※記載している料金はすべて税込。
そもそも充電カードとは?
エンジンを搭載しておらず、バッテリーに蓄えた電気でモーターを回して走行する電気自動車(BEV)はバッテリーの充電方法を大別すると下記の3つがある。
基礎充電
主に自宅や会社で行う普通充電。出力は3kWや6kWのものが多い。
経路充電
旅行などで遠出する際に、高速道路のSAPAや道の駅などで行う急速充電。出力は20kWから150kWと充電器によって出力差の幅が大きい。
目的地充電
旅行などで目的地になるホテルやお店で行う充電。おもに普通充電。
基礎充電は使用者を限定できるので基本的に充電カードは不要(集合住宅や事業所など、不特定多数の利用者を想定している施設では専用アプリや充電カードで認証するケースもある)だ。
充電カードが必要となるのは、不特定多数が使用する経路充電と目的地充電において、誰が充電器を使用するのか利用者の特定が必要な場合。カードはe-Mobility Power(以下、eMP)や電気自動車を販売しているメーカーなどがeMP連携のカードを発行している。充電カードを持っていれば、充電の際はコネクタを車両と接続し、充電カードを充電器にタッチして認証させると充電を始めることができる。
ただし、充電カードには月会費などが必要となる。eMPカードの場合で、カードの発行手数料が1,980円、急速・普通併用プランの月会費が4,180円となっている。細かく説明すると長くなるので、詳細は下記記事を参照してほしい。
【関連記事】
充電カードまとめ(EVsmart)
月会費などの負担を避けたい場合、ビジター充電という方法がある。認証方法が面倒だったり、充電時の都度料金は充電カードを保有している場合の会員価格に比べて割高になるものの、最近は「ビジター充電が簡単になってきた」という話も耳にする。
はたして、ビジター充電の使い勝手はどうなのか。私自身まだ未体験だったので、BYD『ドルフィン』の取材(試乗記と電費計測記事)にあたり、ビジター充電に挑戦してみることにした。
三菱ディーラーのエコQ電はとてもお得
ビジター充電を行うためまず訪れたのは、電費計測の基点となる東名川崎IC近くのエネオス セルフ川崎インターSSだ。ここには24時間利用可能な50kW充電器が設置されている。
ドルフィンのロングレンジ(バッテリー容量58.56kWh)でエネオスに向かい充電器を確認すると、充電カードを持っていない場合は「エコQ電」への登録が必要とある。エコQ電は登録料や年会費は無料で、利用するには携帯電話とクレジットカードが必要とのこと。
会員登録方法の手順に従って、QRコードを読み込み、空メール送信、受信メールからホームページにアクセス、IDとパワワードの発行、充電する車種などのアンケートの回答、クレジットカード情報の登録などを済ませる。ここまでの登録作業は不明点もなく次々とこなしていくことができたが、15分もかかってしまった。この作業中に充電に来る人がいなくてよかったが、もし来たらすぐに充電器を譲らなければならないと思い、プレッシャーを感じながらの作業であった。
もちろん会員登録が済んでいれば、次回からは充電器のQRコードを読み込み、ログインすればすぐに充電できるので、1、2分で充電を開始することができるだろう。
登録が終わったら、改めて充電器のQRコードを読み込み、先ほどのIDとパスワードでログイン、充電器との認証が完了したらコネクタを接続し、充電器のタッチパネルで「スタート」を押すと充電が始まった。
この充電器は1回の充電は30分までと決められており、30分後自動的に充電が停止して、SOCで34%分、航続距離にすると164km分を充電することができた。料金は5分以内が247.5円、以降1分ごとに49.5円の設定なので、30分だと1,485円だ。
充電終了と同時に携帯電話にポップアップ通知とメールで「利用終了通知」が届き、30分の充電時間で、22.08kWhを充電し、料金が1,485円であることを確認できる。メールに領収書が添付されていなかったので、確認したところ、エコQ電は、領収書は発行していないが、エコQ電のホームページの「お問い合わせ」から「充電料金預かり証兼明細書の依頼」で明細書の発行を依頼することができる。
