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アウディの人気EV『Q4 Sportback e-tron』試乗レポート/岡山遠征でアップデート版の実力をチェック

アウディの人気EV『Q4 Sportback e-tron』試乗レポート/岡山遠征でアップデート版の実力をチェック

電動ドライブユニットのアップデートにより、パワーと一充電走行距離の両方が向上したアウディ『Q4 Sportback e-tron』で、東京~岡山をドライブしました。AIが作成した「電費最優先ルート」で、実際の電費と一充電走行距離も確認。宿泊した姫路までの長距離試乗レポートをお届けします。

目次

見た目はそのままで性能が大幅に向上

Q4 Sportback e-tronは、2021年4月にワールドプレミアを果たし、日本でも2022年後半に販売が開始されたプレミアムコンパクトSUVタイプの電気自動車(EV)です。フォルクスワーゲン グループが開発する「MEB(モジュラーエレクトリフィケーションプラットフォーム)」を採用し、フォルクスワーゲン『ID.4』とは基本設計を共有。アウディ版ではSUVスタイルの『Q4 e-tron』と、SUVクーペスタイルの『Q4 Sportback e-tron』が用意されています。

日本導入当初の『Q4 40 e-tron』『Q4 Sportback 40 e-tron』は、総容量82kWh(実容量77kWh)の駆動用バッテリーを前後アクスル間の床下に収納するとともに、リアアクスルに駆動用モーター1基(最高出力150kW/最大トルク310Nm)を搭載。一充電走行距離は594km(WLTCモード ※以下同)でした。

その後、2024年12月に改良版の『Q4 45 e-tron』『Q4 Sportback 45 e-tron』が登場しました。エクステリア、インテリアともにデザインはそのままで、電動ドライブユニットをアップデート。バッテリー容量は同じですが、モーターの最高出力は60kW増の210kW、最大トルクは235Nm増の545Nmとなる一方で、一充電走行距離は19km延びて613kmを達成。CHAdeMO規格の急速充電が最高94kWから125kWに対応したのも見逃せません。

SUVクーペスタイルでも余裕ある室内空間

今回は、スタイリッシュなフォルムが自慢の『Q4 Sportback 45 e-tron S line』をアウディ ジャパンからお借りし、試乗と電費チェックを兼ねて東京~岡山を往復しました。

さっそく外観をチェックすると、なだらかなアーチを描くルーフラインがSportbackらしいエレガントな印象を与えます。SUVスタイルのQ4 e-tronにはあるルーフレールが省かれているのも、Sportbackの特徴です。

フロントにはアウディを象徴するシングルフレームグリルを備えます。今回の試乗車はオプションの「ブラックAudi rings & ブラックスタイリングパッケージ」が選ばれていることで、グリルやドアミラー、4リングスがブラックで統一され、より精悍な雰囲気に仕上がっていました。

インテリアもアウディらしさに溢れています。メーターのデジタル化やフローティングタイプのセンターコンソール、上下フラットなステアリングなどが先進的な印象を生み出しています。一方で、空調パネルには物理スイッチが残されており、操作性のよさがうれしいポイントです。エアコンの吹き出し口が高い位置にあるため、暑い日でも冷気がしっかりと体に届くのもありがたい点です。

Q4 Sportback e-tronの室内は、外観から想像する以上に広々としています。EV専用のMEBプラットフォームを採用することで、前後オーバーハングを短縮し、後席や荷室に余裕を確保しているからです。後席には足を組めるほどのスペースがあり、センタートンネルがないため開放感も抜群です。筆者(身長168cm)の場合、ヘッドルームには拳が縦に2個入るほどのゆとりがありました。SUVタイプのQ4 e-tronよりわずかに狭いものの、十分な余裕と快適さがあります。

ラゲッジスペースも実用的で、通常時の奥行きは約90cm。後席を倒すと150cm以上まで拡大でき、フロア下には深さ約12cmの収納スペースも用意されています。充電ケーブルなどをスマートに収納できる点も便利です。

