集合住宅への充電器設置事例【2】区分所有者が自腹で設置した小規模マンションの機械式駐車場など

電気自動車(EV)普及のポイントのひとつでもある集合住宅への充電器設置について、具体的なノウハウを知るためのシリーズ企画。今回は具体的事例レポートの第2弾。東京都23区内の小規模マンションで、区分所有者が費用を個人負担して、機械式駐車場などに複数の充電器を設置した事例をご紹介します。

集合住宅への充電器設置事例2/区分所有者が自腹で設置した東京都23区内のケース

事例レポートの第1弾だった前回は、東京23区内にあるタワー3棟で計576戸という大規模マンションで「管理組合が自主的に決めてEV用充電器を導入」した例をご紹介いたしました。

集合住宅への充電器設置事例/大規模マンション「西戸山タワーホウムズ」
集合住宅への充電器設置事例/大規模マンション「西戸山タワーホウムズ」

集合住宅への充電器設置に関連した記事へのリンクをまとめておきます。

【集合住宅(マンション)のEV用充電器設置事例〜今までの記事】
電気自動車を買うには自宅に電気工事が必要?(2015年1月13日)
東京都の集合住宅などへの充電設備補助金【申請受付中!】(2019年6月20日)
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集合住宅・マンションに電気自動車用充電器を設置する 【第1回】理事会を通す 編(2019年8月9日)
集合住宅・マンションに電気自動車用充電器を設置する 【第2回】総会・施工・運用 編(2019年10月15日)
集合住宅への充電器設置事例/大規模マンション「西戸山タワーホウムズ」(2019年11月21日)

さて今回は、EVを所有する区分所有者が「自分で設置費用を払ってもいいから、早く付けて欲しい」と提案し、設置後は充電器を管理組合に資産として寄付した形です。いわゆる「自腹」。設置提案者の方が個人負担で費用を支払った、というケースです。

「そんな大金を!!!」と驚かれるかも知れませんが、東京都の場合は「国の補助金」に加えて「都の補助金」があるため、実質支払う額は「消費税額程度」。具体的には200Vの普通充電器を2台付けて、課金用のデーター送受信機器も加えて、工事費など全てを入れても、個人負担は「13万円以内」で済んでいます。これなら、たとえば4人での区分所有者でワリカンにすれば「ひとり当たり3万円」で設置できてしまう計算です。自宅充電は「基礎充電」と呼ばれ、EV運用では大きな利便性があるので、少しぐらいなら自腹でも……という決断もアリかも知れません。

設置した充電設備の概要

今回の集合住宅は東京23区内にあり、7階建て、住戸数30戸前後の小規模な部類に入るマンションです。鉄道の駅から歩いて5分程度で、付近にはスーパーや店舗も数多くあり、便利な場所にあります。また比較的緑も多く、住環境としては魅力的です。著者は取材に行ったあとに、ネットで探しておいた近くのフレンチ・ビストロでランチを愉しみました。

今回の小規模マンションと似たイメージ。

駐車場は、機械式が8台に平置きが1台とコンパクト。駅近で交通至便な場所なので、そもそもクルマはさほど必要ないのかも知れません。今回は、機械式の部分に2台の200V充電器を設置しました。

また、平置きの部分にも1台の200V充電器を付けましたが、こちらは完全に個人負担です。この部分については、「費用」の項目で説明します。

導入の契機

今回の充電器導入の発端は、EVのオーナーであり区分所有者である「設置提案者」の方が、とあるイベントで「ユアスタンド社」の代表である浦伸行さんと偶然会う機会があったことです。設置提案者の方が「自宅のマンションに充電器を設置したいんですよね」と浦さんに話したところ、それならユアスタンド社には補助金の利用や運用面で実績があるので、ということで相談をすることになりました。

相談、話し合いのなかで、具体的な提案がまとまっていきました。ユアスタンド社が、設置場所や工事内容、運用面での要望等も受け止めながら原案を作成し、設置提案者・管理会社へこれを共有して進めました。理事会へは設置提案者の方が提議して、実際の設置への流れができました。

