【大丈夫かぁ? 緊急速報】マンションのEV充電用高圧受電設備に経産省が補助金?

2022年3月19日、NHKが『EV充電 マンション設備で最大400万円の補助金の方針 経産省』と題したニュースを報じました。50kW以上の高圧受電設備に「補助金を支給する方針を固めた」ということです。連休中なので確認などできないですが、あまりにも気になるので緊急速報をお届けします。

【大丈夫かぁ? 緊急速報】マンションのEV充電用高圧受電設備に経産省が補助金?

【補助金最新情報】
マンションに急速充電器? という心配は杞憂でした。経産省CEV補助金の最新情報をまとめたのでご参照ください。
EV普及へ大前進! 電気自動車などの購入と充電設備設置への国の補助金最新情報【2022年4月更新】(2022年4月2日)

まずはニュースの内容を確認

『EV充電 マンション設備で最大400万円の補助金の方針 経産省』というNHKのニュース。NHK NEWS WEB のページはこちらです。

報道サイトの記事ページは一定期間が経過するとリンク切れになることがあり、今回の緊急速報ではこの記事の内容がポイントになるので、ウェブ魚拓的に短信の記事全文を引用しておきます。

『EV充電 マンション設備で最大400万円の補助金の方針 経産省』

2022年3月19日 6時58分

EV=電気自動車の普及に向けて、マンションでの充電インフラの導入がなかなか進みません。

こうした課題に対処するため、経済産業省はマンションでの充電器に欠かせない高圧の受電設備を導入する場合、最大で400万円の補助金を支給する方針を固めました。

政府は、2035年までにすべての乗用車の新車をEVなど電動車にする目標を掲げていて、必要な充電インフラの整備を進めています。

ただ、マンションでは設備を導入するには管理組合の合意が必要で、多くのケースで組合から費用を拠出することになり、合意形成が難しいことが課題となっていました。

マンションでのEV向けの充電器には高圧の受電設備を導入する必要がありますが、経済産業省は最大で400万円の補助金を支給する方針を固めました。

具体的には、出力が50キロワット以上90キロワット未満の設備には最大で200万円、150キロワット以上の設備には最大で400万円を補助する方針です。

さらに、充電器の設置費用なども補助することにしています。

日本ではマンションなど共同住宅で暮らす人が4割を超えています。

政府としては、補助金を充実させることでマンションにも設備を導入しやすい環境を整え、EVの普及を促していく考えです。

パッと見て「50〜150kW出力の急速充電器設置に補助金?」と思ったのですが、補助金支給の対象は「マンションでの充電器に欠かせない高圧の受電設備」ということで、ことさらに急速充電器設置を推し進めようとしているわけではないようです。

NHKニュースの記事では詳細な内容はわからないし、経産省のウェブサイトのニュースリリースなどを探索してもこの件のアナウンスはまだありません。すぐにでも経産省担当部署に確認の取材をしたいのですが、今日、19日は土曜日で、21日(月)の春分の日まで連休です。休み明けには早々に確認して続報を追記することにして、あまりにも気になるポイントを挙げておきたいと思います。

高圧受電よりも先にやるべきことがないですか?

電気自動車用の充電設備には、おもに「自宅(基礎)充電」「目的地充電」そして「経路充電」といったシチュエーションごとに適した方法があり……、といった基礎知識は、今回記事では割愛します。EVsmartブログのアーカイブでもさまざまな情報を紹介していますし、たとえば『目的地充電とは?なぜホテルや旅館に普通充電器が設置されるのか』という記事で解説してあるので、「経路充電って何なんだ?」という方はご参照ください。

マンションへの急速充電器設置、ならば阻止すべき愚策

記事を読んで最も気になったのは「マンションでのEV向けの充電器には高圧の受電設備を導入する必要がありますが、経済産業省は最大で400万円の補助金を支給する方針を固めました」という一文です。

高圧受電が必要なのは高出力の急速充電器であり、続く一文で「具体的には、出力が50キロワット以上90キロワット未満の設備には最大で200万円、150キロワット以上の設備には最大で400万円を補助する方針」と説明されているために、急速充電器設置への補助金なのか? という誤解が生じてしまいます。

