BMWが電動化時代の販売戦略を発表〜完全電気自動車を倍増へ

BMWグループが『新しい販売およびマーケティング戦略』と題したリリースを発表。2023年までに25車種の電動車をラインナップして、その半分以上を完全な電気自動車にするとしています。

BMWが電動化時代の販売戦略を発表〜完全電気自動車を倍増へ

電動化への具体的な目標を明示

2021年1月15日、ドイツのBMWグループが『New sales and marketing strategy: BMW Group optimistic about 2021 after posting record Q4 sales 』(新しい販売およびマーケティング戦略:第4四半期の好調な結果を受けて2021年に明るい見通し)と題したリリースを発信。

電気自動車を重要な成長戦略に位置付けて、完全な電気自動車(BEV)の販売を倍増させる計画を明示しました。また、2025年までに大きな投資を実施して、販売やマーケティングのデジタル化を進めるとしています。

リリースでは、BMWが現在、プラグインハイブリッド車(PHEV)を中心に、世界の市場で13モデルの電動車(BEVとPHEV)をラインアップしていると説明。2023年までに実質的に2倍となる25モデルの電動車を提供し、その半分以上はBEVモデルとすると明記しています。また、BEVについては、2021年に「販売を50%以上増やす」という目標も示しました。

現状、BMWグループのBEVとしては、レンジエクステンダー搭載モデルを含む『i3』のほか、欧州などでは2020年にBMW『iX3』、MINI『クーパーSE』を導入しています。2021年には、さらにBMW『iX』と『i4』の生産を開始するとしています。

PHEVモデルについては、BMWブランドで9車種、MINIブランドで1車種が日本にもすでに導入されています。

【関連ページ】(EVsmart 電動車車種一覧)
BMWのBEV
BMWのPHEV
MINIのPHEV

販売やマーケティングのデジタル化も推進

また、2025年までに毎年数億ユーロを投資して販売とマーケティングのデジタル化を進めることも明言。完全にオンラインでの車両購入や、オンラインでの車両機能のアップグレード範囲を大幅に拡大していくとしています。ただし、既存ディーラー網を置き換えるのではなく、販売パートナーと緊密に連携してBMWならではの新しいサービスを構築していくとのこと。

テスラがもたらした自動車販売の革命に、プレミアムブランドとして最適化したサービスの構築を進める覚悟と計画を示しています。

さらに、リリースの最後を締めくくっているのは「no premium without sustainability」=「サイスティナビリティ(持続可能性)なしにプレミアムではあり得ない」という言葉。「サスティナビリティ」は、自動車メーカーとしてグループ全体で高いCO2排出削減目標を達成していくことを意味しています。ただ、それだけではなく、電動化シフトの中でプレミアムブランドとして生き残っていく、つまり持続可能とするためには、脱エンジン車=電動化にチャレンジして、独自のクオリティやサービスシステムのブラッシュアップを進めていくことが重要です。

2021年の「明るい(楽観的)見通し」を語るBMWグループの発信には、電動化や自動車販売革命に対する明確で前向きな姿勢を感じることができました。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. EUの将来の規制については、EUメーカーがどれだけEVシフトが出来たかによって大いにゴールポストが変わりそうですね。
    バッテリーのコストが下がるにしても、廉価ガソリン車を置き換えるまで下がるかどうか(同時に小型車に向いた重量/体積効率の向上したバッテリーが開発できるか)や、充電インフラの課題もあるため、全てがEVになるとは考えにくいですので、記事中にあるように、EV以外でも低炭素を達成していく事が大事かと思います。
    レクサスを例に挙げられていますが、どちらかというと大型高級車のほうからEV化され、小型廉価車と一部趣味性の車が最後かと思いますがいかがでしょうか。

  2. 電気動力車が全て気持ち良い。とは今の時点では言い切れない。勿論オーナーとして。
    今月でBMWのPHVが2台。モデルXとなるがX5はオプションも似たような物で大きさも価格も同額だ。で果たしてそんなにテスラの方がステキだろうか、テスラへ
    の不満も多い。X5の不満も出るだろう。決め付けは良くない。全個体電池の話もろくにチャデモの数足りない内に其れを言われても台数やインフラ増やしてからの話だ。どんだけ電圧必要になるか、水素と同じく未来の話。結局スーパーチャージャーも出来ず中央道はリーフや小さなPHVに占領され100wはたった30分でどれだけ走れるのか。冬は寒いし夏は暑い。3年半乗って良いところも悪いところもある。良いところだけ騒ぐのはミスリードにもなる。両方持つから冷静に比較出来る。フェラーリの時に平気でポルシェやランボの悪口を言い。両方持った入る友人がやな顔してた。否定合戦は良くない。PHVにも良いところはある。特に街乗りはBEと同じだ。

