※冒頭写真は環境省ウェブサイトより引用
「Let’s ゼロドラ」の第2弾プロジェクト
小泉進次郎環境大臣の脱炭素モビリティや再エネ普及への考えについては、以前『小泉大臣も熱弁!『Mobility Transformation 2021』に感じた「移動の進化」の現在地』と題した記事で紹介しました。「再エネ電力と脱炭素モビリティ=電動車の普及を進めなければ、日本社会の持続可能な繁栄はない!」という確固とした意思を示す内容に共感できました。
今、環境省では令和2年度第3次補正予算による「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」、すなわち、再エネ100%電力への切り替えとCEV(クリーンエネルギー車)購入を同時に行う場合に、最大1台当たり80万円の補助金で支援する施策を実施しており、当初は9月30日とされていた申請締切が12月28日に延長されたところでした。
この「再エネ&CEV」補助金は単年度の補正予算なので、次年度以降、環境省の補助金はどうなるのか。熱弁を伝える記事を書きつつ「期待と不安」を感じていたのですが……。
今回、環境省自動車環境対策課に電話で取材してわかったのは、まず、今年実施中の「再エネ&CEV」補助金も、会見で小泉大臣が「詳細の検討を指示」していることを表明した「軽EV購入支援」も、環境省が進める『ゼロカーボン・ドライブ(略称:ゼロドラ)』支援策として継続的な政策であるということでした。有言実行と評価していいいでしょう。環境省、小泉大臣は、脱炭素モビリティ普及に関する「次の手」をしっかり準備してくれていたのです。
【関連サイト】
「Let’s ゼロドラ」特設サイト(環境省)
7日の記者会見での発表については、Twitterの環境省公式アカウントにも投稿がありました。
本日の閣議後会見において、#小泉進次郎環境大臣 から、再エネ電力とEV等を活用した #ゼロカーボン・ドライブ の第2弾として、新たな移動の選択肢である #シェア用車 への支援策案、#軽EV元年 としての支援策案などについて発表しました。詳細についてはURLをご覧ください。https://t.co/aeHTNyECtm pic.twitter.com/DXM48OR8oa
— 環境省 (@Kankyo_Jpn) September 7, 2021
「シェア用車」と「軽EV元年」という2本柱
「Let’s ゼロドラ」第2弾には、具体的に「シェア用車」普及促進に対する補助金と、「軽EV元年」を後押しする補助金(地方自治体への交付金)という2本の柱で検討されています。
小泉大臣の記者会見(YouTubeにリンク)でも配布された資料がPDFで公開されているので、リンクしておきます。
「シェア用車」の普及促進
ひとつめの柱は、再エネ導入と電動車導入を前提に、自治体の「公用車」や企業の「社用車」を、「シェア用車」へと切り替えていくことを後押しする補助金の実施です。資料によると、この事業のために令和4年度新規概算要求に10億円が盛り込まれたとされています。
今までも、千葉県市川市や神奈川県小田原市などの一部の自治体で公用車をEVに切り替えて、独自のカーシェアの仕組みを導入する、あるいはしようとしている取り組みはありました。それを、大きな流れにしようということですね。「所有から使用へ、広く社会全体のライフスタイル転換を促す」目標でもあることを、小泉大臣は質疑応答の中で言及していました。
「軽EV元年」を後押し
ふたつめの柱が、EV購入への補助金です。今年は「再エネ100%電力」との同時導入に対する補助金でしたが、来年度は軽の電気自動車購入に的を絞って支援しようというプランになったということです。
理由としては「各社が軽EV開発を進めていて、来年の春頃には市場に投入することがアナウンスされていてタイミングが合う」(小泉大臣)こと。さらに、ことに地方では多くの方が利用していて軽自動車が「地方の足」となっていて、「地域社会から軽EVの普及が進むことで、日本全体のEV普及が本格的にスタートする可能性がある」(小泉大臣)ことが強調されていました。
軽EV購入支援の予算要求額は200億円?