もし万が一、この記事から読み取れるように「マンションへの急速充電器設置のための高圧受電設備に補助金」ということなのであれば、EVのことをまったく理解していない天下の愚策。個人としてもメディアとしても、全力で反対の声を上げなければいけないと感じています。

マンション駐車場などでの自宅充電(基礎充電、拠点充電とも呼ばれます)は、一般的に「200V 15A=3kW」の出力で行います。仮に残量が0%から充電する場合、満充電となるまでにはバッテリー容量40kWhの日産リーフで「40÷3=約13.3時間」、容量62kWhの日産リーフe+であれば「62÷3=約20.7時間」掛かることになります。大容量バッテリー搭載車ユーザーの場合、充電時間を短縮するために「200V 30A=6kW」といった高出力の普通充電器を設置するケースもありますが、受電契約が……、といった解説も、長くなるので今回は控えておきましょう。

ポイントは、長時間駐車することが当然の、つまり、寝ている間に充電するための自宅マンション駐車場に、急速充電器はまったく必要ないということです。

もっというと、EVやPHEVには基本的に充電用ケーブルが車載されているので、高価なケーブル付きの普通充電器を奢る必要もなく、200V 15A に対応したEV充電用コンセントを設置すれば必要は満たせます。

マンション駐車場に急速充電器のみを設置するのは、逆に「むしろ不便」でさえあります。普通充電設備であれば「全区画に設置」することもできます。でも、さすがに全区画に急速充電器設置はあり得ないので、1台の充電器を多くのEVユーザーが共用することになり、深夜帰宅して充電を開始しても「30分後にクルマを移動しなきゃいけないのかぁ」みたいなことになるからです。

EV向けの充電器には高圧の受電設備を導入する必要がある?

NHKの記事が誤解や憂慮を生み出す最大の元凶は「マンションでのEV向けの充電器には高圧の受電設備を導入する必要がありますが」というところです。

「高圧受電」とは、使用電力が50kW以上の電力契約形態を意味しており、一般的な「低圧受電」とは料金体系が異なる契約となり、キュービクルと呼ばれる「高圧受電設備」を設置する義務があります。

高圧受電契約の場合、1kWhあたりの電気料金は20円未満と、一般家庭の低圧受電料金よりもおおむね安価ではありますが、月額の基本料金が高額(東京電力の高圧電力Aでデマンドが50kWの場合で約6万5000円)になります。また、キュービクルを保守管理するための電気主任技術者を選任して委託する必要があり、それなりの維持コストが掛かります。

では、本当に「マンションでのEV向けの充電器には高圧の受電設備を導入する必要」があるのでしょうか。前述のように、一般的なEV用自宅充電設備1台分に必要な電力は3kWです。つまり、低圧受電の範疇に収まる48kWの電力が確保できれば、16台のEVが同時に普通充電を行うことができます。NHKの記事にある「150kW」の受電設備が必要なケースでは、「150÷3=50台」ものEVによる同時充電を想定していることになります。

たとえば、総戸数200戸で全戸数分の駐車区画を備えたマンションがあって、200台全部がEVになったとしても、その1/4にあたる50台が同時に充電を行う必要がある状況なんてほとんど生じない、と断言してもいいでしょう。複数台分の充電設備をネットワークして、契約容量や使用電力のピークシフトを勘案してコントロールする機器やシステムもすでに登場してきていますから、「まったく生じることはない」と言い換えてもいいくらいです。

結論として、マンションへの充電設備設置に高圧受電は「必要」ではありません。

マンションのEV用高圧受電設備への補助金という話題を中途半端に報じることは、「マンションでのEV向けの充電器には高圧の受電設備を導入する必要」があると勘違いする人を増やし、ひいては「マンションに充電設備を設置するのは大変なんだぁ」という間違った概念を広げてしまうのではないかと危惧します。

マンションへの充電設備普及のロードマップを示してほしい

経産省ではEVをはじめとする次世代車普及に向けた補助事業をすでに行っていて、「CEV補助金」ではマンションなど集合住宅への充電設備設置を進めるための補助金を出しています。すでに受け付けが終了している令和3年度の補助金では、「充電設備導入費の1/2以内」および「充電設備設置工事費の1/1以内 ※上限あり」と規定されていますが、注釈に「高圧受変電設備設置工事費は除く」と明記されていました。

