VWがベストセラーEV『ID.4』の2022年日本導入を発表〜電気自動車シフトが本格化

フォルクスワーゲン ジャパンが2021年のベストセラー電気自動車である『ID.4』を2022年中に日本にも導入することを発表しました。『ID.4』は昨年のワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。グループで最も多い11万9600台が販売されたモデルです。欧州での価格は約500万円〜となっています。

フォルクスワーゲンがベストセラーEV『ID.4』を2022年の日本導入を発表〜電気自動車シフトが本格化

共通プラットフォーム「MEB」を採用したコンパクトSUV

2022年の幕が開き、日本でも電気自動車界隈が賑やかになってきました。2022年1月21日、今年からフォルクスワーゲン ジャパンのブランドディレクターに就任したアンドレア・カルカーニ氏が、年頭の挨拶を発信するプレスリリースで、グローバルな脱炭素化戦略である「Way To ZERO」を日本でもスタートし、電気自動車のコンパクトSUV『ID.4』を日本での第一弾モデルとして導入することを発表しました。

ブランドディレクターに就任したアンドレア・カルカーニ氏。

新年早々、シトロエン『NEW Ë-C4 ELECTRIC』、アウディ『Q4 e-tron』シリーズ、フィアット『500e』などの日本導入、さらにはボルボ『C40 Recharge』の一般発売開始などのニュースをお伝えしてきましたが、フォルクスワーゲン『ID.4』の導入は、いよいよ日本市場にも真打ち登場といった印象です。

『ID.4』が世界初公開されたのは2020年3月のこと。9月には詳細を発表した際の記事で「日本導入は2022年以降で検討中」であることをお伝えしました。

『ID.4』はコンパクトハッチバックの『ID.3』に続き、電気自動車専用の共通プラットフォーム「MEB」を採用した2車種目のモデルで、2020年末には欧州などで発売されて、2021年のワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。フォルクスワーゲングループ「2021年の電気自動車販売台数が倍増」の記事で紹介したように、2021年にはグローバルで11万9600台を販売した、グループのベストセラーEVとなっています。

今回、カルカーニ氏の挨拶では導入される『ID.4』のグレードや価格には言及がありませんでした。とはいえ、すでに欧州などでは大人気の車種なので、その概要を確認しておきましょう。

グレード価格
日本円換算
電池容量航続距離(WLTP)
EPA換算推計
駆動方式
Life£34,995〜
約539万円〜
52kWh213 mi(約343km)
約306km
RWD
Style£38,665〜
約596万円〜
52kWh211 mi(約340km)
約303km
RWD
Family£44,945〜
約693万円〜
77kWh313 mi(約504km)
約450km
RWD
Max£51,535〜
約794万円〜
77kWh308 mi(約496km)
約442km
RWD
GTX£49,025〜
約755万円〜
77kWh300 mi(約483km)
約431km
AWD
GTX Max£56,380〜
約869万円〜
77kWh289 mi(約465km)
約415km
AWD

価格や航続距離などは、イギリスのカタログサイトを参照しました。ちなみに、ドイツ向けの価格は、52kWhの「Pure」が3万8915ユーロ(約502万円)〜、77kWhの「Pro」が44.915ユーロ(約579万円)〜、77kWhでAWDの「GTX」が50415ユーロ(約650万円)〜となっています。

同じ「MEB」を採用して日本導入が発表された『Audi Q4 e-tron』シリーズの記事でも強調したように、日本での電気自動車販売は500〜700万円クラスの高級SUVあたりが激戦区。日本でも欧州並みの価格で導入されるとすると、バッテリー容量52kWhのベースグレードが500万円程度〜、77kWhモデルは700万円程度〜といった価格帯になると想定できます。

フォルクスワーゲンがベストセラーEV『ID.4』を2022年の日本導入を発表〜電気自動車シフトが本格化

この価格帯でどんなBEVの選択肢があるのか。先日の、ボルボ『C40』オンライン販売開始の記事で紹介した電気SUV価格比較表を改めて紹介しておきます。

車名バッテリー容量3サイズ(mm)
全長×全幅×全高
駆動方式QC最大出力車両本体価格価格/kWh
ボルボ
C40 Recharge
78kWh4440×1875×15954WD150kW7,190,000円〜約9万2000円
日産アリア
B6 e-4ORCE limited
66kWh4595×1850×16654WD130kW7,200,600円〜約10万1000円
日産アリア
B9 e-4ORCE limited
91kWh4595×1850×16654WD130kW7,900,200円〜約8万7000円
アウディ
Q4 40 e-tron
82kWh未発表RWD125kW5,990,000円〜約7万3000円
メルセデス・ベンツ
EQA
66.5kWh4465×1835×1625FWD100kW6,400,000円〜約9万6000円
マツダ
MX-30 EV
35.5kWh4395×1795×1565FWD40kW4,510,000円〜約13万5000円
プジョー
e-2008
50kWh4305×1770×1550FWD50kW4,526,000円〜約9万円

ベースグレードが500万円程度〜だとすると、50kWhのプジョーe-2008に比べて少し高めな印象です。とはいえ、e-2008はインターフェースなどがエンジン車と共通であるのに対して、『ID.4』は電気自動車のために設計・開発されたインターフェースを備え、ソフトウェアをオンラインで更新するOTAにも対応しています。

ID.4 GTXのインテリア。

急速充電インフラ拡充にもコミット

さらに今回の発表のポイントとして、電気自動車用の急速充電設備拡充にも言及していることが挙げられます。

「目標はまず年内に約150のフォルクスワーゲン販売店にて急速充電拠点 (90kW以上)を設置することです。同じフォルクスワーゲン グループ ジャパン傘下のアウディと充電インフラにおいて、グループシナジーを図ることで、約250拠点の充電ネットワークが誕生し、お客様にとって利便性の高いEV使用環境を整えていきます」(リリースより引用)

フォルクスワーゲン グループの充電インフラ拡充については改めて詳細を紹介すべく取材中ですが。グループのブランドであるポルシェやアウディでは、すでに150kW級の急速充電器拡充を表明しています。日本のチャデモ規格では水冷ケーブル開発中ということでまだ150kW器の普及はまったく進んでいませんが、『ID.4』欧州のコンボ規格では最大125kWでの急速充電に対応していると伝えられており、同じMEBを採用している『Audi Q4 e-tron』は最大125kW対応であることが発表されたので、おそらく『ID.4』も最大125kW対応、拠点に設置する急速充電器も最大150kWにアップデートすることを前提にしていることと思われます。

なにはともあれ、新世代の電気自動車(エンジン車のコンバージョンではなく専用開発)を本格的に販売開始するのに先駆けて、まずは急速充電インフラの拡充を進めるあたり、フォルクスワーゲンの電動化への本気度が伺えます。

はたして、日本での『ID.4』は、どのグレードがどんな価格で発売されるのか。2022年のいつごろになるのか。楽しみに続報を待ちましょう。

(文/寄本 好則)

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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