電気自動車普及は止まらない! 中国では2022年末までにNEV年間販売台数600万台を達成か

中国における2022年のNEV(電気自動車を含む新エネルギー車)販売台数が、コロナ禍などの障壁を越えて急増を続けています。『ChinaAutoReview』元編集長で、アメリカ在住のアナリスト、Lei Xing氏の解説をお届けします。

電気自動車普及は止まらない! 中国では2022年末までにNEV年間販売台数600万台を達成か

【元記事】 Despite disruptions, China will sell 6 million NEVs in 2022 by Lei Xing

上海のロックダウンで自動車の生産は中断したが……

中国NEV市場の回復力を侮ってはいけません。転機が過ぎたことを覚えておいてください。

まさにジェットコースターのような展開でした。

今年の始め、前年比で160%成長し350万台の新エネルギー車両(NEV)が売れた(中国汽車工業協会:CAAMによる)2021年は輝いて見え、個人的には2022年のセールスが600万台を越えるのではと強い希望を持ちました。

ところが上海では4月にコロナによるロックダウンがありました。周辺都市や中国の他の地域が感染爆発を抑えるために戦う中、実質的に都市機能が停止したのです。この期間、上海ではNEVだろうがICEだろうが車両は1台も販売されず、テスラを含め自動車メーカーは生産の中断を余儀なくされました。中国乗用車協会(CPCA)によるとテスラ車は4月に中国国内で1,512台しか売れず、NEVのセールスも30万台以下で、2021年7月以来の低水準となりました。

5月の始めに4月のNEV販売データが報じられた際、上海が近いうちにロックダウンを解除するのかも定かでなく、年内に500万台でさえ売ることができるのかと私は疑問に思いました。業界全体の雰囲気もかなり悪いものでした。

ところがどういうわけか、上海ロックダウンの手法が良かったのか、はたまた上海市民の粘り強さか、春から夏に変わるにつれて状況が好転しました。上海は徐々にロックダウンの解除を進め、域内のメーカーやサプライヤーに必要な生産活動は元に戻りました。諺にもあるように、物事は常に良くなるものなのです。

時を早送りして7月1日、スマートEVスタートアップの中でも先を行く企業達が7月のデリバリー数を発表した際には、そのほとんどが月間デリバリー数の最高値を出して安堵の息をつきました。特にここ数カ月他社の後塵を拝していたNIOにとってはカミングアウトするパーティのようなもので、良い数字を出さなければならないプレッシャーがかかっていましたが、成功しました。数日後にはBYDが13万台のNEV車販売で過去最高を記録し、世界のNEV販売台数でテスラを抜き1位に躍り出ました。

6月には過去最高の59万台6000台を達成

7月6日、中国公安部(MPS)は2022年6月末時点での最新の車両登録データを公表し、そこでは今年前半のNEV市場の動向を見ることができます。約221万台のNEV車両が今年前半に登録され、自動車市場全体の1,110万台のうち20%弱を占めています。2022年6月末の時点で、中国では過去10年ほどで売られた1,001万台のNEV車両が路上を走っていました。ということは、そのうち約22%が今年前半で登録された車両となり、市場の成長がどのような具合かお分かりになるでしょう。事実MPSのデータによると中国国内を走るNEV車両の数は、2020年終わりの時点で500万台しかなかったので、その数は過去1年半で倍以上に増えたことになります。また2018年6月の200万台からも、たった4年で4倍に増えたということでもあります。

CPCAがNEV乗用車の生産、卸し・小売販売台数を発表した7月8日の前日、すべての自動車メーカーが発表した6月の売り上げを元に私が計算した結果、販売台数は50万台を越えると予想できました。驚くなかれ、CPCAは卸しで57万1,000台、小売では過去最高の7万8,906台のテスラを含む53万2,000台と発表しました。そのほとんどが中国国内でのものです。この数値は私を含め、業界内の人間を驚かせました。

CAAMが7月11日に商業車を含む6月のNEV販売台数を発表し、その数は過去最高の59万6,000台でした。4月に売られた台数の約2倍です。2022年前半だけで、NEVは260万台売れました。2021年通年での350万台まであと90万台に迫っています。

よって、3カ月で状況は元に戻りました。私が今年初めに考えたNEV600万台は、上海ロックダウンのような困難にも耐えた現在の勢いを見ると確実に達成可能と思えます。振り返ってみると、NEV市場はロックダウン、サプライチェーンの問題、世界の地政学的な状況からそれほどダメージを受けませんでした。強固な需要があり、自動車メーカーやサプライヤーが利害関係者と協力して生産を維持したからです。

私は常に中国のNEV市場の転換点はだいぶ前に過ぎたと話していますが、この先の需要が問題になる事はないでしょう。スマートEVスタートアップを含めほとんどの自動車メーカーは多くのバックオーダーを抱えていて、6月の販売台数は過去数カ月にデリバリーされるはずだったものを反映したに過ぎません。例えばBYDは、今も何十万台もの注文を抱えています(7月上旬に70万台)。2022年前半に64万台のNEVを売り上げた今、以前私が “Will BYD sell 1.5 million NEVs in 2022?” で書いた通り、通年では150万台を達成する確率が非常に高いです。ということは、BYDだけで今年の中国NEV市場の約4分の1を占める計算になります。

私が強気なのは、時期的な理由もあります。販売台数は年の後半に多くなるのが常で、第4四半期は通常1年の中で最も売れる時期なのです。特に今年は、年末にNEVの消費税免除の制度が終わってしまうというワイルドカードが控えています。制度を2023年まで延長する議論もあるのですが、それが決定して発表されるまでは年末に向けて販売台数の急増があるかもしれません。さらに、古い車両をNEVに買い替えさせる後押しをするため、国と地方レベルで1万元(約20万5,000円)を越える補助金が出されるなど前例のない政策が取られています。

NEV販売に若干ネガティブな影響を及ぼすであろう唯一の状況が、2.0Lもしくは30万元(約615万円)以下のICE乗用車の消費税が年末まで半額になっていることで、全体の乗用車販売台数は増えるでしょうが、NEVの浸透を妨げる要因になるでしょう。しかしNEVへの全体的な需要と熱狂は、刺激策に関係なく強くあり続けると考えられます。

以上すべてが、2022年の中国で600万台以上のNEVが売れる布石となっています。達成できるかではなく、何台売れるのかが争点になるでしょう。中国のNEV市場を侮ってはいけないのです。

※ 筆者注/記事中のNEV車両とは、文中で特別に言及されているものを除き、PHEV、BEV、FCEVの乗用車及び商業車となります。販売台数には輸出分も含まれます。

(翻訳/杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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