今回、NHKの記者さんが経済産業省の誰かから聞いたのは、今まで補助対象外だった「高圧受電設備設置工事費にも補助金を出すよ」ということだったのだろうと推察します。

ところが、その事実の前後に「マンションでの充電インフラの導入がなかなか進みません」とか「マンションでは設備を導入するには管理組合の合意が必要で、多くのケースで組合から費用を拠出することになり、合意形成が難しい」といった、集合住宅への充電設備導入全体に関わる課題を並べてしまったことで、話がややこしくなっているように思います。

たとえば、30台分のEV用充電設備を増設するために、共用部の受電契約をアップデートして高圧受電が必要になる、といったケースでは、今回の補助金の意義はあるのでしょう。とはいえ、高圧受電設備への補助金が、EV充電専用に限るのか、既存設備の更新でもOKなのかといった詳細はよくわからないので、休み明けに要確認です。

ちなみに、急速充電スポットなどの取材を通じて「50kWのキュービクル設置には400〜600万円程度かかる」と聞いたことがあるので、今回の「50〜90kWで最大200万円」「150kW以上の設備に最大400万円」という補助金は、工事を含めた設置費用のおおむね1/3〜1/2程度かと思われます。高圧受電が必要なほど大規模な台数向け充電設備を導入するマンションオーナー、もしくは住民(管理組合)としては、やはり小さくない負担が必要になるのではないかと思います。と、マンションへのEV充電用高圧受電の必要性には個人的にしつこく懐疑的ですが……。

ともあれ、マンションへのEV用充電設備普及を進めるためには、高圧受電への補助金よりも先に、もっとやるべきこと、やってほしいことがあるように感じます。たとえば、具体的に2030年まで(あと8年しかない!)に集合住宅や賃貸駐車場区画数の50%に充電設備を設置するためのロードマップを示すとか。新築マンションには一定の割合でEV用充電設備設置を義務づけたり、既存マンションでも住民が要望したら管理組合が設置を前向きに検討するためのモチベーションになるような上手い方法(曖昧ですみません)を法制化するといった施策が必要なんだと思います。

というわけで、NHKのニュースを見て「おいおい、大丈夫かぁ?」と感じた緊急速報、でした。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)24件

  1. なるほど。通りすがっただけでしたので、他の記事まで読み込めていませんでした。とても参考になります。
    地下ピットのある多段昇降式の機械式が機械式駐車場の中では最も多いと思いますが、その場合、地上階のパレットしか充電器は設置できない、そして充電器を設置する場合は、機械式駐車場のメンテナンス契約はメーカーしばり。それでも設置できないものもある。
    ということなのですね。メーカーごと、型式ごとに設置の可否を調べないといけないですね。。。
    現状の普及状況では地上階部分のみでも需要は十分満たせるでしょうけど、10年後はどうするか、ですね。
    充電専用スペースを設けて急速充電器を設置してマンション住民で共有した場合は、普及が進むと充電予約がとりにくくなる問題が発生するのでしょうね。先を見据えて今どうするか、悩ましいですね。。

    1. 通りすがりのマンション管理士様、再度のコメントありがとうございます!
      当記事取材時点では、地下ピットにおける浸水が課題で地下への設置はしない方針、または管理会社が嫌がる状況だったのですが、そんなこと言い出したら地下駐車場に電気なんか引けないですし(笑)、様々な安全機構を開発されて、今では設置が可能だとのことです。
      このあたりは今後取材進めさせていただく予定です。

      どうしても設置できない設備は結構あって、機械式駐車場メーカーが対応していない、地下埋込式で内部に上下左右に回転するタイプです。そういうタイプでもメーカーが充電対応パレットを用意している場合は、対応パレットには充電設備が付けられるそうです。全車室対応は無理ですね。

      地下埋込式の回転する機械式駐車場では、共用部に余裕があれば、そこに急速充電器を置く方法はあります。しかしご指摘のように使い方に制約が出ますので、管理組合の負担はかなりあると思います。約束した時間を超えても動かさない人をどうするか、ですね。
      中国ではIoTで昇降するフラップみたいなものが販売されているようなので(コイン駐車場にある、車両の前側で入出庫をできなくする機器)、それを入れるのも手かと思います。中国の一部のテスラスーパーチャージャーで使用されています。

