フランスの電器店で見かけた超小型EV〜シトロエン『アミ』の存在感

新型コロナ感染対策の自己隔離もなんのその。6月末に開催されたパイクスピークのレポートを届けてくれたジャーナリストの青山義明さん、実は、アメリカの直前にはフランスへ取材に行ってきたとのこと。町の電器店でシトロエン『AMI(アミ)』を見かけて感じた印象について、エッセー風のレポートです。

フランスの電器店で見かけた超小型EV〜シトロエン『アミ』の存在感

原稿をいただいてから、掲載までちょっと時間が掛かってしまいました。青山さん、ごめんなさい。(編集部/寄本 好則)
※冒頭写真はシトロエンのメディアギャラリーより引用。

家電製品と並んで展示されていました

フランスは皆さんご存知の通り原発推進国ですし、テスラ モデル3を始め多くのEVが街中を走っています。高速のサービスエリアには、ガソリンスタンドの脇に、多数の充電器が並んでいる光景もありました。

さて、そんなフランスで シトロエンの超小型EV『Ami(アミ)』を見ることができました。展示販売されていたわけですが、たまたまそのお店を訪れていて、思いがけずアミを見つけたという感じです。そのお店というのが『DARTY』っていう電気屋さん。日本国内でいうと大型家電量販店といったイメージでしょう。ずらりと家電製品が並ぶ大きなお店の一角に、キックボードタイプの電動スクーター、そしてその脇に少しこじんまりと、それでいて堂々とアミが展示されていました。

10年ほど前にヤマダ電機で三菱『i-MiEV』の販売をしていましたが、それ以上のインパクトを受けました。やはり電化製品とともに小さいとはいえ「クルマ」が並んでいるというのは強烈ですね。ですが、これくらいの販売のイメージでないと、まだ多くの人が不慣れな電気自動車を購入してもらうためのアピールにならないのかもしれませんね。

免許不要で14歳以上なら運転できるコミューター

さて、アミは2020年から製造されている超小型EVで、ボディサイズは、全長2410×全幅1390×全高1520(mm)となっています。最小回転半径は3.6mと小回りが利き、フランスの狭い道でも楽々運転ができそうです。

モーターは6kWの出力で、容量5.5kWhのリチウムイオンバッテリーをフロア部に搭載しています。最高速度は45km/h以下に抑えられており、一充電航続距離はおよそ75km。バッテリーの充電は、220Vの普通充電で約3時間ということです。

今年5月には、助手席部分をつぶして積載能力を上げたカーゴモデル『AMI CARGO』も登場しています。月額19.99ユーロからリースが可能。リースは最短1か月から利用することも可能。さらには0.26ユーロ/分というカーシェアリング、もちろん税込み6000ユーロから新車として購入が可能とアナウンスされています。この展示車両には7300ユーロというプライスタグが付いていましたが……。

ブランドロゴは、なんとステッカーでした(笑)

フランスでは免許不要で14歳から運転ができるというこの2人乗りのピュアEV。実際に車両に触れることも、座ってみることもできるということで、身長178㎝の筆者が乗り込んでみました。運転席側のドアは後ろヒンジとなっており乗降性は問題なし。ちなみに助手席側は前ヒンジとなっています。

着座した運転席からの視界は広く、周囲の様子が把握しやすいイメージです。外観に比べそのコンパクトなイメージほど窮屈な感じは受けません。基本的に車内には必要最低限のものが配置されているという印象でした。

シフトセレクタは「D」「N」「R」の3つのみ。それも運転席のドア側シート脇に配置されています。視界の広さを実現する左右のドアガラスは上下2分割となっており、ガラスが上下することはありません。

インパネにはスマートフォン専用の置き場所があり、スマートフォンを使用してこの車両のメイン画面として使うこととなります。もちろんカーナビやオーディオはもちろん、EVとしての航続距離や充電状況などの情報を見るのもこのスマートフォンが担当することとなります。

実際に触ってみての印象というと「笑っちゃうくらいに、ちゃっちい」です。車両全体が素材感というか、プラスチック感に包まれており、あまり出来の良くない3Dプリンターで作られたかのような印象。パーツの角とかの処理によっては指先とか切っちゃうんじゃないかって思うほどです。

ブランドのロゴであるダブルシェブロンは、なんとステッカーだったりもします。あまりにもお粗末な感じともとられかねないこの内外装には、思い切りの良さというのか、潔さも感じます。ま、ちょっとした移動用と割り切ればこれもありですね。

日本国内の都心部ではなかなか難しいとは思いますが、ちょっとした移動、最寄り駅などから自宅までのラストワンマイル問題などにうまく活用できそうな感じもしてきました。

(取材・文/青山 義明)

