停車中も作動しますので、電気自動車では12Vバッテリーは上がりにくい構造になっています。

充電周りは急速充電と普通充電があります。急速充電中に急速充電器コネクターから来る400Vの直流は、直接高電圧ジャンクションボックスを介して駆動用バッテリーを充電します。一方、普通充電器コネクターは交流ですので、いったん車載充電器を介して直流に変換してから、駆動用バッテリーに充電します。回生時は、インバーターで交流を直流に変換して充電するのですが、普通充電時には車載充電器なんですね。理由はおそらく車載充電器のほうが効率が高いが、回生ブレーキのように急な大電流にはインバーターのほうが向いているからだと思います。ちなみにモデルSの回生では最大60kWの電力でバッテリーを充電できます。

電気自動車で不要になる部品

ここまでお読みいただいた方は、「何か電気自動車ってシンプル!」と思われた方もいらっしゃると思います。その通り、電気自動車は、電気自動車に固有で本当に主要な部品は先ほどのブロック図には12個しかありませんでした。表を使って電気自動車とエンジン車を比較してみたいと思います。タイヤやブレーキなど明らかに共通の部品と思われるもの・タイミングベルトなどの長期交換部品は入れていません。

部品名電気自動車エンジン車ハイブリッド車
エンジン×
燃料タンク×
燃料ポンプ×
インジェクター×
点火プラグ×○消耗品○消耗品
触媒・マフラー×
12Vバッテリー○消耗品 ○消耗品○消耗品
セルモーター×
エンジンオイル×○消耗品○消耗品
オイルポンプ×
オイルフィルター×○消耗品○消耗品
AT/MT/CVT×
ATF×○消耗品○消耗品
ラジエーター×
ラジエーター液×○消耗品○消耗品
エアフィルター○消耗品 ○消耗品○消耗品
オルタネーター×
モーター ×
インバーター×
高電圧ジャンクションボックス×
駆動用バッテリー○大×○小
バッテリーヒーター・クーラー×
バッテリーマネジメントユニット×
DC/DCコンバーター××
車載充電器×

どうでしょうか。2010年の記事ですが、以下のような記述もあります。

トヨタ自動車によれば,電子化の進行などにより,現在のエンジン車の総部品点数は1台当たり10万点に増えているという。そのうち,エンジンに使われる部品の点数は「数え方によって違うが,1万~3万点ある」(同社東京技術部環境グループ長担当課長の藤田真人氏)。一方,電気自動車を駆動するモータの部品点数はわずか30~40点。モータに電流を供給するインバータは,電子部品が実装された回路基板を1と数えると50~60点にすぎない。つまり,合計しても80~100点しかない。

単にエンジンとモーターだけを比べると、電気自動車は約100分の1の数の部品が必要ということになりますね。また上の表から、電気自動車には必要な消耗品の数も少ないことが分かります。電気自動車はガソリンが要らないということはご存じでも、燃料タンクやエンジンオイル、AT/MT/CVT、ラジエーター(液も)なども要らないことはご存じなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
参考:モデルSのモーターの解説動画(英語ですが映像でも結構わかります)

モデルSのモーター
モデルSのモーター
上に挙げたような部品は、車を購入してしまえば頻繁に交換するものではありません。消耗品の中で交換頻度の高いものは、エンジンオイル(5000km走行ごとに交換、オイル代3000円/4l程度~)、オイルフィルター(1000円/個程度)くらいのものでしょうか。1年で1万キロ乗って、オイルフィルターは2回に1回交換すると仮定すると、1年間のエンジン車/ハイブリッド車の消耗品コストは実質7000円プラス工賃くらいのものですね。
上の表にない部品でも、電気自動車にすると消耗が少なくなる部品があります。それはブレーキパッドとブレーキディスク。電気自動車やPHEVには、大型の駆動用バッテリーとインバーターが搭載されていますので、アクセルを離すと回生ブレーキがかかり、ブレーキパッドを摩擦することなく車を減速できます。特に回生の強い電気自動車、BMW i3やテスラモデルSなどでは、信号で止まる際に最後の1mくらいでしかブレーキを使いません。そのため、ブレーキパッドやブレーキディスクの寿命も長くなるのです。


「電気自動車の仕組み」への5件のフィードバック

  1. ほんの10年もかからない時期に電気自動車が主流になるかと思います、車自体多くの回転部分から成り立つわけで、上手に工夫すれば無限に走行できる車が出来そうに思うのは素人でしょうか、フリーのタイヤ部分に効率的な発電機を搭載する事で、出来ないのでしょうか。

    1. カズー様、コメントありがとうございます。無限に走行するのはやはり難しいと思います。自動車が走行しているとき、エンジンやモーターで力を加えなくても、タイヤと路面の摩擦による転がり抵抗と、空気抵抗が必ず存在します。これにより、車両は次第に減速していき、最後には止まってしまいます。発電機を付けて発電する場合、その発電機はエネルギーを生み出すのですから、どこからかエネルギーを取り出さなければなりません(エネルギー保存の法則)。このエネルギーは車両が走っている、まさにその運動エネルギーから得ることになりますので、発電すればするほど車両は減速してしまいます。これを応用したのが電気自動車の回生ブレーキで、電気自動車では、減速中もほとんどブレーキパッドを使わず、発電して運動エネルギーをバッテリーに戻して貯めています。ハイブリッド車では、この回生ブレーキのところだけをうまく活用し、ガソリンの消費量を劇的に抑えることに成功しています。

  2. 電気自動車が主流になることは、間違いありません。燃料電池車に関しては、政府も車両価格や水素ステーション設置価格等々から難しいとの見解が出ているようです。
    今回の記事の通り電気自動車になりますと、従来の内燃機関と比較し簡単に車両ができますので、今は日産や三菱など国内の自動車メーカーが販売してますが、10年後にはPanasonicや日立などの電気企業製車両が登場するかもしれません。
    また、古い話で恐縮ですが駆動方法も慶応大学の清水教授が考案したエリーカで採用されていたホイルインモーター(発案はポルシェ)、フレームとバッテリー一体型等の技術が主流になるかもしれませんね。航続距離が延びる=バッテリー容量が増える⇒充電器の大容量化が加速していくでしょう。・・・・テスラのオーナーさんも安心できる時代がすぐそこに

    1. kent様、コメントありがとうございます。電気自動車について、一つだけ不安があるとすれば、今までの人類の歴史の中で、人々がそれまでとは異なる使い方を要求される商品を受け入れる際、使い方を変えないと今までより不便になる部分があるような商品は、普及に至っていないという歴史があることです。化学変化でエネルギーを蓄積する電気自動車は、どうやっても化石燃料のエネルギー密度に達することはあり得ません。夢の電池と呼ばれる全固体電池ですら、遠く及ばないのです。使い方を変えるということは消費者の認識を変えないといけないということであり、マーケティングの世界でもご法度とされていることでもあります。これを乗り越えて、大きなメリットのある電気自動車を選択する消費者や企業の方々は少しずつ出てくるでしょう。実は、企業のフリートオーナーのほうが、一般消費者よりロジカルで、コストにシビアなので、日本では電気自動車の普及はそちらから先に進むかも知れません。

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