  2. 都内の多くのマンションは、機械式駐車場で駐車台数を確保していますので、各区画にEV充電コンセントを敷設することができません(ですよね?)。そのため、マンション内に共有の「充電場所」を確保し、そこで急速充電して複数のEV車の充電需要を満たすという選択しかないのだと思います。
    平置きの駐車場が確保できているマンションは、各区画に普通充電器を敷設するという選択になるのだと思います。
    いずれにしても、導入の費用は、補助金なり、ベンチャー企業の高い志による無料導入なりで管理組合の負担はかなり抑えられるのでしょう。
    ただ、その後の維持費と受益者負担をどのように設計するかという点で、技術的な問題よりも、マンションの管理組合の合意形成や意思決定のしにくさの問題によりとん挫する可能性が高いと思います。
    マンションの管理組合が、一部の区分所有者の要望で、あらたな設備やサービスを導入しようとする場合、「導入コストゼロ+電気代と維持費は受益者負担」でないとなかなか賛同が得られないのが現実です。

    1. 通りすがりのマンション管理士 様、コメントありがとうございます。

      >>機械式駐車場
      仕組みによっては設置できない場所もありますが、ある程度の機械式駐車場にはすでに設置実績があります。当サイトでも事例をご紹介しています。
      https://blog.evsmart.net/charging-infrastructure/home-charging/case-study-2-mechanical-parking/
      今後も事例紹介は増やしていきますので、ぜひご覧ください!

      >>維持費と受益者負担
      上記のサイトでご紹介したユアスタンド様や、WeCharge様、またつい先日ローンチしたTerra Charge様などは、これらを解決されています。ぜひ記事をご覧ください。
      https://blog.evsmart.net/charging-infrastructure/home-charging/terra-motors-started-terra-charge-condo-ev-charging-service-in-japan/

    2. 通りすがりのマンション管理士さん、こんにちは。こちらは電気管理技術者(実務経験のある個人自営電気主任技術者)です…名古屋にも立体駐車主体のマンション物件が結構ありますよ(自担当の高圧受電物件が将に該当)。
      普段アイミーブで電気設備点検に向かっており、実際その物件から相談を受ける場合を想定してどこに普通充電器を配線するか!?検討したことがあります。幸いそこは平地の駐車場が10台分あるんで変圧器容量が許せば受電設備の空きブレーカーから配線を伸ばして格安で付けれなくもないです。ただし充電器利用の輪番制化や計測メーターの設置などメンドクサイ話はいくらでも出てきそうですが。
      そんな状態だから管理組合への相談もできるようパワーポイントのプレゼンも用意しなきゃならんです。電気工事店とも打ち合わせれば格安設置の方策は出るかもしれません、自身はアドバイザーとして当ブログの過去記事を引用する可能世がありますのでその節は宜しくです。

  3. この記事をみた瞬間にマンションに急速充電なんて要らないのに。。。と思いました。
    EV市販車が普及して10年以上経過しているのにこの知識と情報の無さは本当に残念。これじゃEVはもちろん再エネも拡がらないので地道に考えるのではなく根本的に考えないとダメでしょうね。

    1. d43fさん鋭いです!集合住宅に急速充電器があっても決して便利になるとは思えませんよ。逆に共有部分が増えて非効率になりかねませんから。
      おそらく普通充電器複数台設置が想定されてます…10台分として30kVA必要なら変圧器は余裕を見て50kVA増設となりますよ。
      共用部に余裕があって変圧器増設しない範囲で配線を増やすにしても大概の物件は鉄筋コンクリート造り、配管に空きがなければ穴あけ斫り工期も金額も嵩みます。電気工事業界はガテン系で職人への日当や施工管理技士への監督費支払など人件費が多くを占める体質、仮に日当一万円/2名/工期5日とすると最低10万円は経費として上乗せされますよ。部品部材が安くても工事費が安くならない理由です。
      こういう話はBtoB(企業間取引)の現場にいないと判らない世界、素人にはわからない業界の奥底であります。僕とて電気管理技術者にならなければその発想はなかったかもですよ!?

