電気自動車用バッテリー企業『ノースボルト』社CEOインタビュー【パート2】~EV市場の成長と水力発電~

スウェーデンのバッテリー・スタートアップ企業であり、強豪でもあるノースボルトのCEO、ピーター・カールソン氏への『CleanTechnica』インタビュー記事のパート2です。今回はヨーロッパEV市場の成長、ノースボルトの生産規模拡大の計画とタイムライン、低コストで再生可能なスウェーデンの水力発電について話を展開していきます。

電気自動車用バッテリー企業『ノースボルト』社CEOインタビュー【パート2】~EV市場の成長と水力発電~

なお、インタビューの内容は分かりやすいように少し編集してあります。

元記事:CleanTechnica Interview with Peter Carlsson, CEO of Northvolt: Part Two — EV Market Growth, Timeline & Capacity, Cheap Hydropower by Dr. Maximilian Holland on 『CleanTechnica

【関連ページ】
欧州の電気自動車用バッテリー企業『ノースボルト』社ピーター・カールソンCEOインタビュー【パート1】(2020年7月24日)
電気自動車用バッテリー企業『ノースボルト』社CEOインタビュー【パート2】~EV市場の成長と水力発電~(2020年8月3日)
電気自動車用バッテリー企業『ノースボルト』社CEOインタビュー【パート3】~低排出の優位性、プロダクトミックスと製品戦略~(2020年8月10日)
『CleanTechnica』によるインタビュー音声のアーカイブページ

ノースボルトCEOのピーター・カールソン氏

欧州でのBEVシェア拡大とノースボルトの展望

CleanTechnicaおよびマックス・ホランド氏からの質問(※以下【Q】) :(市場)変化のスピードと規模について、またノースボルトがそこにどのように関わるかの野望を掘り下げていきたいと思います。今年、特にヨーロッパでは純電気自動車の市場シェアが急速に上がると言っていましたね。大体の数字にすると、ヨーロッパでは年間約1,500万台の小型車両が売れています。その市場の1%が15万台になり、それがすべてBEVになると約10GWhのバッテリーが必要になります。

ピーター・クラークソン氏の回答(以下【A】) :そうですね。

【Q】 燃料電池が現在盛り上がっていますが、私達はどこかの時点で、ヨーロッパの(究極的には他の地域でも)小型車両は100%BEVになると想像しています。その場合、1,500万台の車両が要する電力量は、年間数千GWhになると考えますが、合っていますか?

【A】 はい、そうだと思います。ざっと計算した数字がその位になります。

【Q】 例えば、フォルクスワーゲンのID.3。一番売れるのは航続距離が真ん中になる、65~70kWhのモデルになると会社は踏んでいます。ヨーロッパと、特にアジア市場では、ドライブトレインの効率も向上していくので、ほとんどの消費者にとっては十分なものになると思います。

よって私達は、電動化が100%進んだ時には、ヨーロッパ市場だけでも年間千GWhの生産量があると見ています。そこでノールボルトの展望はどのようになりますか? 千GWhサイズのパイから切り取った、あなた取り分をどの位の大きさにしようとしていますか?

【A】 それに答えるには、関連した部分から話します。まず、サプライ・チェーンの複雑さ、バッテリーの価値、この業界がぎりぎり間に合うように立ち上げられるタイミングなどを考えると、パイの大部分は地域別に供給されると考えています。よって、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、どこであろうと、自動車産業内での主要な部品のほとんどと同じく、地域別のサプライ・チェーンを構築することになります。

これからの10年で、必要十分なテクノロジーを持つ企業による、『工業的な土壌の支配』と私は呼んでいますが、それが始まるでしょう。車両プラットフォームの中にいる必要があるので、テクノロジーに関しては突出していなくても良いと考えています。また、自動車メーカーはプラットフォーム上で単一のソースだけを押し進めることはしないでしょう。

