東京都「ZEV普及プログラム」に電気自動車ユーザー目線で5つの提言

2020年2月21日、NHKのニュースで東京都の小池知事が不動産業者などに「街なかや商業施設の駐車場などに急速充電器の整備」を求めたというニュースが報じられました。街なかの急速充電器増設は必要でしょうか。電気自動車ユーザー目線で考えてみます。

東京都「ZEV普及プログラム」に電気自動車ユーザー目線で5つの提言

東京都が全額補助して急速充電器を増設?

NHKのニュースによると、東京都が「不動産会社や商業施設を運営する企業の担当者らを都庁に招いて意見を交わし」、小池知事が「急速充電器の設置にあたって全額を補助する都の制度を説明したうえで、街なかの駐車場や集合住宅の駐車スペース、それに商業施設などに積極的に整備するよう協力を呼びかけ」たと報じています。

出席者からは「充電器用のスペースをどう確保するかが課題だ」といった指摘もあったとか。さらにこのニュースでは「都は(電気自動車の)普及に向けた環境整備のために急速充電器をできるだけ早く1000基以上に増設する取り組みを進める考え」であるとまとめています。

電気自動車のさらなる普及を見据えて、充電インフラ整備の加速が必要であることに異存はありません。でも、街なかや商業施設に「急速充電器」をバラバラと設置するのは、あまり効果的な方法ではありません。しかも、都が全額補助というのは、無駄なバラマキ施策になりかねない危惧を感じます。

都庁近くの公共駐車場にも急速充電器が設置されていますが、正直、あまり使いやすい施設とはいえません。(写真は2013年11月撮影)

そもそも、小池知事がどういう席でこの発言をしたのかニュースの内容ではわからないのでネット検索してみると、2月21日に東京都が『ZEV充電インフラ拡大ミーティング〜ゼロエミッションビークルの普及を事業者とともに〜』を開催。その中のやりとりであったことがわかりました。

担当部署は、地球環境エネルギー部 次世代エネルギー推進課。今までにも、EVsmartブログでは『2050年までに東京のCO2排出を実質ゼロにすると小池知事が表明、を東京都庁に聞いてみた』や『東京都の集合住宅などへの充電設備補助金【申請受付中!】』といった記事で、東京都の電気自動車の普及施策について意見をお伝えしてきています。その取材に対応していただいたのが、まさにこの次世代エネルギー推進課でした。

はたして、担当部署でも「急速充電器の整備」がことさらに重要な施策と捉えているのか。担当課長に直接電話して伺ってみました。

端的に結論としては、東京都としては急速充電器の設置促進だけに注力しようとしているのではなく、小池知事の発言は東京都が昨年末(12月27日)に策定して発表した『ゼロエミッション東京戦略』のひとつである『ZEV普及プログラム(PDFファイルにリンク)』に基づいたものである、ということでした。

【関連サイト】
『ゼロエミッション東京戦略』(東京都環境局)

東京都は、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言し、本気で具体的な施策に着手しつつあります。ZEV(Zero Emission Vehicle=排出ガスを出さない自動車)普及は、目標を実現するために不可欠なプログラムと位置付けられています。

東京都『ZEV普及プログラム』より引用。

明確な目標を定めた『ZEV普及プログラム』を支持したい

発表された『ZEV普及プログラム』は、2050年のゼロエミッション東京を実現するために2030年に達成すべき目標を明記。広く「都民にわかりやすく」という点に配慮してまとめられています。先にテキストリンクを貼ったPDFを、ぜひご一読ください。

2030年に向けたZEV普及の具体的な施策については、次の3つが「柱」として掲げられています。

● ZEV普及を支えるインフラの確保
● 乗用車・バス・バイクなど車両のZEV化促進
● 社会定着に向けた機運醸成

目標、そして具体的施策ともに、列記されている内容はわかりやすく、ことに2030年に「都内乗用車新車販売台数に占めるZEV割合50%」や、「小型路線バス(乗車定員30人以下程度)の新車販売は原則ZEV化」といった意欲的な目標は、EVsmartブログとしても賛同し、支持したいと感じます。

