保存版/電気自動車などの購入と充電設備設置への国の補助金情報【2022年4月】

電気自動車を新車で購入する際、上限85万円と大幅に増額された経済産業省のCEV補助金申請受付が2022年3月31日から始まりました。充電インフラについても幅広く支援強化が図られた今年の補助金。ユーザーとして理解しておくべきポイントを整理してみます。

保存版/電気自動車などの購入と充電設備設置への国の補助金情報【2022年4月】

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充電インフラは令和3年度補正予算の補助金枠

昨年度は、環境省の「再エネ×EV」に最大80万円、経産省の「給電×EV」に最大60万円という従来より増額した補助金制度が実施(すでに終了)され、EV普及への国の後押し機運が高まっています。EVsmartブログでは、重要な補助金関連トピックを加筆修正しながら「補助金情報」を紹介していました。でも、今年度の補助金制度はちょっとややこしい。また、去年の情報に新たな情報を重ねてもわかりにくくなると思うので、今後はこのページで「最新情報」を整理して、古くなった情報は別記事としてアーカイブしていくことにしようと思います。

さて、2022年(令和4年)の補助金について、経済産業省ウェブサイトの説明が更新されて、3月31日からは令和3年度補正予算による「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」の申請受付が始まりました。クリーンエネルギー自動車購入への補助金は、従来のいわゆる「CEV補助金」を踏襲する枠組で、執行事務局も従来と同じ次世代自動車振興センター(NEV)が受託しました。

3月20日に「マンションに急速充電器?」という緊急速報をお伝えしたように、今年度のCEV補助金はEV新車購入への補助が上限85万円、軽自動車でも上限55万円へとさらに増額。充電インフラについても補助対象が拡充されるなど、大きく進化しています。

ただ、進化したポイントが多いのと、令和3年度補正予算による「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」と、令和4年度予算による「クリーンエネルギー自動車導入促進等補助金」が併行しつつ若干内容が異なるなど、少々ややこしい。ちなみに、緊急速報で心配した「集合住宅への高圧受電設備(急速充電器?)設置への補助」といったケースは、令和3年度補正予算の「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車向け充電インフラの導入補助事業」に含まれます。

たとえば「夏頃までにアリアが納車されるはずなんだけど……」というユーザーが、いったいどの補助金を申請すればいいのか、補助金はいくらなのかといったポイントを整理しておきます。

まず、それぞれの予算が補助対象としている内容などについて、一覧表にまとめてみました。

補助対象令和3年度補正予算
(予算額/375億円)
令和4年度当初予算
(予算額/155億円)
(1)電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池自動車等の導入補助事業
EV
上限85万円

上限85万円
軽EV
上限55万円

上限55万円
PHEV
上限55万円

上限55万円
FCV
上限255万円

上限255万円
超小型モビリティ
上限35万円

上限35万円
クリーンディーゼル自動車×
電動二輪など×
ミニカー×
※ 高度な安全運転支援技術を備えた車両への追加補助分
最大10万円×
(2)V2H充放電設備、外部給電器の導入補助事業
V2H充放電設備×
外部給電器×
(3)電気自動車・プラグインハイブリッド自動車向け充電インフラの導入補助事業
急速充電×
普通充電×
高圧受電設備×

車両への補助金額など、クリーンディーゼル以下はまだ正式発表されてないはずだし、表が煩雑になるので割愛しました。

●充電インフラへの補助は令和3年度補正予算枠のみ。
●EVなど車両の購入補助はほぼ共通。
●ただし、クリーンディーゼルや電動二輪などへの補助は令和4年度予算枠のみ。
●高度な安全運転支援技術を備えた車両への追加補助も令和4年度予算枠のみ。

といったあたりが、まずは理解しておきたいポイントです。

EV新車購入への補助金額は倍増以上!

EVなど次世代車両新車購入への補助上限額は、まずはベースとなる金額が以下の通りです。

●電気自動車(軽自動車を除く):上限65万円
●軽電気自動車:上限45万円
●プラグインハイブリッド車:上限45万円
●燃料電池自動車:上限230万円
●超小型モビリティ;定額25万円(個人)、定額35万円(サービスユース)

さらに「A.車載コンセント(1500W/AC100V)から電力を取り出せる給電機能がある車両」「B.外部給電器やV2H 充放電設備を経由して電力を取り出すことができる車両」のどちらかの条件を満たす車両の場合、上限額がさらに上積みされます。

●電気自動車(軽自動車を除く):上限85万円
●軽電気自動車:上限55万円
●プラグインハイブリッド車:上限55万円
●燃料電池自動車:上限255万円
●超小型モビリティ:定額35万円(個人)、定額45万円(サービスユース)