理事会から「議案」として区分所有者の「総会」に提案される。ここが最大のヤマ場、可決されればめでたく充電器は設置され、集合住宅の住民でも「自宅充電」が可能になる。
理事会から「議案」として区分所有者の「総会」に提案される。ここが最大のヤマ場、可決されればめでたく充電器は設置され、集合住宅の住民でも「自宅充電」が可能になる。

充電器設置の提案が、無事、総会議案になると、ユアスタンド社が総会に出席して、出席者の皆さんへ直接概要の説明を行いました。一般的に、理事会メンバーで積極的に発言される方や、管理会社が味方になってくれていると、理事会へユアスタンド社が直接出席しなくてもスムーズに話が進むことが多いのですが、今回は設置提案者の方が色々と尽力されたのが大きかったようです。

原案の項目内容を見てみましょう。マンションの場合は管理会社も絡んでくるので、設置提案者から依頼をいただいてからは、管理会社を含めたやりとりが多くなりました。その後の動きを細かくまとめてみると、以下の通りです。あとの「経過」の項目と重なる部分もありますが、ともかくご覧ください。

① 現地調査。
② 機械式駐車場メーカーと打ち合わせ、調整。これは、今回は機械式駐車場への設置があったので、機械式駐車場メーカーが駐車場内のみ工事を行うために発生した動きです。
③ 工事内容、見積の提出。
④ 理事会で提案(今回は設置提案者、管理会社より役員へ共有)、承認をいただきました。
⑤ 補助金申請(国へ)。
⑥ 補助金採択(国から)。
⑦ 工事実施。
⑧ 運用開始・工事代金のお支払い。
⑨ 補助金振込手続き(国から)。
⑩ 補助金振込(国から)。

国の補助金振込後に、東京都へ申請を行い、振込手続きをしました。

提案から設置までの経過

1.管理組合理事会への提案

管理組合理事会への提案は、2019年の1月頃でした。今回のマンションでは、だいたい3ヶ月に1回の理事会が開かれているようです。もちろん、必要な場合は臨時でも開かれます。

どこに何台設置するかは、「補助金を利用して、機械式駐車場の上段の2区画に、それぞれ200V充電用コンセントを1基ずつ(合計2基)設置する」方向でまとまりました。これに加えて、「補助金を利用しない形」でテスラ用の充電器を平置き区画に1台設置する計画も同時に進めました。こちらは、設置提案者の方が100%費用を負担しました。

2.総会議案の完成と可決

総会議案に関しては、2019年3月の総会の前の理事会で議案を固めるので、その少し前の1月の理事会で決定しました。

電源や充電器設置場所に関しては、じつはマンションには乗り越えるべき障壁はほとんどありません。最大の山は理事会と総会、つまり区分所有者の「理解」です。
電源や充電器設置場所に関しては、駐車場付きのマンションであれば乗り越えるべき障壁はほとんどありません。最大の壁となるのは理事会と総会、つまり区分所有者の「理解」です。

3.工事開始

晴れて議案が通り、施工が始まったのは2019年の7月下旬のことでした。これは、5月以降に「国の補助金申請」が始まり、審査結果が判明するのは6月中旬であること、また今回は施工に関わる機械式駐車場メーカーの都合もあり、7月で工事を調整したのが経緯です。

ユアスタンド社によると、通常は、審査結果が通知され、総会でも承認が取れている状態であれば、工事はすぐに開始可能だそうです。

4.運用開始

運用を開始したのは、2019年8月の上旬でした。機械式駐車場では、2019年10月いっぱいの時点で、まだ利用者はいませんでした。平置きのテスラ用充電器は当初から利用されています。

集合住宅の機械式駐車場に200V充電器を設置する工事が行われている様子。設置工事会社だけでなく、機械式駐車機メーカーにも加わってもらってトラブルの出ない完璧な状態に仕上げる。
集合住宅の機械式駐車場に200V充電器を設置する工事が行われている様子。設置工事会社だけでなく、機械式駐車機メーカーにも加わってもらってトラブルの出ない完璧な状態に仕上げる。

費用負担について

費用負担については、今回は非常に「レアケース」です。と言うのは、補助金でカバーできない費用については「設置提案者(区分所有者のひとり)」が個人で負担しているからです。

ただし、費用の支払いについては、あくまでも「マンション管理組合が代金をユアスタンド社に支払う」形をとっています。管理組合の銀行口座へ、設置提案者の方が「補助金でカバーできない消費税分等の費用」を入金して処理しています。