2025年に「公共用充電器5000基」を整備

充電インフラについての目標を具体的に確認してみます。まず、現状で東京都内全域の公共用充電器の数は、急速充電器が約300基、普通充電器が約2200基。また、水素ステーションが14カ所(いずれも2018年度末)とのこと。

2050年に「都内を走る自動車は全てZEV化」という環境を整備するために、次の目標を明記しています。

【2030年のインフラ整備目標】
● 急速充電器 1000基
● 水素ステーション 150カ所

【2025年のインフラ整備目標】
● 公共用充電器 5000基

つまり、2030年に急速充電器1000基はともあれ、5年後の2025年までに現状から約2500基増える5000カ所の充電インフラを整備する目標であり、そのうち500基が急速充電器だとしても、約2000カ所の普通充電器を設置するという計算になります。

たとえば、港区の東京ミッドタウン(『EVsmart』施設紹介ページ)には、125台の普通充電器が設置されています。充電器が設置されている駐車区画はエンジン車も共用。充電時間は3時間を上限として、同時に利用できる台数にも制限を設けています。

ある程度長時間滞在する商業施設などでは、設置のための初期コストも急速充電器に比べて安い普通充電器を賢明に設置する模範的な前例として、さらに広がっていくことに期待しています。商業施設の大規模な駐車場に、ミッドタウンのような普通充電器導入の事例が増えていけば、2000やら5000基の充電インフラが整備されるのに、それほど時間はかからないのではないでしょうか。次第にEVの数が増えて充電の需要が高まっていく変化にも対応しやすいでしょう。

EVユーザー目線で気になる点もいくつか……

総論としては評価できるし、期待したい東京都の『ZEV普及プログラム』ですが、EVユーザーとしての実感に照らして、いくつか気になる点があります。『ZEV充電インフラ拡大ミーティング』には、自らもEVユーザーである e-Mobility Power の四ツ柳社長も出席されていたようなので指摘があったかもしれないですし、東京都のご担当者も先刻承知のことかとも思いますが、EVsmartブログからの「提言」として、列記しておきます。

急速充電器の整備は賢明に

点在する商業施設に「全額補助」で急速充電器を設置するのは、あまり賢明な施策とは思えません。コスト負担や電力のことを考慮すると、今、全国の道の駅やコンビニなどに多く設置されている、出力20〜30kW程度のいわゆる「中速充電器」が、各施設ごとに1基ずつ設置されることになっていく懸念があります。

EV乗りの実感として、コンビニならまだしも、大きな施設でショッピングや食事をしていると急速充電制限時間の30分なんてあっという間に過ぎてしまいます。食事の途中で席を立ってクルマを移動して……、というのがかなり面倒。街なかの施設で「経路充電」的にまとめて充電すべきケースも稀なので、数時間、繋ぎっぱなしにしておけて、利用料金も安価(無料であればさらにありがたい)な普通充電器がたくさんあるほうがむしろ使いやすいと感じます。

また、1基しかない急速充電器を目指して辿り着いても、先に利用者がいて充電待ちになるケースが多発するのもストレスです。

一般道に急速充電設備を整備するのであれば、交通量が多く東京から周辺地区への経路となっている幹線道路沿線。あるいは、渋谷や新宿、銀座といった集客の多い繁華街へのアクセスがいい場所に、テスラスーパーチャージャーのようにある程度まとまった数の急速充電器を設置するのが賢明です。放射状の高速道路の拠点となる、用賀や八王子、三郷や川口(埼玉県ですが)あたりに、まとまった充電拠点があるのもいいかもしれません。いずれにしても、東京都がしかるべきイニシアチブをとり、計画的な公共急速充電器整備を進めることが、大切な予算を無駄にしないためにも重要だと思います。

点在する1基施設に補助金を出すよりも、十分な広さの駐車場をもつショッピングセンターや大規模な施設に協力してもらい、東京都が設置費用を負担して150kWのCHAdeMO新規格で、「東京スーパーチャージャー」とでも呼べる施設を展開する、なんてのはどうでしょうか。

