CEV補助金は35万円に決定
EVsmartブログ編集長を引き受けて以来、毎年恒例になっている電気自動車で東京=兵庫を往復する長距離実走レポート企画。今年は、6月25日に発売されたBYD『SEAL』AWDで走ってきました。
日本で発売されたSEALは完全な電気自動車のみ。後輪駆動のベースモデル『BYD SEAL』と、2モーターの『BYD SEAL AWD』という2グレードがラインナップされています。バッテリー容量はともに82.56kWhの大容量。一充電航続可能距離は、RWDが640km(実用に近いEPA換算推計値=約512km)、AWDが575km(EPA換算推計値=約460km)と、東京〜兵庫の約600km程度なら、途中の急速充電1回で余裕をもって完走できる性能です。
車両価格はBYD SEALが528万円~(※以下表記価格はすべて税込)、BYD SEAL AWDが605万円~。ただし、1000台限定の導入記念キャンペーン価格で、BYD SEALが495万円~、BYD SEAL AWDが572万円~となっています。8月5日には発売後の受注台数が1カ月強で300台を突破したことが発表されましたが、1000台まではまだ少し余裕があります。
また同日、国のCEV補助金がBYD SEALは45万円、BYD SEAL AWDは35万円に決定したことが発表されました。今回の相棒であるAWDモデルは、キャンペーン価格の572万円から補助金額を引くと、実質の新車価格が537万円ということになります。
最高出力はフロントが160kW(約218PS)、リアが230kW(約313PS)で、合わせて390kW(約530PS)と高性能。0-100km/hが3.8秒という圧巻の速さをもつスポーティセダンとして、とても魅力的な価格の一台です。
往路は湾岸長島PAの150kW器で充電1回
往路の充電レポートはシンプルです。今回、但馬へ帰る前に神戸のBMWディーラーで別件取材をすることになったので、ひとまずのゴールは名神吹田SA(下り)にしました。世田谷区の自宅からの距離は約480km。吹田SAには90kW器があるし、省電費運転を心掛ければ無充電でゴールできるかもというディスタンスです。
とはいえ、せっかくの高性能スポーティセダンだし、新東名の120km/h区間は気持ちよく120km/hで走りたい。休憩だって必要だし、少々ペースアップして走っても、最大出力150kWの急速充電器で1回充電すれば余裕でゴールできるはずと考えて、私が選んだのは伊勢湾岸道、湾岸長島PAの150kW器でした。
途中、経路上の150kW器があるSAPAをEVsmartで検索すると、こんな感じです。
新東名駿河湾沼津SA、浜松SA、そして伊勢湾岸道の湾岸長島PAですね。自宅から湾岸長島までの距離は約340kmなので、まったく問題ありません。
少し気になるのは、設置されている最大150kW器は2口仕様で、2台同時充電時は最大90kWに制限されてしまうのと、ブーストモードで150kWの最大出力を享受できるのは最初の15分限定ってこと。
とはいえ、SEALの急速充電性能は最大105kWであり、もし90kW制限がかかったとしても損失(?)は大きくないので、「ま、いいか」と割り切れます。
というわけで、往路の充電は湾岸長島PA(下り線)の1回のみ。
【充電結果】
到着時間●23時30分
到着時SOC●29%(航続可能距離表示/159km)
充電後SOC●60%(航続可能距離表示/335km)
充電時間●約15分
推定充電量●約25.6kWh
15分の充電1回で但馬の実家までゴールできるとは
話がややこしくて恐縮ですが、翌朝は神戸のBMWディーラーが設置したパワーエックスの150kW器を取材することになっていました。湾岸長島から神戸のディーラーまでの距離は約170km。充電を試すためにSOC20%以下くらいで到着したいので、湾岸長島での充電は約15分、SOC60%で止めました。
吹田SA(下り線)には、午前1時40分、SOC32%で到着しました。神戸の取材先までの残りは約40km。ここで朝までエアコン効かせた車内で仮眠して、SOC20%くらいで到着できる算段で、我ながら思惑通りの展開です。
「それにしても」と感嘆したのは、吹田到着時のSOC32%で航続可能距離が170kmと表示されていて、実家までの残り約140kmさえも走り切れるじゃないか(実際には上り基調のルートなのでちょっとだけ足りないと思うけど)って状況だったこと。
