アウディが電気自動車『Q4 e-tron』の日本発売を発表〜価格は日産アリアとガチンコ勝負

アウディジャパンがコンパクトSUVの電気自動車『Audi Q4 e-tron』シリーズを、2022年秋以降に発売することを発表しました。バッテリー総容量は82kWhで価格は599万円〜。チャデモ規格の急速充電は最大125kWに対応します。

アウディが電気自動車『Q4 e-tron』の日本発売を発表〜価格は日産アリアとガチンコ勝負

電気の高級コンパクトSUVとして魅力的な価格設定

2022年1月17日、アウディがかねてから日本導入予定であることを示していた『Audi Q4 e-tron』シリーズを今年秋以降に発売するとして、バッテリー容量や価格などを発表しました。

Q4 40 e-tron
Q4 Sportback 40 e-tron

Q4 e-tronにはボディ形状によって「SUV」と、クーペSUVと称する「Sportback」と呼ばれるモデルがあります。さらに、本国ではバッテリー容量を抑えた「35」や、モーター出力を高めた「50」「55」などのラインナップがありますが、今回、日本に導入されるのは最も基本的なパッケージである「40」です。発表された価格を表にしておきます。

新型『Audi Q4 e-tron』シリーズ車両本体価格

モデルバッテリー容量最高出力/最大トルク駆動方式価格(税込)
Q4 40 e-tron82kWh150kW/310Nm後輪駆動5,990,000円
Q4 40 e-tron 
advanced
82kWh150kW/310Nm後輪駆動6,620,000円
Q4 40 e-tron 
S line
82kWh150kW/310Nm後輪駆動6,890,000円
Q4 Sportback 40
e-tron advanced
82kWh150kW/310Nm後輪駆動6,880,000円
Q4 Sportback 40
e-tron S line
82kWh150kW/310Nm後輪駆動7,160,000円

注目すべきは価格でしょう。本国での世界初公開を伝えた記事でも「ドイツでの価格並みで導入されたら日産アリアとガチンコ勝負の価格帯になる」と紹介しました。ドイツでの「Q4 e-tron 40」は47,500ユーロ(約621万円)〜。日本価格が約600万円〜なので、むしろアウディジャパンが頑張ってくれた価格設定といえそうです。

Q4 e-tronはV2Hに対応しておらず、現状で発表されているスペックを見る限り車載コンセントは設定がないようなので、今年度のCEV補助金額は最大60万円になるかと思われます。V2H対応のアリアは最大80万円で、補助金では20万円のアドバンテージがあるものの、実質的な車両本体価格としては予想通り「ガチンコ勝負」になりました。

ちなみに、今日現在で予約注文できる日産アリアは、限定仕様の「B9 limited」が約740万円〜。四輪駆動でバッテリー容量66kWhの「B6 e-4ORCE limited」は約720万円〜。バッテリー容量91kWhの「B9 e-4ORCE limited」は約790万円〜となっています。前輪駆動のベースグレードである「B6」は539万円〜の設定ですが、プロパイロット付けて、ナッパレザーのシートを選ぶと約640万円のWEB見積になりました。

くぅ、これならもうちょっと頑張って「B6 e-4ORCE limited」かなぁと思ってしまいます。

さらに、メルセデス・ベンツの電気自動車『EQA』(前輪駆動)もバッテリー容量66.5kWhで640万円〜という設定です。そろそろ日本での発売が予想されるテスラ『モデルY』も、中国での価格を考えると500〜700万円あたりになると思われます。トヨタ『bz4X』やスバル『ソルテラ』も、おそらく同じ価格帯で投入されるでしょう。2022年のEVバトルは、500〜700万円クラスの高級SUVあたりが激戦区になりますね。500万円オーバーは庶民にとってまだまだ高いですけど、ちょっと前の「1000万円クラス」で輸入超高級EVが並んだ頃と比べると、きっと日本国内でのEV販売台数増加にも繋がっていくのだと思います。

EV専用プラットフォームMEBを採用

MEB

Q4 e-tronで注目したいのは、VWグループが開発したEV専用プラットフォームである「MEB(Modular electric drive matrix)」を採用したことです。先行して発売された『e-tron』シリーズは、エンジン車と共通した「MLB evo」というプラットフォームに電動パワートレインを搭載した、いわばコンバージョンでした。ハイパフォーマンスEVとして登場した『e-tron GT』シリーズはポルシェ『タイカン』と同じ「J1パフォーマンスプラットフォーム」と呼ばれる電気自動車専用プラットフォームを使っています。さらに、アウディは「PPE」と呼ばれる「MEB」よりも大型車向けの電気自動車専用プラットフォームをポルシェと共同開発していることが伝えられています。

アウディをはじめとするVWグループでは、「MEB」、「PPE」そして「J1」と、車格やパフォーマンスに応じた幅広いEVのバリエーション展開を着実に進めているということです。

MEBは、フォルクスワーゲンが欧州で発売している『ID.3』や『ID.4』にも採用されているプラットフォームです。いわば、より大衆的な価格設定のモデルを含めた「みんなのEV!」のためのプラットフォームであり、日本ではQ4 e-tronが初めての市販モデルとなります。

MEBはEV専用設計のプラットフォームなので、ホイールベースを長く取れるなどのメリットがあり、Q4 e-tronシリーズ発表のリリースでは「コンパクトなボディサイズながら、インテリア全長はQ5を凌ぎ、室内空間、荷室は上位モデルに敵うスペースを実現」していることが強調されています。

「EVらしさ」も進化している、はず!