東京都『ZEV普及プログラム』より引用。

集合住宅駐車場には充電器設置を義務化する

私(寄本)の場合、自宅が一戸建てでガレージにはEV充電用の200Vコンセントを設置しており、普段はほとんどが自宅での基礎充電でEVを活用しています。EV普及が進まない要因として「充電インフラの不足」が指摘されていますが、EVを便利に活用するには、自宅での充電が肝。今までの記事でもしばしば書いているように「急速充電器が足りないのは高速道路のSAPAだけ」ともいえて、ことに東京都の場合、マンションなどの集合住宅に充電器を設置することが火急の課題です。

『ZEV普及プログラム』でもこの点には言及されていて、対策として集合住宅への充電器設置への補助を実施することが挙げられています。さらに求めるなら、中国や韓国のように、新築する集合住宅の駐車場には充電器設置を義務づけるなど、さらに踏み込んだ施策が実施されると効果的ではないかと思います。

また、日本EVクラブでEVラリーや次世代車試乗会を行ってきた白馬村では、個人宅にEV充電用200Vコンセントなどを設置する際に4万円の補助金を受けられる助成制度が実現しました。東京都でも個人の戸建て住宅や中小企業の駐車場などに200Vコンセントを設置するための、工賃を含めた合理的な補助制度があってもいいですね。

水素ステーションの整備は賢明に

脱炭素モビリティとして、FCV(燃料電池車)も選択肢のひとつです。とはいえ、すでに世界の自動車メーカーが軒並み注力し始めたバッテリー式の電気自動車に比べて、広く乗用車として普及する可能性はまだまだ低いままであることは明白です。

一方で、水素ステーションの建築には億単位のコストがかかり、水素の製造や運搬、またFCVへの充填時に必要なエネルギー(つまりカーボン排出量)など、脱炭素モビリティとしての真価にも多くの課題が残っています。

実際に活用できるFCVの車種が増えていかない現状で、ガソリンスタンドの代替といった位置付けで水素ステーションの数を増やしてしまうのは、負の遺産を築くだけの無駄な投資になるのではないかと危惧します。

拠点を限定してFCVのバスやトラックなどの大型車を運行するのであればある程度効率的な仕組みになるかもしれません。やみくもに「2030年に150カ所」と数値目標を定めて突っ走るのではなく、トヨタをはじめFCVを推進するメーカーとも協議しながら、リアリティの高い計画に基づいて水素ステーションの整備を進めるのが賢明ではないかと思います。

東京都がモデルYをフリート購入、とか

東京都『ZEV普及プログラム』より引用。

『ZEV普及プログラム』の中で「電気自動車等(ZEV)を購入または検討したいと思う条件」についての世論調査が示されています。赤枠で示されている「購入価格が安くなる」や「購入したい車両が発売される」という点は、日本でなかなか電気自動車が普及しない最大の原因です。

テスラ車は実用的に素晴らしい自動車ですが、モデルSやXは1000万円超。モデル3でも現在ラインアップされているグレードは500万円以上なので、手頃な車種とはいえません。国産モデルで、200万円以下で買える軽の電気自動車や、SUVで500万円以下、4WDなど、手が届く価格帯に幅広い車種の選択肢が出揃うことが、2050年に全部ZEVを実現するために不可欠です。

どんな車種を市販するかはあくまでもメーカーの判断なので、自治体にできることは限られているでしょう。プログラムでは、普及を進める具体的な施策として、補助の実施や税制などの優遇策、そして都庁が率先してZEVを導入することなどが示されています。

昨年、千葉県市川市で公用車へのテスラ車導入が「高額過ぎる」と問題になりましたが、メーカー各社に対して強いメッセージを発信するのであれば、東京都はZEVしか新規に購入しないと宣言するとか、もうすぐ日本にも導入される予定のモデルYを(すでに市販されているモデル3でもいいですけど)公用車としてまとめて購入するなど、話題性の高いアクションがあるといいのに、と感じます。

機運醸成には『EVsmartブログ』も協力します!

