BMWのBEV(電気自動車)はどこへ向かう 〜「Concept i4」発表

2020年3月3日、BMWは2021年発売予定の「i4」のコンセプトモデルを発表しました。4ドアのグランクーペで、性能的にはICEのM3を凌駕しています。BMWのBEVは今後はどこに向かうのでしょうか。また、車格は少し違いますが、欧州でも大人気のテスラ・モデル3を跳ね返せるでしょうか。

BMWのBEVはどこへ向かう 〜 Concept i4発表

※ ICE=Internal Combustion Engin(内燃機関=エンジン車)
※ BEV=Battery Electric Vehicle(純電気自動車)

コンセプト「i4」はオンラインで発表

「Concept i4」の発表は、BMWの公式サイトをはじめ、Tech Crunch(2020年3月4日、リンク先は英語)auto motor sport(リンク先はドイツ語)などが伝えています。おっと、Tech Crunchの日本語版にも情報が出ました。

長いホイールベース、低く流れた全体のボディーライン、短いオーバーハング。いずれも、先行するBEVであるi3とは異なる、グランクーペらしい特徴を持つ。BMW Groupのプレス向け資料より。

世界的大流行の新型コロナウィルスのせいで「ジュネーブ国際モーターショー」が中止となったため、オンラインでの公開となりました。他社にもオンライン公開のクルマが多数出ていますね。

BMWの電動化ロードマップ

まずは、BMWが過去に発表したロードマップを見てみましょう。下図は、2019年9月に同社が投資家向けに行ったプレゼンテーションの中のロードマップです。

BMWが2019年9月に発表したロードマップ。今回発表された「Concept i4」は、2021年初頭に予定されている「Vision i4」につながるものと考えられる。なお、上段がBEVで、下段はすでに数車種が出ているPHVである(参考程度にご覧いただきたい)。BMW Groupの公式サイトより転載。

さて、すでに欧米では予約が始まってはいますが、MINIのBEVである「MINI Electric」は2019年内に描かれています。発表なのか予約開始なのかデリバリーなのか、いまひとつ曖昧ですが、とにかく2019年内に大きな動きがある予定でした。デリバリーがいつ始まるかによりますが、「半年から9ヶ月は遅れている」と考えて良さそうです。

また、人気のSUVである「X3」のBEV版「iX3」も、2020年初頭に予定されていましたが、今のところ動きが伝わって来ないので、遅れていると捉えて構わないでしょう。余談ですが、「X3」は最近の「Waymo」についての記事でお伝えしたように、Waymoへの投資に先頃参加を表明した「マグナ・インターナショナル」の子会社「マグナ・シュタイア(旧・シュタイア・プフ)」の製造ですし、あのジャガー初のBEV「I-PACE」も同社の製造なので、「iX3」もマグナ・シュタイアの製造になるだろうと筆者は予想しています。

比べてみよう〜Concept i4とiNEXT

ロードマップの中には、もう1台のBEVコンセプトが掲載されています。2018年に発表された「iNEXT」です。こちらも2020年末には大きな動きがあるはずですが、2020年初めの今は、まだ動静は伝わって来ていません。

iNEXTにはいくつもの特徴が有ります。たとえば5G回線常時接続で様々な機能(コネクティビティー)やサービス(エンターテインメント)を提供するとか、「レベル3(L3)自動運転」に対応するなどです。

さて、まずは今回発表されたConcept i4のコクピットです。

Concept i4のコクピット。大きな特徴の一つである「曲面ディスプレイ」が様々な情報を映し出す。グレー基調の落ち着いた室内に、金属光沢を抑えたカッパーがアクセントを添え、スイスのブザンソンあたりで作られている高級時計のような雰囲気を醸し出している。BMW Groupのプレス向け資料より。

ステアリングは人が運転するのを基本とするような、従来通りのサイズですね。一体化された曲面ディスプレイが目を惹きます。ドライバーズシートとこ・ドライバーズシートとの間のコンソール上(従来車のシフトノブの位置)には、ダイアル式かノブ式のコマンド入力装置が見て取れます。

そして、下が、Concept i4より先に公開されていたiNEXTのコクピット画像です。似ているようですが、ステアリングの大きさや形、そしてディスプレイの数など、違いもあります。

iNEXTのコクピット周りのインテリア。L3自動運転を念頭に置いたiNEXTでは、ステアリングホイールは小型で長方形になっている。これもConcept i4とは異なる。乗降生と、L3自動運転時の足下の自由度を向上させる仕掛けだ。BMW Groupの公式サイトより転載。

L3自動運転を念頭に置いたiNEXTは、ステアリングが小さくて、しかも長方形です。L3発動時にはステアリングはテレスコピックして、ダッシュパネルに近い位置まで格納されるのでしょう。このイメージ写真が格納時のように見えます。

ただし、ディスプレイは2つ設置されていて、上のConcept i4よりも古くさい印象を受けます。(失礼!)