  4. ほほう、ついに経済産業省が動きましたか!本職が電気管理技術者(高圧受電設備保守点検の自営業者、いうなれば電気主任技術者代行業)しかもマンション物件担当中なんで察しがつきました。
    自身の担当物件は150~300kVA、kW換算値は105~195kW。400万円あれば100kVA程度増設したとして普通充電器33台分になります。
    問題は既存変圧器の余裕がどれだけあるか!?…ある担当物件は30kW分の余裕がありますがそれだと10台分しか増設できない勘定になり50台駐車可の場合20%しか使えない、あるいは夜間交互使用としても5日に1回しか利用できませんよ。
    ちなみに電源は3相高圧6kVですが、動力変圧器はそのまま3相とも使いますが電灯変圧器はうち2相しか使いません。ただし受電時に電圧の不平衡が判明すれば高圧受電キュービクルで結線変更すれば回避できる場合があります。動力変圧器あるいは自家発電設備から電灯単相電力を取り出したければスコット変圧器という特殊な結線の変圧器で平衡を乱すことなく取り出せますので参考までにどうぞ。
    高圧受電設備の改修には百万円クラスの出費が絡みます。設備老朽化問題も抱えたビルオーナーならばこの機会にまとめて設備改修するんやないですか!?たとえ99kW以下であっても200万円でも小規模雑居ビルにEV充電器設置の可能性が出てきましたよ?(実際そんな物件を受け持ってるから想定の範囲内です)。

    最後に:世間一般の皆さん、電気工事士は知ってても電気主任技術者はなかなか知らないですね…原因はBtoCとBotBの違いが根本やと思いますが、世間一般がC(カスタマー)、会社の経営者や工場のリーダークラス以上でB(ビジネス)といえば判りやすいかと。

  5. 集合住宅の普通充電は、戸建てと同じように各戸で充電できるようにしてほしいと思います。共用部の電気を利用すると、共用部の電流に制限されます。一般的な従量電灯Bの最大電流は60アンペア。これだと3.2kWで最大3〜4台程度しか同時に充電できません。実際には他でも電気を使用するので使える台数はもっと減少するでしょう。これだとEV利用者が増えると対応できません。普通充電器設置の理想は、自分の駐車スペースに設置することだと思います。
    しかし、集合住宅で自宅の配電盤から駐車場までケーブルを延長すると建物の構造や距離によっては充電器設置が困難な場合も少なくないでしょう。そこで、共用部の配電盤から各戸の充電用ケーブルを分岐できるようにしてほしい。技術的に可能なのか素人なのでまったくわかりませんが、これが可能なら共用部の電流の制限や電気料金支払いの問題も解消すると思います。マンションのEV充電用高圧受電設備がどういう発想で出てきたものかわかりませんが、集合住宅の急速充電器設置は、利用者の多い充電スポットと同じように、結局は利用時間帯が集中して充電待ちが増え使い勝手が悪くなると思います。

    1. seijimaさんへ:今回の集合住宅は100/200V引き込みの小規模物件ではなく6600V高圧引込の中~大規模物件です!
      ※高圧受電設備はカスタマーにはわからないビジネス系の話題なんで想像つかなくても仕方ないです。国家資格でいえば第一種電気工事士あるいは電気主任技術者の範疇になりますんで。
      自身の受託する主任技術者外部委託物件は概ね200kW以下であり100/200V出力の電灯変圧器も100kVA以下が多数を占めます。仮に電灯変圧器が75kVAで普段の最大出力が25kWであれば50kWの余裕があり、仮に45kWを深夜充電に割り当てるなら3kW充電15台分は確保できます。それを超えるとなると変圧器入替が発生し、三相動力200Vも含めて全変圧器容量が300kVAを超えると高圧短絡保護装置が比較的安い電力ヒューズでなく真空遮断器(VCB)および過電流継電器(OCR)/計器用変圧器(VT)/変流器(CT)なども必要になります。それだから400万円クラスの補助金が出る可能性があるということで。
      ただ必ずしも取り付けられるとは限らず、場所が狭かったり高圧電線が取り回しにくいなどの理由で断られるケースもありえます。おまけに現段階で高圧電気ケーブル/遮断器/継電器など電材も不足する有様。コロナ禍やウクライナ情勢などが社会情勢が好転しない限り厳しいといわざるを得ませんよ。

