新潟県上越市でコイン課金式6kW普通充電器に遭遇〜とてもいいけど課題は価格か?

電気自動車についての講演の機会をいただいて新潟県上越市へ。会場となった会社の駐車場で、なんとコイン課金式の6kW普通充電器に遭遇しました。待合室もあってワンダフル。ただ、調べてみると課金器の価格がまだ少々お高いようでした。

新潟県上越市でコイン課金式6kW普通充電器に遭遇〜とてもいいけど課題は価格か?

新井電機の駐車場にコイン課金式6kW普通充電器が!

震災から12年となった3.11。日産アリアで新潟県上越市に出かけてきました。ちょっとややこしいんですが、新潟県自動車電装品整備商工組合が主催する「先端技術(エーミング作業等)の設備体験会」という2日間にわたる講習会の1日目、「電気自動車(EV)技術および制作等の体験会」というプログラムに、私も関わっている一般社団法人日本EVクラブが協力して、電気レーシングカート(ERK)や日産アリア、フォルクスワーゲン ID.4 の試乗や、EVの構造やのERKの構造などの座学講演会を開催。座学の一環として、EVクラブ代表理事の舘内端さんによる「なぜEVなのか?」に加え、私が最新EV動向として「電気自動車は本当に普及するのか」というタイトルで、世界の市販EVの現状などを講演する機会をいただいたのでした。

シャッターを閉めた整備工場に机を並べて講習会。話しているのは舘内さんです。

ちなみに、座学のもう一コマでは、EVsmartブログ筆者でもある木野龍逸さんが「EVと充電インフラは切っても切れない仲」と題して充電インフラの現状とこれからについて講演。舘内さんにもEVsmartブログでは連載していただいてますし、EVsmartブログ三昧な講演会となりました。

と、それはさておき。準備のために前乗りした10日の午後、講習会の会場となった新井電機株式会社に到着すると……。なんと、駐車場の正面に、2台のEV用普通充電器が設置されていました。しかも、見たことのない黒いボックスが並んで設置されています。社長の新井康祐さんに伺うと、この黒いボックスはコイン課金器で、100円玉や500円玉を入れると設定した時間分の普通充電ができるとのこと。

充電器はパナソニックのELSEEV(エルシーブ)で、6kW出力に対応した機種です。長くEV取材を続けていますが、コイン課金式の充電器に遭遇したのは初めてのこと。それだけでも素晴らしいのに、6kW普通充電対応というのはエクセレントです。

新井電機社長で新潟県自動車電装品整備商工組合理事長の新井康祐さん。

しかも、新井さんに充電料金を伺うと100円当たりの充電時間は設置者が設定できて、「今のところ、会社のお客様が使うことを前提に考えているので、100円で1時間に設定している」とのこと。100円で6kWhでは電気代だけでも完全に足が出てしまいますが、「EV普及は日本社会の課題。私自身まだ自分がEVユーザーではないですが、できることから率先して始めたいという思いから、EVで来社されるお客様のためにコイン課金式普通充電器を設置しました」と新井社長。本社社屋の一角には、EV充電待合室まで備わっていました。

アリア(B9だったのでバッテリー容量は90kWh)で200円分、2時間の充電を試したら、70%ほどだったSOCは80%以上に回復。普通充電とはいえ、出力が6kWあると大容量車で短時間でもそれなりにしっかり充電できたと感じます。新井電機にこの充電器が設置されたのは「3月はじめ」で、まだ運用を始めたばかりでした。基本的には誰でも使える充電器ということなので、会社のゲスト以外の方がたくさん使うようになると、充電料金の改定があるかも知れません、ね。

ちなみに、今回の私は100円玉を1枚ずつ、2回に分けて投入しましたが、一度に300円を投入すれば3時間分とか、投入金額に応じた時間の充電ができるそうです。500玉を入れたら、当然5時間分になります。ただし、途中で充電を終了しても投入したコインは戻ってきません。

コインを入れると残り時間を表示。カウントダウンされていきます。

白馬の宿ではこの課金器の見積も

コイン課金の充電器といえば、以前(3年ほど前だったと記憶してます)、栃木県の松山音響工芸という会社が発表した際に電話取材したことがありました。そのときは、まだ本格的に販売できる状況ではないということで、記事にはしなかったのですが。新井社長に話してみると、この課金器はまさに松山音響工芸が作ったものでした。いやあ、電気自動車の世界はまだまだ狭い。

課金器の価格を新井社長に確認すると「待合室とか充電器とかまとめてやったから、細かく覚えていない」ということで、後で確認してもらおうと思っていたのですが……。

上越市での講演が終わり、今年も7月22日〜23日に開催を予定している「ジャパンEVラリー白馬」の打ち合わせをするため、白馬村のあぜくら山荘にもう一泊。 自己申告課金制度実証実験(レポート記事はこちら)の仕掛け人でもある白馬EVクラブの渡辺俊介さんに新井電機のコイン課金器のことを話したところ、なんと「ああ、一度見積もりを取ったことがありますよ」というではないですか。

その後、松山音響工芸の公式サイトなどを見て、新井電機に設置されていた課金器は「EEL-PAY」という機種であることを確認。白馬EVクラブへの見積もり金額は19万4000円(3kWのEV用コンセント用)だったそうです。

