アメリカでは20代以下を中心としたZ世代が中国製EVブランドへの関心を示す一方で、既存の販売店などが不安視しているようです。アメリカのメディア「CleanTechnica」の記事を全文翻訳で紹介します。
※冒頭写真はBYD公式サイトから引用。
【元記事】Gen Z Consumers Are Warming Up To The Idea Of Chinese EVs by Carolyn Fortuna
米国のZ世代の69%が中国ブランドを検討
米国の消費者は表向きは認めないかもしれませんが、中国製EVに強い関心を持ち始めています。関心が高まっている理由の一つは、近隣諸国が交渉を進め、より安価な車両を西側へ導入しようとしていることです。例えばカナダのマーク・カーニー首相は1月の北京訪問で、初めて少数の中国製輸入車を受け入れることに合意しました。
外交問題評議会の気候・エネルギー担当シニアフェローであるデイビット・M・ハート氏は、こうした動きが米国の自動車産業にとって転換点になる可能性があると述べています。もし米国の孤立主義的な政策が続けば、中国が支配を強める世界市場から、米国だけが取り残されてしまう恐れがあります。
さらにEVへの注目を集めているのが、車を探しているZ世代の69%が「中国ブランドを検討する可能性が高い」と答えているというニュースです。Cox Automotiveの分析によると、価値や体験、新しさを重視するこの若い世代では、車を選ぶ基準が変わりつつあります。自動車販売店は、中国製EVに向けられた彼らの関心を、もっとしっかりと汲み取る必要があります。
分断された米国市場
Cox Automotiveの調査では、米国の自動車市場が分断されていることや、ブランドがまだあまり知られていないこと、そして消費者が興味を持っている割に販売店の準備が整っていないことも浮き彫りになりました。調査の担当者は、「このように市場が二極化していると、最初は市場全体ではなく特定の層で普及が進むと考えられます。
これは、狙いを定めて参入する側にはチャンスになりますが、一部の既存メーカーにとっては脅威となります」とまとめています。また、「参入が『もしあれば』ではなく『いつになるか』という段階に進むなかで、誰がどちら側の立場にいるのかを把握することが欠かせません」とも述べています。

米ラスベガス=CES2026で新技術を発表するGeely Auto Group(Geely公式サイトより引用)。
この調査結果を見ると、米国の自動車消費者の市場がどれほど真っ二つに分かれているかよく分かります。これらを合わせると、中国ブランドが米国市場に参入して成功を収めるには、ただ価格を安くするだけでは不十分だということが、Cox Automotiveのデータから見て取れます。
進化するZ世代と足踏みする販売店
EVを好む若い層はかなり前向きな姿勢を見せていますが、年配の層や国内メーカーを支持する層は、依然として消極的です。Z世代は、どこで、なぜお金を使うのか、そして何に対して愛着を持つのかを、改めて真剣に考え直しています。この世代は、親や祖父母の世代よりも、変化や新しい技術をすんなりと受け入れる傾向があります。例えばZ世代の70%が、この1年で家計の管理や計画、買い物のためにAIツールを活用しています。
対照的に、多くの販売店はまだAIデータを十分に使いこなせていません。より賢く判断したり、一人ひとりに合わせたり、スムーズな購入体験を提供したりするために、データをうまく連携させる段階には至っていないのが現状です。
消費者は中国の自動車ブランドに対して価格に見合った「価値」があると好意的に捉えていますが、販売店側は、信頼性や安全性、そして将来も存続していけるかどうかをより気にしています。
Z世代の多くの消費者にとって、製品はあくまで入り口にすぎません。彼らはそのブランドがどんな価値観や倫理性を持っているか、社会にどんな影響を与えるかまでを見極めようとします。こうしたZ世代の視点を理解することは、非常に重要です。NielsenIQなどが発表したデータによると、この世代の購買力は2030年までに12兆ドルに達すると予測されているからです。欧州やアジアで売られている中国製EVは驚くほど安く、もし米国でも買えるようになれば、Z世代にとって非常に魅力的な存在になるでしょう。
テスラの牙城を狙う安価な中国勢
EVの中でも、テスラのModel Yは別格の存在感を示しています。全体的にはまだテスラやシボレーが選ばれることが多いものの、低所得層や価格を重視する層では、安さが最大の決め手となって中国製の車種が急速に支持を広げています。
条件を比較した調査でも、もし中国製EVが大幅に値引きされれば、米国ブランドから乗り換えてもいいと考える人がかなりの割合に上ることが分かりました。