施策展開3つの柱の3つ目に挙げられているのが「(ZEVの)社会定着に向けた機運醸成」です。NHKのニュースでさえ、「充電インフラ整備=急速充電器を増やす」と、軽い誤解というか思い込みがあるように、電気自動車について一般市民はあまり理解していない、また、エンジン車が普通に割安で買える現状では「理解する必要もない」のが実態でしょう。

充電スポット検索アプリ『EVsmart』のデベロッパであるアユダンテが『EVsmartブログ』という電気自動車情報に特化したウェブメディアを運営しているのも、まさに電気自動車への理解を広げ、EVシフトの社会的な機運を育てるため。微力ではありますが、できることがあればどしどし協力させていただきます。

ちなみに、『ZEV普及プログラム』では、「ZEV普及のための大規模イベント」の例として、「EVによる公道レース=フォーミュラE」が紹介されていました。東京でのフォーミュラE開催、ぜひ実現してください!

2014年4月、アメリカ・ロングビーチでのフォーミュラEレース風景。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)16件

  1. 充電という考えを変えたらどうでしょうか。
    世界中の自動車メーカー共通のバッテリー規格を作り、従来のガソリンスタンドで、満充電されたバッテリーを交換してもらうという方式ならば、充電にかかる時間が節約できるし、従来のガソリンの代わりに「共通バッテリー」という電気自動車ユーザー共有の財産のという考えなら、ガソリンエンジン車と同じような感覚で使用できるんではないだろうか。充電にかかる時間と、そこに至るまでの時間がネックになっているんだと思いますがいかがでしょうか。

    1. JOHNNY様、コメントありがとうございます。実はそれを考えた人は何人かいて、実際に実行に移した方も数社いらっしゃいます。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/battery-swap/
      これを見ていただくとなぜバッテリー交換式が普及していないかがお分かりいただけると思います。
      ただ中国では、NIOがバッテリー交換ステーションを展開し、他メーカーも追従しつつあります。現時点ではおっしゃるようなメーカー間で共通の設備ではなく、メーカーごとに別々のステーションになっています。その理由も上の記事で説明されています。よろしければご覧ください。

  2. 電気か水素かの議論はあまり意味がないという気がします。
    車に関してはBEVがこれから普及期に入る。FCVは水素製造と備蓄の
    技術革新を経てこれから家庭のエネルギーと一緒に進歩を遂げて
    電気と水素は共存して切っても切れない関係になっていくと思います。
    家庭で太陽光を利用した水素生成システムや溶媒貯蔵技術が10年後に
    確立されれば電気と水素は素晴らしい関係になっていきますよ。

  3. 充電インフラを今までたくさん見てきましたが、設置コストや維持費が課題ですよね。仮に設置したところで故障時の補修費が高くて充電器が使えないリスクもありますし。
    最近国道41号線美濃太田~高山間を走っても初期に設置された充電器の故障や撤去を複数目撃しました…そろそろ充電インフラ更新補助も出すべきではないでしょうか!?
    ちなみに最安で設置でき故障率も低い=コストパフォーマンスが高いのは「EVコンセント+車載充電器」なのです!!自宅充電が基礎充電と呼ばれるようにこれがローコストローリスクの安定インフラという訳で。
    外出時の基礎充電に相当するのは宿泊施設。これとてNCS認証式普通充電器だと1台60万かかり認証通信費も発生するので得策ではなく、以前別記事で書かれた認証なしスタンド充電器も本体が高額(20万円程度)になるので、もし建物の壁にEVコンセントを設置でき駐車場が隣接しているなら自宅同様の工法(リンクに動画あり)で数万円で済む可能性があります。タイマー通電式で時間単位課金にすれば鄙びた宿でも問題あるまい(受電容量以内に収めればの話だが)。家族経営の施設なら1~2台つければ問題ないでしょうか?

    とにかくガソリン車と同じ感覚で電気自動車には乗れませんよ。合言葉は家電に同じく「上手に使って上手に節電」でしょうか!?

    1. ヒラタツ様、コメントありがとうございます!