松山音響工芸にも電話で確認すると、課金器の価格は対応出力や塗装色、ポールの有無など仕様によって変わるのでオープン価格としているものの、白馬EVクラブに提示された19万4000円はベーシックな価格であるとのこと。コイン課金という仕組みや、500円玉も使える機能はとても良いと感じるものの、やはり、少々高価である印象は否めません。新井電機のものは6kW対応だったので、おそらくもう少しお高くなっているかと思います。

宿泊施設などが3kWの充電コンセントを設置して利用するゲストに課金する場合、電気代プラスアルファで1時間100〜150円程度の料金設定になるでしょうから、おおむね20万円の元を取るまでには長い年月が掛かるし、これから充電器を付けようとする宿などにとって課金器だけで20万円の負担は少々重い(経産省の充電インフラ補助金の対象充電器やコンセントを設置する場合、工事費の一部として補助金の対象になるはず、とは思いますが要確認です)、ということになります。

ちなみに、私がコイン課金式の充電器とは初遭遇であり、日本初じゃないの? と思いましたが、EVsmartで調べてみると群馬県のサンコー72カントリークラブに以前からコイン式の普通充電器があるようです。また、松山音響工芸に聞いたところ、昨年発売した「EEL」シリーズの課金器は、すでに時間貸し駐車場などに3〜4件の設置事例があるとのことでした。

ともあれ、EVsmartブログの運営会社であるENECHANGEをはじめとして、複数のEV充電サービス企業が展開するアプリ課金に加えて、コイン課金式という選択肢が本格的に登場したのは素晴らしいこと。つくば市のBell Energyが発売したクレジットカードで手軽に課金できる充電器も登場したのは、以前レポートした通りです。

EV車種の選択肢も着々と増えつつある日本で、充電の利便性がますます高まっていくことに期待しています。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)11件

  1. 急速充電器ではコイン式昔からありますね
    伊勢神宮外宮近くの伊勢市役所では少なくとも9年前からコイン式が2台設置されています。44kW出力です。
    昔は300円で80%まで
    今は100円/6分で提供されています。

  2. コイン式充電器の良い点は、初期費用だけで運用ができることです。スマホのシステムを使うと予約ができるなど高機能ですが、通信するためランニングコストが必要です。案外高額の場合もあるので、できるだけ安く
    運用したい人にとってはコイン式のほうがありがたい。私のマンションも充電器設置進行中ですが、コイン式にしようかなと思っています。
    また、システムを導入するとそれに縛られて後の変更が難しくなります。EVだけでなく充電器も進化の過程なので、現状では身軽にしていたほうがあとで良いものが出たとき対応しやすいと思います。なお、松山音響工芸に聞きましたが、コイン式は補助金は使えないそうです。
    ところで、このブログとは関係ありませんが、YouTubeで勝間和代さんが購入したアリアのレビューを行っていました。なかなか有益な発言もあったので、取材してみてはどうでしょうか。あるいは、本人のレポート
    でもよいと思います。

    1. seijima さま、コメントありがとうございます。

      > 松山音響工芸に聞きましたが、コイン式は補助金は使えない

      問い合わせたのはいつのことでしょう。
      ポール型やコンセント一体型の課金器機種だと充電器として認証を取らなきゃいけないでしょうから話がややこしくなると思いますが、新井電機に設置されていたような別筐体であれば。NeVのコールセンターに電話で確認した限りでは、急速充電器の認証器と同様に、設置工事費のなかの部材費として適用可能、という回答でした。
      まあ、実際に申請手続きをしてみないとどうなのかよくわからないですが。認証器はOKで課金器はNGというのは、理屈が通らぬ気がします。

    2. 問い合わせは昨日です。松山音響工芸の課金機には、充電コンセントと一体となったEEL-αという機種と課金機能のみのEEL-Payという機種があります。EEL-αで話をしていたので、担当の人は充電器と思って補助金対象ではないと判断されたのかもしれません。もし補助金が使えるなら嬉しいですね。20万程度するので。

  3. イオンの普通充電が、3kWで1時間120円(WAONポイント決済)ですから6kWで1時間100円といのは素晴らしいですね。
    ただ残念な事にSakuraやekクロスEVは、普通充電が3kWまでなので6kW出力の恩恵を得ることが出来ません。(急速充電30kWまで)
    MiEVシステムを採用すれば良かったのに。

  4. 私、ワレンベルグの住まい周辺の道に駅は、何年も前から、コイン課金の普通充電器ばかりです。

    道の駅 田原めっくんはうす
    [普通充電器]
    認証システムなし。
    充電1時間100円(課金器)。
    お支払いは現金のみ。 

    道の駅 あかばねロコステーション

    充電1時間100円(課金器)。

    渥美半島の道の駅は、この方式課金メインです。

  5. 適正利益を上げられる仕組みにしないと結局普及せずに終わってしまう。
    都市部では駐車料込み1時間1000円といった価格付けが必要だろう。

  6. 白馬の自己申告課金の記事にコメントしましたが、コインタイマー単体ではそれほど高いものではありません。
    こちらの製品は100円玉と500円玉を使える様になっている点で多少高級機なのと、200V対応+盤に組み込んでいる為の価格でしょうか。

    1. ゆきぽんさん、コメントありがとうございます。

      白馬の見積もりは3kW用です。言葉足らずだったので記事にも追記しました。

      ご指摘のように、少々高いですね。ほぼオーダーメイドの手作りゆえ、と推察しますが、価格が手頃になったり補助金が使えたら、コイン課金式の普通充電器が増えるかも知れないと思います。あとは、賽銭泥棒のような課金器荒らしが現れないことを祈ります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事