実際に明細書の発行を依頼してみると、わずか10分後に担当者からメールで明細書をダウンロードできるURLが送られてきて、そのURLにアクセスしメールアドレスを入力、メールで届くワンタイムパスワードを入力すると明細書をダウンロードできるという段取りだった。
明細書には利用した充電スタンド名、充電の開始と終了の日時、充電時間、税込の利用料(税抜金額と消費税の記載もある)、エコQ電を運営する株式会社エネゲートの住所、電話番号、インボイス制度の登録番号なども記載されているので、領収書として使用できる。しかしホームページで発行の依頼が必要で、ダウンロードにもワンタイムパスワードを入手しなければならないので手間はかかる。
ちなみに、エコQ電で認証できる急速充電器はさまざまな場所に設置されており、充電器ごとに料金が異なっている。ざっとリストを見る限り5分まで200円、以降1分ごとに40円(30分で1,200円)や三菱ディーラーでは1分30円(30分で900円!)など結構な価格差があった。ちなみに30分で900円はeMPの会員価格での急速充電料金825円と大差ない。三菱ディーラーの充電器スペックは50kWが中心のため、50kWで満足できる場合は、月額費用もかからないエコQ電の三菱ディーラーでの充電がおすすめだ。※50kW器が多いのは神奈川県内の三菱ディーラーで、全国を見渡すと25kWや30kWの店舗もあります。
なお、今回利用したエネオスの充電器は、同社が新たに展開している「ENEOS Charge Plus」(関連記事)ではなかった。ENEOS Charge Plusは、登録料や月額料金は不要。会員になれば1分あたり46.2円(30分だと1,386円)で充電できる。非会員の場合は1分あたり49.5円で30分だと1,485円だ。
eMPのビジター充電は割高だった
次にビジター充電を試したのは、電費計測の途中に立ち寄った新東名の駿河湾沼津SA下りの150kW器だ。ドルフィン・ロングレンジの急速充電の車両側の最大受入性能は85kWなので、150kW器ではなくその隣の90kWで十分なのだが、150kW器が使用されていなかったこと、150kW器と90kW器で充電結果に差が出るのかを試すためにもあえて150kW器を使用させて頂いた(結論としては90kWの方で十分だった)。
この150kW充電器には会員カードまたはeMPアプリで認証してくださいとある。eMPアプリはダウンロード済みだったので、アプリを開き、今回利用する1番充電器のQRコードを読み込むと、ケーブルを接続しスワイプ(アプリ画面の下に表示された「コネクト&スワイプ」を右に移動させる)すると充電が開始するとある。
その通りの操作を行なっても充電は始まらず、次に名前とメールアドレス、クレジットカード情報を入力する画面に移った。初回利用だったので、このステップが必要だったのだ。それらの情報の入力が完了すると充電が始まった。充電開始までは3分ほど掛かることになった。
「次回利用時のため、入力内容を保存する」をオンにしたので、eMPの充電器も次回からはもっと早く認証を終えて充電を開始することができるだろう。
eMPのビジター充電の料金(最大出力90kW以上)は、最初の5分が385円、5分以降は1分ごとに77円なので、30分の充電で2,310円になる。今回はSOCで38%分、航続距離で182km分が充電できた。
※最大出力が50kW以下の充電器の場合は、最初の5分が275円、5分以降は1分ごとに55円なので、30分の充電で1,650円になる。
eMPも充電終了と同時にメールで「ご利用明細のお知らせ」が届く。添付されている領収書で利用金額や充電電力量などを確認できる、インボイス制度の登録番号も記載されていた。
eMPは登録手数料1,980円(初回のみ)と月会費4,180円を支払うと、急速充電料金は充電器の性能に関係なく1分ごとに27.5円と、非会員の77円からすると約1/3になるので、30分の充電を825円で行うことができる。