通常は充電器は管理組合の負担で導入します。これは、充電設備はあくまでマンションの「資産」、つまり「共用設備」として導入するところがほとんどなので、そうなります。

なお、機械式に設置した2台の200V充電器に加えて、平置きにテスラに充電できる充電設備1台を同時に導入しています。しかしテスラは補助金の対象外なので、この部分は完全に別工事で個人負担になっています。なお、この平置き部分の充電器は、テスラを所有されている区分所有者の方が引っ越した場合などには、普通の200V充電器に簡単に変更できるようにしてあります。

今回の小規模マンションでの導入コストを大公開!青い部分が200V充電器2台の導入コスト。それに対して設置提案者の方が支払ったのは、赤い部分の消費税分の12万円台で収まっている。

ユアスタンド社からの情報を付け加えておきます。「充電器本体」の費用補助は充電器によって変わります。「コンセント設備」は費用がかなり安いせいか、全額補助は出ません。とは言っても、負担は数千円ですので、気になる方はそういないかと思います。

コンセント以外の普通充電器については、基本的には国が1/2、東京都が1/2の補助を出してくれます。また今回は、機械式駐車場への設置となり、通常この場合は駐車場メーカーの改造工事が入り、費用は平置き区画への設置より高額になりやすいそうです。メーカーや工事内容によって幅がありますが、今回は非常に安く施工してもらえてた事例だそうです。

利用料金設定と運用方法

充電料金は「1時間あたり119円(機械式の2台)」です。利用者にはユアスタンド社のアプリを使って利用してもらい、アプリ内で利用料金の決済を行います。じつは料金は管理組合が決められますが、今まで取材してきたなかでは「1時間あたり120円前後」が相場のように感じます。

ユアスタンド社の充電器への課金・予約などは、全てこうしたアプリ上で行える。何日の何時の枠が空いているか一目瞭然だし、予約も簡単にできる。ユアスタンド社の公式サイトより転載。

使用形態としては、区分所有者・住民のみが利用できます。充電器はマンションの「専有部分」に設置されているので、当然そうなりますね。よって、区分所有者・住民以外は使用はできません。また、飛び込みでの利用も基本的にできません。アプリ上で予約する必要があるからです。

利用者からの評価

利用者・住民の評価ですが、ユアスタンド社によると、利用者(設置提案者の方)からは、日常的にさまざまなフィードバックをもらっているそうです。システムや運用の改善にしっかり活かされてるとのことです。

居住者全体の評価は今のところ不明ですが、今後確実に「設置しておいてよかった」と言ってもらえる日が来ると信じています、とユアスタンド社は述べています。

今後への課題

ユアスタンド社にお聞きしたところ、「今回のマンションに限らず、現状では特に大きなトラブルはありません。とはいえ、管理組合も充電設備を運用することは初めてですので、今後も運用をしながら色々なご意見が出て来ることと思います」とのことです。ユアスタンド社自体、2018年から充電器設置を始めたばかりということもあり、取り組むべき課題はこれから色々と出てくるのでしょう。

たとえば、今回の料金設定が正しいかどうかなど、ユアスタンド社では無理のあるご要望以外は、その都度対応をしていきたいと話しています。

日本全体が高齢化に突き進んでいるので、昨今ではマンションの駐車場の空きが増える問題や、機械式駐車状の維持コストが重くのしかかる、といった悩みも聞こえてきます。これに対し、マンションの外からアクセスできる箇所に「時間貸し駐車場」と「充電器」が設置され、住民以外も利用できるようになり、その課金収入の一部が、マンション管理組合の収入になるようなビジネスモデルも出てくるかも知れません。管理組合では現行法上できないので、「法人格」を作るとか、工夫すればいろいろ出来そうですね。

(取材・文/箱守 知己)

この記事のコメント(新着順)14件

  1. 早速のご回答、ありがとうございました。

    立駐の場合、やはり契約者の占有使用を大前提としているのですね。充電器付き区画となった場合、充電器なし区画と比べて駐車料金で差別化するなどの工夫が要りそうです。充電設備を設置してもBEVやPHEVの利用者でない方が地上階の利便性目的で駐車場区画を契約してしまい、せっかく設置した充電設備が遊んでしまう可能性とかもあります。BEVとPHEVの所有者と購入予定者を優先とかのルール作りも必要になりそうです。

