商用EVベンチャー『HW ELECTRO』と『オートバックスセブン』が資本提携~蕭社長インタビュー

カー用品大手のオートバックスセブンが、小型商用電気自動車『ELEMO』を発売した HW ELECTROに出資、EV普及に向けた新規サービス共同開発のための協議を始めることを発表しました。HW ELECTRO蕭偉城社長のビジョンを直撃インタビューで伺いました。

商用EVベンチャー『HW ELECTRO』と『オートバックスセブン』が資本提携~蕭社長インタビュー

オートバックスセブンがEV普及への貢献に前進

2021年10月28日、カー用品店チェーン大手の株式会社オートバックスセブンが、小型商用EV『ELEMO(エレモ)』を発売したばかりの電気自動車スタートアップ企業であるHW ELECTRO株式会社に出資、資本提携に関する契約を締結したことを発表しました。出資額は「1億円程度とみられる」と日経新聞が報じています。

両社から発表されたニュースリリースによると、今回の資本提携を通じて「将来的には、全国のオートバックス店舗をELEMOの販売やメンテナンス拠点として活用し、関連商品・サービスの販売や、新規サービスの共同開発を連携・協業していくことについて検討を開始」したとのこと。

オートバックスセブンのリリースタイトルは「オートバックスセブン、EV市場へ参入」と気合い満点。HW ELECTROのリリースでは「2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け、活性化しているEV市場へ早期に参入し、EVの販売・メンテナンスのノウハウを得ることよってEV市場における競争力を高めていくことを検討していた」という小林喜夫巳社長のコメントが紹介されています。

EVsmartブログでは発売前から『ELEMO』に注目。日本国内で初めてナンバーを取得する瞬間の密着取材を行い、今年7月に行われた受注開始の発表会や、試乗レポートなどを紹介してきました。

そんなご縁もあって、28日のリリース公開時間でもあった午前11時から、HW ELECTROの蕭 偉城(ショウ・ウェイチェン)社長に時間をいただいて直撃オンラインインタビューを行いました。今回の資本提携の内容や意義、さらにはデリバリー開始が近い『ELEMO』の現状や今後に向けたビジョンなど、蕭社長のコメントを交えて紹介します。

先進機能のオプションをオートバックスと共同開発?

まず、オートバックスセブンと提携することによる、HW ELECTROの期待について。具体的な新規サービスなどの内容はこれから検討や調整を進めていくことではありますが、スタートアップ企業で全国を網羅する拠点をもたないHW ELECTROにとって「販売後のメンテナンスや修理時の代車を提供するための拠点、さらには納車サービスや販売拠点としても期待しています」(蕭社長 ※以下、太字は蕭社長のコメント)とのこと。

オートバックスセブン系列の国内店舗数は全国で589店舗(2021年3月末現在)。ただし多くがフランチャイズであり、全国の系列店で『ELEMO』を購入し、サービスが受けられる状況にするためには、関連&系列企業の理解と協力が不可欠になります。とはいえ「全国で400店舗ほどはEVの整備に積極的に取り組んでいるそうですし、100店舗ほどには『ELEMO』が使う200Vの普通充電器を設置されています。まずは理解いただける店舗から、広く全国へ展開する」ことを目指します。

そういえば、テスラの『スーパーチャージャー東雲』と『サービスセンター 東京ベイ』は、『A PIT オートバックス東雲』の一画にあります。そこまで大規模ではないにしろ、全国のオートバックスセブン系列店舗にあんな感じの『ELEMO』コーナーが誕生していくのかな、と想像します。

さらに「新たな関連商品やサービスの開発や販売」について「これから検討」であることは承知の上で、蕭社長自身の思いやアイデアを伺ってみました。

オートバックスセブン系列のカー用品店には、先進的なカーナビやバックカメラといった、シンプルな『ELEMO』に後付けしたくなる豊富なカー用品が揃っています。また、弊社では宅配業者向けに運送ルートを最適化するなどの機能をもったIoTサービスの展開を目指してアプリ開発を行っています。そのためのデバイスなどをオートバックスセブンと共同開発して販売したり、先進機能を備えた限定販売のオプションを開発するのも面白いですね