      道理で高圧電気屋に電気自動車乗りが少ないとみてます。当事務所みたいにソーラー発電も蓄電池もある場合は別ですが…そろそろアイミーブMではツラくなってきました。そのうちK-EV/リーフ30kWh中古へ買替検討しなきゃ。

  6. 既高圧契約と新しい低圧契約を供給約款的(全国共通)には、同じ場所で両方引き込み出来ないからではないでしょうか?上記のケースで15kw負荷を高圧増設させられた経緯があります。

    1. ストア派様、コメントありがとうございます!おっしゃる通り、一需要場所においては、電力会社からの引き込みは一本が原則です。ただし、電気自動車の充電設備の場合、追加で高圧や低圧を引き込むことが、「特例」として認められています。15kVA程度でキュービクルを増設したりアップグレードするのは大変なコストがかかりますので、現在は低圧の追加引き込みが一般的です。

  7.  マンション充電に高出力タイプの充電機を設置するなら、充電ケーブルを多数出して電力をシェア出来るタイプにしないと不便ですね。
     マンションオーナーや有料駐車場が普通充電器を設置する事に補助金を出したり、充電したときの課金がスマートに行われる仕組みを作ったり、充電したときのスマートな課金を行うためには充電器がネットに接続されている必要があると思うので、その通信費のために補助金を使うほうが普及の後押しになると思います。

    1. ともひろ様、コメントありがとうございます!今後さらに調査を進めますが、恐らく補助金では、ランニングコストをカバーするという考え方がないのですよね。
      おっしゃる通り問題は、受電部分ではないことのほうが多いのです。

    2. ここは電気管理技術者の出番ですかね!?
      大きな集合住宅(高層マンション)で共用部が高圧受電の場合、まず問題になるのが変圧器の容量になります。仮に30台分駐車場があり深夜電力で充電できるようにしたとしても3kW普通充電で合計100kVA分の余裕が必要になります。ところが変圧器の単体価格は百万円オーバーで工事費も数十万円となるとおいそれとは設置できませんよ。
      今回の補助金は多分その対策だと思いますよ!?ここはBtoCでなくBtoBの発想で考察してみました。このニュースはBtoBの電気主任技術者でないとなかなか的確には回答できないでしょう…とはいえ自身の管轄も該当物件はそれほど多くないですが。

  8. 道路脇の電柱の一番上を伝っているのは6600Vの電線です。そこから引っ張ってキュービクル内に入れるトランスで三相4線式AC230V*3で出力するのでしょう。こうすれば32Aの電流で22kw充電ができ日本の家庭配電のAC200V*32A 6.4kwの3倍以上の電力で充電。アリアHighLIBは0-フル4h45m

    1. H.D様、コメントありがとうございます!その方法を高圧受電と呼んでいます。この場合6.6kVから変圧することになりますので、電気主任技術者の選任が必要になります。

    2. 普通充電器は単相の負荷なので、三相の各相に結線することは約款上できません。各相の負荷がアンバランスになる可能性があるので、技術上も推奨されません。
      このため実際にはキュービクル内部にスコットトランスを設置し、三相から単相に変換した上で普通充電器に接続することになります。

      急速充電器の場合は三相負荷となる場合が殆どなので、一般的な三相トランスが使用されます。これは交流から直流を生成するにあたり、単相交流ではなく三相交流を整流した方がリップルの少ない直流が生成できるためです。

    3. H.D さんへ:たしかに一般的な電柱の天辺には3相高圧6kVの電力線が走ってます。ただし一般的な動力変圧器は210VでΔ結線なんで各相から単相電力を取り出すことは想定していません。実際そんな現場は数少ないですね(あってもホールなどの大規模建築物に限られる)。

      やっちゃん(二十敬称略)へ:基本的に動力変圧器での受電を想定していますが、付帯する電灯変圧器は動力変圧器より容量が小さいのであまり問題にはなりません。どうしても電灯単相電力が大量に必要な場合には電灯変圧器を2~3台に分けてR-S/S-T/T-Rなど相をずらして複数配置すれば不平衡問題はある程度解決しますよ!?

