都内の交換ステーションを着々とクリア
ホンダ『EM1 e:』で「Gachaco(ガチャコ)」ステーション全制覇を目指し、東京を一筆書きツーリングにチャレンジの後編です(前編はこちら)。冬晴れの午前9時にスタート後、本日12回目のバッテリー交換を済ませて、東京エリアの最西端にある桜堤2丁目ステーション(武蔵野市)を出発しました。行程がほぼ半分の時点で、時刻はすでに午後3時。問題は南青山2丁目ステーション(港区)の利用時間が午前9時から午後6時ということ。終盤に訪ねてもクローズされている可能性大です。
これまで何度も使っているので、立ち寄らなくてもいいかなぁ……と迷いつつ、東京西部のステーションをたどります。野崎1丁目ステーション(三鷹市)は、バイク用品店「ナップス三鷹東八店」の店先に設置してありました。ナップスさんの店頭設置は3ヵ所目。全面協力という感じですね。Gachacoユーザー的にはありがたし。
そのまま東八道路を東へ。高井戸西1丁目ステーション(杉並区)は環八通り沿いのコインパーキングに設置されていました。これまでにも見てきたように、店舗の駐車場・駐輪場やコインパーキングの一角というのはオーソドックスな設置場所。でも幹線道路沿いというのはわかりやすくていいですね。
続いて桜上水5丁目ステーション(世田谷区)へ向かいます。そんなに離れていないのですが、京王線の上北沢駅付近で一方通行トラップに。踏切を渡りたいのに、進入禁止だったり歩行者・自転車専用だったり。最後は押し歩きでクリアしました。
ここは京王線桜上水駅から徒歩圏のロケーションで、電動モビリティシェアリングサービスの「HELLO MOBILITY(ハローモビリティ)」の拠点にもなっています。同じホンダ製の「Mobile Power Pack e:」を積んでいるBENLY e:が並んでいました。HELLO MOBILITYと共用になっているステーションは多いようです。
さらに南下して瀬田5丁目ステーション(世田谷区)へ。二子玉川の近くです。住宅街のど真ん中に、いきなり交換機が現れます。マンションの敷地のようです。唐突感が際立つのは、店舗やパーキングのように不特定多数の来訪を前提にした場所ではないからでしょう。でも郵便ポストだって、登場した頃は「なにこれ」な感じだったかもしれません。
自宅からは東京の反対側まで来たのに、多摩川や等々力渓谷に寄らずに帰るのは残念ですが、日が傾いてきました。都心部へとって返し、駒沢2丁目ステーション(世田谷区)へ。ここは以前に当ブログでも紹介されていて(関連記事)一度来てみたかった場所です。電動キックボードから小型EV「FOMM ONE」「C+pod」まで、各種の電動モビリティの拠点になっている「ENEOSマルチモビリティステーション」の一角にGachacoのバッテリー交換機も設置されています。
間伐材などを使った印象的な木造建築で、屋根には太陽光パネルが付いています。ENEOSホールディングス広報部に問い合わせたところ「マルチモビリティステーションの電源は系統電源+太陽光パネルによる自家発電によって構成されているため、理論上、一部は(太陽光発電の電気が)Gachacoにも使用されています」とのことでした。
100%ではないとのことでしたが、これですよこれ。電動バイクは自宅で夜間に充電するのが一般的。でも、バッテリーシェアリングなら昼間に太陽光パネルで蓄電できます。脱炭素的にも災害対策上も(場合によってはランニングコストにも)大きな利点になります。以前に石垣島で取材したEVバイクシェアリングサービス「GO SHARE」でも、太陽光パネルが各バッテリー交換機とセットで設置されていいました(関連記事)。
すぐに実現するのは難しいかもしれませんが、グリーン電力で稼働するGachacoステーションがあちこちに増えるというのは、かなり素敵な未来図だと思えます。
バイク乗り同士の会話もスムーズ!