    私のマンションでも駐車区画の空きは出てきてはいて、維持管理費の削減の観点から立体駐車設備の集約とかも議題に上がってきてはいるのですが、空いているのは1550mmの車高制限のある区画や最上階や最下層階に離れていて入出庫に時間がかかる区画だけです。充電設備の設置可能性の高い地上階区画には全て契約がある状態です。事実上区画契約者しか使用できないとなると、全額区画契約者の自己負担で設置するか、補助金で足りない分は自己負担してもらうことになりそうです。区画解約時には管理組合に設備を無償寄贈とかのルールにしないと、他の契約者の賛同を取り付けることは難しそうです。最初から充電設備を管理組合に寄贈にしてしまうと、充電設備の償却資産税負担をどうするかが問題になりそうな気がしますが、このマンションの事例では問題にならなかったのでしょうか?
    資産価値が向上するので特段問題なしという意見もあれば、1円でも管理組合の費用負担が発生するなら絶対反対という意見もあったりします。

    確かに充電設備の設置提案にあたり、将来の増設案とかもいくつか準備しといた方がいいですね。ちょっと考えてみたのですが、来客用区画だけでは間に合わない場合、追加で洗車用スペースに充電設備を設置して共用とかですね。来客用駐車場は稼働率が高くてシェアリングが難しいので、夜間にはまず利用されることのない洗車用スペースへの設置提案が共用利用の利便性の観点から最良のような気がしてきました。まずは1台だけ洗車用スペースに設置してみて、追加のニーズがあれば来客用駐車場4区画、立駐の地上階の順で候補案を用意しておくと良さそうです。

    来客用駐車場は夜間に泊車利用となる場合も多く、来客用駐車場への充電設備の設置を提案した場合、夜間帯の充電ニーズとの競合の指摘を受けそうです。3kWでの充電となるとPHEVは満充電できますが、BEVはかなり厳しいですね。来客は区分所有者の家族や友人の場合が殆どなので、区画所有者が充電設備の利用アカウントを保有してるのであれば、来訪者の車両を駐車時間中に充電できるという副次的な効果はありそうです。

    急速充電設備はコスト制約からかなり難しそうですが、共用部と別契約にできるのが最大のメリットですね。デマンド値が上がって迷惑かけるとかの問題が逃げられますので。問題は基本料金負担が高額となるので、ランニングコストに響いてくるのと、急速充電設備はバッテリー劣化が気になるので使いたくない利用者が出てくるかもしれないことですね。これは駐車区画に普通充電設備も併設すれば問題なくなりますけど。
    もし分かるのであればザックリでいいので20kWの充電設備の導入設置コストについて教えて下さい。

    ちょっと考えてみたのですが、有志でEVクラブみたいなのを立ち上げて、洗車用スペースに充電設備を設置する許可を得るのも良さそうです。補助金などでカバーできない部分はEVクラブ有志で頭割りして出資し、後からの参加希望者は同等の金額を追加出資して利用権を得るとかですね。EVクラブを管理組合の組織に組み込んでしまい権限委譲をしておけば、小改修や利用規約の変更にあたって総会での議決が無くても良いようにできるので、小回りが効く体制にできそうです。

    充電設備の利用希望者がそれなりに確保できるのであれば、急速充電設備と普通充電設備の併設が理想ではあります。

    8月に管理組合の理事に就任してからの提案活動となりますので、それまでの間に情報収集したいと考えています。総会で理事に就任すれば、管理組合として正式に充電設備の設置案の呈示をお願いすることも可能となります。これからも質問させて頂くかもしれませんが、よろしくお願いします

    1. やっちゃん 様、コメントありがとうございます。この記事でも専門家をご紹介していますので、一度ご相談なさってはいかがでしょうか?私だけだと1人の意見と経験ですし、専門家は何百件と対応されてるので、お詳しいと思います。