15分の途中充電1回で、東京〜兵庫但馬の約630kmを走れたら、何の不満や不安があるものかって感じです。
実際、深夜の高速で快調にSEALを走らせながら、私の脳裏に浮かんだのは「これはもう、グランドツアラーだよな」って感想でした。いわゆる「GT」ですね。バイトに明け暮れた学生時代、GTの名を冠するクルマに憧れたものです。なんとか手に入れた中古の軽や廃車寸前のサニーを走らせながら、どこまでも、快適に、スポーティに走っていける「GTをいつかは買えるようになりたい」と願いました。
つまり、BYD SEALはエンジン車にも負けないGT性能を楽しめるクルマになっているということです。航続可能距離表示や電費はそんなに気にすることもなく、気持ちよく走ることを楽しめました。80kWhを超える大容量バッテリーと、出力90kW以上の超急速充電インフラがあれば、EVは上質なGTとなり得るのです。
より上質なスポーティセダンとなるために
加速性能やボディの剛性感は欧州ブランドの超高級車レベル。15分の充電(休憩)1回で東京〜神戸を余裕で走破する航続距離性能。それでいて、新型アルファード(ハイブリッドのAWDで約642万円〜)よりも手頃な価格というコストパフォーマンス。
補助金使った実質的な新車価格が約537万円というBYD SEAL AWDが、「EVが気になるけど航続距離が不安」とか「EVでも4駆がいいなあ」という方にオススメの1台であることは間違いありません。
ただし、東京=兵庫往復という長い時間を共にして、もうちょっと頑張ってほしいと感じた点もあります。BYDのEVは今後ますます日本でも存在感を増していくでしょうし、OTAを含めて、より魅力的なEVとするために完成度を高めている途上だと思うので、期待を込めて、あえて列挙しておきます。
●センターディスプレイの地図表示がでか過ぎる
まず、センターディスプレイの地図表示がでか過ぎて、やや稚拙に感じてしまうことです。ステアリング奥のメーターディスプレイの表示項目も、まだまだ整理や工夫の余地があるように感じました。センターディスプレイの右上には路面の傾斜を表示してくれているのは良い点ですが。2つのディスプレイの表示項目などをさらに突き詰めて、区間電費など、ドライバーとバッテリーのコミュニケーションを助けてくれるデータとか、手軽に確認できるようになるといいですね。
目的地設定で音声入力が使えないのも早急に改善してほしいポイント。あと、センターディスプレイを横向きで使っている時、ハイウェイモード表示でSAPAなどへの距離が、ステアリングを握る自分の手で隠れて見えにくいってところも気になりました。
●レーンキープアシストの信頼性が少し足りない
次に、ACCとともにレーンキープアシストを使っている際、車線内で少し左右に揺れるような感じがあって、車線を踏み越えそうになる(おもに右車線が多かった)ことがあり、修正操舵がかなり強く急激に介入してくるのが気になりました。
結構頻繁に介入してくるので、設定画面を呼び出してレーンキープ機能をオフにして走っている時間が長かったくらいです。せっかくの先進運転支援機能。これからどんどん熟成されて使い勝手がよくなっていくポイントだと思うので、できればOTAで、少しでも早く改善されるといいですね。
全体として、運転席に座ってハンドルを握った印象はポルシェタイカンのような超高性能スポーティセダンに近いものの、足りないのはちょっとしたディテイルから感じられる「品格」のようなものではないかという印象でした。
このあたり、晴れてSEALオーナーとなったみなさんからもどしどしBYDにフィードバックして、磨き上げていってもらうしかありません。基本性能は文句なしのBEVです。オーナーとメーカーが一緒に育てていく一台としての可能性を感じたのでした。
最後に、2018年末に私がEVsmartブログに寄稿を始めてから積み上がってきた、東京=兵庫のレポート記事リンクを貼っておきます。EVと充電インフラの進化(実家に200Vコンセント付けたの含め)が感慨深いです。
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取材・文/寄本 好則
これだけのスポーツ性能で500キロ以上走れるのが凄いですね。以前乗っていたスポーツカーは500キロが限界で何度ガス欠したことか。私の場合は片道200キロ程度のドライブが多いので出先での充電不安がほぼ無くなりそうです。