なるほど。インターフェースがシンプルで、荷室があると後方が死角になる『ELEMO』とバックカメラ付きカーナビは相性抜群。IoTサービスを提供するアプリは、他車種の商用車オーナーや宅配事業者にとっても便利なものになるかも知れません。はたして、実際にどんなサービスやアイテムが誕生するのか楽しみです。

7月に試乗した『ELEMO』のシンプルなインテリア。

「大容量」を活かして架装メーカーとの協業も

『ELEMO』をご存じない方のために少し復習しておきましょう。

『ELEMO』は、デザインや設計はオーストリアの「Magna Steyr(マグナ・シュタイアー)」社が手がけ、中国で生産、アメリカに拠点を置く「CENNTRO(セントロ)」社が販売して、欧州やアメリカ、中国などで3500台以上が売れている『METRO』という小型EVをベースにしています。HW ELECTROは、このベース車両に出会った蕭さんが、日本で『ELEMO』を販売するため2019年に起業した電気自動車ベンチャーです。

HW ELECTROでは輸入したベース車両の足回りなどを日本向けに改良し、日本オリジナルの『ELEMO』として、今年7月から受注を開始。当初年内を見込んでいたデリバリー開始は「半導体不足の影響などもあって来年2月ごろからにずれ込みそう」ということですが、すでに50台程度の予約があったということで、まずは順調なスタートを切ったと言えるでしょう。

現行モデル最大の特徴はボディサイズです。3サイズは「全長 3910×全幅 1376×全高 1905 mm」。全幅は昭和の軽自動車並みですが、全長が現在の軽自動車規格である「3.4m」よりも長いので、4ナンバーの小型貨物自動車(登録車)となります。

公式サイトより引用。(Click to big.)

軽自動車としての登録よりも税額などは少々高くなりますが、車幅がコンパクトなので狭い道でも取り回しは良好。さらに「最大の強みは3立米の積載量ですね」と蕭社長。『ELEMO』には「フラットベッド」「ピックアップ」「ボックス」と3タイプのスタイルが用意されており、ボックスタイプの荷室サイズは「2220 × 1360 × 1095mm=約3.8㎥」(内寸でほぼ3立米ということでしょう)という大容量。さらに、軽自動車の最大積載量は350kgであるのに対して、小型貨物自動車登録となる『ELEMO』は400~500kgであるのも利点です。

また、海外では荷台の架装を工夫してワクチン接種の移動サービスカーに活用している例があるように、フラットベッドタイプを小型EVトラックのプラットフォームと考えれば、架装はアイデアと工夫次第でさまざまな個性を出すことができます。蕭社長に確認すると「複数の架装メーカーといろいろな話を進めているところ」ということでした。『ELEMO』のキッチンカーや焼き芋屋さんとか、静かで便利で素敵だと思います。

プロジェクトは着々と前進中

『ELEMO』にはバッテリー容量13kWhの『ELEMO120』(一充電航続距離の目安が約120km)と、25.92kWhの『ELEMO200』のバリエーションがあります。とくに、大容量の『ELEMO200』(100V1500Wのコンセントも標準装備)は災害時などの電源供給にも心強いスペックであることを活かし、HW ELECTROでは日本防災教育振興中央会と連携して「防災備蓄品」を選定。今後5年間で3万カ所を目標に、地域の防災拠点に100V電源が使える『ELEMO』を配備していく計画を進めています。

その第一弾として千葉県木更津市に防災備蓄品を積んだ『ELEMO200』を寄贈。「災害時における電動車両等の支援に関する協定」を締結し、今後、木更津市では約50台のELEMOを市内の避難所に導入していく計画であることは以前の記事でもお伝えしました。

本当に全国の自治体への配置が進めば『ELEMO』普及の大きな力になるでしょうし、その進展はどうなのか、蕭社長に伺うと「車両の改良などを行っていたので、今月末に木更津市への寄贈分の1台を正式に納車するところ。全国各地の自治体からもたくさんの問い合わせをいただいており、いよいよこれから本格的にスタートという状況です」と、ブレーキの改良などを行っていたことを教えてくれました。

7月に試乗した自動車評論家の御堀直嗣さんが「ブレーキのストロークが大きい」違和感を指摘していましたが、早速、改良に着手していたあたり、蕭社長のエネルギッシュな動きが伺えます。

