ノルウェーの自動車販売台数におけるEVシェアは91%/売れ行きトップはボルボEX30

日本の一般メディアでは「EV失速」などと伝えられる中、ノルウェーにおける4月の自動車販売台数における電気自動車のシェアは91%を記録。最も売れた車種はボルボEX30でした。アメリカのメディア『CleanTechnica』から全文翻訳でお届けします。

ノルウェーの自動車販売台数におけるEVシェアは91%/売れ行きトップはボルボEX30

【元記事】EVs Take 91.0% Share In Norway — Volvo EX30 Grabs Top Spot by Dr. Maximilian Holland on 『Clean Technica

※冒頭写真は日本でも販売好調なボルボ『EX30』(関連記事)。

新車販売で90%以上の電気自動車シェアが継続

2024年4月、ノルウェーの自動車市場は「プラグイン充電可能な」EV(PHEVを含む)のシェアが91.0%で、前年同月の91.1%とほとんど変わらない結果となりました。BEVのみのシェアは89.4%で、前年同月の83.3%から上昇しました。自動車全体の販売台数は11,241台で前年同月比で25%アップと、ここ最近は回復傾向にあります。4月の販売台数トップのBEVはボルボEX30でした。

2024年4月ノルウェー乗用車登録台数の比率

出典:CleanTechnica

4月のノルウェーの新車販売台数シェアは、純EV(BEV)89.4%、プラグインハイブリッド(PHEV)1.6%の合計91.0%でした。前年同月は合計が91.1%、内訳はBEVが83.3%、PHEVが7.8%でした。

1月1日から政策が変わったことでPHEVの販売が減少し、BEVがさらに増加しているのは間違いありません。しかし残念なことに、副作用としてハイブリッド車(HEV)の販売台数がPHEVの3倍近くに上昇しています。なぜ残念なのかというとPHEVは(設計通りに使用すれば)ほとんど電気だけで走行できるのに対して、HEVは必ず燃料を燃やしてエネルギーを供給しなくてはならないからです。

また、PHEVは元旦の政策変更の前に駆け込み需要があったため、新年からはその反動で販売が低迷している可能性が高いです(下グラフ参照)。この反動は今後数カ月で解消され、PHEVとHEVのバランスが改善されるかも知れませんが、そうならなかった場合は政策を微調整する必要がありそうです。

とはいえ、BEVは現在のところ市場シェアの9割を占めており、その他のパワートレインはすべて消滅しつつあります。純ガソリン車の販売は特に弱く、2024年の市場シェアは今のところ1%未満で、純ディーゼル車は2.5%程度です。

ノルウェーのパワートレイン別月間市場シェア

出典:CleanTechnica

BEVの売れ行きランキング

1月に発売された新型ボルボEX30は快進撃を続け、4月には1,095台を販売して首位に立ちました。2位はフォルクスワーゲンID.4で963台、3位は同社のID.3で733台でした。

2024年4月のノルウェーにおけるBEV売れ行きランキング

出典:CleanTechnica

これまでボルボEX30をノルウェーのランキングに乗せておらず失礼しました。EX30は1月にノルウェーでデビューしていましたね(87台を販売して12位)。筆者が使っているデータでは今までEX30の初期の販売実績が反映されていなかったため、私も気づくのが遅れました。

出典の問題も解決したので、改めてランキングを見返すと、2月は213台(6位)、3月は344台(3位)を販売しています。

ボルボEX30(ボルボ・カー・ジャパンプレス素材より)

ボルボの新型コンパクトSUVは驚異的なスピードで順位を上げて、4月はトップに輝きました。価格は、ベースグレードの49 kWhバッテリーモデルが321,900ノルウェークローネ(467万円)から、バッテリーが大きいグレード(使用可能な容量が64 kWh)が366,900ノルウェークローネ(532万円)からとなっています。
※換算レートは2024年5月15日現在。

これは、2018年以来ノルウェーでトップ10前後に必ず入る人気車種、ヒョンデ・コナよりも安いです。EX30とほぼ同じ65.4 kWhバッテリーを搭載したコナは希望小売価格が388,900ノルウェークローネ(564万円)です。なお、2024年式のコナはEX30よりもわずかに全長が長く(4355mm対4233mm)、実航続距離が約8%多いです。