      >>最初から充電設備を管理組合に寄贈にしてしまうと、充電設備の償却資産税負担をどうするか

      少額なのでそのあたりはどう会計に計上するか、ですかね。普通充電の場合は組合的には資産にならないと思います。

      >>資産価値が向上するので特段問題なしという意見もあれば、1円でも管理組合の費用負担が発生するなら絶対反対

      後者の人が、理事会にいるかどうか、また総会に出てくるかどうかがポイントです。アンケートを行う等で具体的に計測する必要があると思います。多くの居住者は委任状なので、普通決議ですし、実際に採決する際には可決できる可能性が高いと思います。

      >>来客用区画だけでは間に合わない場合、追加で洗車用スペースに充電設備を設置して共用

      それもありかもですね。
      私見ですので、人によって意見は異なると思いますが、普通充電の共用はEVユーザーとしてはかなり大変と考えています。無理してでも専用使用のスペースに設置する方がおすすめです。共用の場合、3台目のユーザーが来たあたりから大変になると想像します。

      EVクラブみたいなものは、利用者が顔見知りならありだと思います。費用の扱い、退去時の処理など結構ややこしそうですが、、

      20kWの充電器設置について。急速充電器本体は工事業者さん経由でしか買えず、「補助金使う予定」というと、本体価格は定価になっちゃうことが多いです。200万くらいですかね。壁掛けが重要です!基礎のコストはばかになりません。値引きしてくれる会社さんをコツコツ探すしかないかもです。
      特例利用の場合は電力会社に相談も必要になるので、工事業者さんに早めに入ってもらった方がコストや期間など分かりやすいと思います。

    2. いろいろと情報をありがとうございました。

      普通充電の共用は難しいという観点はありませんでした。金曜日に充電希望が集中するとなると、普通充電共用では良くてもPHEVが数台止まりが上限ということですね。BEVだと仮に半日占有できても満充電は難しいので、週末だけ車を使うユーザーが3人とかでも充電設備がフル稼働になりそうです。

      洗車用スペースに共用利用可能な20kW急速充電設備プラン(普通充電も併設)、洗車用スペースに3kWの普通充電設備プラン、立体駐車場の地上階に区画契約者が占有利用を前提とする普通充電プラン(補助金超過部分は区画契約者が自己負担)、の3本建でで提案してみたいと思います。

      時期が来ればユアスタンドさんなどの事業者さんにも話をさせて頂きたいと思います。引き続き情報収集していきますので、よろしくお願いします。

  2. マンションの理事会で充電設備の導入を提案しようと考えています。
    今回の事例についていくつか質問させて下さい。

    1)普通充電器が2台とのことですが、価格がEV用コンセントの値段くらいしか計上されていないように思えますが如何ですか?
    充電器本体は車両オーナーの所有物となっている場合が多いのではないでしょうか?

    2)普通充電とのことですが、電源容量の記載がされていないようです。200Vは大前提としても3kWなのか6kWなのかで電気工事部分に違いが出てきます。課金レートが120円/時間との記載があるのでコスト見合いからおそらく3kWかと思われますが、明示して頂けるとありがたいです。

    3)今回の事例は小規模マンションとのことなので、テスラのオーナーさんが自腹で充電器を設置提案するにあたり、他区画にも補助金で1割負担程度で充電環境が構築できマンションの資産価値も向上するということで充電設備導入ができた幸運な例かと思います。
    記事の掲載時点では立体の地上階の充電設備は未使用とのことでしたが、その後変化はあったのでしょうか?
    該当区画のオーナーが車両更新して、PHEVかEVを導入しない限り充電設備は未使用のままとなりそうな気がするのですが?

    4)立体の地上階区画は利便性が高いので、常に契約待機者がいる状態なので、契約を召し上げて共用の充電スペースとして転用することは相当困難かと思います。既存の契約者との関係をどうしたのかなど、差し支えない範囲で教えて頂けるとありがたいです。
    該当区画のオーナーしか利用できない設備となると、如何に補助金でタダ同然で設置できるとは言え、その他の区画の契約者の同意を取り付けるのは難しい気がします。

    私が提案しようと考えてる案ですが、平置きの来客用区画があるので、そこに3kWか6kWのコンセントを設置し、課金管理できるような充電システムの提案かと思っています。特定の利用者契約がない区画なので、来客利用管理との調整が付けられれば、合意形勢へのハードルが一番低いかと思います。