しかしリードを取り続けて成功するには、3つの鍵があると考えます: 1つ目は、設計図の拡張性です。生産施設のクローンを、いかに効率的に作っていけるか、ということです。これに関する私のロールモデルは、同じスウェーデン企業のIKEAです。自らのクローンをどんどん作っていくリテール構造が素晴らしい。とはいえ、バッテリー工場はIKEAの販売店を作るよりも相当に難しいです。しかし考える余地があります。私達が今考えているのは、ヨーロッパ全域をカバーするのに必要な8GWhのブロックはいくつなのか、ということです。

【Q】 なるほど。そしてブロックは1つ当たり、ヨーロッパの小型自動車市場の約1%に当たりますね。

【A】 その通り。そして各ブロックについて、どのように工場を建てるかの拡張チームと、セットアップ、委託、スタートアップ、規模などに関する業務を任せるパートナー両方について考えます。設計図を作るには強力なチームがいるのです。これが1つ目です。

2つ目ですが、設計図をサポートするには多くの資金がいります。非常にお金のかかる産業です。よって、資金調達能力の必要性が2番目に来ます、とても重要なのです。これをよく分かっているのが中国政府で、国内バッテリー産業に強力な資金供給をし、成長を助けました。

3つ目が、トップの才能に魅力を感じてもらう力です。全体的な才能もですが、規模を大きくするのに秀でた才能です。私が考える、このビジネスを扱うのに必要な重要な要素が以上の3つです。

強固なカスタマー・リレーションシップとこれらの組み合わせが、私が考える勝利の方程式です。そしてこの強固なカスタマー・リレーションシップを私達が構築しようとしているのが、セル設計の部分で、顧客(自動車メーカー)とともに開発する部分を増やそうとしています。顧客が参画する部分が増えれば、お互いから学べるものも増えます。ただ、パフォーマンス、コスト、生産量だけでなく、持続可能性も考えながら進めなければなりません。

それから、基本的には顧客の商品の二酸化炭素排出量をできる限り低くしなければなりません。ただ顧客とも近い距離でビジネスを進め、商品に寿命が来た時には完全に循環ができる流れを作っていきます。10年後には、何十万キロと働いたバッテリーをリサイクルできる準備が、私達と顧客にもできています。

リサイクルに関しては、ストックホルム郊外のここ、ヴェステロースでエキサイティングなことをやっています。小さい工業規模ですが、湿式製錬法を使って原料を分離しています。またコバルト、ニッケル、マンガン、銅などだけではなく、リチウムも回収・リサイクルしています。私が知っている限り、少なくともヨーロッパでこれをやっているのは私達が初めてです。このシステムを構築して原材料を回収し、新しいバッテリーを作る際に再利用すれば、とてもエキサイティングな会社を作ることになります。完全な循環型、持続可能性、そして拡張の大きな機会を持つ会社です。

これが、質問に対する私の長い回答です。もし数字的な回答が欲しいのであれば、ヨーロッパ市場で大きくシェアを得るには、私達は次10年で大体150GWhのバッテリー施設を作る必要があると考えています。20%、25%位のシェアですかね。これは実現可能だと考えています。

蓄電システムの市場も重要

【Q】 では、150 GWhが25%位の電力量だと想定して、2030年にはヨーロッパでのEVセールスは60%くらいになりますか?

【A】 はい、ただEVだけではありません。ESS(Energy Storage System=蓄電システム)市場も忘れてはなりません。

【Q】 そうですね、ただ大体15%の発電をESSにする計画ではないのですか?あなたの何かのプレゼンで見たと思うのですが…… 変わったのかもしれませんね、でも大体その位ですか?

【A】 そうですね、その位が目標です。ESSがどの位大きいものになるのか分析をするのに、どこも四苦八苦していると思います。ESSは電力網に組み入れる、ある種新しいツールボックスで、これも変化している最中ですから。

また電気自動車のような電動化の波により、ピーク時電力の大きな問題が出てきます。市内の電力網や、充電ステーションなどです。そこで2つの解決策があります。

1つ目は街全体を掘り起こしてさらに銅線を埋め込むことです。または消費電力が少ない時間に電気を貯められるように蓄電システムを埋め込み、充電に使うのです。

これは大きなものになると考えています。本当に大きなものです。(さもなければ)ガスやバイオガスから電動化に移行した、市内を走るバスすべてを一カ所で充電した場合、その需要で市内の電力網が落ちるでしょう