公平感が高い従量課金の早期実現を期待
今回行った2回のビジター充電は、同じ30分間の充電でSOCの増加分は34%と38%と4%の差しかなかったのに、料金は1,485円と2,310円と約1.5倍もの差が開いた。
もし30分の充電を900円でできる三菱ディーラーが自宅近くにある場合は、4回充電しても3,600円とeMPの月会費(4,180円)よりも安くなる。自宅に普通充電器があって遠出した時だけしか急速充電器を使用しないという場合も、使用する充電器とその料金によってはeMPの月会費よりも安くなる可能性がある。つまり電気自動車を買っても自宅の充電器の有無や月間の走行距離の多寡によっては、eMPやメーカーが発行する月会費や月額料金が必要な充電カードは必ずしも必須ではない場合もあるだろう。
多くの急速充電器が1回の利用時間が30分だが、充電器の最大出力は20kW、40kW、50kW、90kW、150kWと異なっており、かつ車両側の受入性能によっても、30分間の充電量に差があるにもかかわらず、同一の充電器で料金が一緒になってしまう「時間課金」はユーザーとしては腑におちない。やはり充電量に応じた「従量課金」が公平だと改めて思ったが、eMPも2025年度に従量課金導入を目指す姿勢を示している(関連記事)ため、1日も早く実現することを期待したい。
すでに従量課金制を採用している事業者に「グリーンチャージ」や「パワーエックス」がある。グリーンチャージは会員登録不要、クレジットカードやQRコード決済に対応しているため、ガソリンスタンドのように使える。充電器のスペックは50kWだ。
パワーエックスは専用アプリのダウンロードが必要だが、簡単な会員登録とクレジットカード情報を入力しておけば、充電器の操作はQRコードを読ませるだけ。予約もできるので他車の充電待ちになることもない。2024年中に全国100箇所への充電器設置を予定している。充電器のスペックは最大150kW(2台同時使用時は120kW×2口)だ。なお、パワーエックスは充電器を無料で使用できる「Try! PowerX」キャンペーンを実施中(関連記事)だ。
最後に、電気自動車(BEV)とガソリン車(ICE)で充電・給油コストはどれくらいの違いになるのかを考えてみたい。※ここではコスト比較を行いたいため、おかわり充電や給油の方が時間がかからない点などは一旦置いておく。
ビジター料金でもエンジン車の給油より圧倒的にお得
日本で発売中かつ最大級のバッテリーを搭載している「メルセデス・ベンツEQS SUV」(バッテリー107.8kWh、一充電走行距離[WLTCモード]593km)を、eMPの90kW以上のビジター料金で満充電する場合、充電時間は90分(過去に筆者がEQS SUVを充電したデータから1分でSOC1.2%分を充電できたことから算出した)、1分あたり77円で充電できるので、充電コストは6,930円になる。
その一方、ICEで同じくらいのボディサイズである「メルセデス・ベンツGLS580」(4リッターV8ツインターボエンジン、90リッタータンク)で、EQS SUVの一充電走行距離と同じ593kmを走行する場合、カタログ燃費は8.3km/Lなので、約72リッターのハイオクが必要となるため、ハイオク1リッターが170円だと12,240円の燃料コストがかかるため、EQS SUVの方が圧倒的にお得だ。
今回の体験で思い知ったのは、自宅の近くなどで利用する予定のある充電サービスには事前に登録だけ済ませておいた方が良いということ。そうすれば登録にかかる時間を無駄にせず、充電時間に回せるため時間の有効活用ができる。さらにアプリで充電器が使用中か否かを確認できるものもあるので、「充電待ち」になる可能性も低減できる。
