日本でも納車が始まっています。
11月5日から Honda e の第二期オーダー受付が始まっています。8月下旬にスタートした第一期は10日ほどで販売予定台数に達して受注停止となりましたが、受付台数「数百台」の第二期はまだオーダーできるようです。
第一期で早々に注文して『ホンダe を注文してみた実録レポート』を寄稿いただいた自動車評論家の片岡英明さんには、12月に入って早々で納車されたようです。うらやましい! これから、街なかで Honda e を見かける機会も増えることでしょう。
気になる Honda e には、今まで2回、ホンダのカーシェアサービス『EveryGo』で借りて実走してみたレポートをお届けしてきました。
【関連記事】
●『Honda e』を『EveryGo』で予約GET~急速充電もやってみた試乗速報(2020年9月6日)
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乗る度に「やっぱり、いいなぁ」と感じるコンパクトで魅力的な電気自動車ですが、どうしても気になるのが急速充電の高出力対応です。2回目のカーシェア試乗記事では、広報部への質問に対する回答で「チャデモ1.2規格で最大200Aのポテンシャルがある」ことを確認しました。でも、実際の試乗時、海老名SAに設置された新電元の90kW器で試した結果の最大電流値は、1回目が119A、2回目は最初の数分間139A(50kW程度)流れたものの、その後は83A(30kW程度)での充電が続きました。
外気温や充電開始時の電池温度などの条件で実際の充電電力は変わるでしょう。なにはともあれ、実用的にどうなんだ? を検証するため、今回はカーシェアではなく広報車を数日間お借りして、何度か充電。充電中の記録を取ってみることにしました。
検証その1/日産自動車グルーバル本社で充電
広報車を借りたのは12月1日。高出力急速充電はSOC20%以下くらいを目安にスタートしたいので、まずはこの日の仕事が一段落した後、三軒茶屋~山手トンネル~首都高1号線~首都高横浜北線~東名高速~首都高3号線というルートを一周、さらに世田谷区から渋谷区、目黒区あたりのあまり混まない道を選んで駆け回り、SOC36%まで電池を減らしておきました。
翌日の12月2日。横浜市の日産自動車グローバル本社(GHQ)の急速充電器に、SOC12%で到着。世田谷区からの第三京浜ではACCを80kmに設定し「普通の走り」を心掛けました。
充電検証中は、タイマーで1分ごとに表示されているメーターを写真撮影して実際の出力などを記録。その結果をチャートにまとめてみました。わかりやすいよう、時間ごとの電流値やSOCを記録した表も添えておきます。
【検証充電/日産GHQ1回目】
充電を開始して、直後の電流値は93A(約32kW)程度でした。SOCが低すぎる時は電池保護のために出力を抑えるのかな? とも思い、SOCが20%を超えたら130Aオーバーを期待したのですが、5分経過したあたりからは80A台になってしまいました。
どうして? これは充電器側の問題かもと考えて、幸い、充電器は2台とも空いていたので、一旦充電を停止して隣りの充電器に移動。もう一度最初から充電してみることにしました。
【検証充電/日産GHQ2回目】
念のため、車両側の設定で充電受入出力をセーブするような設定があるのかどうかも確認してみましたが、当然、そんな機能はありませんでした。
2回目の充電器に繋ぎ直すと、1回目の終了時は22%だったSOCが29%から始まったのも、後で記録写真を検証して浮上した謎です。
ともあれ、2回目の充電では残り29分で112A(約40kW)が流れましたが、SOC40〜75%くらいの間はおおむね30kW強の出力が続きました。
残り19分の記録がブランクになっているのは、もう一台で充電を始めたAZE0オーナーの方と話していて写真を撮れなかったからです。
やっぱり出力が上がらないなぁ、という思いでしたが、何度も充電ストップするとデータがややこしくなるだけなので、そのまま終了するまで充電しました。
終了時、29分48秒で15.0kWh充電できたことが表示されました。
新電元の90kW器。実はこの終了時表示が数秒で消えてしまいます。これまで、何度か充電レポートを行う際に「あ、消えちゃった」ということを経験したので、今回は残り1分になったら充電器前でカメラを構えて待機。無事撮影に成功しました。
