『エコカー試乗会! in 日本大通り 2019』開催にどんな意味があるのか?

2019年11月17日(日)、神奈川県庁に面した横浜市の日本大通りで『エコカー試乗会! in 日本大通り 2019』が開催。EVsmartブログチームもテスラモデル3、ジャガーI-PACE(アイペイス)、VW e-Golf で試乗会に協力してきました。はたして、こうした試乗会開催にどんな「意味」があるのか。少し考えてみたいと思います。

『エコカー試乗会! in 日本大通り 2019』開催にどんな意味があるのか?

EVは再エネ社会のために必要な道具

神奈川県が主催する「エコカー試乗会」は、震災直後の2011年以来、7年目にして9回目(悪天候での中止を含めると10回目)の開催となります。一時期、赤レンガ倉庫などでも開催されていましたが、再生可能エネルギーやV2H(Vehicle to Home=電気自動車に蓄えた電気を家庭で使用すること)関連の展示とあわせ、ここ数年は神奈川県庁の目の前に広がる「日本大通り」での開催が恒例となっています。

晴天に恵まれてたくさんの人で賑わいました。

イベントの主催は神奈川県。横浜市、川崎市、相模原市、そして「九都県市首脳会議環境問題対策委員会」が共催しています。

「九都県市首脳会議環境問題対策委員会」というのは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県と、横浜市、川崎市、相模原市、さいたま市、千葉市が参加して「快適な地域環境を創造し、このことを通じて地球環境の保全に貢献するため、九都県市として共同協調して取り組むべき方策について検討し、首脳会議に報告することを目的」とした組織です。

持続可能な社会システムを実現するために、世の中ではいろんなことが行われているということですね。

まず、神奈川県として、どんな意味があってこのイベントを主催しているのか。県産業労働局エネルギー担当部長の村上剛史氏に伺ってみました。

神奈川県産業労働局エネルギー担当部長、村上剛史氏。

神奈川県は電気自動車(EV)先進県です。EVをはじめ、FCVやPHEVといった次世代エコカーは、再生可能エネルギーを導入して持続可能な環境に優しい社会を構築するためにも不可欠です。また、自動車は多くの市民の方々の生活にとって身近な道具であり、試乗会で体験していただくことで、身近な道具の「選択を変える」「選択肢を広げる」という方法への気付きをご提供することができます。エネルギーへの問題意識を広げるためにも、有意義なイベントだと思っています。

再生可能エネルギーをさらに広げていくために、EVをはじめとする次世代エコカーが大きな役割を果たすべきという点は、日本の自動車メーカーにもさらに注力して情報発信していただきたいことだと感じます。

EVオーナーズクラブも初開催時から協力

このイベントにはEVオーナー有志の団体である「EVオーナーズクラブ(EVOC)」も、初開催時からずっと協力し、参加しています。今回、EVsmartブログチームが試乗会に協力したのも、EVsmartを運営しているアユダンテ株式会社がEVOCの法人会員である繫がりがありました。

EVOC出展テントにて。左から、KAKUさん、代表の桑原さん、EVsmartブログチームメンバーにしてEVOC副代表の箱守さん。

「以前の会場ではEVから給電して炊き出しをやっていましたが、この会場では食べ物の提供がNGになったので、今回は電動マッサージ器やアナログのレコードプレイヤーなどを持ち込んで癒やしの空間を提供しています」(EVOC代表の桑原文雄氏)

EVOCの出展テント周辺にはEVオーナー有志がマイカーであるEVを持ち寄って展示。日産リーフ、E-NV200、BMW i3、テスラモデルS、モデルX、モデル3など多彩な実車がズラリと並び、通りかかる市民のみなさんの質問に答えるなどの対応をしていました。

アユダンテ社長にしてEVsmartブログチームリーダーの安川さんも、一日中モデルXの説明員と化してました。この写真で説明を聞いている若者は、私が運転するアイペイスにも試乗してくださいました。
A PIT東雲のモーニングミーティングで出会った「テスカス」さんも真新しいモデル3で参加!
EVOCの出展スペースの一部を借りて、アユダンテ(EVsmart)ブースもありました。

なぜ、有志オーナーはボランティアでこんなことをするのか?

