2020年度末には東京都内の2割を電動化の計画
すでに他メディアでも報道されていますが、日本郵便株式会社と本田技研工業株式会社が、郵便配達業務用にホンダの電動二輪車『BENLY e:』を導入することを発表しました。まずは、ホンダのニュースリリースから導入計画の概要をまとめておきます。
【目的】
地球環境に配慮した企業活動の一環として、持続可能な郵便・物流事業を推進するため。
【導入スケジュール(予定)】
●2019年度中/200台
●2020年度中/業務上の実用性を見て検討(2000台程度を検討)
【配備エリア】
2020年1月より、新宿・日本橋・渋谷・上野郵便局の4局から使用を開始。東京都をはじめとした首都圏の近距離配達エリアに配備するとともに、一部の地方主要都市の郵便局にも配備予定。
計画通り2000台が導入されれば、2020年度末には東京都内における郵便配達業務用二輪車の2割が電動二輪車となる予定であるとしています。
『BENLY e:』はどんな電気バイク?
今回、日本郵便での導入が発表された『BENLY e:』は、駆動用バッテリーとしてホンダが開発した「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」2個を搭載する電気バイクです。原付一種の『BENLY e: I(ベンリィ イー ワン)』と原付二種の『BENLY e: II(ベンリィ イー ツー)』、また、それぞれ大型フロントバスケット、大型リアキャリアなどを装備した「プロ」タイプのバリエーションがあります。
モバイルパワーパックは1個の容量が1kWhなので、合計2kWhのバッテリー容量で、一充電あたりの航続距離は『BENLY e: I』が87km(30km/h定地走行テスト値)、『BENLY e: II』が43km(60km/h定地走行テスト値)と発表されています。
1月17日に行われた納車式をレポートした『webオートバイ』の記事によると、2019年度中に導入予定の200台については、原付一種が50台、原付二種が150台を計画しているとのことです。
『BENLY e:』は、東京モーターショー2019でお披露目されて、EVsmartブログでも取材しました。モーターショーのタイミングでは詳細な価格やスペックなどは非公表でしたが、その後、2019年12月19日、2020年4月から法人向けに発売されることが正式に発表されました。
メーカー希望小売価格は、車両本体に、モバイルパワーパック2個と専用充電器2個を合わせた「基本セット」で、それぞれ以下のような値段です。
BENLY e: Ⅰ
737,000円(消費税抜き本体価格 670,000円)
BENLY e: Ⅰ プロ
748,000円(消費税抜き本体価格 680,000円)
BENLY e: Ⅱ
737,000円(消費税抜き本体価格 670,000円)
BENLY e: Ⅱ プロ
748,000円(消費税抜き本体価格 680,000円)
一種も二種も価格は同等。日本郵便が導入するバイクには専用のフロントバックやリアの収納ケースが用意されるようなので、それぞれ「プロ」仕様のレベルと思われます。
2000台というまとまった導入計画によって、1台あたりどの程度の値引きというか、価格設定されているのかはわかりませんが、「スーパーカブ50」の新車価格が23万6,500円(税込)〜程度、二種の「スーパーカブ110」でも28万500(税込)〜なので、エンジンのバイクと比べてかなりの大盤振る舞いになりそうです。
高く付いてしまう分は「地球環境に配慮した企業活動の一環」としての投資ということでしょうか。郵便配達のバイクといえば「郵政カブ」と愛称がつくほどに、長年信頼関係を築いてきた郵便局とホンダだからこそ実現したことでもあるのでしょう。
ちなみに、12月にホンダから発表された『BENLY e:』発売のリリースによると、国内での年間販売台数の計画がシリーズ合計で「200台」とされていました。その数があまりに少ないのではという疑問はさておき、日本郵便だけで2019年度中に200台、2020年度中には2000台も計画しているということは、当初の計画はこれで楽々クリア? と、ホンダ広報部に確認したところ、「日本郵便への導入分は計画とは別」という回答でした。
日本郵便の英断が、たとえばピザの宅配チェーンなどの企業の背中を押して、ホンダが「生産が追いつかない!」とうれしい悲鳴を上げるようになると、日本の街の風景が少しずつ変わっていくといいのにな、と個人的に妄想しています。