検証その2/海老名サービスエリア下り線
結局、日産GHQでの最大出力は112A(約40kW)止まりでした。ほんとに、こんなものなのか。しつこく確認するために、翌日、海老名サービスエリア下り線の新電元90kW器を目指しました。
到着時、90kW器は先客が使用中。次のEVが来たら空いている3基目に入りやすいようスペースを空けて、20分ほど待ちました。
【検証充電3回目/海老名サービスエリア下り線】
検証充電3回目の結果は、ご覧の通りです。最大出力を記録したのは残り23分、SOC34%の時で、電流値は96A(約34.5kW)でした。
終了時表示は、充電時間29分58秒で電力量は14.7kWhです。SOCは26%から72%に回復しました。
到着時、一番前で別のHonda eが充電中でした。私が待っている間に充電終了した様子だったので、もしや早々に納車されたオーナーさん? かと少し話を伺いました。「EVsmartブログなんですけど」とお声がけすると、その方も雑誌メディアの方で、今朝、青山のホンダ本社で広報車を借りてあちこち走り、ここで初めて充電していたところ、とのこと。
「30分で80%近くになったので、やっぱり充電は早いんでしょうね」と……。その場では「そんなこともない」という言葉はグッと飲み込んだのですが、「Honda e は急速充電性能が高い」という認識はメディア関係者にも広がっているようです。
充電器の表示を見ると、その方の充電電力量は14kWhくらいでした。海老名の1、2号機は東光高岳の40kW器なので、14kWh入ったのはまずまずでしょう。結果だけ見ると、40kW器でも90kW器でも30分間の充電電力量にはさほど差がないということでもあります。
高出力急速充電には期待しすぎないのが吉
このレポートの結論としては、「Honda e でロングドライブをする際、最大200A(ざっくり70kW以上)の高出力急速充電を期待して計画を組み立てるのは要注意」ということになります。
3回目の Honda e 試乗。今回は4日間お借りしたので、ガレージでのタイマー充電機能を試してみることもできました。使いやすいと思います。「OK! ホンダ」と呼びかけると、ぽよよんと登場する「Hondaパーソナルアシスタント」ともかなり仲良くなれて、目的地設定などで便利に使うことができました。
35.5kWhという「ほどよい」電池容量を含めて、 Honda e が魅力的な電気自動車であることを改めて実感しました。
ただ、複数回の検証で、急速充電の最大電流値は1回目が120A(鮎沢PA上り線50kW器)、2回目が139A(海老名SA上り線90kW器)、そして今回が112Aと、期待したほどの高出力急速充電ができなかったのは事実です。改めて公式サイトを確認すると『優れた急速充電性能』として説明されているのは「高出力型リチウムイオンバッテリーを搭載。30分程度の急速充電において、満充電量の約80%充電を達成しています」ということだけです。最大出力については発表時の資料を見返しても「50kW以上」としか示されていません。
また、『EV DATABASE』で確認すると、欧州仕様車はCCS対応で「Fastcharge Power(max) 56kW DC」と明記されていることに今さらながら気が付きました。170Aとか流れてくれないのも納得です。ちなみに、急速充電性能については「190km/h」、つまり、30分で95km分=15kWh程度となっているので、日本仕様での検証結果ともほぼ合致しています。
ホンダとしては、Honda e は「街なかベスト」を標榜してキビキビと小回りのいい走りを求めたのであって、急速充電を繰り返しながら長距離を走るようなクルマではないということなのでしょう。とはいえ、充電性能は電気自動車ユーザーにとって重要な情報です。先進機能満載のクルマであるだけに、急速充電時の出力や充電量についても「何がどうなるのか」ユーザーが理解を深めるための公式情報があっていいのにな、と感じます。
欧州モデルが100kW対応と伝え聞き、日本でも日産リーフe+と同様に「チャデモ1.2規格」の高出力対応であることから期待してしまったのですが、「実用的な出力は最大50kW程度、おおむね30〜40kW程度が目安である」と心に留めておくのがよさそうです。納車された喜びを噛みしめながら「温泉でも行くか!」とロングドライブを計画されるハッピーなオーナーさんもいらっしゃるかと思いますから、充電計画は慎重に。高出力と過信せぬようお気を付けくださいまし。