しかしEX30は10%から80%までわずか25分(コナは41分)でDC急速充電ができるため、コナより長距離移動が早くできます。また、0-100km/h加速は5.3秒(49kWhモデルは5.7秒)と、テスラ・モデル3やモデルYのベースグレードを凌ぐパワフルさです。文句の付け所がありませんね。

4月のトップ20ランキングに話を戻すと、ID.3とID.4は(そしてアウディQ4とシュコダ・エニアックにも一部言えることですが)、フォルクスワーゲン・グループのMEBプラットフォーム採用モデルにとって異例なほど台数が落ち込んだ第1四半期から無事に回復しました。

4月は新しいBEVが何車種かデビューしました。スマート#3の登録台数は5台で、2月の1台以来2ヶ月ぶりに売れました。スマート#3はボルボEX30と共通プラットフォームですが、サイズも価格も一回り大きいです。

MINIカントリーマンも4月にデビューし、17台が登録されました(基本仕様はスウェーデンのレポートをご覧ください)。

最後にBYDからもBYDシール(49台)とBYDドルフィン(49台)の2車種がノルウェー市場に投入されました。シールはテスラ・モデル3のライバルで、ドルフィンはMG4のライバルです。どちらも比較的お買い得なBEVで中国でも大ヒットしているため、今後のノルウェーでの動向に注目です。

それでは、直近3ヶ月のチャートをご覧ください。

2024年4月ノルウェーBEV直近3ヶ月の登録台数

出典:CleanTechnica

4月は販売台数が比較的少なかったものの、ノルウェーではテスラ・モデルYが長期的には依然として圧倒的な強さを誇っており、今年はこの情勢が大きく変わることはないでしょう。モデルYは、2~4位の販売台数を合算した数字とほぼ同じだけ売れています。

ボルボEX30はすでにモデルYに次ぐ2位を獲得しており、近い内にこの2台の先頭集団が後続を大きく引き離すことになるでしょう。

注目はフォルクスワーゲンID Buzzが4月に台数を伸ばし、現在4位につけていることです。これはミニバンとしては驚異的な成績で、ノルウェーでは周辺市場より比較的安い価格に設定されていることも要因の一つです。周辺諸国では希望小売価格が通常20%以上高いのに対し(例えばドイツでは1,092万円)、ノルウェーでは618,100ノルウェークローネ(892万円)から購入できます。

車種構成の最新情報

2024年第1四半期のデータを含めた最新の車種構成の推移表です。

ノルウェーでの各パワートレインの構成比

出典:CleanTechnica

ノルウェーでは、この1年ほど新車販売が減速したため、「プラグイン充電可能な車両」への移行速度が衰えていることがわかります。これは景気が回復するまで変わらないでしょう(理由は後述)。

2024年第1四半期のBEVシェアは24.2%から24.8%に増加しましたが、わずか0.6%の増加にとどまりました。PHEVと合わせると、「プラグイン車」のシェアは31.4%から32.0%に増加し、これも0.6%の増加となりました(第1四半期のPHEV販売はごくわずかでした)。

これは、国内の車両が「プラグイン車」に移行する割合が四半期ごとに1.4%、全体で年間5%近く増えていた2021年から考えると大きく遅れを取っています。

今後の展望

ノルウェーの自工会OFVは、自動車市場の全般的な冷え込みは国の景気低迷が一因だと指摘しています。ノルウェーのGDPに関する2024年第1四半期のデータはまだありませんが、1月はここ数カ月と比べて好調でした。2023年第4四半期のデータは、第3四半期のマイナス1.9%から0.5%上昇しました。インフレ率は2月の4.5%から3月には3.9%(最新データ)に改善しました。金利は12月からずっと4.5%で横ばい、製造業PMIは3月の50.7から4月は52.4ポイントに改善しました。

OFVは、「国民はより緊張した経済状況に立たされています……消費者は財布の紐が固くなり、より小さくて低価格な新車を買うようになりました……おそらく、新車購入者に楽観ムードが戻ってくるのは利下げが行われてからでしょうから、我々はそれまで待たなければならないでしょう」(OFV 4月の声明、機械翻訳)と述べています。

ノルウェーのEVシフトについてどう思いますか? 2025年までに100%ゼロエミッションという野心的な目標を達成するためには、何が必要でしょう? まだ実現可能だと思いますか? 以下の議論にぜひご参加ください(原文ではCTのコメント欄にリンク。EVsmartブログの翻訳記事にも、ご意見をお寄せください)。

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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