    いろいろと質問させて頂きましたが、よろしくお願いします。

    1. やっちゃん 様、コメントありがとうございます。
      順番に分かる範囲で回答しますね。

      >価格がEV用コンセント

      分かりにくく申し訳ありません。当サイトでは、やっちゃん様でいう「充電器」を充電ケーブルと表現しており、「充電器」は、EV専用コンセント、J1772ケーブル付き充電器、CHAdeMO急速充電器(ポルシェ ターボチャージングステーション含む)、テスラ スーパーチャージャーを指しています。おっしゃる通り、充電ケーブルは車両オーナーの所有物です。補助金は、充電器までしか対象になりません。

      >200Vは大前提としても3kW

      200Vコンセントは、現時点でまだ3kWまでしか対応がありませんで、3kWとなっています。裏側の配線は容易に6kWにアップグレードできるようにしてあるそうです。

      >立体の地上階の充電設備は未使用とのことでしたが、その後変化はあったのでしょうか?

      今後確認してみますが、通常、車両を購入すると数年単位で買い替えることはないと思いますので、充電設備はおっしゃるように未使用のままになるのではないでしょうか?

      >立体の地上階区画は利便性が高いので、常に契約待機者がいる状態

      当マンションは都心部にあたりますので、恐らく駐車場には空きがある状態かと思います。都心部では、多くのマンションが駐車場の空きに悩んでいます(コロナで少し増えているそうですが)。もちろん地上階はもっとも人気があり、取材時は満車でした。また当計画では、充電設備は共用ではなく、専用使用を前提としています。機械式の場合、入れ替えに非常に時間がかかるため、充電のために区画を移動するというのは現実的ではないと思います。

      >その他の区画の契約者の同意を取り付けるのは難しい気がします。

      総会では反対は1件も出なかったそうです。基本、お金のかからないことに反対する人はあまりいないのかもしれません。

      >私が提案しようと考えてる案

      素晴らしいです!

      >平置きの来客用区画があるので、そこに3kWか6kWのコンセントを設置し、課金管理できるような充電システム

      おっしゃるように駐車場に余裕のある中規模以上のマンションでは、その計画はあり得ると思います。三点ほど課題がありますので、ご参考までに。

      1. 将来、充電希望者が増えたときどうするか、というのは理事会・総会で質問として出る可能性があります(もちろん、ご存知のようにすぐにそうなるわけじゃないんですが)。そのため、その場合の対応策も計画として考えておいた方が、提案が通りやすいかと思います。機械式があるようでしたら、そちらに何台まで装備できそうか、その場合の費用等もある程度概算しておくといいかもしれません。

      2. 6kWはコンセントはないのでケーブル付きになります。多くのPHEVが3kWまでの対応となり、6kWを導入する場合には実質、両対応できる課金機が必要だと思います。今の課金機はほとんどが、料率固定式で時間を測るタイプですので、両対応は改良してもらう必要があるかもしれません。アプリで課金するタイプなら、サーバー側で「アカウントごとに」そういう設定ができる可能性もあると思います。

      3. 3kW充電の場合、1時間から、長いと24時間程度まで、充電区画の専有時間があります。予約式にするにしても、空で帰ってくるBEVユーザーがいるようなケースを想定すると、やはり夜は1予約しか受け入れることができません。ユアスタンドさんによると、充電は休前日(金曜土曜)の夜に集中するそうで、バッティングしやすい設計かもしれません。代案としては20kW程度の壁掛け式急速を追加で入れるのがいいと思います。PHEVは夜、4時間単位の枠で普通充電。BEVはチャデモ対応しているので、20kW(実質16kW)で4時間充電すれば64kWhと、まあまあ満足できる量が充電できます。電池の一番大きいモデルS/X(機械式に入りませんが仮説として)が100kWhで実質容量90kWhとすると、64kWh充電できれば71%まで充電できるわけで、4時間1枠充電できれば遠出は充分可能です。問題はお分かりのように、コストとデマンドです。マンションで20kWを入れているケースは私の知る限り非常に少数ですが、急速充電器を入れると特例が使えるので、マンションと共用部の電源を共有しなくてもいい、というメリットも出てきます。20kWは低圧受電可能です。

      まだまだ悩ましく、完璧な回答は難しいですが、ご参考になれば幸いです。

  3. <質問> 
     興味深い記事をありがとうございます!
     パレットに電気配線を通して200Vコンセントを設置するため、2階でも地下でもEV充電できるのかなと考えながら読んでいたのですが、どの機械式駐車場メーカーも対応してくださるのか気になりました。メーカーによってはEV充電に対応している機械式駐車場を提供されていますが、そのようなことを前面に出していないメーカーさんもあると思うので…
     もう一件、パレットに電気配線を通すのであれば、全駐車スペースがEV対応なんてことも可能なのかなと思いました(採算性は置いておいて…)。夢があふれますね!