    1. PHEV乗り 様、コメントおよび記事のご紹介ありがとうございます。
      こちら拝見しましたが、二点、大きな想定をされていると思います。
      (1) 電気自動車の価格が下がらないこと
      (2) 2030年欧州基準はプリウスでも満たせないことを楽観視

      まず(1)については、BNEFがガソリン車の価格に対し、電気自動車は2022年にも価格競争力を持つようになる、と推測しています。
      https://blog.evsmart.net/ev-news/electric-vehicles-cost-parity-in-2022/
      もし電気自動車の価格が来年や再来年に下がるなら、完全電気自動車シフトの準備が間に合っていない自動車メーカーは打撃を受ける可能性が出てくると思います。

      (2)についてですが、実際に計算してみると現状は、2030年には完全にシフトが終わっていないと無理、というようなレベルであると思います。
      欧州では、2030年に2021年比37.5%減。これは欧州WLTP基準で70g-CO2eq/km前後となります。ミライースをJC08基準で記事中では語られていますが、これは日本独自の甘い基準。欧州WLTPは、130km/h以上のExtra Highを入れて計算するため、日本で販売されているようなトール型やミニバン型の車両は空気抵抗が非常に大きくなります。
      ※2030年時点でのWLTP 70g-CO2eq/kmのソース↓
      http://www.fourin.jp/pdf/info/multi/ElectrcVehicleStrategyGAI/sample01.pdf

      池田様が記事中で挙げられているプリウスは94g/km@WLTP。目標の70gを達成するには25%も燃費を向上させる必要があるのです。しかも、プリウス以上のサイズのSUVも大型セダンも全部、です。
      つまりどういうことか。2030年にハイブリッド車がラインアップに入っていたら、それらは足を引っ張る存在になるということです。本稿では、そこについては述べられていませんね。

      ご参考までに、ヤリスHVを見てみましょう。
      https://www.carmagazine.co.uk/car-reviews/toyota/yaris-hatchback/
      86g/kmですね。これでもまだ、2030年欧州基準の70gは満たすことができていません。

      9年後の時点で、HVが残ってもよいのは事実だと思います。例えば仮にフリート全体で70gを目指し、HV車種の平均が120g程度と仮定した場合、HV車種の販売比率は58%にすることが可能。残りの42%は全てBEVかPHEVにする必要があります。
      120gは多いように見えますか?
      レクサスIS 300h: 137g https://www.nextgreencar.com/emissions/make-model/lexus/is/
      レクサスNX 300h: 171g https://www.nextgreencar.com/emissions/make-model/lexus/nx/
      なかなかハードルが高いことがお分かりいただけると思います。当然、トヨタさんは車内でこのような計算はされていて、厳密に販売しなければならない電気自動車の開発・製造・販売計画を練られていることと思います。

    2. PHEV乗り さま、コメントありがとうございます。

      安川さんからの回答もあるので、端的に思いを2つ。

      まず、HVが電動車であるとするのはすでに世界標準の考え方ではなくなりつつあります。もちろん、サステナブルであるためには多様化も大切なので、HV技術やエンジンが数年のうちに不要になるとは思いません。とはいえ、「HVも電動車」を旗印にして本格的なBEV開発に遅れを取って、日本の自動車産業が世界での競争に敗れ去る結果になることを危惧しています。

      ふたつ目は、EV普及の意義はCO2排出削減、環境対策として語られることが多いですが、それだけではありません。もちろん走行時にCO2を排出しないこと、そして発電の再生可能エネルギーシフトへの意識を高め、社会的機運を後押しする価値はあると思います。でも、実は電動化シフト=エンジン車からEVへの変化にとって最もポイントになるのは、乗り物としてEVのほうが気持ちいいことだと感じています。今、市販EVには高級車が多いですが、軽自動車をはじめ、より大衆的なモデルほど「EVのほうが気持ちいい」効果は絶大です。これは、i-MiEVを愛している方なら共感いただけると思うんですけど。
      日常的な乗り物としてエンジン車がEVに凌駕される時(おそらく、ほんの数年先)、日本の自動車メーカーにも世界と勝負できるバッテリー製造能力を築き上げ、EVのモデルバリエーションを揃えておいて欲しいな、と願っています。

  3. 電気自動車

    まあ、ワーゲンと並んで。
    バッテリーに莫大な投資をしたんでしょうね!(笑)

    莫大な投資?
    ワーゲンと組んだかな?

    電気自動車のエンジン?
    電気モーターでは無くて、バッテリーですからね!(笑)

    某大メーカーさんは、常に他からエンジンを購入するかな?
    ヤマハ発動機とか?スバルやBMWとか?(笑)
    内製もするが、他のメーカーからね!

    自動車メーカーに取り、エンジンの開発とは?社の誇り・魂だと考えますが!

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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