モニター登録募集中〜電動車の電気がポイントになる実証実験が12月から世田谷区でスタート!

三菱商事株式会社が実施している『GO ECO! GET BENEFIT! 〜 電動車の電気をポイントに!』という実証実験。12月から東京都世田谷区の『ライフ 桜新町店』で実施されます。電気自動車で「放電」するとローソンの「Pontaポイント」などのベネフィット(特典)をGETできるというサービス。はたして、何を目指しているのか。丸の内の三菱商事へ突撃して伺ってきました。

プロジェクト『放電 GO!』〜電動車の電気がポイントになる実証実験が12月から世田谷区でスタート!

EVの高性能電池で電力グリッドを支えたい!

『GO ECO! GET BENEFIT! 〜 電動車の電気をポイントに!』は、急速充電可能な電気自動車(EV)やPHEV(プラグインハイブリッド車)ユーザーがモニター登録し、指定の店舗で「放電」するとローソンの「Pontaポイント」などのベネフィット(特典)をGETできるという実証実験です。2019年12月から東京都世田谷区の『ライフ 桜新町店』でのサービスが開始されることになり、現在、モニターを募集しています。

【公式サイト】
『GO ECO! GET BENEFIT! 〜 電動車の電気をポイントに!』
※アイキャッチ画像は公式サイトから転載。

このサービス、世田谷に先駆けて千葉県千葉市の『ローソン ハーバーシティ蘇我店』で実施され、EVsmartブログチームの箱守さんが実際に「放電」を体験したレポートをご紹介しました。私(寄本)も編集担当としてこの記事をもちろん読んだ(というか雑誌風に言うと入稿した)のですが、実証実験で何を実証したいのか、今ひとつ釈然としない気持ちがありました。

でも、桜新町は私の自宅からすぐの場所。好奇心だけは旺盛な中古リーフオーナーとして、見て見ぬふりはできません。何はともあれモニターに応募(無事、登録できました!)するとともに、はたして何を目指しているのかを探るため、丸の内の三菱商事でご担当者にお話しを伺ってきました。

突然のアポイントメントでしたが、快く取材に応じてくださったのは、三菱商事株式会社ご担当者の谷さんと阪本さんです。

ご挨拶を終え、早速「この実証実験で何を実証しようとしているんですか?」から、いろいろと尋ねてみました。そのお答えを、できるだけ端的にまとめてみたいと思います。

このプロジェクトの目的は?

持続可能で、人と地球環境に優しいエネルギーネットワーク構築に貢献すること。

まず、当面の目的としては「どうすればEVやPHEVユーザーの方に楽しんで放電いただけるのか? ユーザーの方に楽しんでいただけるようなサービスは何か? を探る」ことです。

さらに、中長期的には「持続可能で、人と地球環境に優しいエネルギーネットワーク構築に貢献すること」を目指しています。

「地球環境に優しい」太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーには、天候などの影響で発電量が大きく変動する弱点があります。そこで、EVやPHEVが搭載している高性能かつ大容量のバッテリーを活用して、電力の安定供給に貢献する仕組みが構築できないかを実証する。

また、EV・PHEVの大容量電池は、災害による停電などの非常時に活躍できることが、先般の台風・大雨災害でも確認されました。コンビニやスーパーなど、食料や水の供給拠点ともなる店舗で、EV・PHEVの電気を活用できる仕組みを構築することが「人に優しいエネルギーネットワーク」構築に繫がることを実証するのが、このプロジェクトの目標です。

電動車ユーザーの中には「V2Hに興味はあるけど自宅に高価な機器を導入できない」とか、災害時「給電に貢献したいけど、どこに行けばいいかわからない」という方も多いはず。コンビニやスーパーなど日常的に利用する店舗に、電気自動車から給電(放電)できるサービス拠点があれば、より効果的に電動車の電池を電力グリッド安定のために活用できるのではないか、ということですね。

ベネフィットって必要ですか?

電動車ユーザーに「ワクワク」を提供したい!

先走ったEV好きのひとりとしては「特典なんてなくても非常時には放電に協力するよ」とも思いますが、より多くの電動車ユーザーに「放電」を体験してもらうためには、電動車ユーザーに「ワクワク」を提供するようなサービスが必要。楽しみながら「放電を体験」してもらうことで、V2HやV2Gへの理解を拡げたい思いがあるということです。

このプロジェクトで利用されているのは、それなりに高価なニチコンのV2H機器。電動車ユーザーのなかでも自宅に導入している方の割合はまだ多くありません。ポイント獲得などのベネフィットを楽しみながら、実際に機器と接続しての放電を体験できるのは有意義です。いざって時に、やり方わからないとカッコ悪いですから。

放電に協力してアンケートに答えると、アプリ上ではいったん「e-ポイント」が貯まっていきます。私自身は桜新町のサービス開始待ち状態なのでまだ実際に操作していませんが、ベネフィット(特典)を獲得するには、アプリ上でこの e-ポイントを自分の好きな特典と交換します。

公式サイトトップページでは最大「3万Pontaポイント獲得」が目立っていますが、専用アプリ『caecco(カエッコ)』を確認すると、「植林活動への寄付」「洗車無料券に交換」「自宅外充電料金に交換」「マチカフェ(ローソン店内のカフェ)券に交換」といった特典の選択肢が用意されています。「洗車無料券」があるのは、最初に実験を行った『ローソン ハーバーシティ蘇我店』が、ガソリンスタンド併設店だったからとのこと。アプリはこの実証実験のために開発したそうですし、いろいろと手作り感満点。先走りEVユーザーとしては、とにかく「前進しながら作ってる感じ」がまた、応援したい気持ちをそそられるポイントです。

ちなみに『caecco(カエッコ)』というアプリの名前は、「car」と「ecology」「environment」「electricity」などの意図を掛け合わせ、また「交換する=替えっこ」を意味しているそうです。「ちょっとお茶でも」で「CHAdeMO」にも通じるダジャレ感覚も、もちろん嫌いじゃありません。

電動車ユーザーの「意見」を聞きたい!