よりパワフルな走り&乗り味も改善

準備を整え、いよいよ試乗開始です。センターコンソールの「START/STOP」スイッチに触れなくても、ブレーキを踏みながらシフトスイッチでDレンジを選ぶだけでスタンバイ完了。ブレーキペダルを離すと、クルマは静かにクリープ走行を始めます。

軽くアクセルを踏むと、Q4 Sportback 45 e-tronは軽やかに動き出します。以前のQ4 40 e-tronに比べて加速は一段と力強さを増し、2トンを超える(2120kg)ボディは驚くほどスムーズにスピードを上げていきます。EVらしいリニアな加速感がありながら、アクセル操作に対する反応が過敏すぎないため、扱いやすい印象です。高速道路でも120km/h付近まで余裕の加速を見せ、伸びやかな走りを楽しめました。

試乗車には前235/50R20、後255/45R20のタイヤとスポーツサスペンションが装着されていました。そのため多少の硬めの乗り心地ですが、初期モデルよりも乗り味はマイルドになり、サスペンションの熟成が感じられます。

EVらしい低重心設計のおかげで、走行中の姿勢は安定しており、コーナーでも軽快な動きを見せます。後輪駆動の特性も相まって、ドライバーが積極的に操る楽しさを味わえるのが、このクルマの大きな魅力です。

使いやすい回生ブレーキ

Dレンジで走行中にアクセルを戻したときに作動する回生ブレーキは、好みに合わせて設定が変更できます。MMIの「エフィシェンシーアシスト」画面から「自動」と「オフ」とが選択可能で、自動モードでは先行車との距離に応じて回生ブレーキの強さを調整してくれます。ただし、自動にしていると前方に車両がいないときは回生が働かない点には注意が必要です。

「オフ」は回生を無効にするのではなく、自動制御を解除する設定で、パドル操作によって0~3の4段階で強さを選べて、それが保持されます。ちなみに、「自動」の場合も一時的にパドルで回生の強さを選ぶことができますが、次にアクセルペダルを踏むと解除されるところが「オフ」とは異なるところです。

シフトスイッチでBレンジを選ぶと最大レベルの回生ブレーキが得られ、アクセル操作だけでほとんどの速度調整が可能になります。とはいえ完全停止までは至らないので、最後はブレーキを踏む必要があります。

ブレーキペダルを踏んだときも、軽い減速であれば回生ブレーキが優先されます。最初は前輪への荷重移動が少なく感じるかもしれませんが、慣れれば自然に扱えるようになります。

満充電で600km超えを達成

気になる電費と一充電走行距離ですが、電費を稼ぐだけなら、エアコンをオフにして高速道路をトラックよりもゆっくり走るという作戦があります。速度が下がるとそのぶん走行時の空気抵抗が減るので、とくにEVの場合は電費向上に効くのです。でも、そんな辛い思いはしたくないので、今回はエアコンはオン、そして、平均速度を下げるために、できるだけ一般道を使って一日目のゴールである兵庫県姫路市を目指すことにしました。

私自身、マイカーとしてEVに乗るようになってからは、時間に余裕があると一般道を走る機会が多くなりました。電費が良くなるのと、高速道路代が節約できて一石二鳥。しかも、ふだん見られない景色を楽しむことができるからです。

今回は、おもに国道1号線と2号線を使って姫路に向かいますが、大都市周辺の渋滞を避けるために、一部区間では高速道路や有料道路を利用しました。また、箱根越えなど、標高差が大きい区間は、より標高差が少ないルートを選ぶことで消費電力をセーブします。そんな条件をAIに指示したところ、次のようなルートが示されました。途中、浜松を通るので、ずっと行ってみたかった餃子の名店『福みつ』を経由地として加えています。

