待望の軽トラEVで輸入車初のナンバー取得を実現
EVの魅力を知るユーザーに根強い人気があった三菱ミニキャブMiEVトラックが生産を終了。事実上世の中から姿を消していた「電気自動車の軽トラ」に新たな選択肢が登場しました。2021年11月20日、東京・江東区青海で開催された第27回日本EVフェスティバルで、軽自動車規格でナンバーを取得した『ELEMO-K(エレモK)』をワールドプレミア。同日から受注開始することを発表したのです。
HW ELECTRO(HWエレクトロ)は、アメリカのCENNTRO社が欧米などで販売するベースモデルを日本仕様に改良するスタイルで、独自の小型商用EV普及を目指し、2019年に設立されたEVベンチャー企業です。
先行して導入された『ELEMO(エレモ)』は、今年4月に輸入車の小型EVトラックとして日本で初めてナンバー取得に成功。7月には東京都内で『事業戦略発表会&試乗会』を開催して受注を開始。つい先日、10月末にはオートバックスセブンと資本提携して、納車や整備拠点として、またエレモ(小型EV全般も想定するような)のための車載機器開発などを想定した業務提携の検討を始めることを発表しています。
7月の発表会でも「軽自動車版の開発」を表明。先月、HWエレクトロの蕭 偉城(ショウ・ウェイチェン)社長にインタビューした際には「近いうちになんらかの発表はできると思うので楽しみにしていてください」と聞いてはいましたが、それからひと月足らずで、ナンバーを取得した軽自動車モデルであるエレモKが公開されました。「Electric–Mobility–Innovation」を目標に掲げるHWエレクトロとエレモの展開が、ぐんぐん加速している印象です。
小型車登録となる『エレモ』は全長3925mmで軽自動車規格(3400mm)をはみ出していました。今回発表されたエレモKは後輪車軸後部のオーバーハングを切ることで全長を3390mmに短縮。軽自動車規格に収めています。
ナンバー取得については、年間5000台以下の輸入車に適用される仕組みを利用。蕭社長によると「軽自動車と登録車は協会が違うので申請は一からやり直す手間はありました。でも、エレモでナンバー取得できている実績があり、全長を短縮する構造変更だけなので、スムーズに軽自動車としてのナンバーを取得することができました」とのこと。輸入車の軽商用電気自動車として日本初、いや、世界で唯一のナンバー取得に成功したということになります。
一充電航続距離は約120kmで普通充電のみに対応
エレモKのスペックは以下の通り。
全長×全幅×全高(mm)=3390×1440×1910
乗車定員=2名
最大積載量=350kg
バッテリー容量=13kWh
一充電航続距離=約120km
充電方法=普通充電のみ(最大3kW)
今回発表されたエレモKは、ひとまず「ピックアップ」の屋根なし荷台タイプのみ。価格は小型車の「エレモ120」のピックアップタイプが264万円に対して、249万7000円です。
エレモKの受注については、フラットベッドタイプ(235万4000円)とボックスタイプ(290万4000円)もラインアップされることになっています。
軽トラで約250万円というのはまあまあ高級価格であるものの「コストを切り詰める企業努力を積み重ね、250万円を切ることを目指しました。利益構造が厳しいといわれる小型EVで、ベンチャーだからこそ実現できたチャレンジングな価格」(蕭社長)ということです。
全幅が1440mmと軽自動車枠の最大に近い数値になっているのは、実は、車体から少しはみ出した荷台の幅。ボディそのものは1300mm台の、ふた昔前くらいの軽自動車サイズになっています。しかも「この荷台はアルミ製なんですよ」と蕭社長。「軽量で赤錆びしない荷台」が、ベンチャー軽トラならではの満足ポイントになるのかも知れません。
全長を切り詰めた独特のフォルムには、小型車エレモとはまたひと味違う、ユニークな愛らしさを感じました。アルミの荷台も魅力的ですが、個性的な架装を施されたエレモKが街を走り回る姿を見るのが楽しみです。
ユーザーとともに「EVの使い方」を提案していきたい
エレモKで切り詰めた後部のオーバーハング部分は、小型車長距離バージョンの「エレモ200」(容量約26kWh)では増量するバッテリー搭載スペースになっています。そのため、エレモKは容量13kWhのみ。急速充電にも対応しません。