展示コーナーには、エコカーを発売している自動車メーカーや販売会社、電気自動車や環境貢献関連製品を扱う会社や、電動モビリティを提案するベンチャー企業などが出展しています。そうした会社にとっては、イベントへの出展はプロモーションの一環です。

日産の展示は「走る蓄電池」押し。

私自身、ジャガー・ランドローバー・ジャパンからアイペイスの広報車をお借りして試乗会に協力しましたが「レポートを書くための取材」でもあったので、ぶっちゃけ仕事感覚でした。でも、EVオーナー有志にとっては、イベントへのマイカー展示などの協力は完全なボランティアです。クラブの仲間との親交を温めるというオマケの目的はあるにせよ、なぜ、こんな一文の得にもならないことに協力するのでしょうか。

ひとりひとりに真意を伺ったわけではありませんが、私自身がひとりのEVオーナーとして代弁すると「EVの気持ちよさに気が付いちゃうから」というのが、もっとも大きなモチベーションなのだと思います。

いち早くEVに乗り、アクセル全開にしてもCO2を排出しないことの気持ちよさ、スムーズに加速できる気持ちよさ、再生可能エネルギーで走れるクルマを楽しむことの気持ちよさに気付いてしまう。でも、世の中を見渡すと、あまりにも「EVの気持ちよさ」に気付いていない人が多い。ここはひとつ、自分自身が動いて世の中に気持ちよさへの気付きを広げたい! ということですね。

9月にリーフオーナーである石澤亜由美さんへのSNS取材でお届けした『新潟県岩室温泉のロックフェスで日産リーフオーナーが「給電」に協力』に、全国各地から20台ものリーフオーナーが集まったのも、原動力には同じ心意気があります。

EVオーナーの全てが同じ気持ちとはいいませんが、EVには「なんだ、自分にも環境のためにできることがあるぞ! しかも楽しくて気持ちいい!」と気付かせてくれる力があると感じています。

イベントの様子をサクッとご紹介

アイペイスの試乗(運転)担当としてフル回転していたので、実はあまりゆっくりと会場全体を取材することはできなかったのですが。いくつか気になった展示などをご紹介します。

ユニークな三輪電気自動車で知られる日本エレクトライクが2019年の年内に発売を予定している『スイング・スポーツ』。前二輪、後ろ一輪のいわゆる「リバーストライク」で、普通免許で運転できてヘルメットはなくてもOK。

『YELLOW8.JP』というブランドで、おもに業務用の発酵コントロールコーヒー豆を扱う事業プランを計画している東京幻実株式会社の大金俊雄氏と、e-NV200の電気でいれたコーヒーをサービスする美女スタッフ2名。

私が運転しての「同乗試乗」にも関わらず、アイペイスの試乗は一番人気。あっという間に試乗枠が満員になりました。

EVsmartブログチームは、テスラモデル3が石井さん担当、VW e-Golf(フォルクスワーゲンジャパン様、広報車ありがとうございました!)は箱守さん、ジャガーアイペイスは私が同乗試乗のドライバーを担当しました。

私が担当したアイペイスの試乗は大人気でした。

「いろんなEVを見られてよかった。MIRAI とアイペイスに試乗して、アイペイスの個性的な高級感が印象的でした。ただ、モデル3を予約していて納車待ちしているところなんですけど」(RV458さん)

「アクセルを踏み込んでもらって、EVならではの加速感覚を味わうこともできました。価値観や感性に合うEVが出たら真剣に検討したいですね」(ポルさん)

「ジャガーらしさは受け継いで、さり気なくEVであるところが印象的だった。お値段はそれなりに高いですけど、普通にいいクルマですね」(みちさん)

アイペイスだけでなく、試乗していただいたみなさん、ありがとうございました。ぜひ、本気でEVへの乗り換えを考えてみてください。ちなみに、試乗会には私がかつて連載もしていた週刊SPA!の元副編集長O氏も、息子さんとともに駆けつけてくださいました。Oさんも、ぜひ次のクルマはEVで!