    1. IZY_0様
      これまで設置した機械式駐車場は、残念ながら地下のパレットに設置できたことは無いです。GLより上のパレットが対象となります。すべての機械式駐車場メーカーに確認したわけではないので、このあたりももっと調査を進めて見たいと思います。IZY_0様のご指摘の通り、EV充電器設置に対応していない機械式駐車場もあります。あとは、保守が機械式駐車場メーカーの保守に入ってないと設置できないというケースもあります。
      将来的な全パレットEV対応はまだまだ超えるべき壁がいっぱいあります。

      コストダウン、同時充電に耐えうる幹線の引き込み(もしくはそれをマネジメントする仕組み)、安全性の確保

      大規模改修などで、機械式駐車場のリプレースをする場合は、今後可能な限り充電器を設置することをおすすめします。既設への設置よりも格段に安上がりなので。
      後、最近は機械式駐車場の埋め立ての際にEV充電器を設置する相談が増えています。

    2. ユアスタンド浦さま、YasukawaHiroshiさま
      ご回答ありがとうございます。浦さまがご回答された内容に関し、感想のようなものを如何に綴らせていただきます。

      >これまで設置した機械式駐車場は、残念ながら地下のパレットに設置できたことは無いです。GLより上のパレットが対象となります。すべての機械式駐車場メーカーに確認したわけではないので、このあたりももっと調査を進めて見たいと思います。

      地下のパレットに設置できたことがないのですね。初耳でした。
      タワー型の垂直循環方式やエレベーター式などではパレットに設置できるメーカーさんをいくつか見かけたことはございますが、多段式ではまた違う課題があるのかもしれませんね…私の方でも調査を進めてみようかと思います!

      >あとは、保守が機械式駐車場メーカーの保守に入ってないと設置できない

      そうなのですね!マンション側が管理しきれないという問題ということでしょうか。お互いに保守の手間を嫌って結局設置できない、という現実があるのかなと解釈いたしました。少し実態が気になるところなので、私も調べてみようかなと感じました。(日経の記事でも似たような文面をみたことがあるので…)

      >将来的な全パレットEV対応はまだまだ超えるべき壁がいっぱいあります。

      コストや幹線等の課題から、まさに浦さまの仰る通りだと思います!
      ただ、私自身の考えとして、将来的なモビリティ業界の潮流(特にシェアリング)を考えると集合住宅の機械式駐車場の全パレットをEV対応にするメリットが出てくるのかどうか疑問でもありますね。商業施設とかなら可能性はあるかもしれませんが…汗
      ここはまさに埋め立て時のご相談が増えている件と関わっているのかなと思います。

      以上です。長文失礼いたしました。

  4. 〉どこに何台設置するかは、「補助金を利用して、機械式駐車場の上段の2区画に

    ピット式(地上1、地下1)の地上に充電設備を設置したように見えるのですが、車の充電中でも昇降は可能なのでしょうか?
    機械式でも横行式などでは充電設備の設置は出来ないと思うのですが、昇降式以外の機械式駐車場でも設置可能な方式はあるのでしょうか?

    1. RN様、ご質問ありがとうございます!
      こちらはピット式で、地上1段地下3段の計4段です。充電中も昇降できますよ。
      横に行くタイプでも、パズルみたいに上下左右に動くやつは実績あるようです。今後も取材をたくさん予定しています!

