※冒頭画像は「日本橋室町三井タワー」に移転した「TRI-AD」本社(トヨタ自動車ニュースルームより)
さらなる技術革新を目指す「トヨタの本気」?
「次世代の車載半導体の研究および先行開発を行う合弁会社の設立に合意」したことについて、デンソー、トヨタ両社のプレスリリースが発表されています。
トヨタ自動車株式会社のニュースリリース
株式会社デンソーのニュースリリース
発表の内容を要約すると……
近年、自動車の電子制御化が進み、CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)の進展において、次世代の車載半導体の開発が求められている。そこで、スピーディかつ競争力のある生産・開発体制を実現すべくデンソーが車載半導体の研究および先行開発を行う新会社を設立。トヨタが出資することになった、とのこと。
出資比率は、デンソー51%、トヨタ49%。資本金は5000万円で、設立時の従業員数は約500名と計画されています。
新会社で取り組む事業は「次世代の車載半導体における基本構造や加工方法などの先端研究から、それらを実装した電動車両向けのパワーモジュールや自動運転車両向けの周辺監視センサーなどの電子部品の先行開発」など。
発表をロイターなどが世界に配信したこともあり、各国のメディアでもこのニュースが報じられています。その論調を見ると、ことに「特に自動運転車で使用するための次世代半導体を開発」が注目されています。
自動運転が今後の自動車にとって最もホットな競争分野であることは言うまでもなく、このEVsmartブログの記事、『テスラのセミナーでイーロン・マスク氏が「2020年にはロボタクシーを実現」と言及』や『テスラの新しい自動運転コンピューター『HW3』は怪物だ!』でもお伝えしたように、自動運転車にとってチップ開発は最重要課題のひとつであり、競争の激しい技術です。
というわけで、各国メディアでは「IntelやNvidiaのようなハードウェア業界のリーダーとの競争で、トヨタは自律走行車用に独自の高度なコンピュータシステムを独自に構築するという課題に取り組む」ことが、ある種の驚きとともに注目されているのが目立ちます。
ソフトウェア開発の『TRI-AD』は本社を移転
トヨタグループと自動運転といえば、2018年3月、トヨタは「自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進する」ために、今回のデンソーのほかアイシンも出資する「Toyota Research Institute Advanced Development(TRI-AD)」を設立しています。
おりしも、今回の合弁会社設立合意のニュースの一週間ほど前、7月1日には、TRI-AD本社が今年3月に竣工したばかりの「日本橋室町三井タワー」に移転したというニュースが発信されたばかりでした。
さらに、2019年4月には、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどとともに、自動運転ライドシェア車両の開発と実用化を加速するため、UberのAdvanced Technologies Group に対して、合計10億ドルの出資を行うことを発表するなど、自動運転をはじめとするCASEの具現化に幅広い取組を展開しています。
それにしても、チップ開発まで自前でやってしまおうというトヨタの姿勢はさすがというか、チャレンジングだと感じます。
6月に開催された『電気自動車(EV)の普及を目指して』というメディア向け説明会でも、社会システム全体の変革にまで関わっていこうとする意欲が印象的でした。
ひとりのEVファンとしては、なにはともあれ、1日でも1車種でも多く魅力的な電気自動車の発売! に期待したいところではありますが……。
トヨタが独自に、本気で切り開こうとしている未来に向けて、順調な成果が挙がることにも期待しておきましょう。
(寄本好則)