ホンダ軽商用EV『N-VAN e:』発売を10月10日と発表/東京で補助金活用なら約100万円〜!

ホンダが、軽商用EV(電気自動車)の『N-VAN e:』の発売日と諸元を「ようやく」発表しました。発売日は10月10日(木)。注目の価格は、一般販売で約270万円から。各種補助金を使うと200万円前後です。仕様や補助金などについて概要をお伝えします。

ホンダ軽商用EV『N-VAN e:』発売を10月10日と発表/東京で補助金活用なら約100万円〜!

実質の価格は200万円弱から

ホンダが『N-VAN e:(エヌバン イー)』の先行情報を公開したのは2023年9月28日なので、もう9か月近く前のこと。その後も東京モビリティーショーでプロトタイプの展示があり、EVsmartブログでも情報が出るたびに、予想というか妄想記事を出してきました。

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そんな妄想がようやく現実になりました。ホンダは24年6月13日、N-VAN e:の価格と、仕様の詳細を発表しました。なお発売は、10月10日とアナウンスされました。当初予定では24年春の発売だったので、半年遅れになります。

というわけで、まずは価格からいきます。

●「N-VAN e:」価格(消費税込み)
e: L4 定員4人 269万9400円(普通充電のみ)
e: L4 定員4人 280万9400円(急速充電対応)
e: FUN 定員4人 291万9400円(急速充電対応)

●法人営業部およびHonda ON限定
e: G 定員1人 243万9800円(普通充電のみ)
e: G 定員1人 254万9800円(急速充電対応)
e: L2 定員2人 254万9800円(普通充電のみ)
e: L2 定員2人 265万9800円(急速充電対応)

というわけで、初期価格はさすがに200万円を切るというわけにはいきませんでした。ただ、補助金を使うと、事業用(黒ナンバー)は国から約100万円、東京都ならそれに加えて45万円が出ると考えられるので、約244万円の「e: G」なら約99万円になってしまいます。

これはちょっと衝撃です。黒ナンバーで使える軽バンが100万円を切るのは、事業者にとって大きな魅力ではないでしょうか。黒猫さんや飛脚さん周辺での注目度が知りたいところです。そういえばヤマト運輸はホンダと実証実験もしているし、大量購入とかないのでしょうか。

バッテリーは29.6kWh

事前の予想記事でも書いてきましたが、バッテリー容量はほぼ予想通りの、29.6kWhでした。WLTCでの航続距離は245kmです。十分な性能だと思います。

ここでバッテリー容量と価格のバランスを考えてみます。日産「サクラ」や三菱自動車「eKクロスEV」は20kWhです。価格は、サクラが259万9300円からで、eKクロスEVは256万8500円からです。

バッテリー容量が1.5倍になっているN-VAN e:の価格と、あまり変わりません。N-VAN e:のバッテリーはおそらくAESCジャパン製なので、信頼性も高いのではないかと想像します。これで実質100万円台になるのは、開発陣の頑張りに拍手です。

販売方法は通常販売と法人・サブスク向け

N-VAN e:の販売方法は、一般的な販売店での販売と、事業用、サブスク向けがあります。販売方法によって、少しグレードが分かれています。

e: L4とe: FUNは一般販売に設定されているグレードで、基本的な機能に差はありません。誤発進抑制機能、車線維持支援システム、アダプティブクルーズコントロール(ACC)などを装備しています。

違うのは、ライトがLEDかどうかや、UVカットガラスの有無、スマートキーシステム対応の有無などです。

特徴的なのは、急速充電対応が選択になっていること。軽自動車の使い方だと、確かに自宅で充電が可能であれば、急速充電器は使わないですむユーザーはいそうです。それに普通充電が全グレード6kW対応なのは嬉しいことです。

地方在住のお年寄りが、重たい急速充電器のケーブルを操作できるとは思えません。その価格差で、自宅に充電器を設置するのは、アリかもしれません。

一方で、急速充電対応の差額は10万円程度。急速充電対応ということは外部給電機能がついてくるため、補助金の加算があるので、結果的に差し引きゼロに近くなります。そう考えると車両価値のこともあるので、サブスクではなく購入するのなら急速充電対応を選択するのが、今の時点ではいいのかもしれません。

e: Gとe: L2は、法人営業部を通しての販売か、サブスクのHonda ONでの取り扱いになります。

乗車定員は1人か2人で、より配送に特化した構造になっています。また搭載している装備も、運転支援機能は排し、基本的な路外逸脱抑制機能や衝突軽減ブレーキなどに絞っています。

急速充電対応は、それぞれのトリムで有無を選択できます。

代表的な「e: L4」グレードを例に、おもな仕様を表にしておきます。

ホンダN-VAN e: e: L4
全長×全幅×全高3395×1475×1960mm
最低地上高165mm
車両重量1130kg
最小回転半径4.6m
定員4人
駆動FWD
最高出力47kW
最大トルク162Nm
一充電航続距離(WLTC)245km(国交省審査値)
駆動バッテリー
種類リチウムイオンバッテリー
総電力量29.6kWh
V2X対応(急速充電対応グレードのみ)
車両価格(税込み)280万9400円

「N-VAN e:」が対象になりそうな補助金

N-VAN e:はまだ発売になっていないので、国も自治体も、補助対象にするのかどうか決定したわけではありません。まあ、ホンダなので対象になるのは間違いないと思いますが、確定ではないので、ここからは予想です。