どうやら、未来のBEVの方向性を表したiNEXTが一足先に公開され、同じように一足先に名前が出たVision i4との要素のいくつかが、今回のConcept i4に取り入れられた、と考えてよさそうです。

2018年9月16日にBMWが発表した「iNEXT」の画像。BMWの電動車両の方向性が凝縮されたコンセプトカーだった。こちらはSUVのスタイルをまとっている。Vision iNEXTという表記も見られる。BMW Groupの公式サイトより転載。

曲面ディスプレイと広大なグラスルーフもiNEXTの中で提唱されていました。まずは今回発表されたConcept i4のグラスルーフと室内です。

i4 Conceptの、「曲面ディスプレイ」と並ぶ特徴の一つ、開放感あふれる「グラスルーフ」。BMW Groupのプレス向け資料より。

そして、一足先に出ていたiNEXTのグラスルーフが下の画像です。よく似てますね。

iNEXTの室内とグラスルーフ。Concept i4の大きな特徴の一つだが、iNEXTのアイディアが導入された形と見て良いだろう。BMW Groupの公式サイトより転載。

どうやら、「iNEXT+Vision i4 = Concept i4」という式が成り立っていそうです。あくまで筆者の主観ですが……。

筆者などは「NEXT」と聞くと、ペプシコから社長にと呼んだジョン・スカリーに、自ら設立したAppleを追い出されたスティーブ・ジョブズが、直後に立ち上げた会社が作っていたワークステーション「NeXT」を思い出してしまいます。今のMac OSの原型は、このNeXTのOSですよね。おっと、話が逸れました。

Concept i4のスペック

Concept i4の性能諸元に関しては、以下のようなデータが発表されています。

・第5世代の「BMW eDrive」システム搭載
・電池容量は80kWh
・電池重量550kg
・270マイル(およそ434km)の航続距離
・530hp
・0-100km/h加速は4秒以内

BMW Groupのプレス資料より。

航続距離が「WLTP」か「EPA」かは明らかにされていませんが、電池容量からすると、おそらくEPAと思われます。また、加速に関しては、このレベルを達成するのはM3やM4ということになります。「4秒以内」と発表しているので、M3の加速を超えることになりそうです。

Concept i4の縦に伸びた大きなグリル。「バイエルンの自動車工場(Bayerische Motoren Werke AG)」製のクルマに伝統的に受け継がれてきたアイコン。今回は「エンジン冷却」ではなく「各種センサーのベッド」としての活用となる。BMW Groupのプレス向け資料より。

大型化されて縦に伸びた巨大な「キドニー・グリル」は、エンジンの冷却のためではなく、各種のセンサーやカメラを設置するスペースとして活用されているそうです。それにしても、どんどん大きくなるので、ネット上では、フロントフードが全部グリルになっているギャグ画像も見られます。

さて、搭載される電池ですが、中国製か韓国製になるのでしょう。BMWグループは2019年11月21日に、中国の大手のひとつ「CATL(Contemporary Amperex Technology Co. Limited)」、そして韓国の「サムソンSDI」との関係強化につながる、「バッテリー供給契約の拡大」を発表したこともありましたね。

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こうやって見てくると、BMWの向かう方向はやはり「BEVを主軸とした電動車両製造」、「コネクティビティーによる機能とサービスのフルタイム化」、「自動運転の進展」、そしてi3工場ですでに世界に向けて見せた「製造時環境負荷の低減」でしょう。

欧州にすでに進駐している「Model3」人気を跳ね返せるか?

欧州ではすでにテスラ・モデル3フリートの躍進が続いている事実は、読者の皆さんご存じの通りです。2019年9月時点での欧州のBEV販売実績では、「テスラ、BMW、フォルクスワーゲン」3社の販売台数が躍進し、40,700台を記録しました。

テスラは、モデル3に後押しされ、合計販売台数は19,500台に達し、欧州でのBEV市場のほぼ半分を占めるところまで成長しています。9月はテスラ モデル3にとって記録的な月となりました。17,500台を売り上げてBEV販売の首位となり、全モデル合計では11位となりました。欧州での自動車販売の10位圏内にBEVが肉薄したのは、これまでになかった現象でした。

そして、2021年に生産に入る予定とされるConcept i4ですが、好調なモデル3を超える魅力を兼ね備えているのでしょうか。クラス的にはモデル3よりやや上とされるのでしょうが、性能的には被ると思われます。

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Concept i4の車両重量をBMWは明らかにしていませんが、バッテリー80kWhの重さは550kgとしています。これはモデル3の75kWhの478kgを「大人の乗員1人分」上回っています。エネルギー密度はauto motor sport(リンク先はドイツ語)によると、Concept i4の145Wh/kgに対して、モデル3は159Wh/kgとやや上回っています。

既存メディアがまず書く「動力性能」ですが、Concept i4の「0-100kmが4秒以内」に対して、モデル3のバッテリー75kWh搭載の「デュアルモーターAWDパフォーマンス」が「3.4秒」ですから、なかなか良い勝負でしょう。BMWは「530hp」という記述しか明らかにしていませんが、これはモデル3の2モーター前後搭載版「デュアルモーターAWDパフォーマンス」の「490ps(予測値、テスラはpsやhpをあまり意味が無いとして公表していないので)」を10%ほど上回っています。

Concept i4のドライビングイメージ。BMW Groupのプレス向け資料より。

こう見てくると、Concept i4を基にした市販車が2年後にモデル3に対抗するには、「自動運転の完成度」がキーになると考えられます。BMWは今後2年で、進化を続けるテスラの自動運転にどう追いつき追い越すか、なかなか見応えのある競争が繰り広げられることでしょう。

(文/箱守知己)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. いつも拝見しておりましたがはじめてコメントさせていただきます。
    スポーツカーが好きでずっとスポーツカーに乗っていますので、BMWやポルシェ等元々はスポーツカーを製造してきたメーカーがどのように個性を残しながらEV車を製造していくのか気になっています。
    BMWもポルシェもシルキーシックスやフラットシックス等メーカーを象徴するエンジンがあり、このエンジンだからこそ購入してきたという層も多かったと思います。
    モーターになってしまうとメーカーごとの差は小さくなってしまうのかなと考えています。
    難しいテーマであるように思うのですが従来からのファンも納得ができ、環境にもやさしい夢のような車をぜひ作ってほしいなと思っています。

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					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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