(取材・文/寄本 好則)
AZE0(30kWh)に乗っています。
一年半ほど前90kWの充電器が出始めた頃珍しくて充電の経過の写真を撮っていました。
その写真を見返したところ、残量9%から始めて125A流れています。多分125Aというのがこの車の上限だと思います。15分経過時でも124A流れておりこの時点で11.6kWhの充電量で61%になっていました。20分経過時(残り10分)でも113A流れていましたがここから徐々に電流は落ちていき最後は45A 93%で30分が終了しています。充電量は20.3kWhとなっています。
充電器によって多少の差はありますが、このリーフの場合90kWの充電器でほぼこんな経過で充電できるので旧型でも90kWの恩恵は充分あると思っていました。
今回のHONDAのレポートは90kWのメリットが生きていないように思えます。
数々のコメント、ありがとうございます。
電気自動車ユーザーにとって一充電航続距離はエンジン車の燃費以上に利便や安全に直結する性能です。各メーカーが、信用できない日本版WLTCでもろもろを語るのではなく、実用に即した情報発信をしてくれるようになるといいですね。
実証実験ありがとうございます。大変参考になりました。
ちなみに私もHonda eの高速道路の巡航時における航続距離テストと充電スピードテストを敢行して、
特に充電テストに関しては、動画で撮影いたしましたので、もしよろしければご参考までに。
https://www.youtube.com/watch?v=bWn6koY1Xi8
結論としては、SOCが6-69%と今回の記事とほぼ同様の結果となりました。(ただしホンダ側が主張している数値が達成できているのかに関しては、やはり疑問点が残ります)
ちなみに高速走行後の充電でしたので、強制水冷機構は一定の役割を果たすことができていたのではないかと推測しています。
EV_Native さま、コメント&動画の紹介ありがとうございます。
とてもわかりやすくて、興味深い動画ですね。私も今後は、三脚持参して動画を撮るようにしようかと思います。
(読者のみなさま、このレポートと合わせて必見の動画です!)
バッテリー冷却機能や使用容量範囲をどうやら厳しめに設定していることは、劣化防止に寄与してくれそうですね。
ホンダは充電時間に対する走行距離の回復量は他社EVよりも長いと謳っていたと思うし、メディアも回復量が多い前提で評価している所が多く違和感を感じていました。
初代リーフの販売時、200キロ走れると謳って販売したのに現実は散々で、電気自動車に対するイメージを悪くしたことを思い出すような優良誤認表示だと思います。
ここは毎日充放電を繰り返すオフグリッドソーラー実践者の出番、これはたぶんCレートの問題がありますー電池容量は大概Ahで現わされますが、ざっくり言えば1Ahの電池を1時間で充電できる電流なら1Cですー。
カーボン負極のリチウムイオン二次電池は大概1.5C以下…ホンダeの35.5kWを仮に355Vで割ると100Ahやから100A=1C、今回の検証結果もそのあたりと考えますー。
一方三菱i-MiEV(Mタイプ)は40Ahを125Aで充電するから約3C。カーボン負極やと劣化の恐れがある領域でもチタン酸化物負極の電池はビクともしまへん!スゴイ話やん。
しかも急速充電で起きる発熱は大概電池の内部抵抗の仕業。W=I^2*Rやから電流の二乗に加えて内部抵抗も大きければ発熱上不利。要するに内部抵抗の低い電池が有利ってことですー。ホンダeの電池素材は内部抵抗に問題があるとみた!
普段シティコミューターとして電気自動車使うなら大電流特性と低内部抵抗の電池を使わなアカン!ですねー。東芝SCiB以外に何があるんやろ!?思いまへんか!?
まったく、その通りですね。
私のアイミーブ(M)も、概ね80%まで、125A流れます。
急速充電性能はリーフ40kWhと同等か劣るということですか。連続充電で温度制御がどう効いてくるかなあ。
リーフは73kwまで行きますよー
それは62kWhの話で、しかも一瞬ですぐ落ちますね。
さおちゃさん
容量が減っている時なら、73kw充電で、30分、概ね36kw程度は普通に入りました。
ただ、バッテリーの温度上昇が激しいため、温度が高い状態だと、二回目はこうは行かないでしょう。やはり水冷式であるべきだと思います。