日本発売は今年の秋以降、正式な認可前ということで、公式サイトでも詳細なスペックはまだ公表されていません。当然、まだ試乗もしていないので細かい評価はできないものの。電気自動車の経験を深めつつあるアウディの新型EVとして、EVならではの新たな魅力も進化していそうです。

現段階でわかるポイントとしては、まず「通常とは異なるモーター始動・停止方法を採用」しているとのこと。スタートボタンを押すだけでなく、ドライバーがシートに座って「ブレーキペダルを踏むだけでイグニッションはONに。停車時はサイドブレーキボタンを押し、ブレーキを離すとイグニッションOFF」になる機能が搭載されました。スタートボタンは必要か? というのは、スマホキーを持ってシートに座りブレーキペダルを踏むと目覚めるテスラ車が教えてくれました。

「パーキングブレーキのボタンはありません。走行中の回生ブレーキの強さは、パドルシフトで3段階に調整が可能です。また、アウディ初のBモード(パドルシフトで最大のレベル3に相当)を備えており、アクセルペダルだけで速度調整が出来るワンペダルでのドライブ感覚も味わうことができます」(プレスリリースより引用)というのも、テスラ車に倣いつつ独自の利便性を求めた、EVならではの優れた操作性といえます。

「200Vの普通充電は、標準は3kWで、オプションとして最大8kWまで対応。急速充電はCHAdeMO規格の125kWに対応」しているのも、EVとしての進化といえるでしょう。モデル名がややこしいですけど、『e-tron GT』シリーズは最大150kW対応であるものの、最初に日本導入された『e-tron』シリーズは最大50kW対応でした。100kWを超える超高出力で急速充電できるのは、高級EVにとってもはや不可欠な性能です。

アウディジャパンでは、全国102店舗のe-tronディーラーに順次150kW急速充電器を設置予定であることをすでにアナウンスしています。独自の超高出力充電インフラそのものも、アウディのEVが進化した大きなポイントとして評価できるでしょう。

とはいえ、超高出力の急速充電が本当に欲しいのは、ロングドライブ時の高速道路SAPAですよね。日本の電気自動車用充電インフラ構築を担うe-Mobility Powerでは、最大90kW×6口の新型急速充電器設置を進めることを発表していますが、当面、日本の公共充電インフラとして150kW出力は想定されていません。

まあ、私のマイカーである30kWhリーフのようにバッテリー容量が小さな大衆車EVであれば最大50kW出力でお腹いっぱいではあるのですが。前述のように、今年からいよいよ高級電気SUVがどしどし登場してくることを考えると、日本の急速充電インフラの進化は急務。せめて最大90kWの複数台設置が速くあまねく広がることを期待しています。

ともあれ、日本でも買える魅力的な電気自動車が増えました。アウディをはじめとするフォルクスワーゲングループからは、今後もさらに幅広いEVのラインアップが登場してくることでしょう。Q4 e-tronはとても魅力的ですが、大衆車EVを待望する私としては、MEBプラットフォームを活用した『A1 e-tron』(仮称)とか、フォルクスワーゲンが2025年までに約2万ユーロ(約260万円)で発売することを発表した『ID.LIFE』などが続々と日本に登場し、300万円以下がEV激戦区になってくれることを願っています。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 正直アリアが心配になるばかりです。まともに発売される前からすでに値段と性能とを比較して見劣りし始めている感じです。ましてやアウディは大衆車じゃなくてプレミアムブランドですからね。余計なお世話ですが、予約した人は後悔し始めているんじゃないかと思ってしまいます。顧客を早く取り込みたかったのでしょうが、最初に発表してから発売までの時間があまりにも長いのも、もはや印象を悪くしてるだけですね。ライバルメーカーにも自分達の車をどう売るかの販売戦略を練るための十分な時間を与えてしまっていると思うし、それがこのアウディの価格設定でもあるのでしょうね。

    1. むつおさんの発言を見ていると日産アリアは焦って発表した感が拭えませんよ。トヨタのみならず「日産もお前もか!」ですか。
      アリアが売れなければ日産は電気軽自動車の普及に頼ることになります。もっとも最近の軽自動車は高級化、ガソリン価格も上がっているので普及しやすいのは確かですが都心部など立体駐車に入らない弱点があるのでノートなど小型乗用車にも電気自動車を普及させる努力がほしいです。それか商用目的でミニカEVを作る手もアリ。
      もうSUVは競争が激しいから日本市場向けにミニバンEV普及を目指すべきですが、e-NV200の売れなさを考えるとこれも期待薄。車体強度的に小型車枠に収まらない問題がある!?

      あったらコワイ、ステーションワゴンEV…もし実現するなら車名はe-ステージア/レグナム-MiEVですか!?そうなりゃスバルもe-レガシィで対向してくるかもしれませんがww

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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