  5. 箱守さんに同じく三菱の軽自動車(eKSPORT→i-MiEV(M))へ乗り換えた僕の実績です。
    年間11000km走行してeKSPORTの燃費が12km/l、ガソリン代140円/lなので年間128333円。これがi-MiEV(M)へ置き換わって電費9km/kWhとしても1426kWh、殆ど深夜充電なので14円/kWhとしても19964円。実に108369円もの差です!!オイル交換2回オイルフィルター1回各2000円としても116369円も安い。
    そこから三菱電動車両サポートプレミアム会員代19800円を差し引いても96569円ですが…毎月500円分無料なので道の駅1分8円を15分4回使っても範囲内、過去実績で30kW(75A)充電器で15分5kWhなので毎月20kW年間240kWhそれで充電したとすれば自宅での充電量は1186kWhで電気代は年間16604円。111729円もトクになります。
    2年前の中古購入時eKワゴン70万i-MiEV(M)85万なのでもう逆転してますよ(笑)
    当家も箱守邸に同じく屋根ソーラーありますんで将来FIT(固定買取)が切れてもV2H導入で充電できるし、現在殆ど使わない(自宅留置)セレナをリーフe+(62kWh)へ代替すれば計算上冬以外は電気を丸々自給できます。ブレーカーの契約を10Aにしてもいけるかもしれません(100V/9Aの充電器でi-MiEVへ蓄電すればいいだけ)

    今でこそ電気自動車乗りは少ないですが、こうして一般庶民が知恵を使って生きてゆけばいいですし、その動きに企業も便乗して最終的に行政も動かざるを得なくなりますよ。日本は行政の腰が重すぎ(爆)特に地方では期待できません
    中古のソーラーパネルと電気自動車は「庶民の宝」!最近リーフ中古バッテリーを自己責任で分解しオフグリッドソーラー(蓄電式太陽光)にするカリスマも増えてきました。電力会社とは無縁のEVライフも技術さえあれば割と簡単にできるかもしれませんよ!?

  6.  「自腹」でここまで下がったんですね。個数も近い小規模マンションで、10台程度の駐車場しかなく、EVオーナーは私一人。多勢に無勢、余計なことするな、といわれそうですが、このままEVを乗り続けるならありですね。もっとも、もう10年もすれば免許返上も俎上に上がるので考えどころですけどね。一晩経ったら満充電、マンション住まいにこれは夢ですから。

    1. JB様、コメントありがとうございます。「自腹」は最後の手段だとは思いますが、これが実現できてしまう東京都内はじつに羨ましいですよね。やはり、国の補助金だけだと、「自腹」ももっと多額になり、今の状態では結構「痛い」出費になりそうです。我々が情報をもっと多くの人たちに伝えて、府・県を動かす市民パワーを盛り上げる必要がありそうですね。

      JB様は都内のマンションにお住まいであれば、いちどユアスタンドさんに相談して戦略を練ってみるのも悪くないと思います。

      別件ですが、私は昨年夏より通勤を「電車・バス」から「BEVを自身で運転」に切り替えました。ガソリン車の「三菱i」でシュミレートしたところ(以前数年間所有していて、データをたくさん取ってあります)、省燃費運転のわりと得意な小生が運行すると双方の費用はほぼ同じ、クルマ通勤のほうが「15円/日」程度安いのですが、通勤時間が「プラス1時間」+「自身の運転による疲労」と、「駅・電車の混雑の不快さ」+「バスを待つ時間の無駄」とを天秤に掛けることになります。

      ところがBEVの「三菱i-MiEV」だと、通勤にかかる費用は(電車・バスだとほぼ1,300円/日のところ)自宅で全て買電で充電したと仮定しても、BEV使用は260円程度で済んでしまいます。実際には、帰路に5ヶ所の無料QCがありますし、自宅にはPVパネルが載せてあり日中は電気を作りまくっているので、260円は絶対にかかりません。じつは、実際に家で充電している量は、無料QCから自宅に帰着するまでに使った「せいぜい1〜3kWh/日」ですし、この部分は自宅発電量で賄えるので、無料になってしまいます。最近は真冬で発電量は最低レベルですが、平均で5kWhは発電できているので問題無さそうです。(一番良い季節は、リーフ初期型の電池容量を凌ぐ28kWhくらい発電してしまいます。)

      長くなりましたが、こうした点からも、「基礎充電(自宅での充電)」の確保は喫緊の課題だと思います。おっと、国や行政がもっと基礎充電を支援すべきだと考えます。日本の事情はどうか知りませんが、世界の流れを考えると、国や行政は当然そうすべきですよね。

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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