この日はまずアウディ世田谷に立ち寄り、SOC100%まで充電。航続可能距離は480kmという表示でした。

旅程の初日、東京から神戸までの区間電費や積算電費、SOCなどは次の通りです。

区間到着時刻区間距離
(km)
積算距離
(km)
区間電費
(km/kWh)
積算電費
(km/kWh)
SOC
(%)
航続可能距離
(km)
アウディ世田谷5:20----100480
【1】世田谷~湯河原7:0785.385.38.18.186458
【2】湯河原~沼津7:4424.3109.77.27.981430
【3】沼津~浜松11:11146.4256.28.98.459340
【4】浜松~豊明IC14:54103.5359.88.98.644245
【5】豊明IC~天理IC17:09139.6499.58.48.521123
【6】天理IC~神戸19:29102.1601.87.48.3314

帰路に高速道路を使った際の平均電費が6.7km/kWhだったのに対して、高速道路に比べ平均速度が低い有料道路を走る【1】世田谷~湯河原は8.1km/kWhと1割以上の低電費。その先、山越えの【2】湯河原~沼津では7.2km/kWhに電費が低下しました。

しかし、【3】沼津~浜松と【4】浜松~豊明ICは、信号がほとんどないバイパスを走行したこともあって8.9km/kWhまで電費が向上しました。このエリアはこれまで一般道を走る機会がなく、新鮮な風景を満喫できたのも収穫でした。そして、浜松の『福みつ』では念願の餃子を味わうこともできました。

西宮名塩SAの急速充電器でトラブルが……

その後、伊勢湾岸道~東名阪自動車道~名阪国道を走る【5】豊明IC~天理ICでも8.4km/kWhと良好な電費を記録。天理ICに到着時点のSOCは21%、航続可能距離は123kmでした。ここから約100km先にある中国自動車の西宮名塩SAならなんとか辿り着けそうだったので、あとは有料道路と高速道路を乗り継いで、最後の力を振り絞ります。途中、航続可能距離が50kmを切ったところでバッテリー残量低下の警告が表示されますが、その時点で目的地まではあと20kmでしたので、なんとか乗り切れると確信しました。

そして、予定していた西宮名塩SAにSOCは5%、航続可能距離は30kmで無事に到着。走行距離は591.7kmで、あとすこしで600kmというのが惜しい(笑)と思いつつ。宿泊する姫路のホテルには普通充電器があり、予約も入れているので、ここで必要なぶんだけ急速充電すれば大丈夫のはずでした。ところが、充電を始めると、「只今、ご利用できません。故障リセットを押してください」というメッセージが表示されました。

リセットを押して、再度充電を試みますが改善は見られません。しかも、急速充電器のある次のサービスエリアまではバッテリーが持ちそうにありません。アプリで検索すると、高速と一般道をあわせて10km走れば、90kW急速充電が設置されているセブンイレブンを発見。一か八かそこを目指すと、SOCは3%、航続可能距離は14kmでなんとか辿り着くことができ、九死に一生を得ました。

しかも、最後に10kmを追加したことで、走行距離が600kmを超え、601.8kmを達成したのは、まさに怪我の功名といえる結果でした。航続可能距離を合わせると約616kmになり、カタログ値の613kmを上回りました。総平均電費は8.3km/kWhで、余裕あるボディサイズを考えるとなかなか優秀でした。

ちなみに、使った通行料金は7240円(普通に全線高速道路を走ると1万3000円近く掛かるはず)ぽっきり。浮いたお金で、姫路でおいしい夕飯を楽しんだのはいうまでもありません。たまにはこんな旅も悪くありません。

念のために書き添えておくと、今回は満充電からどのように走れるかをレポートするため、あえて途中無充電でギリギリまで攻めました。途中休憩がてら、最近増えてきた高出力急速充電器で15分ほども充電すれば、東京→姫路は何の不安もなく走り切れます。

取材・文/生方 聡

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この記事を書いた人

1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職し、システムエンジニアを経験。しかし、クルマに携わる仕事に就く夢を叶えるべく、1992年から「CAR GRAPHIC」記者として、新たなキャリアをスタート。その後、フリーランスのエディター/ライターとなり、現在はモータージャーナリストとして自動車専門メディアに試乗記やレースレポートなどを寄稿する一方、エディターとしてウェブサイトの運営などに携わる。愛車はフォルクスワーゲン『ID.4』。

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