      安川洋さんへ:こちらは高圧受電設備保守点検のエキスパートですのでわからないことなどありましたら遠慮なくお尋ね下さい。
      …もうここまでくると僕みたいな現場経験のある電気主任技術者有資格者が正確なコメントをしないといけなくなりました。AC200V/15A負荷をどれだけ増やすか!?設備の改修にかかる費用は!?工期や手配は!?…ありとあらゆる質問に可能な限り対応せねば。

  9. 経済産業省HPのCEV・インフラ補助金の箇所が更新されてますね。
    NHKの記事については下記の内容について報道していると思います。

    ○下記引用
    令和3年度当初予算事業から、今回の補正予算事業において変更・拡充する主要事項は以下のとおりです。詳細については、追って御案内いたします。
    ・急速充電器の設備費について、充電口が3口以上の機器に対応した補助枠を創出。
    ・50kW以上の急速充電器を設置する際に必要となる高圧受電設備について、付帯設備の経費として工事費を増額。
    ・補助金申請が可能な上限基数を緩和。
    ・集合住宅等において、複数基を導入する際、施設の電力需給量と充電量の調整を可能とするディマンドコントロール機能を有した、充電器や付帯設備への補助額を拡充。等

    1. すいせー さん、コメント&ご指摘ありがとうございます。

      確認しました。令和3年度補正予算によるCEV補助金の枠組ですね。このページは開いたものの、「1.更新内容」にめぼしい記述がなかったのでスルーしちゃってました。

      ご指摘の「変更点」を読むと、キュービクル費用への補助は明確に急速充電器を設置する場合となっていますね。ただ、前段に「3口以上」への補助枠創出といった内容もありますし、キュービクル補助はあくまでも経路充電を想定した内容と理解できます。
      集合住宅について「複数基を導入する際、施設の電力需給量と充電量の調整を可能とするディマンドコントロール機能を有した、充電器や付帯設備への補助額を拡充」となっているのは、合理的だと思います。

      いずれにしても、要確認ですね。

      改めて内容を一読し、実施団体がNEVに決まったことや、令和4年度予算での案を含めてEVへの補助金額が5万円増額されて最大85万円になっていること(対象車両に BYD e6も追記されてる!)も知りました。
      連休明けに追記、と思っていましたが、別に新たな補助制度についてきちんと整理した記事が必要、かも知れません。

  10. なんかものすごく急速充電が想定されてそうで、心配なのは確か…なんですが。
    既に普段の契約電力が50kWに近い集合住宅でさらにEVが増えたら、じゃあついでに高圧に切り替えるか、って場合があり得ませんかね。

    1. 櫻井さま、コメントありがとうございます。

      >高圧に切り替えるか、って場合があり得ませんかね。

      はい、あり得るとは思います。が、今回報道の「補助」が想定しているケースが確認できないので、もやもやしています。多台数向けの普通充電に対しては、施設需要と合わせた高圧受電というよりは、充電専用の複数線引き込みへの規制緩和とかの方が賢明じゃないのだろうか、という思いもあったりして。

      ともあれ、連休明け、自動車課に確認してみます。

    2. 高層マンション共用部の高圧受電設備を担当する電気管理技術者です。BtoB現場のことは世間一般に知られていないからその道のエキスパートでないと発想が見当違いになりますよ!?
      自身が担当してきた集合住宅もしくは雑居ビルの物件は住居部が低圧引込もしくは電力会社変電室からの低圧供給、エレベータ/ホール/立体駐車場などの共用部が高圧受電になってますよ…当然駐車場が高圧受電となる物件は変圧器や配線などに多額の費用がかけられており変圧器容量にも制限が出るためおいそれとはいかないのが現状。
      今回の高圧受電設備補助に関しては変圧器容量増加工事が含まれていると考えると妥当です。そしてその目的が数十台の普通充電器設置に向いていることも考慮する必要があります。自身電気管理技術者として変圧器を24時間負荷測定しグラフデータ化することで設置台数や稼働時間帯を設定することはできます。
      彼に50kVAの変圧器が昼間20kW深夜10kVAで稼働しているならその物件は深夜時間帯なら40kVAまで対応できますが若干の余裕が必要なので30kVAとし、結果EV普通充電器は10台まで設置可能になります。それ以上増やしたいなら変圧器を増設することになるわけで。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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