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100kWhのバッテリーを搭載「Audi Q6 e-tron」試乗レポート/電気自動車にとっての「高級」を体感

100kWhのバッテリーを搭載「Audi Q6 e-tron」試乗レポート/電気自動車にとっての「高級」を体感

アウディジャパンが4月に発売した新型EV「Audi Q6 e-tron quattro advanced」に試乗しました。800Vアーキテクチャーを採用して100kWhのバッテリーを搭載して一充電走行距離は644kmという余裕の性能。また、4月にオープンしたばかりの「Audi charging station 厚木」で超急速充電も試してみました。EVとしての長所や短所がどうこうといった些末を評する言葉は必要のない、魅力的な高級電気自動車です。

目次

アウディらしい電気自動車としての進化

アウディジャパンが2025年4月15日に発売したばかりの「Audi Q6 e-tron quattro advanced(以下、Q6 e-tron quattro)」のメディア向け試乗会に参加してきました。Q6 e-tron quattro は、アウディとポルシェの共同で新たに開発されたプラットフォーム「PPE(Premium Platform Electric)」を採用された「Q6 e-tron」シリーズの中核モデルです。

PPEはシステム電圧800Vのアーキテクチャーを採用しており、今後、日本でも設置が進んでいくことが期待されている最大出力350kW超の急速充電器の恩恵を享受できる充電性能のポテンシャルを備えています。ただし、現段階ではソフトウェアによって急速充電の最大出力は135kWに制御されており、高電圧対応の急速充電器を使用してもそれ以上の出力での充電はできません。高電圧対応の超高出力充電器の設置状況を見極めながら、ソフトウェアアップデートなどの対応がされていくことになるでしょう。

いきなり充電の細かい話をしてしまいましたが、Q6 e-tron quattro に初めてじっくり乗って感じたのは、アウディの電気自動車を所有することに対する大きな満足感です。もちろん、私のマイカーではないので「もしも購入してハンドルを握ったらそんな風に感じるだろうな」ということですけどね。

サイズは全長4,770×全幅1,965×全高1,670(mm)で、ほぼ2mに近い全幅のボディは貫禄十分ではあるのですが、今回試乗した厚木市内と宮ヶ瀬湖を往復する道幅狭めの山道でもハンドリングは適度に敏捷で軽快。短時間ながら走った高速道路(新東名)では、しっとりと安定感のあるハンドリングや、必要十分にして余裕のある加速フィーリングを確かめることができました。

「Q6 e-tron」シリーズには、バッテリー容量83kWh(ユーザーが実際に使用できるネット容量は75.8kWh)のベースモデル「Audi Q6 e-tron」、今回の試乗車である、バッテリー容量100kWh(ネット容量は94.9kWh)の「Audi Q6 e-tron quattro」。そして、最大360kW(ローンチコントロール使用時は 380kW)のシステム出力を誇るスポーツモデル「Audi SQ6 e-tron」がラインナップされています。

加速性能を推し量る目安となる0~100km/h 加速は、「Audi Q6 e-tron」が7.0秒、「Audi Q6 e-tron quattro」で5.9秒、「Audi SQ6 e-tron」が4.3秒となっています。そもそもシームレスでパワフルな加速感は電気自動車がもつ特長であり、もっと速いタイムをアピールしている車種がたくさんあります。でも、試乗したQ6 e-tron quattroの5.9秒という加速性能(ベースモデルの7.0秒でも同様でしょう)は公道における走行シーンでは十二分にパワフルで俊敏です。

気持ちよく走れる「自動回生」とパドルシフト

回生ブレーキの使いこなしも、高級EVを磨き上げてきたアウディらしさを感じます。Q6 e-tron は、先行して発売されている「Q4」や「Q8」と同様に、ステアリング奥に配置されたパドルスイッチで回生ブレーキの強さをコントロールすることが可能です。今回、基本的にはセンターディスプレイの設定で「自動回生」を選択して走りました。自動回生では先行車との車間を認識しながら、回生ブレーキの強度をオートで調整してくれます。先行車がない場合はコースティング(回生ブレーキを使わない惰性走行)を上手に多用しながら、自然なフィーリングで気持ちよく走行できます。

一方、山道の下りでも先行車がいないとコースティングで速度が上がり気味になることがありましたが、そんな時はパドルシフトで回生を調整しながら安心感の高い運転をすることができました。こうした回生ブレーキ制御の使い方は、テスラやボルボ、メルセデス・ベンツ、BMW、ヒョンデ、BYDなど、EVを発売するメーカー各社でさまざまな個性がありますが、アウディの自動回生とパドルシフトのバランスは、とても使いやすいと感じます。

ドライブモードは「D」と「B」を選択可能で「B」にすると回生ブレーキが強くなり、アクセルオフで完全停止することも可能です。Bモード時以外、自動回生やパドルでの選択では完全停止するワンペダルモードにはできません。