日本郵便とホンダの電動化協業プラン
今回、日本郵便がホンダの電気バイク導入を決めたことは「2017年3月23日に日本郵便とHondaが協業に関して締結した覚書に基づき、郵便配達業務において、現行の二輪車に替わる電動車両を用いた社会インフラ整備に向け、検討を続けてきた」ことであることがリリースでも紹介されています。
これは『日本郵便とHondaが社会インフラ整備に向けた協業の検討を開始』として調印したことが発表された「覚書」です。おもな検討内容として、郵便配達への電動二輪車導入の可能性を検討することともに、郵便局への充電ステーション導入の実証実験に取り組んでいくことに言及されています。
つまり、郵便配達に電気バイクを使うだけでなく、全国の郵便局ネットワークを活用して、電気バイク用の充電インフラ、もしくは電池交換ステーションとしてのインフラを整備していこうという計画です。
2019年4月には、国内の主要バイクメーカー4社が「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」を創設し、交換式バッテリーとそのバッテリー交換システム標準化の検討を進めることを発表。EVsmartブログでも解説記事を紹介しました。
【関連記事】
『国内4社が電動二輪車の交換式バッテリーコンソーシアム創設。電気バイクの波が来る?』
この点も念のためホンダ広報部に確認したところ、バッテリーコンソーシアムの検討進展や、郵便局への充電インフラ展開などについては「今回の電動二輪車導入とはまた別の話し」になるということで、日本郵便ともども、郵便局ネットワークへの充電(バッテリー交換)ステーション展開は視野に入れて検討中ではあるものの、まだ実現に向けた具体的な発表ができる段階ではないようです。
バイクメーカー4社がバッテリー規格の標準化を進めるだけでも難問満載の課題かとは思いますが、モビリティの電動化とユーザーの利便性確保のためにも、近い将来、よい発表があることを期待しています。
日本郵便の電動化
日本郵便の電動車両導入といえば、2019年3月に『日本郵便が集配車に電気自動車1200台導入「その先」を考えてみる』と題した記事でお伝えしたように、全国の集配車に三菱『ミニキャブMiEV』を導入して話題になりました。
郵便局の集配車は全国に約3万台あるので、1200台はその約4%であることを、当時取材した日本郵便広報部から聞きました。広報部からは「郵便配達に使用しているバイクは全国で9万台あります。CO2排出削減への貢献という点からも、バイクを電動に切り替えていくことには大きな意義があると考えています」というコメントもあり、今回の電動二輪車導入はその言葉が実現したことになります。
とはいえ、集配車として導入されつつある『ミニキャブMiEV』が発売されたのは2011年のこと。すでに開発から10年ほどが経つ電気自動車です。今後、日本郵便以外の企業や社会全体に普及していくのは、やや力不足であることは否めません。2kWhの電池を搭載した『BENLY e:』も魅力的ではありますが、社会に広く行き渡るにはまだまだ高い。
性能的にも価格的にもさらに魅力を増した電動車両がもっともっと登場して、日本のあちこちで活躍する日が来ることを願っています。
(取材・文/寄本 好則)
価格が高すぎる。しかも高いということは盗まれやすいから、最低でもチェーンロックで固定物に固定して駐車しないといけないから、気軽に乗りにくい。あとBENLY e: IIの航続距離43kmは短すぎる。特に原二種は時速60kmまで速度が出せるから原付よりも遠くに行きやすいので致命的。
でも洗車と空気圧以外ほぼメンテナンスフリーだったら割と悪くないかも?
BENLY e:ダメっぽいですね。
私自身は使っていないのですが、聞いた話だとバッテリーの残量が減るとパワー自体が落ちてしまい、まともに走らなくなるとの事。
現場からは使い物にならないと大不評なので追加購入等も中止になるのではとの話でした。
やはり、バッテリーの性能が実用として使うにはまだまだ足りないのでしょうね。
エンジン小さいバイクってオイルとプラグの交換時期短いからそのへんメンテフリーになる電動は理にかなってる。
チェーンもメンテしなくていいし。
あとは価格と航続距離ですね。
断熱性が低い日本の家だと新聞配達のバイク含め電動化は必須ですね。
朝の早い時間のバイクの音、あれは安眠の敵です。
まぁ断熱がきちんとしてないのがそもそも悪いんですが。