      >>初期に設置された充電器の故障や撤去を複数目撃しました

      そうですよね。多くの充電設備が、1ヶ月に1回も使われていません。基本的にお役所に任せると、どうしてもお役所の幸福をゴールにしていきますので、本当に必要なところには全く設置されず、不要なところを(工事費をドブに捨てて)撤去するという流れになってしまいます。
      自動車メーカーに任せ、マーケティング費用としてやれる範囲で最もコスト効率の高い投資を許可すべきです。例えば補助金はメーカーに、バッテリーの容量と台数の積和で金額を決定すればいいのだと思います。

      >>EVコンセント

      これは基本的に賛成です。
      そもそも、いま日本で補助金対象になっている普通充電器は高額すぎ。例えばテスラのウォールコネクターにアダプター付けてもせいぜい
      https://shop.tesla.com/product/wall-connector
      500ドル
      https://www.evseadapters.com/products/tesla-to-j1772-adapter/
      239ドル
      なので合わせて10万円しません。これで、現行なら4基まで、新型なら将来16基まで、負荷分散機能が使えます。

  4. YasukawaHiroshi 様

    詳しい回答ありがとうございます、さすがにお詳しくいつもながら感心致しますw

    水素社会という実現するには、解決すべき課題が多いのは現実です、特にコスト面と水素そのものの扱い?の難しさを問題視する見方は多いですが、それでも日本だけにとどまらず中国やドイツなど見ても水素の普及コストとリスクを天秤にかけてでも水素社会に舵を切るべきであると動いております、、YasukawaHiroshi様が指摘するゆようなマイナス面があることなど当然承知の上でも水素の普及価値は高いという事です。

    クルマ業界?ではEV vs FCVのような見方になりがちですが、前にも述べた通りBEVはよっぽど革新的な新技術、新素材によるバッテリーが発明されない限り、内燃機関置き換わるクルマにはなりえないのが現実だと思います、個人的にはそのハードルは未知の領域でありますので、水素のハードルより高いのが現実だと思います。

    いずれにしても、クルマに限ればEV vs FCVの構図ではないと思いますが。
    ドイツでは都市ガス管に水素を添加し、いわゆる家庭用エネファームで発電するような実験が行われてるようですが、エネファームで発電した電気でEVに充電するという手法も考えられるのですからね。

    人為的CO2温暖化論を謳う?ならば水素を原状の現実だけで否定できなはずですが?

    1. そえとも 様、コメントありがとうございます。

      >日本だけにとどまらず中国やドイツなど見ても水素の普及コストとリスクを天秤にかけてでも水素社会に舵を切るべきであると動いております

      これ、実際にはそんなでもないんですよね。エビデンス、ありますか?

      >クルマ業界?ではEV vs FCVのような見方になりがち

      というか、車においては、FCVには全く意味がない(つまりガソリン車より優れている点がなく、かつガソリン車より購入価格も高く、維持費も高い)のが事実でありまして、電気自動車と比較の俎上に乗っていないように思います。
      電気自動車は少なくとも、性能ではガソリン車を上回り、維持費も安いというメリットが少なくともあります。

      >前にも述べた通りBEVはよっぽど革新的な新技術、新素材によるバッテリーが発明されない限り、内燃機関置き換わるクルマにはなりえないのが現実

      これも間違いです。
      現時点で欧州各国の、電気自動車の販売シェアの変化を月次でご確認ください。
      https://electrek.co/2020/02/28/january-ev-sales-in-europe-gives-hope-automakers-will-meet-2020-eu-emission-targets/
      ゆっくりですが、確実に内燃機関を置き換えつつあります。

      >ドイツでは都市ガス管に水素を添加し、いわゆる家庭用エネファームで発電するような実験

      あくまで実験なんです。今の都市ガス管に常圧の水素を添加したら、家のガス栓に届くまでに全部なくなっちゃいますよ。
      水素ガス管供給は、全ガス管を交換する前提なんです。どうしてインフラ屋がそういう方向をやりたがるか、お分かりになりますよね?