軽EV元年を後押しするための購入支援に向けて、令和4年度新規概算要求に盛り込まれた金額は、なんと、200億円です。ただし、この金額は「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」という政策全体の予算であり、軽EV購入支援だけに200億円が割り当てられるわけではありません。
「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」の概要についても、PDFが公開されていたので、「どんな内容なのか」の表を引用しておきます。
支援対象は、再エネポテンシャルの拡大や建物の脱炭素化など多岐にわたっており、軽EV購入支援となる「ゼロカーボンドライブ(電動車、充放電設備等)」にいくらくらいの予算が割かれるかはまだわかりません。
支援があるかどうかは自治体次第
さらに、今回の事業は「交付金」、つまり、事業の趣旨に共感して「手を挙げた」自治体に対して交付される予算である、というのが、ユーザーとしては大切なポイントです。要するに、手を挙げない自治体の住民や企業は、軽EVを購入しても環境省からの支援を受け取ることができない、ということになります。
事業の趣旨は「地域脱炭素移行・再エネ推進」ですから、自治体が「軽EV購入を補助したい」ってだけでは環境省が採択しないでしょうから、それぞれの地方自治体として「地域脱炭素移行・再エネ推進」に向けて、どのようなアクションプランを作成して申請するかが肝、と言えます。軽EVへの乗り替えがマジで視野に入っている私個人としては「東京都さん、もしくは世田谷区さん、なんとしてもお願いします!」という気持ちです。
ちなみに、個人ユーザーが支援(補助金)を各自治体に申請することになるのか、あるいは従来の補助金のように次世代自動車振興センター(NEV)のような機関が受付窓口になるのかについても、まだ検討中の段階です。
1台あたりの金額や台数などは未定
環境省が交付金という方法を選んだのは、「(EV普及は)政府全体としてやっていかなければいけないこと。他の省庁からの補助金政策などもあるでしょうから、環境省ならではの支援策」を打ち出す狙いであることを、会見の質疑応答で小泉大臣が説明していました。令和4年度予算では、経産省もCEV補助金の倍増を発表しています。環境省が、単なる「軽EV購入への補助金」ではなく、「地域社会からの脱炭素化促進」という大きな目標をもった政策としたことは、日本社会がきちんと変わっていくために、大切な意義がある気がします。
軽EV購入支援の1台あたりの金額や台数の見通しは、まさに今検討を進めている最中で未発表。小泉大臣からは「エンジンの軽自動車と同等の値頃感になるよう」という説明はありましたが、まだ詳細はわかりません。
一部報道では「軽EV1万台程度を想定」や「モニタリングを実施」といったことが伝えられていましたが、環境省担当部署に確認したところ、その認識は正しくありませんでした。
PDFをリンクした記者会見での配付資料に、次のような記述があります。
これが「軽EV元年」のページにあったので、記者さんが勘違いしたのだろうと思われます。
まず、「再エネ×電動車 1万件モニターのビックデータをオープン化」というのは、今年度実施している「再エネ&CEV(電動車)」の目標台数が1万台(8月末時点で約5000台に到達)であることを示しています。「再エネ&CEV」への補助金は「政府調査へのモニター参加」が条件になっており、場合によっては来年度の軽EVの支援を受けたユーザーへの調査も含めて有用なビッグデータを構築。「それを環境省だけで利用するのではなくオープン化することで、電動車普及に資する新たなビジネスモデルを生み出すきっかけになれば」(小泉大臣)という構想です。
そして「EV走行時のCO2削減量を「見える化」し、EV活用インセンティブプログラム(ポイント制度等)」というのは、企業(おそらくは自動車メーカー)などの協力を得ながらEVを中心とした電動車が脱炭素に貢献していることを明確にした上で、EV購入時に支援するだけではなく、EVを使うことへのインセンティブを付与していけないか、というアイデアです。
すでに、駐車場や通行規制への優遇策などがありますが、よりユニークで実利的なインセンティブが創出されていくのであれば、EVユーザーとしては喜ばしいことだと感じます。
あなたのドライブから脱炭素の未来へ
ともあれ、EV普及を応援するEVsmartブログとしては、今回の環境省、小泉大臣の発表に賛辞を贈りたいと思います。永田町界隈がざわついている最中ではありますが、環境大臣が替わっても、さらに言うと、日本政府の大きな方針として、再エネ普及と脱炭素モビリティ普及の後押しが進んでいくことを願っています。
最後に「ゼロ・カーボンドライブ」について、小泉大臣が説明する動画をご紹介しておきます。YouTubeですが、環境省公式チャンネルの動画は他サイトに埋め込みできない設定になっているので、テキストリンクにて。2分程度のしっかり作り込まれた見やすい動画なので、ぜひご覧ください。
●ゼロカーボン・ドライブ~あなたのドライブから脱炭素の未来へ~(YouTube 環境省チャンネル)
(取材・文/寄本 好則)
軽EVと再生エネルギー、それ自身がすでに実践できる体制にしてますよ。
元々ソーラー発電のある一戸建へi-MiEVを導入し家庭用蓄電池を取り付けましたんで。
ただ10.5kWhでは心許ないんで、20kWh以上の軽EVが売れれば卒FITに悩むソーラー発電家庭への大きな福音になりますよ? 車庫が小さくてもV2H機器はそんなに場を取らないですし災害停電への備えもできますから。
10年前にポピュラーだったソーラー発電のパワーコンディショナーは停電時最大100V/1500Wしか取り出せませんでしたが、電子機器であり10年すれば更新時期になり、しかも最近は蓄電池と連系できるハイブリッドパワコンが主流で蓄電池とあわせて最大5.5kWまで出力可能ですんで晴れていればEV充電も十分とみましたよ。実際当家も卒FIT間近で試験的にEV昼間充電してみた結果特に問題ありませんでしたし。
脱炭素を謳うなら自宅ソーラー/電気自動車/蓄電池(or V2H)の組み合わせが最適やないですか!?