【関連ファイル】
令和3年度補正事業での補助対象車両一覧(PDF ※NEV公式サイトより)

令和3年度当初予算のCEV補助金額は、電気自動車で上限40万円(条件付きで42万円)だったのが85万円。軽EVのベースは20万円だったのが55万円となり、倍増以上(給電機能がないと1.5倍くらいですけど)のありがたい補助金額になりました。来年度以降がどうなるかは未知数ですが、電気自動車への買い替えを考えているなら、今年は大チャンス到来と言っていいでしょう。

東京都など自治体によっては、さらなる補助金や優遇制度などが用意されています。全国の自治体などの補助事業については、NEVのウェブサイトに『国・自治体の補助事業等検索』ページが調べるのに便利かと。

いつ、どの補助金を申請すればいい?

さて、車両購入のCEV補助金申請については、令和3年度補正予算、令和4年度当初予算の補助金ともに、NEVが執行事務局となることが決まっています。ユーザー的には「たとえば、7月に納車された場合、どちらの予算枠の補助金を申請すればいいの?」と感じてしまうのですが……。

この疑問点。まず、経産省の公式サイトでは令和3年度補正予算による補助金の説明として「申請総額が予算額を超過次第、募集を終了」することが示されています。また「令和3年度補正予算と令和4年度当初予算では補助対象となる車種や登録・届出日が異なります」として、補助対象となる新車新規登録日(登録車)/新車新規検査届出日(軽自動車)が紹介されています。

●令和3年度補正予算/令和3年11月26日以降
●令和4年度当初予算/令和4年2月19日以降

この説明によると、すでに2月19以降に納車されたEVは令和4年度当初予算の補助金になる、と理解できるのですが……。予算額は令和3年度補正の方が大きいのに期間が短いので、どうなんだろう? と経産省ご担当部署に確認したら「(補助対象に含まれる車両なら)予算枠がある限りにおいてどちらでもよい」とのこと。申請時にNEVに相談してどちらの枠を使うか決める、ということになるかと思います。EV購入の場合、ユーザーとしては「補助金額が同じならどちらでもいいけど、スムーズに交付してね」って感じです。

ただし、前述のように超小型モビリティやEV二輪などを購入する場合は、令和4年度予算での補助となり、令和4年2月19日以降に登録する車両が対象となります。

申請受付の期間などについては、「3月31日により令和3年度補正予算の申請受付を開始しておりますが、令和4年度当初予算の申請受付が開始(4月下旬~5月上旬)された後は、2つの予算の申請様式は1枚に統合する予定」であることが説明されていました。新車を購入するディーラーの営業担当者にも力を借りつつ、上手に補助金を活用しましょう。

【追記(2022.4.5)】
初出記事をまとめながら、気になることがあったので、追加で確認してみました。

令和4年度枠だけに設定されている「高度な安全運転支援技術を備えた車両(高機能車両)への追加補助分」=最大10万円の該当車種であれば、令和4年枠で申請すると補助金総額は最大95万円! になるのでは? という疑問。確認したところ、補助額としては理解の通り、最大95万円となります。該当車種についてはまだ審査中で明示できません。基準はかなり厳しめということで、最新車種であっても認定されるかどうかは、令和4年度予算分の車種別補助金額が正式に発表(4月下旬以降がメド)されるまでわからない、ということです。

3年度補正予算枠と4年度当初予算枠のCEV補助金が並走する今年の制度。車両購入への補助金額は令和4年度分のほうが少ない(それでも昨年度と同等の総額)ですが、補助金交付については、令和3年度補正予算分と合わせた約400億円程度の総額のなかで案分されるとのこと。高機能車両に該当する車種を購入した場合、補助金の申請を受け付けるNEVが4年度枠に振り分けてくれる、のだと思います。念のため、実際に申請する方はご留意ください。

充電インフラ補助への「支援強化」が素晴らしい

令和3年度補正予算の「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」では、ことに充電インフラへの補助金に関して数々の「支援強化」が打ち出されました。おもなポイントをピックアップします。

【補助対象の拡充】

●急速充電器の支援対象拡大
従来、急速充電器設置への補助は高速道路SAPA、道の駅、SS、空白地域(15km圏内に充電器がない地域)が対象でしたが、今回、個人宅以外は原則として全てのエリアが対象となります。

●普通充電の更新・入れ替え
設備の更新や入れ替えについて、従来は急速充電器のみが対象でしたが、普通充電設備も対象(機器の1/2等)となります。

【補助額の拡充】

●複数の充電口の促進
高速道路SAPAなどでニーズが高まっている複数台充電に向け、急速充電器の口数に応じた補助額を導入。2口以下の設備への上限は600万円ですが、3口以上は「300万円×口数」なので、大黒PAに新設されたのと同じ6口器の場合、上限が1800万円となります。