続いて訪ねたのは三軒茶屋1丁目ステーション(世田谷区)。電車で一駅分しか離れていません。充電率(SOC)は90%以上なのでバッテリー交換の必要はないですが、とりあえず立ち寄ります。ここでしばし作戦タイム。
残っているステーションは5つ。素直に走るなら品川区と大田区を回ってから、港区、新宿区、千代田区。でも、そのルートだと先述した南青山2丁目ステーション(千代田区)の営業時間が過ぎてしまいます。せっかくだからコンプリートしたいので、先に南青山へ行くことにしました。国道246号をまっすぐ都心へ。左端の車線をのんびり走ります。もちろん車にはどんどん追い抜かれるのですが、同時に電動アシスト自転車や電動キックボードを追い抜きます。電動モビリティが増えているのを実感しました。
EM1 e: はまだ数が少ないのでしょう。今回も信号待ちでスクーター乗りから「電動ですか」と聞かれましたが、大型バイクに乗っている時より声をかけられる確率は高めです。ニコッと交わすちょっとした会話が楽しい。最近はアイドリングストップ機能がついているスクーターもあるんですね。EM1 e:が無音ゆえの気づきでした。
南青山2丁目ステーションには無事、営業終了の30分前に到着。あとのステーションは24時間営業なのでルートは自由ですが、先に西新宿2丁目ステーション(新宿区)に立ち寄ることにしました。都庁前の西新宿第四駐車場にあります。すぐにステーションは見つかったものの、駐車場の柵に隔てられています。そのまま駐車場に入っていいものかどうか……係員の人がいたので聞いてみました。
「5分以内に出たら駐車料金は無料だけど、外に止めて運んで交換してる人が多いかな」と教えてくれました。アドバイスに従って、歩道に停めてバッテリーを運んでガチャっと交換。ここには、初めて見る標識がありました。よくある青いチャージングポイントのマークかと思いきや、絵がオートバイ。じつはGachacoステーションとは別に、電動バイク用の100Vコンセント(4口)も設置されていて、無料で利用できるそうです。こういう設備はうれしいですね。
残るステーションは2つ。南下して西五反田7丁目ステーション(品川区)へ。あたりはすっかり暗くなっています。こちらもコインパーキングの一角に設置されています。夜のビル街は静かな雰囲気。バッテリー交換機のスロットが2つ、青く光って迎えてくれます。電動スクーターにはホッとする明かりですね。灯台のようです。
最南端は湾岸エリアの平和島4丁目ステーション(大田区)。充電インフラというと目立たない場所に追いやられがちですが、ここは通信建設会社の正面玄関脇にカッコよく設置されています。駐輪スペースも広すぎるぐらいですが、無人だったので遠慮なく使わせてもらいました。
ラストは都心部に戻って、JR水道橋駅に近い三崎町3丁目ステーション(千代田区)へ。路地にあるコインパーキングの一角で、HELLO MOBILITYが併設されています。ここもよく使っていて、交換に行ったついでに、近くのコーヒーショップに寄ったりもします。つまり自宅も遠くないのですが、せっかくなので出発した東雲2丁目ステーション(江東区)まで戻って、周回ルートの輪を閉じました。
新設に気付かず全制覇はならず……
23ヵ所のステーションを巡って東京23区の外縁を一回り。12時間かけたツーリングの走行距離は188.1km。まったく電欠を心配することなく走れました。電動スクーターでもロングツーリングができることを確かめられたのが収穫です。
ルートを振り返ってみると、世田谷区と練馬区にはそれぞれ4ヵ所のGachacoステーションがあります。一方で、目黒区、中野区、中央区、台東区、荒川区など、まだステーションが設置されていない区もありました。鶏が先か卵が先か、みたいな話になりますが、数が増えるほど普及率アップにつながるはず。でも、利用度の低いインフラは好ましくない。投資と収益のバランスは難しそうです。前例のないチャレンジなので、今後に注目したいと思います。
今回のツーリングルートと新設ステーション
さて、前編の冒頭でルート設定を間違えたと書きました。全ステーションを一筆書きで回るつもりだったのに、じつはステーションが新設されていて、コンプリートは失敗。23ヵ所だと思っていたら、じつは30ヵ所あったのでした。今回のルートを示す地図上に星印をつけた場所です(2月10日現在はさらに増えています)。すぐそばを通っていながら気づいていなかったりもして、ほんとに残念。いや、ステーション増設はうれしいので、残念ではないですね。どんどん増やしてください。
テスラのスーパーチャージャーがまだ全国に40ヵ所ぐらいだったころ、とあるオーナーから9ヵ月で全部回ったという話を聞きました。コンプリートしたくなる気持ち、すごくわかります。新設されるGachacoステーションも、できるうちは全部回ってみようと思います。そんなに増えたらもう無理! とギブアップする日が来ることを願いつつ。
私のHonda EM1 e:(2024/2/8現在)
総走行距離 1451km
Gachaco交換 78回
平均電費 34.7km/kWh
取材・文/篠原 知存