      水素はエネルギーのキャリアですので、オーストラリアから日本が水素を輸入するのは、石油が輸入できなくなった時のバックアップとしてはあり得ると思います。
      しかし石油や天然ガスが輸入できる限り輸入水素のコストはそれらを下回ることはあり得ず、ましては自動車において、システム全体での効率が1/3しかないFCVが、実際にすべての効率の壁を乗り越えて電気自動車より多く販売されることは、絶対にありえないと思います。

  5. こちらの文章内に水素に関する記述がございましたので個人的な意見を述べさせていただきます。

    何故かEV信者さんは水素と聞くだけで拒否反応を示し真っ向から否定するのですが、これが疑問でならないのです。
    いわゆる人為的CO2排出が温暖化を招くという仮説を重視するならば、水素の可能性は避けては通れません。水素は資源の無い日本においては100年後200年後のエネルギーとして大きな可能性を秘めいています。

    個人的には人為的地球温暖化自体が怪しい仮説だと思っておりますが、万が一それが証明され今後CO2削減に動くなら、自動車に関しては電気化学??の常識を覆すか、新たな素材の大発見が無い限りBEVの及は無いと思っており、水素利用のコスト削減から水素スタンドの普及を促進すれば爆発的に燃料電池車に移行する可能性の方が高いと思っております。

    いずれにしても電気は化石燃料か原子力か再エネでしか生み出されません、日本において原子力を否定すれば再エネ発電だけで電気を賄う事は不可能なのですから水素の輸入という可能性は根本的CO2排出削減の唯一の手法のような気がしますが?

    水素は今「常温・常圧輸送」も発明され、国はコスト面でもガソリンスタンド並みの水素スタンド設置も目指してるわけですので、燃料電池車の可能性は否定できないはずです。

    何度も言いますがここ20~30年の話では有りません。

    1. そえとも 様、コメントありがとうございます。恐らく東京都は水素燃料電池自動車も推進すると思います。

      >EV信者さんは水素と聞くだけで拒否反応を示し真っ向から否定

      このサイトはEV信者さんのサイトでもないですし、特に真っ向から否定するわけではなく、単に今の水素供給インフラでは意味がない、というだけかと思うのです。

      >水素は資源の無い日本においては100年後200年後のエネルギーとして大きな可能性

      具体的に、自然の状態ではほとんど存在しない水素分子を、どのように取り出すのかを教えていただけますか?水素は水や炭化水素など様々な物質に結合した状態で安定して地球上に存在していますが、水素をそこから取り出すのにエネルギーが必要であり、取り出しに必要なエネルギーと、取り出した水素を使って(再度別の物質と化合させて)得られるエネルギーの差が、どのくらいあるかが課題です。

      >水素利用のコスト削減から水素スタンドの普及を促進すれば爆発的に燃料電池車に移行する可能性

      水素スタンドは安くできると思います。しかし充電スタンドほどは安くできませんよね。そして水素価格を安くする方法が分かりません。例えば炭化水素から分離する場合、炭化水素よりは高くなりますよね?違いますか?
      水から分離する場合、水はタダに近いのですが(汗、分離するのに電解が必要で、このエネルギーは実は電気自動車にそのまま使えるのです。そして当然ですがエネルギーは保存されますので、

      電解に使う電力で得られた水素で発電して得られたエネルギー << 電解で使う電力でそのまま電気自動車を走らせるエネルギー

      となり、蓄積できることのみが水素のメリットとなります。

      >水素の輸入という可能性は根本的CO2排出削減の唯一の手法のような気がしますが?

      再エネ100%は技術的には難しいでしょう。それに挑んでいる国はすでに多くあります。国ではありませんがカリフォルニアだってそうです。
      結果として、水素輸入はあり得ると思います。しかしコスト面で再エネに見合うかというと微妙。すでに再エネコストは天然ガスを下回りつつあります。

      天然ガス採掘+液化(-162℃)+LNGタンカー輸送のエネルギー << 褐炭採掘+CCSでCO2埋設+水蒸気改質+水素液化(-253℃)+液化水素タンカー輸送のエネルギー