まず国の補助金は、自家用、事業用それぞれの補助金があります。自家用は、おなじみの次世代自動車振興センターのCEV補助金(経産省所管)です。

事業用は、環境優良車普及機構(LEVO)の、いわゆるLEVO補助金です。LEVO補助金は環境省の「商用車の電動化促進事業」で予算が組まれています。

まずCEV補助金は、N-VAN e:は満額の55万円になると思います。外部給電機能も装備しているので、サクラなどと同じ補助金の設定になるのではないでしょうか。

もうひとつのLEVO補助金は、実は金額の算定方法がよくわかりませんが、実際に補助対象になっている軽商用EVの補助金額を見ると、おおよそ100万円前後になっています。

例えばASFは116万円、HW ELECTROのELEMO-Kは104万円、三菱自動車のMINICAB MiEVの2シーターは95万9000円などです。

このため、ホンダの公式サイト(Honda ON内)でもLEVO補助金については「約100万円」と表記しています。

これら国の補助金に加えて、自治体が補助金を設定している場合があります。例えば東京都にはZEV車両購入補助金があり、給電機能搭載なら45万円が補助されます。

また、今年度の販売台数が多くなれば、来年からは、販売台数が多かったメーカーを対象にした「自動車メーカー別の上乗せ補助額」が適用されるかもしれません。

対象は、都内でZEV乗用車の新車を40台以上、HEVなどの非ガソリン車を300台以上販売するなどの条件をクリアしたメーカーです。残念ながらホンダは現在、対象ではありません。「ホンダe」、ほとんど売ってないことがわかります。というか、もう絶版ですが。

もし来年以降、上乗せ補助金が適用されると、最大10万円が加算されます。ちょっと珍妙な制度に思えますが、東京都にはそんな仕組みもあります。

そうした国と自治体の補助金を合わせると、東京在住で事業用の車なら、現状でも145万円が補助されることになります。来年以降は155万円になるかもしれません。

いずれにしても、最も低価格の1人乗り「e: G」なら、前述したように99万円という衝撃価格になるわけです。そこまでいかなくても、一般販売の「e: L4」の急速充電対応は、車両価格280万9400円なので、東京都在住なら100万円が補助されて、約181万円になります。お買い得感は高いのではないでしょうか。

●補助金(予想)

・国の補助金
CEV補助金 55万円
LEVO補助金 約100万円(金額未確定)
※CEV補助金とLEVO補助金は同時に受給できない

・東京都
ZEV車両購入補助金 45万円
自動車メーカー別の上乗せ補助 10万円(適用は早くて来年度以降)

長く待った甲斐があった?

ホンダが軽商用EVを発売すると発表し、先行情報を出し始めてから9か月。ずいぶん時間が経ったので、寄本編集長などは、すでに価格や諸元が発表されているものだと勘違いしていたほどでした。

この間、バッテリー原材料の値上がりと値下がり、電子部品の値上がりなど、EVの周辺環境がいろいろと変わっています。加えて欧米では、先行需要が一段落したのか、販売台数が一時期ほど伸びなくなっている関係で、大手自動車メーカーは生産計画の見直しを始めました。

影響はサプライヤーにも出ていて、アジア系バッテリーメーカーが欧州での工場建設を中止したりしています。

原材料価格が値上がりし、日産サクラも値上げがあったことなどを考えると、N-VAN e:の価格設定や発売時期などについては、社内でいろいろ議論があったのかなあと思えてきます。

それでも、やっぱりこのバッテリー容量でこの価格は、他社にとっても、社会にとっても、ちょっとしたインパクトを与えるのではないかと思えます。長く待った甲斐があったと言える車ではないでしょうか。

さらにホンダは2025年に「N-ONE」ベースのEVを発売することを発表しています。N-VAN e:の状況を考えると少し、先に伸びる可能性はありますが、期待値は大です。もしバッテリー容量30kWhで実質200万円の軽EVが出たら、欧米でも話題になりそうです。

N-VAN e:の詳細が見えたことで、次に予定されている「N-ONE」のEV版が、さらに楽しみになってきたのでした。

文/木野 龍逸

この記事のコメント(新着順)4件

  1. EVトップバッターのi-MiEVがリリースされてからもう15年も経っているのですから、実質〇〇万円という欺瞞的な表現はそろそろやめるべきだと思います。政府の助成ポリシーや適用条件によってコロコロ変わってしまうのですから、あくまで希望小売価格をメインに表記すべきです。

  2. 「国の補助金」55万円は、6月13日にCEV補助金の補助金対象車両として掲載されています。
    次世代自動車振興センター 
    CEV補助金 
    補助金対象車両一覧 
    3ページ目の「普通貨物・小型貨物・軽貨物」のところ
    https://www.cev-pc.or.jp/…/R5ho_meigaragotojougen_2.pdf

  3. 「N-VAN e:」の導入をかなり真剣に検討し、何か月か前に実際にディーラーまで行って商談もしていました。

    部品の供給上の問題やら何やらで発売予定が遅延したのはホンダにとっても誤算だったのかと思いますし、先の発表を反故にしないよう頑張ったのだろうなとは思います。

    ただ、LEVO補助金は黒ナンバーでしか適用されないということで、それを適用しての200万円切りというのは、相当に苦しい解釈だな~と(苦笑)。EVを買うだけのために、荷物を運ぶ事業主になったり、会社設立したりまではさすがにしたくないです。

    黒ナンバーのもう一つの問題点は、一般的な黄ナンバーと比較して任意保険の選択肢が限定的なことです。せっかく補助金で車両本体価格が安くなっても、任意保険の費用が倍になるのでは「焼け石に水」。

    N-VANには乗りたいなと思ってましたし、バッテリーが競合より大きいEVなら猶更だったのですが、予算の面で厳しくなってしまったので、大変残念ながら現時点ではもう少し様子見かな…という感じです。

  4. どうしてサクラやekクロスEVと比べるのですか?
    比べるならミニキャブEVとクリッパーEVではありませんが?

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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