●高機能機器の導入促進
集合住宅などに多くの普通充電設備を導入する際、施設の電力需給バランスに影響が出ないように制御する「デマンドコントロールが可能な高機能充電器や制御機器」を導入する場合、補助上限額が5万円引き上げとなります。

●高出力および複数同時充電への対応
高出力な充電器(急速充電器)や複数台同時充電を可能とするために必要となる高圧受電設備についての補助枠が設けられます。

充電インフラ補助内容の概要については、経産省ウェブサイトの添付資料(PDF)に一覧表として整理されていたので、引用して紹介しておきます。

Click to big. ※添付資料PDFへのリンクはこちら

高速道路SAPAへの高出力複数口設置というメッセージ

充電インフラへの支援強化策、ちょっと上から目線で評すると、全体として的確で、現状の課題解決に向けた有効な内容にまとまっていると思います。

一覧表を見ると、高速道路SAPAへの90kW以上の急速充電器設置の場合、工事費の上限額がなんと「3100万円」になっていることがわかります。6口器への1800万円を合わせると、合計で1カ所の急速充電スポットに上限4900万円の補助金が投入されるということです。道の駅やその他の場所への工事費上限は「280万円~108万円」。経産省、国として、電気自動車普及のために「高速道路SAPAへの高出力複数台設置」を促進するという明確なメッセージを読み取ることができる、と感じます。

EVsmartブログとしては、いろんな記事で「高速道路SAPAへの高出力複数台設置を!」と叫び続けてきました。電話に対応してくださった経産省ご担当者もいろんな記事を読んでくれているようだったし、まさに、我が意を得たり! な思いです。

あと、『【大丈夫かぁ? 緊急速報】マンションのEV充電用高圧受電設備に経産省が補助金?』の記事で心配した「集合住宅に急速充電は違うでしょ?」については、国としてもマンションへの急速充電器設置は想定していないこと、また「複数台の普通充電設備を設置するために必要になる場合でも、高圧受電設備への補助を活用できる」ということが確認できました。

実際の充電インフラ拡充に向けては、急速充電インフラ網の構築を進める e-Mobility Power や、高速道路を管轄するNEXCO各社、SAPAの駐車場敷地を所有する「独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構」などを含めたプランニング&調整&手腕が肝心だし、国交省の方針が共鳴することも必要になってくるのでしょう。2013年に1005億円の予算で始まった補助金によるインフラ整備には、今になって反省すべき点も多々あるので、これからは、ぜひ賢明なインフラ拡充を進めて欲しいと願います。

一点だけ違和感を挙げておくと、インフラ支援強化策の「急速充電器の支援対象拡大」というところ。横浜市とeMPが実証実験を進めている公道上の急速充電器設置といったケースを想定してのことなんだろうとは推察しつつ、「税金である補助金を投じて急速充電インフラを整備するのは高速道路中心、幹線道路網に50~100km間隔で計画的に、高出力器複数台設置を徹底して進めるべきではないか」と感じます。たとえば、「特定の自動車メーカーがこの補助金でディーラー網に急速充電器を設置しまくる」のは、あまり歓迎できません。以前の補助金では「あまり使われない非力な急速充電器」が広がってしまった一面があり、eMPの四ツ柳社長にインタビューした際も、そうした反省点は重々承知した上で新たな拡充プランを進めるというお話だったので、このあたりは「eMPに期待」です。

令和3年補正予算補助金のインフラ拡充の予算額想定は65億円と明記されていました。この予算で、一気に高速道路の急速充電と、集合住宅&目的地充電のネットワークが充実するといいですね。

集合住宅への普通充電設備拡充にも、管理組合やオーナー、デベロッパーといった、広く社会のコンセンサスが必要になってきます。関係するみなさんには、ぜひ前向きなアクションをお願いしたいと思います。宿泊施設などの目的地充電設備(普通充電)が正しく広がるためには、そもそも日本を走るEVの台数が増えることが重要で、つまり、充電インフラ拡大の推進は、日本社会全体の課題ってことになるのでしょう。

経産省のあっぱれなプランが日本社会の前進にさらなる効果を示せるように、EVsmartブログとしては、これからもEV普及に向けて有意義な情報発信を続けていく所存です。EVシフト、日本の夜明けは近い! かも、です。

※冒頭写真は大黒PAの新型6口器。C40 Recharge試乗時、テスラのサービスカーと遭遇。もしかして、ダイナミックコントロール対応のテスト? と気になったけど、確認はしませんでした……。
※記事末コメント欄、2022年3月以前のコメントは更新を重ねてきた以前の記事にいただいた内容です。最新版へのコメントもお寄せください。

(取材・文/寄本 好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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