クレジットカード決済で6kW普通充電可能な「BellChargeつくばスポット」を現地レポート

2022年8月8日、Bell Energyが茨城県つくば市内にクレジットカードで簡単に決済ができる普通充電スポット「BellChargeつくばスポット」を開設しました。面倒な認証手続きが不要の充電器は貴重です。さっそく現場確認に行ってきました。

クレジットカード決済で6kW普通充電可能な「BellChargeつくばスポット」を現地レポート

前時代的な現状のシステムから大きく前身

朝から30度近くになる8月のある猛暑日、寄本編集長のリーフに乗って、筑波に新設された普通充電器スポット「BellChargeつくばスポット」へ現地確認に行ってきました。「つくばスポット」は、電気自動車関連機器開発などを手掛けるBell Energy株式会社(本社:茨城県つくば市、以下、ベルエナジー)が独自に設置した6kWの普通充電設備です。

【関連情報】
クレジットカードで決済可能な「BellCharge つくばスポット」~まずは普通充電器から一般利用開始(2022年8月3日)

ベルエナジーの普通充電器は「Bee Meter VPOS Touch」というモデルで、「BellChargeつくばスポット」のほか、8月10日には千葉県成田市のANAクラウンプラザホテル成田に2台設置し、運用を始めています。

最大の特徴は、会員にならなくてもクレジットカードを使って簡単に利用できることです。この利便性を体験しないわけにはいきません。

現状の充電インフラはe-Mobility Power(イーモビリティパワー)が設置したものがほとんどを占めていますが、自動車OEMなどが用意した会員カードを持っていないと利用するのにとても面倒なのが玉にきずでした。

使う時に、専用アプリでQRコードを読み取ってクレジットカード情報やメールアドレスを入力しないといけないのは、非会員の利用を制限し、ひいてはEV普及期の大事な時期に不便さを印象づけてしまうようにも思います。ちなみにApp Storeでの専用アプリの評価は「1.8」でした。なんだかすごく残念です。

カード認証から充電開始までの手順はとてもシンプル

「BellCharge つくばスポット」に設置されている普通充電器は、コネクターが1個口の「Bee Meter VPOS Touch」が2台と、2つ口の「Bee Meter Duo」が1台です。いずれも出力は最大6kWに対応しています。

普通充電器のほかに、最大90kWの出力が可能な急速充電器の「Boost Charger」も設置していますが、取材時は初期設定の作業中で、使うことはできませんでした。できるだけ早い時期に使用可能にすることを目指していますが、時期はまだ未定です。

とにもかくにも、クレジットカードで普通充電器を使ってみました。利用方法はごく簡単です。

コネクターをつないだら、充電器のポールにある小さなタッチスクリーンをタッチ。表示に従ってクレジットカードを認証し、充電時間を選択します。充電器のビジター利用でよくある、専用アプリは不要です。

手順はこれだけです。あっけないというか、クレジットカードだけで使えるのはこんなに楽なのかと、改めて思います。

充電時間と料金の設定は以下の通りです。

1時間=300円
3時間=800円
8時間=1900円
12時間=2500円

なお、どの料金も出力は6kWが前提です。そのため3kWでしか充電できないEVだと割高感があるのは否めません。この点についてベルエナジーは、価格は遠隔で設定変更が可能なので、利用状況を見ながら設定を検討していきたいとしています。

また、取材時に利用可能なクレジットカードはVISAとMASTERだけでしたが、今後はほかのカードにも拡充していくことを検討中です。クレジットカードの決済端末はイスラエルのNAYAXというメーカーの製品で、ベルエナジーによれば全世界で実績があるそうです。

なお、普通充電器に予約機能はありません。予約は便利ですが、うまく時間が埋まらないとかえって効率が悪くなることがあります。いちばんいいのは、設置台数が増えて予約なしでも安心して使える環境が整うことだと思うので、簡単に使える普通充電器がどんどん増えることを願っています。

充電時は「タイマー設定」に要注意

今回、充電器につないでみたのは、『リーフ』『アリア』『モデル3』の3車種でした。『アリア』『モデル3』は問題なく約6kWで充電ができていました。寄本編集長の『リーフ』は古いモデルなので6kWは非対応、自動的に3kW充電になっていました。

また、寄本リーフを充電するときに、ちょっとした問題がありました。結局、原因は充電器側ではなくリーフの設定にあったのですが、それがわかるまでの数分間は、猛暑日の暑さに加えて少し冷や汗が出ました。

問題というのは、充電開始から約30秒後に、充電が自動で終了してしまったことでした。この時は車の近くにいたので充電が止まったことに気がついて、ベルエナジーの担当者といろいろチェックしていたところ、数分経過したときに寄本編集長が、「あ!」と声を上げました。

原因は、充電時間のタイマー設定でした。普段、自宅で普通充電をしているので深夜電力を使う設定になっていたのです。このため、充電開始から約30秒後に、車側で設定時間外と判断して、充電をストップしていたのでした。

