Sonnen と TenneT がEVを活用してドイツ送電網に電力供給を開始

ドイツのEV充電ベンチャーであるゾネンと電力会社のテネットが、電気自動車の大容量バッテリーを活用したVPPによる送電網への電力供給を開始したことを発表しました。アメリカのメディア『Clean Technica』から全文翻訳でお届けします。

Sonnen と TenneT がEVを活用してドイツ送電網に電力供給を開始

【元記事】 Sonnen & TenneT Power German Grid With Electric Cars by Zachary Shahan on 『Clean Technica

※冒頭写真はsonnen 公式サイトから引用。

ゾネンチャージャーを利用するEVのネットワーク

ゾネン(Sonnnen)とテネット(TenneT)の両社は、EVを活用してドイツの送電網に電力供給を開始したと発表しました。テネットは、欧州大手の電力ネットワーク事業者で、ゾネンは定置型バッテリーの製造および運営をしています。テネットはこの提携を通じて、ゾネン・コミュニティ(sonnenCommunity)に参加しているEVのバッテリーを利用することができるようになります。つまり、送電網の電力供給が一時的に不安定になると、EVのバッテリーから送電することで、電力網を安定させるのです。

ゾネンの仮想発電所(VPP)にはEVが参加しています。「日常での利用の他に、EVは送電網の重要な役割を担っています。テネットの送電網に参加する複数のEVがゾネンVPPに接続し、いわゆる一次調整力(FCR)として参加しています」とゾネンはコメントしています。様々なタイプのEVがこのプログラムに参画していますが、このVPPに参加するには、バッテリーが負荷変動や周波数のずれを30秒以内に制御可能であることが求められます。

ここで留意すべきなのは、電力調整のための充放電は、それほど頻繁に行われないということです。「バッテリーの劣化を避けられるのは、高度な充電プロセスのおかげで、放電によりEVのバッテリーを普段以上に損傷することはないのです」。

現在、sonnenVPPに参加しているEVの数は公表されていませんが、今後は新たに5,000世帯のEV保有者(ゾネンチャージャーの使用が前提)が参加する予定です。

このVPPに参加すると、車の充電が必要な時に、テネットがバッテリーの電力を使ってしまうのではないか、と心配されるかもしれません。たしかにそれは問題です。そこで、このVPPプログラムでは、いつ車を利用するかを初めに申告する必要があります(ある程度の計画性が求められるのです)。

Willkommen in der sonnenCommunity | DE(YouTube)

EVが移動可能な発電所モジュールになる

ゾネンにとって、これは始まりに過ぎません。技術が発展すれば、EVやバッテリーが普及し、送電網も進化するので、より多くのビジネスチャンスが生まれるでしょう。

「インターネット時代の黎明期のように、今まさに、再生可能エネルギーのエコシステムが構築されようとしています。これまで分散して運営されていたエネルギーリソースが、ネットワークを通じて繋がることで、それぞれのリソースのポテンシャルが存分に発揮されます。エネルギー転換の次のステップは、太陽光発電や風力発電による電力供給を、適切なタイミングで、適切な場所に行うことです」とゾネンのオリバー・コッホCEOは述べています。「EVをゾネンVPPに組み込むことで、送電網の需給バランスを調整して電力を安定させるという大きな一歩を踏み出しました。今日のEVの潜在的な蓄電能力を活用することで、化石燃料を利用した発電所の減少に寄与できるのです」。

EVが普及し、交通量が増加すると、送電網に対して悪影響があるのではないか心配されるかもしれません(もし全てのEVが同時に充電を開始したらどうなるのでしょうか)。たしかに、解決すべき課題や調整すべき問題はあります。しかし、送電網への電力供給は、送電網側にもEVの所有者側にも大きな恩恵をもたらします。

「ゾネン・コミュニティのEVがVPPに接続することで、ゾネンは業界をリードし、問題を解決へと導きます」とゾネンはコメントしています。「ゾネンのVPPに参加することで、例えば、EVは夜間に風力発電の余剰電力で充電できます。つまり、昼間にガスや石炭火力発電所から供給される電力を使う必要がありません。EVは移動可能な一つの発電所モジュールとして、クリーンエネルギーのシステムの中で電力を蓄えられるようになるため、ますます化石燃料発電所は不要になります。」

これは興味深い話です。地球上をつなぐVPPが当たり前のものとなり、乗用車、トラック、SUVなど様々なEVが必要不可欠なリソースとしてVPPの一部になるのは、いつのことでしょうか。

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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