電気自動車における「高級」という価値を具現化

ボンネットを開けると容量たっぷりのフランクがあります。

いろんなEVに取材で乗る機会があるなかで考えさせられるのが、自動車がEVになると「高級」の定義がエンジン車とは少し変わっていくんだろうなということです。

エンジン車における「高級」を象徴するのは「静かさ」や「パワフルさ」、「重厚感」といった印象だったと思います。ところが、EVになるとコンパクトな大衆価格の車種であっても静かでパワフルな加速が持ち味です。エンジン車に比べると車格が低くても車重があったりもして、安いエンジン車にありがちなペラペラ感やドタバタ感(かなり主観的な擬音表現ですけど……)は抑えられていると感じます。

3月に行われた発表会で、アウディジャパンのブランド ディレクター、マティアス・シェーパース氏は「Q6 e-tronがとても魅力的なプレミアムEV」であることを強調していました。

短時間の試乗では細かく試したり確認することができなかったものの、Q6 e-tronは世界初の「アクティブデジタルライトシグネチャー」を機能を備え、非常停止する際などは周囲のドライバーや歩行者などに向けてデジタルOLEDリヤライトで注意喚起するサインを表示してくれます。また、ディスプレイを通じたユーザーインターフェースを司る電子アーキテクチャーも進化しています。

言葉にしてしまうとちょっと陳腐ではありますが、Q6 e-tronは「スムーズで気持ちいいモビリティの具現化」を目指していて、またそれこそが「アウディが提言する高級EVの価値」なのだろうと感じたのでした。

Q6 e-tronについて、グレード別の価格などを一覧表にしておきます。今回試乗した「Audi Q6 e-tron quattro advanced」(S line パッケージなど装着車)の車両本体価格は998万円(税込)。令和7年度のCEV補助金額は52万8000円です。私の勝手なアウディ車へのイメージですが「ウィットに富んだジェントルマンの愛車にぴったり」な高級EVだと思います。

バッテリー
総電力量
駆動方式車両本体価格
(税込)
Q6 e-tron83kWhRWD8,390,000円
Q6 e-tron quattro100kWhquattro9,980,000円
SQ6 e-tron100kWhquattro13,200,000円

最大約110kW。約12分で60〜80%まで充電

今回、メディア向け試乗会が神奈川県厚木市の会場で開催されたのは、2025年4月18日にオープンしたばかりの「Audi charging station 厚木」での充電を試すためでもありました。

アウディジャパンでは、急速充電サービスを展開するパワーエックスの蓄電池式超急速充電器「ハイパーチャージャー」を導入して、2024年3月にAudi charging hub 紀尾井町」を開設(関連記事)。今年の4月には「Audi charging hub 芝公園」と、この「Audi charging station 厚木」を開設しました。

同じハイパーチャージャーを使ってアウディが展開する急速充電施設ではあるものの、都心に設置した「charging hub」は近隣のアウディEVオーナーが「基礎充電代替」で利用することを重視しており、アウディなどフォルクスワーゲングループの電気自動車オーナーを対象としたプレミアム チャー
ジング アライアンス(PCA)メンバー限定の充電器と、他社EVオーナーも利用可能な充電器を用意していました。

厚木に開設された「charging station」は、長距離移動途中の「経路充電(アウディでは「経由地充電」と説明していました)」にフォーカスしたスポットです。「Audi charging station 厚木」はアウディの正規販売店である「Audi 厚木」の敷地内に設置されていて、新東名南厚木ICからの距離はすぐそこという好立地。最大出力150kWのハイパーチャージャー2基4口を、すべてのEVユーザーが利用できるよう24時間365日開放しています。

ハイパーチャージャーでの充電には、パワーエックスの専用アプリが必要(※PCS会員の方はPCAアプリからも充電可能)です。充電方法などは今までにもいろんな記事でレポートしているのでご参照いただく(関連記事)として……。

今回はSOC(バッテリー残量)60%でステーションに到着。おおむね12分程度で車両にあらかじめ設定されていた充電限度の80%まで充電することができました。電力量は概算で約19kWh。60%という高めSOCからの充電でしたが、開始直後は110kWを超える出力を確認。終了直前も99kWh程度の高出力を維持していました。

Q6 e-tron とハイパーチャージャーの組み合わせは「スムーズで気持ちいいモビリティ」実現のためにも相性抜群。航続距離がぁとか、充電時間がぁといったEV否定が時代錯誤であることを痛感します。

ちなみに、アウディでは「Audi charging hub 1st Anniversary campaign」を2025年8月31日まで実施中。全EVユーザーを対象として、Audi charging hub 紀尾井町、Audi charging hub 芝公園、Audi charging station 厚木の3拠点で、30 分間の急速充電を無料で期間中何回でも体験することができます。

願わくば、経路充電設備としての「Audi charging station」が厚木だけにとどまらず、全国各地、基幹高速道路路線のICに拡大してくれることにも期待したいと思います。

取材・文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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