困るのは、タイマー設定などで途中で充電が止まると、課金だけされて充電ができないことです。ベルエナジーのシステムは、選んだ充電時間分が課金されてから充電が始まるプリペイド方式なのです。こうした場合でも、使用ログが記録されているので返金処理は可能だそうですが、返金の手間はかかりますね。

それに、お金はもちろんですが充電できていないと気づいたときのショックが計り知れません。実は、寄本編集長は2019年にもゴルフ場が設置しているコンセントで普通充電を試みて、同じようにタイマー設定の解除を忘れていて充電できなかったという大失敗(レポートはこちら)をやらかしています。読者の皆さん、同じ失敗をしないようお気をつけください。

設置プランの料金詳細は検討中

ベルエナジーでは現在、「Bee Meter VPOS Touch」を設置する時のオーナー負担について、料金プランを検討中です。2つ口の「Bee Meter Duo」は、当面は筑波だけの運用になります。

現時点で、1つ口の「Bee Meter VPOS Touch」を設置する場合、工事費別で、本体と決済端末のセットが30万円、毎月のシステム利用料(通信費含む)が4000円という価格設定になっています。筑波に設置されているのはポールに充電器が付いているタイプですが、壁掛けもあるそうです。

充電インフラの設置には補助金もありますが、「Bee Meter VPOS Touch」は補助金のための認証を受ける作業をしているところで、今はまだ対象外です。そのため設置期間や利用方法などに制限はありません。

普通充電器は、エネチェンジが希望者に3万台を無料設置するプランを発表しています。無料と言っても、利用中の電気料金などはオーナー負担なので利用者数が増えると微妙な感じではありますが、日本ではまず数を増やす必要があるので魅力はあります。

【関連記事】
「エネチェンジ」がEV充電インフラ戦略を発表~倍速(6kW)普通充電器を無料で3万台設置へ(2022年7月3日)

こうしたことからベルエナジーでも、電気料金だけを負担してもらうなどの方法も検討はしているとのことでした。とは言っても、エネチェンジとは会社規模の違いもあるので「まずは地道に設置していきたい」(ベルエナジー担当者)そうです。

設置場所としては、ホテル、コインランドリーなどのほか、事務所や商業施設などを想定しています。

ところで今回の現地取材には、産業総合研究所で再生エネルギー関係の研究をしている櫻井啓一郎主任研究員も訪れていました。櫻井さんはEVsmartブログの著者としてもお世話になっている人です。櫻井さんは、展示してあったベルエナジーのポータブル急速充電器『ROADIE』に興味を持ったようで熱心に話を聞いていました。

入念にROADIEをチェックする櫻井さん(左端)。

ちなみに『ROADIE』は持ち手部分が改良されて、持ちやすくなっていました。緊急時には重宝しそうなセットなので、ぜひ日本で普及してほしいと思うのです。JAFやディーラーが持っていれば、とても強力なレスキューツールになると思います。とは言え多雪地域などでのレスキューアイテムとしての可能性を見極めようとされていた櫻井さんとしては、可搬性などに課題を感じる面があったようです。

普通充電器、とくに6kWに関しては、筆者はEV普及に向けた必須のインフラだと思っています。理由のひとつは、以前にも書いていますが、バッテリー容量が比較的少ない軽自動車などのコンパクトなEVにとって、車側さえ対応していれば高出力の普通充電器は高性能車にとっての急速充電器並みに、使い勝手のいいインフラにになると思うからです。もちろん、高性能で大容量バッテリーのEVは目的地充電が強力になることで、行動範囲や安心感が広がります。

他方で、高性能EVは高価ですし、ともすると普段使いでは無用の重量物を常に運ぶことになり、トータルでのエネルギー効率を落とすことになってしまいます。高性能なのにもったいないです。すべての車が高性能になる必要はないので、地域の使用環境に合った小型EVと、それにマッチした充電インフラがバランスよく普及しつつ、EVへの転換が進むといいなあと思うのです。

今回、ベルエナジーの普通充電器を見て、そんな思いが強くなりました。クレジットカード課金も、当然ながら便利です。道は平坦ではないでしょうが、早い時期に設置が進んでほしいと願う今日このごろなのでした。

BellChargeつくばスポット
住所/茨城県つくば市小野崎96-1
利用時間/24時間

(取材・文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. EVや充電機器にクレカが紐付けされてれば、ただコネクトするだけでよいのに!
    そうすれば充電完了後の居座りにたいして罰則的課金も出来るし、混んでるところは80%充電で打ちきりにも出来るしおかわりも防止できる。

    紐付けされてない車両や機器だけクレカが使えて多少割高にすればよい。

    いずれにしても計量法改正して時間ではなく、送った電力量に応じた課金にしないと不公平だよ。
    EVが普通に売られるようになって久しいのに、いったい誰がブレーキ掛けてるの?🤨

    1. 櫻井さま、取材時はいろいろとありがとうございました。

      ROADIE スペル、修正しました。ありがとうございます!

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この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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