【Q】 それにV2G機能付きの電気自動車がどのような影響をもたらすかも分かっていませんね。彼らの40~50%が夜間ケーブルを繋げると思うのですが。かなり複雑な動きになります。

【A】 その通り。ある意味笑える話があるのですが…… アウディがスウェーデンの北部にある都市オーレで昨年開かれたスキーの世界選手権でe-トロンのお披露目をしたんです。50台をイベントに持ってきたのですが、電力網をダウンさせそうになったんですよ! そこでイベント中に車を充電するため、電力貯蔵システムを運んでくるはめになったのです。

これは小さい規模の話です。よって電力貯蔵については大きな変化があると考えています。私達はこの問題に対処するツールを持っていますが、実際どの位の規模になるのか分かっていません。しかし方向性に関しては自信を持っています。

水力発電でコストカット

【Q】 ここでもう少し技術的な質問に移りましょう。あなたが受けた前のインタビューで、スウェーデンの水力発電があなたのビジネスモデルの大部分を占めると話していましたね。100%カーボンフリーである一方で、非常に低コストだからと。

それからスウェーデンに居を定めてから、この非常に安いカーボンフリー・エネルギーを使えるようになったことで浮いた金額は、例えば中国などで払う電力料金と比べて2千人の給料分に相当するというような話をしていましたね…… その位の数字でしたか?

スウェーデンの水力発電所。

【A】 私達のビジネスモデルは規模と垂直統合の上に成り立っています。ビジネスを立ち上げて自分達で原料を作り出しているのです。硫酸ニッケル、マンガン、硫酸コバルトなどを取り出し、前駆体に入れて非常に細かい粒子を作り、リチウムと混ぜて煆焼(かしょう=鉱物熱処理プロセスのひとつ)し活性化させるのです。この工程で使う窯などでは、かなり大きな電力を消費します。

その後バッテリー本体を作るのですが、ここでも多くの電力を使います。大きなオーブンを使ったコーティングのプロセスがあるからです。その後形成をしていきます。

そういうわけで、非常に多くの電力がいる産業なのです。スウェーデン北部のシェレフテオに施設が完成した際には、大体40GWhを目指しています。スウェーデンの発電量の約2%をそこで消費することになると計算しています。

バッテリー1kWhを生産するには、生産ラインでその80倍位の電力を消費します。ここで電力のコストと、電力生産の際に出るカーボン・フットプリントの両方が大きな問題になってくるのです。そこでスウェーデン北部の水力発電を使えば、例えばドイツで同じ電力量にかかるコストよりも大体4分の1から5分の1になることが分かりました。また私達の水力発電と比べると、石炭ベースの中国の電力は5倍から6倍のコストになります。

これらを大きな規模で、あまり細かいところまでは考えずに原料のコストを計算すると、(電力を生産する)労働力と(消費する)電力がイコールになり始めるのです。北欧ではkWhあたり2セント以下で買うことができ、これは非常に有益です。

【Q】 工場がかなりオートメーション化されていますが、24時間稼働する予定かと思います。オフピーク時にも電力がいることになりますか?

【A】 そうする予定です。休みなしのオペレーションになります。閉めることができず、大きな資金がいります。常に稼働し続けるので、常に電気もいるということです。「このオペレーションには3千人の働き手が必要だ」と考える人もいるかもしれませんが…… 50万平方メートル以上ある工場のスペースに、5つのシフトで働く3千人の労働者です。しかし実際にはオペレーターが見るのはかなり空きのあるスペースになります。かなりオートメーション化されます、例えば原料のハンドリングには多くのAGV(無人搬送車)を活用するなどです。それからこの仕事は清潔で乾燥した部屋で行われます。湿気を発する一番大きな源がオペレーター(人)になるような空間です。よって、十分なオペレーターは欲しいですが、そんなに多くは必要ありません。

パート2はここまで。シリーズ最後のパート3では、ヨーロッパにおけるバッテリー生産の低炭素化を可能にする要素、ノースボルトの戦略ポイントと製品について聞いていきます。

(翻訳・文/杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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