その自宅をが一番敷居が高いのですが。
軽貨物さんの言われる通り、電気エネルギーへの意識や自宅の設備次第で敷居の高さも変わりますよ。ソーラー発電取付済の家庭には敷居が低く、そうでないと金額が障壁になりますから。
言われてみればソーラー発電つき住宅に住む方は停電への備えや売電などが意識にあり、電気自動車が車輪付き蓄電池であることも意識しエネルギー貯蔵手段としてもとらえられる。逆にそうでないと「動力源が違えどクルマはクルマ」になっちゃいますし。電気技術者の僕は前者まっしぐら、後者の意識はなかなか理解できませんでしたよ。
それでこのEVsmart投稿のみならずYouTubeでも動画を作って啓蒙に励んでますが、条件も意識も違う相手には通じませんよ。まず集合住宅や借家だと無理、持ち家も老朽化していると補修との兼ね合いが難しい、など。それらに引っかかれば精々ポータブル電源+ソーラーパネル200W+100V充電ケーブルですからね(i-MiEVで10km伸ばせるかどうか)
EVの購入支援もいいけれど、発電の方のCO2削減する方にもっと力入れればいいのにとどうしても思ってしまいます。あと製鉄。
二酸化炭素の排出の60%以上がエネルギー転換部門と産業で占められるなら、15%の車より優先すべきでしょうに。
その通りですよね!
皆さん、再生可能エネルギーのこと、誤解していませんか?
太陽光(ソーラーパネル)、風力(風車で発電)、潮汐(潮の干満や海流で発電)、地熱(地中深くの熱で蒸気を発生し、スチームタービンを回して発電)等、自然界にふんだんに存在する自然エネルギーから電力を作るんです。
数日前にAmazonが、太陽光発電による大口の電力購入計画を発表しましたが、先進企業は、CO2を発生させないで企業活動を継続することを必須とするようになります。
このままでは、先進企業に再生可能エネルギーを買い占めされてしまいます。
EVの購入時の補助金をGetしたい人達だけでなく、国民全員が「再エネ100%電力」を購入することができるように、官民挙げて取り組みましょう!
トヨタの社長がグチグチ言っていたのはこの件ですね。
EV=補助金のイメージがあるけれど、お金の交付と節税効果のどちらかで選択可能というのが出来たら、うれしいな。環境省だけでは難しい。
そこで経産省は、オーストラリアで質の悪い石炭を燃やして水素を生産し、超低温状態を保ちながら船で日本まで水素を運搬する(輸入する)という、経済合理性と脱炭素方針に疑問符が付く計画を中止しないながらも縮小して、環境省と一緒に動いてほしいな。
「日本国内の電力需要を賄うために海外から輸入する」ことでウハウハな人達が居るのですよ。
ソーラー発電など再生可能エネルギーの電力を火力発電(CO2発生)より少し高く(→ご褒美)買い取る制度を、今こそ仕切り直して推し進めるべきでしょう。
(CO2を発生電力には炭素税を付加してしまうのも良いですね。→懲罰)
とはいえ、再生可能エネルギーは気まぐれだから、余剰電力を水素という形で「蓄電」する(1日~数十日分の備蓄)、というのが本来の水素社会ですよね。