集合住宅だからEVは無理?
今年1月から、日産自動車が集合住宅でもEVを選べることをアピールするための「+e PROJECT/プラスイープロジェクト」の特設サイトをオープンしました。ZEH(net Zero Energy House)の普及に取り組む積水ハウスと連携し、住環境とEVのより良い関係性を目指したさまざまな施策を展開していくプロジェクトです。
このプロジェクトは、日産が2022年12月、集合住宅に住んでいる実施した調査の結果を受けて発足したものです。調査結果のポイントは、●「直近3年間でEVの購入を検討した」人が76.8%もいたのに、●「集合住宅に充電設備がないことでEVの購入は難しい」と考える人が88.6%もいる点です。また、回答したEV保有者のうち52%が居住する住宅などの駐車場には充電設備がなく、自宅外の充電設備を利用していることも判明しました。
傾向として「集合住宅だからEVは無理!」と思い込んでいる人がとても多いということです。とはいえ、EVsmartブログでも集合住宅への充電設備設置事例を繰り返し紹介(自宅充電・マンション充電に関する記事のアーカイブはこちら)しているように、賃貸にしろ分譲にしろ、集合住宅の駐車場や月極駐車場にEV用充電設備を設置することは可能だし、経産省の充電インフラ補助金を活用(令和5年度の申請受付開始はまだ始まっていませんが)することもできます。
「住環境、とりわけ集合住宅住まいだからという理由でEVを諦めない社会を目指す」ため、カーボンニュートラル時代の新しいライフスタイルを誰もが選べる社会の実現に向けてZEH普及に早くから取り組み、これまで遅れていた集合住宅におけるEV充電器の設置にも積極的な積水ハウスと連携。
「EV充電が気軽にできる集合住宅があるとしたら住む前に体験したいと感じますか?」という問いに対して、81%のも方が「体験したい」と回答したことを受け、日産リーフ(電気自動車)と積水ハウスの賃貸住宅「シャーメゾンZEH」を無償で提供、実際のEVがある生活を存分に体験するイベントとして「+e試住」を実施することになり、その参加者を募集しているのです。
「+e試住」への応募は2月13日18時まで
「+e試住」では、「食体験」「防災シミュレーション」「ペットとの暮らし」という3つのテーマで、抽選で計3組6名(各テーマ1組2名)の参加者を募集中。応募受付は2023年2月13日(月)18時まで。「+e PROJECT」特設サイトの応募フォームから申し込みます。
【特設サイト】
集合住宅にもEVを「+e PROJECT」
各テーマの趣向などは以下の通り。
① +e試住×食体験
人気シェフを招き、サステナブルな食材をサステナブルな調理で味わう、人にも地球にもうれしい食体験を用意。収穫から調理、食べてくつろぐまで、ゼロエミッションな暮らしを提供。地球へ配慮しつつも、質の良い暮らしができるEV×ZEH住宅の魅力を体感します。
② +e試住×防災シミュレーション
EVとZEHの融合により実現可能となった最先端の防災対策をゲーム感覚で体験。災害時には多くの制限がかかり、いつも通りの生活ができるまでに時間がかかりますが、EVとZEH住宅ならそんな心配もなく過ごせることを体験します。
③ +e試住×ペットとの暮らし
ひとの快適はもちろん、ペットの快適まで追求した「住・食・アクティビティ」を体験。ガソリン車に比べて騒音・振動・匂いの点で、同乗する犬などのペットにとって快適なEVと断熱性が高いZEHにペットと住みやすい部屋を作ることで、ペットとの快適な暮らしを体験します。
各コースとも体験に参加できるのは1組2名(ペットとの暮らしは+小型犬1匹)のみ。子どもも一緒に3人で、とかの参加は不可となっています。
何から始めればいいかをアドバイス
「+e PROJECT」の特設サイトでぜひ活用して欲しいのが、「First Step 診断」です。集合住宅に住んでいる方が不安なくEV生活を始めるために、つまり、充電設備設置を進めるために、何から始めるべきかを案内してくれるフローチャート式の診断ができるようになっています。
「自宅(集合住宅)に充電設備がある?」という設問から始まり、分譲(持ち家)か賃貸かなどの続く設問に回答していくと、物件オーナー、管理組合・理事会、駐車場オーナーなど、まず最初にどこに相談すれば良いかを診断結果として明示。それぞれのケースを想定した「設置要望書類(Wordファイル)」をダウンロードできるようになっているほか、管理組合などへの説明や交渉、充電器(コンセント)の設置から、課金システムの運用、補助金の申請などをサポートする全国対応の充電サービス事業者として、ENECHANGE株式会社、Terra Motors株式会社、ユアスタンド株式会社、ユビ電株式会社へのリンクが紹介してあります。
自分ひとりで管理組合や物件オーナーに提案するのは気が重いという方でも、充電サービス会社に相談すれば、そこから具体的な充電設備設置への動きがスタートする、ということですね。ちなみに、First Step診断をお笑い芸人のあべこうじさん、アーティストの高橋愛さん夫婦が体験する動画もあるので、気になる方はチェックしてみてください。
【日産リーフ】NISSAN × SEKISUI HOUSE +e PROJECT
EV用充電設備の有無は今後マンションの資産価値にも関わるので、物件オーナーさんや理事会などが充電サービス業者に相談するのもOK。充電設備は一度設置すれば長く使うことができます。ひとまず令和5年度は国の補助金が継続される見込みですし、手篤い補助金制度があるうちに設置を検討するのがおすすめです。
それぞれの充電サービス業者について、また、シャーメゾンZEHでのEV充電設備設置事例など、EVsmartブログのアーカイブから抜粋しておきますね。
【充電サービス各社関連記事】
<ENECHANGE>
●エネチェンジがEV充電器のマンション無料設置プランを発表~6kW出力の重要性を強調(2022年11月12日)
●エネチェンジと「楽天トラベル」がEV充電器の設置でパートナーシップ契約締結(2022年11月9日)
<Terra Motors>
●既設マンションにはEV用普通充電器を無料で設置~『Terra Charge』で充電事業に新規参入(2022年3月30日)
<ユアスタンド>
●機械式駐車場でもEV用充電設備は設置可能~ユアスタンドがIHI運搬機械との連携を発表(2022年10月25日)
●【集合住宅EV用充電設備事例】平面駐車場全区画で充電可能~既設分譲マンションに後付け(2022年9月16日)
<ユビ電>
●EV充電サービスの WeCharge がさいたま市の賃貸住宅駐車場全区画にコンセントを設置(2023年1月31日)
●東光高岳とユビ電が『WeCharge HUB』を発売~電気自動車充電課金の課題を解決へ(2021年6月9日)
【シャーメゾンへの設置事例(物件オーナーさんが独自設置)】
●賃貸集合住宅の駐車場に電気自動車充電用コンセントを設置した事例を拝見(2021年10月16日)
集合住宅駐車場の充電設備は、日本におけるEV普及本格化への重要なポイントにもなっています。「+e試住」に続くキャンペーンは「今まさに検討中」ということなので、これからも「+e PROJECT」の展開に注目していきたいと思います。
文/寄本 好則