この記事のコメント(新着順)7件

  1. リチウムの年間生産量的に700万台しかEVを生産できないって記事がyahooにあったけど、こんな小型なものにまでリチウムを使うのはもったいないんじゃないかと思いますね。
    内燃機関車は年間約1億台生産されてるので、それを担えるだけのリチウム等の生産能力の向上を頑張って欲しいですね。もう、1億台生産できる能力があったら申し訳ないですけど。

    1. 内燃エンジン車の歴史=約100年に対して、リチウムイオン電池車は、まさに赤丸付き急上昇中なのは、ご理解頂けていると思います。
      今後10~20年の間に、自動車メーカー各社は、エンジン生産を急減速させ、急速にEVに転換していきますからね。
      テスラの生産台数の伸びを見ても分かりますが、EV:700万台が7000万台(年産)になるのに、20年も掛からないでしょうね。

      実は、リチウムは地球資源の観点で埋蔵量は豊富であって、年間EV700万台(*X年)分しか無い、ということではありません。
      自動車生産のサプライチェーンを考えれば、生産台数に応じてリチウム供給(採掘&生産)量も凄まじい勢いで増えていきますよ。
      (採掘して精製して売れば買い手がゴマンと居るのだから、どんどん生産しますよね。)
      ちなみに、内燃エンジンの主材料であるアルミや鉄も、リサイクル前提で世の中が回っていますが、EV用電池自体が(リチウム、コバルト、ニッケル等の)都市鉱山であり、当然のようにリユース・リサイクル前提で世の中が回っていきます。

      小型と言えば、リチウムイオン電池搭載の小型デバイスの筆頭がスマホですが、世界中に普及していますので、リチウムの消費&リサイクル量はチリツモで、毎年相当な量になっているでしょう。EV普及のために、スマホにリチウムを使うのはもったいないですか?

    2. >>CC1
      つまり、まだ1億台生産する能力はないけど、需要が増大しているため自ずとリチウムの供給も生産能力も向上するという希望的観測しかないってことですね。ありがとうございます。

      あと、埋蔵量が700万台分しかないなんて書いてません。1年間に生産できる台数が700万と記事にあっただけです。いくら、自動車メーカー側に生産能力があっても、リチウム側の生産能力が足りてないんじゃ意味がないので、そこはどうなっているのかを聞きたかったのですが、具体的な説明がなく、向上するという希望的観測しかないのは残念です。
      小型モビリティに使うのがもったいないというのは、リチウムは他の電子機器にも使うというのも含んでいました。EVの生産に引っ張られて他の製品の生産の足を引っ張ってしまうのはどうかと思うので、もったいないってことですよ。

  2. フランスでは免許なしでもこうした自動車に乗ることができるのですね。羨ましいかぎりです。日本だと自動車の教習費用も高いですし、軽自動車でもそれほど安くはないので、若者が段々と自動車から離れていってしまうのも仕方ないかな…と思っていたのですが。

    若いうちから、自動車に慣れ親しむ層を厚くしておく…というのは、フランスの国家戦略なのでしょうかね。日本の場合、国内市場は捨てているのかもしれませんが、こうした戦略にうまく EV を組み込んでくる辺り、さすがだな…と思いました。

    1. >国内市場は捨てている…

      いやいや、たとえば、田舎暮らしで、自宅近くにガソリンスタンドが無い高齢者のためにこそ、この「アミ」のような超小型モビリティ(EV)は不可欠だと思いますし、全国で毎年、数十万~百万台超くらいの需要は見込めるのではないでしょうか?
      しかしながら、スマホや一部家電のように、日本国内メーカーが需要に見合う製品を供給してくれる保証はありません。トヨタさん、日本の将来のためにも、C+podを「アミ」並みの売価で早く一般発売してください!

  3. こんにちは。
     『DUTY』っていう電気屋さん。→『DARTY』の間違いだと思います。

    1. ミヤタ ショウイチロウ さま、コメント&ご指摘ありがとうございます。

      昨日、著者の青山さんからも修正の連絡がありました。本文記事、修正いたします。m(_ _)m

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この記事の著者


					青山 義明

青山 義明

自動車雑誌制作プロダクションを渡り歩き、写真撮影と記事執筆を単独で行うフリーランスのフォトジャーナリストとして独立。日産リーフ発売直前の1年間にわたって開発者の密着取材をした際に「我々のクルマは、喫煙でいえば、ノンスモーカーなんですよ。タバコの本数を減らす(つまり、ハイブリッド車)のではないんです。禁煙するんです」という話に感銘を受け、以来レースフィールドでのEVの活動を追いかけている。

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