電気になってもしっかり名車「Golf」の乗り味を踏襲。e-Golfも魅力的なBEVです。

アイペイスで90kW急速充電を試してみました

アイペイスの充電口の位置だと、ちょっと逆走を強いられます。。。

せっかくの機会なので、イベント開始前の早朝、日産グローバル本社の90kW急速充電器でアイペイスに少し充電してみました。

残量がまだ68%もあった(前日、埼玉までXEAM試乗会の取材に行ったのに……)のであまり正しい実験ではありませんが、充電開始時の出力は「419V×89A=約37.3kW」、やっぱり50kWを超える出力は出ないようです。

改めてアイペイスの電池容量の大きさ&便利さを実感し、「街なかで使う分には、やっぱり50kWを超えるようなQCはどっちでもいいや」と感じるQC実験となりました。w

日産リーフが「セルフ試乗」サービスも始めたようです

たくさんの人にEVを体感してみて欲しい。でも、こうした試乗イベントは限られた日時と場所でのこと。ディーラーで試乗すると「営業担当者とのやりとりが煩わしくて……」という方も多いのではないでしょうか。

ちょうど、今日、先ほど日産から届いたメルマガに【販売員の同乗なし!お店に行かずにセルフで試乗!!】というお知らせがありました。カーシェアリングサービス『NISSAN e-シェアモビ』のシステムを活用して、オンラインで希望のステーションと日時を選んで申し込める「試乗」サービスです。もちろん無料。よい試みだと思います。

日産自動車『セルフ試乗』案内ページ

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 以前のI-PACEの記事にあったとおりI-PACEのバッテリ温度がわからなかったりと充電の色々な条件がわかりにくいので判断は難しそうな部分ではありますが、それでも68%ならもうちょっと電流入ってもいいんじゃないかという気はしますね。大容量バッテリでこの速度はおかわり必須になってしまうでしょうし、実用面も充電器の占有時間も厳しいように感じました。
    それにしてもI-PACE、68%の段階で419Vとなると結構総電圧高いんですね。
    大半のCHAdeMO充電器が一旦直流400Vに変換してからバッテリ電圧に合わせて充電していること、そして一般的に降圧よりも昇圧のほうがロスは多いでしょうから400Vを超えてくると充電遅くなりそうです。
    この新電元の90kW機は450V * 200Aの90kWなのでこの段階ではまだ問題ない範囲でしょうし、ニチコンのように一旦500Vへ変換して充電を行う充電器であればCHAdeMOの規格上500Vまでなので降圧しか生じず問題ないんでしょうが…(だからニチコンの50kW機って筐体小さいんですかね?50kW表記を期待して行ってみたら100Aまでなのはかなり厳しいんですが…)
    以前のI-PACEの記事で日産の充電器と相性が悪いとおっしゃっていたのもこの辺が影響してそうな気がしますね。おそらく初代富士電機製のNSQC-44-A-1、同B-1、同C-1ではなく縦細型のNSQC442、同443シリーズがダメなのではないかと推測しています。

    1. JBさま、コメントありがとうございます。

      この記事で、いの一番コメントがそこ? と、ちょっと笑ってしまいましたが。

      アイペイスと相性悪いのは細形のやつで、初代は大丈夫、と聞きました。試してないですが。

      総電圧!

      なるほど! 清水SAとかの50kW器で「あれ? 電流こんなもの?」と感じたのは、そのせいだったのかも。

      規格策定って難しいですね。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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