      ですから、必ず、水素はLNGより高額になります。高額でもLNGが手に入らなければ買うしかないですね。

      >水素は今「常温・常圧輸送」も発明

      常温かつ常圧での輸送は、最初から可能です。単に、密度が低すぎてダメなだけです。常温常圧の水素は22.4lでおおよそ2g。4klのタンクローリーで輸送したら357gしか輸送できません。ミライが502km/4.3kgですから、4klタンクでやっとこさ41.7km走行できるだけです。パイプラインなら可能ですが、その場合、石油化学プラントと水素スタンドがある程度の近隣に存在する必要があります。

      >国はコスト面でもガソリンスタンド並みの水素スタンド設置

      水素ステーションのコストが問題なのではなく、ガソリンと同等以下(例えば700馬力EV-SUVとガソリン軽自動車が同じくらいの燃料費)のコストをすでに実現している電気自動車に対し、水素が高すぎるのが課題なのです。水素がガソリンより高ければ、水素ステーションがいくらあっても普及は難しいと思います。

  6. 寄本さんは、流石に、当然によくわかってます。
    今後は集合住宅と一箇所に複数設置が普及のキモですね。

  7. BEVを購入しようとする人にとって一番必要なのは、「公共」の充電設備よりも、保管場所にある「自分専用」の普通充電設備だと思います。そこに投資する方が、乗用BEVの普及促進にはずっと効果的な様に思えます。

    集合住宅の駐車場や月極駐車場に一定の割合で普通充電機の設置を義務付け、その設置費用を補助するほうが有効ではないでしょうか。利用者は、駐車枠と一緒にそこにある普通充電器も賃貸契約することで、一戸建てでなくても「自分専用」の充電器は持てるはずと思います。

    専用なら、充電器の空きを心配する必要もありませんし、充電の終了時間に車両を移動させる必要もありませんから、夜も車両を充電器に接続したままでゆっくり寝られます。ここまで環境が整えば、一戸建てと同じようにBEV購入に踏み切れるのではないでしょうか。

  8. ボトルネックになっているのは高速道路利用時の充電待ちなので、昨年末の記事にあったテスラのポータブルスーパーチャージャーのようなものに予算を当てて欲しい。
    提案できないでしょうか?

    1. わお様、

      移動式スーパーチャージャーは、アメリカのサンクスギビングやクリスマスで混雑する特定のスーパーチャージャーの渋滞解消に効果的ですが、常時配置するものではないと思います。

      それよりも短期的にはスーパーチャージャーがSAPA内に設置できないことのほうが課題なので、ETC 2.0の一時退出機能を拡大して、充電のために120分程度まで高速を降りて充電できるようにする制度があればいいなぁ、と願ってます。東京から名古屋方面に向かう時に浜松で降りて充電して、また高速に乗ると800円ほど余計にお金を取られるんですよね、、、

    2. 高速道路を利用するのは盆正月やGWといった混む時期なので、出るのも入り直すのも時間が掛かってしまうと想像してしまいます。
      予め充電スポットや休憩施設を調べておいても、行ってみたら充電待ちで新たな候補を探して右往左往とかで事故に繋がりかねないし、時間も押して精神的にヘトヘトになりそうです。
      高速道路周辺が混む時期は街中は閑散としてる場合が多く、日によって提供場所を変更できる移動型急速充電器があれば便利だと思います。

    3. あとVWの移動式充電ロボットも良いアイディアだと思う。
      ロボットが道路を移動出来る仕様なのか分かりませんが、出来るなら複数の駐車場を兼任できる。
      一つの駐車場に貯蔵装置一つか二つだけでも十分。
      充電するタイミングを調整出来るため、電力需給の均衡化、充電の低コスト化にも繋がります。
      充電作業の自動化が海外で進めば、既存の充電設備を義務化や補助で導入したところで不良資産になりかねないので止めて欲しいです。

    4. わお様、コメントありがとうございます。
      VWのロボットは、ケーブルを挿すところだけを自動化するもので、電力を持ち運べる仕様ではないと思います。車一台を充電するのに必要なバッテリーは、やっぱり車サイズになってしまうので、、
      とはいえ、おっしゃるような貯蔵型の充電設備は、電力網への負担を減らす意味で重要だと思います。日本メーカーからも出ていますし、自動車メーカーではテスラやフォルクスワーゲンが実用化しています。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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