EV導入が喫緊の課題になりつつある宅配事業者からも多くの問い合わせがあるそうですが、日本の規格に合わせて全長を短くした「軽自動車版 ELEMO」の開発を公表していることもあって、軽自動車版と比較検討したいというニーズが少なくないそうです。蕭社長に開発状況を確認すると「軽自動車版のボディはすでに完成しています。近いうちに、なんらかの発表はできると思うので、楽しみにしていてください」とのことでした。

蕭社長は、台湾生まれの千葉育ち

以前『ELEMO』を紹介した記事連携のSNSで「蕭社長は中国人?」というレスをいただいたことがあります。私も聞いたことがなかったので確認してみました。蕭さんは台湾生まれですが、2歳で日本(千葉県)に来て以来、幼稚園から大学中退(「意味がない! と思ってすぐに中退した」そうです)するまで日本の教育を受けました。その後、台湾やタイへ留学。帰国後は空港などで働きながら2010年にレーシングチームを設立。2017年に中国のタイヤメーカーの日本法人となる『GOODRIDE JAPAN 株式会社』を創業して実業家としての幅を拡大し、「Electric Mobility Innovation」を目指して2019年にHW ELECTROを起業しました。

国籍は台湾ですが「WBCの決勝戦が日本VS台湾だったら、日本を応援します」とのこと。お名前はちょっと読みづらいですけど、心はすっかり日本人として日本の脱炭素モビリティ革新を目指しています。

7月の受注開始発表会で壇上に立つ蕭偉城社長。

一方で、留学やビジネスの経験を通じて「日本、中国、台湾のいいところを理解して活かしていける。中国人は押しが強いので遠慮がちな日本人とトラブルになりやすいとか、日本人は完璧主義でオーバースペックになりがちだったりします。でも、たとえば中国メーカーが主導権を握ったアクションカメラやドローンなどの製品も、必要な機能や利便性を備えながら価格を抑えたからこそヒットしました。私たちが取り組んでいるのはEVなので、もちろん安全性に関わる部分はシビアに向き合いながら、ヨーロッパとアメリカと中国のいいとこどりをした『ELEMO』のように、バランスのいいパッケージングを責任をもって開発し、販売していくのが私の、そして私たちの役割だと思っています」と蕭さん。

記事が長くなりすぎるので全部は書き切れないですが「AC200V普通充電インフラの拡充に向けた協業のアイデアも進めたい」とか、来年発売される日産&三菱の軽EVについても「既存メーカーの参入は大歓迎。競合がないとEVのマーケットが厚くならないですからね」など、日本のEV普及に真剣に取り組んでいる方ならではの意欲的な話を伺うことができました。

さらに、年内には「東京・青山の骨董通り(南青山6丁目)に『ELEMO』のショールームがオープン予定なんですよ」とのこと。国内最初のショールームが青山というのも、奇しくもテスラと同じです。日本ではまだ成功事例がない電気自動車のファブレスメーカーとして、小型商用車に的を絞ってスタートを切ったHW ELECTROと蕭社長。今後もさらに、エキサイティングなニュースが届くことを期待しています。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 珍しく興味を持って一気に最後まで読んでしまいました。
    オートバックス、特にスーパーオートバックスで現物が見られるようになるといいですね!
    軽自動車版期待すると同時に急速充電対応してほしいと思いつつ、
    お~い三菱!ミニキャブMiEVバンを20㎾版とかにして再リリースしましょうよ~
    と思った次第です。

    1. 軽EV乗りとして興味深く拝見いたしました。そもそもオートバックスには中古車整備販売実績のある店舗があり、該当店舗は大概EV充電器もあるから車両展示のみならず充電や給電のデモンストレーションもできるはず、さらに店舗の電動車整備実習もかねて全国行脚もありうる…なんだか夢がデカくなってきますねww
      軽規格ELEMOが出てくればミニキャブミーブとタメ張れますが、個人的にCHAdeMO対応の可否が気になります。ルート営業中に突然の呼出しで距離が伸びる可能性もあるから容量20kWhなら400V/100Aの急速充電性能が欲しいですよ。これなら三元系電池でも対応できるかも。
      興味深いのは全幅が小さくても25kWhもの電池が積めることですか…もちろん全長オーバーで小型貨物車扱いのロング版でしょうけど。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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