日本でもEVの選択肢が広がってきたのと同時に充電サービスもその多様性に広がりを見せている。自宅充電器の有無や近所の急速充電器の事業者や料金設定によっては、ひと月に4回以下程度であればビジター充電でもコスト的にさほど不利ではないことを実感できた。さらに宿泊先など目的地充電での普通充電の手段(EV充電エネチェンジをはじめ、充電サービス事業者が用意しているアプリなど)を用意しておけば、鬼に金棒だ。車両のスペックに応じた充電方法を準備して、賢くお得な電気自動車生活を過ごしたい。
【関連記事】
電気自動車ゲスト充電の【実録レポート!】取扱説明書(2020年5月11日)
取材・文/烏山 大輔
旧JCNの充電器でゲスト充電がLINE PAYで出来て便利なのですが、LINE PAYが来年使えなくなったらどうなるのか調べてください。
e-mobiさんに質問したところ、8/20時点で、現在検討中とのことでした。e-mobi、旧JCNの分だけでも、ゲスト充電がQRコード払いにしてほしい。
青森県の三菱ディーラー 50kw級 30分で550円 ドルフィンロングレンジ 外気温2℃で21.6kw充電できました。最安です。我が家の夜間電気より安いです。ちなみに充電開始後5分にバッテリーマネジメント発動し開始後10分には出力30kwが47kwになり最後までキープでした。
ZESP2の有効期限(5年)が切れるにあたり、その後の運用方法を検討しました。
自宅で普通充電でき、出先での急速充電は月に1回未満のため、ZESP3やeMPといった月極のプランには加入せず、必要時にビジターで充電するのが経済的に最良という結論に至りました。
その過程で、料金や使い勝手で以下の優先順位を見出しました。
1. イオン
WAON認証なら1回300円
2. エコQ電
無料アプリで事前にクレカ登録可。1回550円、1分33円など、割安な充電器あり。
3. ENEOS Charge Plus
無料アプリで無料会員登録とクレカ登録可。無料会員価格は1分46.2円。
4. eMP
本体と提携先など、複数の異なる認証方式があり、都度クレカ番号入力が必要だったり、とにかく使い勝手が悪そう。料金は記事のeMP本体と提携先で異なり、概ね30分1500円程度。ただし日産の多くは1回2970円で非常に割高なので注意が必要。
カードも現金も使える給油の場合と比べて、BEVはスマホやクレカがないと充電できないとか、場所によって料金が倍以上異なるとか、これらも普及を妨げる障壁のように思えます。
ベンツはなかなか庶民の手にはとどかないので、サクラあたりで比較した方がEV普及に役立ちそうです。
1充電走行距離はお財布と連動なのがEVの困ったところですね。
まるふう 様
コメントありがとうございます。
以前充電を経験したことのある三菱ekクロスEVで試算すると50分の充電(1分で2%分を充電)が必要となりますので、50分 x 77円 = 3,850円。
ekクロスのターボ車の燃費は21.5km/Lですので、ekクロスEVの一充電走行距離180kmを21.5で割ると8.37、約8.5Lとしてレギューラー単価が160円の場合1,360円ですので、この場合はICEの方が安くなります。
eMPの会員価格27.5円で充電できれば1,375円ですので、やっとICEと同じくらいになります。
新たな気づきでした、ご指摘ありがとうございました。
うちの近所の三菱はニチコン?500V100Aですが相性が悪いのかモデル3を充電すると20〜30kWしかでませんね。
30分で10kWhは充電してるにも関わらずZESPからのメールでは1.2kWhしか充電してないことになっていたりするのでこれでは従量制に移行できそうにありません。
以前40kWでていた日産器で最近は30kW程度しかでなくなったりと不安定なため、まずは安定した充電環境を整備するほうが従量制よりも先のようにも思います。
文中の「三菱ディーラーの充電器スペックは50kWが中心」は間違いかもしれません。
EVsmartで全国の三菱ディーラーを検索していただくとわかりますが、25kWから35kWの30kW前後が多く、中心だと思います。
Eddy 様
コメントありがとうございました。改めてリストを見直した結果、おっしゃる通りでしたので、その旨追記しました。