この実証実験の大きな目的のひとつは電動車ユーザーのリアルな「意見」を聞くことでもあります。電動車ユーザーに放電が受け入れられるか。どんなベネフィットが魅力的か。人と地球環境に優しいエネルギーネットワーク構築のために、どうすればより多くの電動車ユーザーの参加を促すことができるのか。やってみて、聞いてみなければわからないことがいろいろあります。

そのため、ポイント管理などの実証実験運営を担当する関連会社の株式会社ロイヤリティマーケティングが、放電を体験したモニターへ個別に連絡を取り、率直な意見を集めてもいるそうです。

考えてみれば、協力した電動車ユーザーがベネフィットを獲得できるのはいいのですが、機器を設置する店舗や、サービスを提供する三菱商事(企業側)も適切なベネフィットが得られる仕組みでなければ、持続可能にはなり得ません。

いったい、何をどうすれば、電動車からの放電を電力グリッドの安定化や非常時の電源活用といった社会的貢献に結びつけていけるのか。実際に自分で使ってみて考えて、さまざまな意見を伝えることが、この実証実験に参加するモニターの役割ともいえます。「これだ!」というソーシャルビジネスのモデルを発案すれば、天下の三菱商事がビジネスパートナーになってくれるかも、というのは、私の勝手な妄想ですが……。

世田谷でのモニター登録、絶賛募集中!

東京都世田谷区の『ライフ 桜新町店』での実証実験は、2019年12月から2020年5月末までを予定。11月30日(土)12月1日(日)と、12月7日(土)12月8日(日)の週末には、現地での説明会を開く計画(詳細未定)もあるそうです。モニターは50名程度と予定しており、今まさに絶賛募集中です。

電動車といっても、CHAdeMO急速充電ができない車種、また輸入車などニチコンの充放電機器と接続できない車種では登録できません。

数ヶ月間で桜新町に何度か訪れての放電体験を「試してみるか!」という電動車ユーザーの方。日本が世界の先頭を突っ走る電気自動車の「給電(放電)機能」を活かす具体的な道筋を、一緒に考えてみませんか。

【モニター応募はこちらから】
『GO ECO! GET BENEFIT! 〜 電動車の電気をポイントに!』

(寄本好則)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. ども。これは一戸建など基礎充電環境のある自宅に住んでないと難しいですね。
    すでに2019年問題FIT切れで悩んでいてソーラー発電電力をV2Hと電気自動車で吸収しきれなくなった家庭ならこのサービスは使えるかもしれませんが、そうでないとメリット薄いようにも思います。
    当家は2023年にFIT切れですが2011年に購入したセレナの代替を何にするかで悩んでます。形状的にはe-NV200(40kWh)、電池容量的にはリーフe+(62kWh)が候補ですがいずれも予算が厳しいですね。さすがにi-MiEV(M)だと10.5kWhしかなくV2H導入メリットは少ないですからEV2台持ちにしなきゃいけないし。
    とはいえ設置し運用することでデータを確保提供できることに意義があると僕は思います。こういう設備は急速充電器の有無に関わらず自然災害で長期停電した地域に広めて電力とモビリティとの融合を訴えるのが早道な気がしませんか!?

  2. EVユーザーですが、充電だって順番待ちで困ってるのにわざわざ放電する意味が理解出来ないです。
    放電する暇があれば充電します。
    人様に電気差し上げて、自車のバッテリー劣化を早めるだけだと思いませんか?
    いくらポイントもらってもやりたく無いです。

    1. Farfetchdさま、コメントありがとうございます。
      「放電なんてしたくない」も、EVユーザーには多いご意見だと思います。ご担当者もこの記事やコメントは注視いただいているでしょうが、私がモニターとしてヒアリングを受ける際にはこのご意見も伝えます。
      記事中にありますように、この試みは再生可能エネルギーがますます増えていく中でEVが果たせる役割を確かめつつ、どうすればより多くのEV(電動車)ユーザーの参加を得られるかの実証実験。NOもまた、ひとつの回答ですね。

  3. 良い試みなんですがアプリや事務局対応含めどうも一方通行で使い難いんですよね。何度か幕張のローソン行きましたが機械壊れてたり、アプリ不良で機能しなかったり…一応ユーザー視点で報告はさせてもらったんですが回答もあったりなかったり…。世田谷の実証実験では改善されていると良いですね。

    1. potatenv200 さま、コメントありがとうございます。

      限定的な電動車アーリーアダプターを対象にした実証実験ですし、私個人としては意気に感じてできる範囲で協力したいと思っています。問題点につまづくのは先走りの醍醐味と割り切ってみようかな、と。(^^)/

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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