消費者の半数近くが中国の自動車ブランドを知っていると答えていますが、その中で最も有名なBYDを知っている人は、わずか17%にとどまります。中国のEVメーカーやアジアの販売事業者は、米国に店舗を構えて確固たる足がかりを築こうと強い意欲を持っており、近年の急成長がその勢いを後押ししています。
Xiaomiの西欧小売部門責任者であるエヴァ・ニュウ氏によると、彼らはブランドの知名度を上げようと、急ピッチでショールームや店舗の開設を進めています。一方で米国政府は、中国製EVに100%の関税を課したり、車両技術やソフトウェアを規制したりしています。これは、価格競争の圧力やデータセキュリティのリスクを懸念する、米国のメーカーや政策立案者の意向を反映したものです。
SNS上でもチラホラと来場報告をいただき嬉しい限りです。
Xiaomi Store1号店、昨日からプレオープンが始まってます。
まだ諸々調整中ですので、至らぬ点はご容赦いただけますと幸いです。本番はグランドオープンの22日です。
ぜひ、皆様この日に照準合わせてください。#XiaomiStore日本上陸 pic.twitter.com/D92FvsjGRC— Xiaomi Japan (@XiaomiJapan) March 19, 2025
Z世代が次の勝者を決める
中国ブランドと直接比べると、米国ブランドの方がまだ優勢ですが、その差は決して埋められないものではありません。Z世代は企業が社会問題に対して誠実な姿勢を示すことを求めており、Z世代とミレニアル世代の半数以上が気候変動を最大の懸念事項に挙げています。彼らにとってサステナビリティは有名なブランドよりもずっと大切で、EVは地球温暖化を止めるために欠かせない技術革新の象徴となっています。実際、あらゆる世代の中で、Z世代は気候危機という問題を自分事として捉え、人一倍強い不安を感じています。
調査では、消費者の約40%が中国の自動車ブランドの米国参入を支持しています。それに対して、参入を支持する販売店はわずか15%にとどまります。しかし、もし実際に参入してきた場合には、70%の販売店が生き残りをかけて戦略を見直すと答えています。もし中国ブランドが実績のある米国メーカーと組んだ場合、購入を検討する消費者の割合は76%まで跳ね上がります。つまり、価格と同じくらい、どのブランドと提携するかが重要になる可能性があります。今のところ、米国のショールームのほとんどで中国製EVを見ることはできません。実際に市場に現れるには、貿易摩擦が落ち着き、米中間で新たな協力関係が築かれる必要があるでしょう。
Z世代の買い手が、次の勝者を決める「ゲームチェンジャー」になるのかもしれません。
「広告」よりも「共感」がZ世代の心を動かす
1997年から2012年の間に生まれたZ世代は、世界人口の約30%を占めています。13歳から28歳にあたる彼らは、生まれた時からスマートフォンやSNSがあるのが当たり前だった最初の世代です。いわゆるデジタルネイティブであり、ネットで過ごす時間を好みます。ただ、ネットとの関わり方は決まりきったものではありません。SNSをどう使うか、何を信じ、ブランドに何を求めるかといった点は、時代とともに変化してきました。
Z世代は、昔ながらの広告よりも、仲間内での口コミや実際の体験談を信頼します。実際、多くの人がユーザーのコメントや評価を参考に、購入を決めるとしています。彼らの買い物の流れは、SNSなどで何かを見て「いいな」と思うところから始まり、自分で調べ、コミュニティで共有し、ファンになって、さらに広める……という、終わりのないループのような形になっています。
中国製EVに対する彼らの好奇心に訴えかけることは、とても大切です。Generation 180のスチュアート・ガードナー氏が書いているように、「新車であれ中古車であれ、街を走るEVが1台増えるたびに排気ガスが減り、よりきれいな空気と安定した気候に向かって一歩前進できるから」です。
【参考情報】
●3 major trends that will reshape retail In 2026(2026年に小売業を再編する3つの主要トレンド)By Catherine Erdly. Forbes. 2025年12月22日
●Chinese auto brands: What US consumers and dealers think(中国の自動車ブランド:米国の消費者と販売店はどう考えているか)By Cox Automotive. 2026年2月25日
●How we adapted our marketing strategies for Gen Z in 2026(2026年、Z世代に向けてマーケティング戦略をどのように適応させたか)By David Roman. We are Brain. 2026年1月5日
●Spend Z: A global report(Spend Z:グローバルレポート)By 2026 Nielsen Consumer LLC.
●The Chinese are coming(中国勢がやってくる)By Mark Faithfull. The Robin Report. 2026年1月26日
●The used EV resurgence is coming–and that’s great news for consumers and the climate(中古EVの復活が近づく―それは消費者と気候にとって素晴らしいニュースだ) By Stuart Gardner. Generation 180. 2026年3月4日
●What Canadian and Mexican EV imports from China mean for the United States(カナダとメキシコによる中国からのEV輸入が米国に示すもの)By David M. Hart. Council for Foreign Relations. 2026年2月9日
【訳者あとがき】日本市場も無関係ではない
本記事の「Z世代の69%が中国ブランドを検討」という調査は、米国市場で行われたものです。日本市場では同様の調査や報告は見つからなかったものの、おそらく米国市場の69%よりも少ないでしょう。
それでは、日系メーカーへの影響はないのでしょうか?
答えは「ノー」です。
例えばトヨタは2025年に米国で約250万台、ホンダは約140万台、主要日系メーカー6社を合わせると約600万台(いずれも公式発表)を米国で販売しています。米国は日系メーカーにとって主戦場の一つであり、もし中国勢が進出すれば、必ず真っ向勝負することになります。既にBYDなど複数の中国勢がメキシコに進出、カナダには生産拠点の設置を検討中という報道もあります。記事の冒頭にもあるとおり、『もしあれば』ではなく『いつになるか』なのです。
JAMAによると、日系メーカーが2024年に世界で製造した自動車は約2470万台である一方で、日本国内での販売は約440万台であり、約8割が海外で販売されていると推測されます。中国勢はこれらの海外市場を虎視眈々と狙っており、直近ではガソリン価格の高騰とも相まって、既に複数の新興国で日系メーカーのシェアを奪い始めています。
もちろん、日本国内も無風ではありません。BYDは日本市場専用車となる軽EVのRACCOを発表、2025年に日本初の実店舗を開設したXiaomiは現時点では未定ながら、日本へのEV導入を目指すことを示唆しています。
EV持ってきたいですよねぇ。。。
難易度めちゃくちゃ高いのですが、
いつか日本のモーターショーとかに
まず展示できないかな、みたいなことは日々妄想してます。— Xiaomi Japan (@XiaomiJapan) April 3, 2024
国内では3月にEV(BEV+PHEV)シェアが過去最多を更新しましたが、それでもわずか4.15%であり、2025年の世界におけるEVシェアである26%には遠く及びません。
この差には様々な要因が考えられますが、その一つは国内メーカーから若者が欲しがる安価で魅力的なスマートEVが発売されていないことではないでしょうか。中国市場をみると、たとえばトヨタはbZ3XなどのbZシリーズ、日産はN/NXシリーズ、マツダはEZシリーズなど、現地のサプライヤーとの協業により安価で多機能なスマートEVを展開しています。いずれも冷蔵庫やマッサージ機能、直感的な操作が可能な大画面のインフォテインメント、AIアシスタント、テスラの監視付きFSDのような市街地運転支援などを装備し、スマホのようにアップデートで進化する最先端のSDVを実現しています。
ホンダにできるのに、なぜ日産やマツダはできない?
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— 🌸Sakura Yae/八重 さくら🌸 (@yaesakura2019) April 17, 2026
国内メーカーには、日本の若者にも刺さる本気のスマートEVを、ぜひ国内で展開してほしいと切に願います。
翻訳・文/八重さくら






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