蕭社長としても、航続距離の長さや急速充電対応へのニーズがあることは百も承知。でも、「この性能で十二分に活用できる『使い方』を、おそらくは企業やショップなどが多いであろうユーザーとともに『提案』していくのが、エレモ、そしてエレモKの役割でもある」と考えています。
EVシフトが象徴する環境型社会への転換には、ライフスタイルやビジネススタイルの転換が不可欠です。一充電航続距離120kmほどであっても、だからこそ魅力的な使い方を提案して実践することは、企業やショップなどのイメージアップにも繋がるでしょう。軽トラとしての「コスト」は決して安くはない軽トラEVであるだけに、約250万円という価格を投じてでも「こんな使い方ができるよ!」と心意気を示してくれるユーザー企業が登場することに期待しています。
一方で、走る蓄電池としての災害時対応などを期待されるEVとして、エレモやエレモKはAC100Vのコンセントを装備(エレモKとエレモ120ではオプション)できるので、別売の高価なV2L機器がなくても、電気を取り出すことができます。ACアウトプットへのこだわりは、EVならではの価値は最大限活用して、「Electric–Mobility–Innovation」の普及拡大を目指す蕭社長、HWエレクトロの姿勢を示すひとつのポイントといえるでしょう。
7月の試乗会では自動車評論家の御堀直嗣さんがブレーキについて指摘する記事を紹介しましたが、HWエレクトロでは即座に改良に対応。今回、試乗会に登場したエレモ200ではギア比やペダル位置の変更によってブレーキのフィーリングが大きく改善されていました。テスラ車のアップデートにも通じる「改善」の小気味いいスピード感もまた、ベンチャーならではの強みだと感じます。
エレモ、そして今回発表されたエレモKの納車開始は2022年3月ごろを予定しているとのこと。
経産省が予算倍増を示している2022年度(令和4年度)のCEV補助金などの補助対象車両に認定されれば価格のハードルが下がる可能性もあります。現在は、補助対象車種の認定を受けるために必要な追加テストの予約日を待っている状況ということでした。
ともあれ、蕭社長によると本格的にデリバリーを開始する2022年には「エレモシリーズで2000台の販売」を目標としていて「手応えを感じている」そうです。また、「普通充電インフラの拡大や、IoT活用に関してなど、さらに新たな連携の検討を進めているところ」であり、「また近いうちにいろいろと発表する計画」であるとのこと。補助金は度外視してでも導入したくなるような、さらに魅力的なエレモワールドを展開してくれるのでは? と、期待して注目したいと思います。
(取材・文/寄本 好則)
最近ミニキャブミーブトラックを手に入れて、つくづく細かいところの機能美に感動しているところです。軽トラは日本のメーカーが競って発展させた自動車で、今はスズキ、ダイハツだけになってしまったのが残念。
この記事の車、例えば、長物を斜めに積もうとしたら、キャブの屋根がベコベコになるとか、左右にズレ止めが無いとか、必要な機能がない割に、荷台の下を無駄に覆っている。
販売する時には日本の軽トラと同じような形になるのだろう。三菱がバッテリー増量して再販してくれれば継続的に売れると思う。
後ろに冷凍庫を乗っけて肉や魚を配送するのにいいかもしれません。
それなら急速充電する場所が限られている現状でも使い道はあるように思います。
横幅が何気に軽自動車より狭いのがいいですね。
欧州では横転しやすいからという理由で受け入れられない軽自動車がELEMOが販売できているというのが不思議ではありますが???
でも。
心意気は良いのですが。
別の記事では年間販売目標2000台とも書かれていました。
今では軽トラの珍しくもない新車販売価格150万円だった電トラの生産総数は1000台を辛うじて超えた程度でしたね。
でも急速充電には対応しています。
残念だったのは値段を下げるために10.5kw版しか出していないことでした。
さて、今後のバリエーション展開ではバンとか4人乗りのワゴンなどが考えられますが内装にコストのかからないトラックでも250万円ですので、急速対応も含めるとちょっと怖いですね。
販路についてオートバックスと提携しているとのことでそこは安心できるかと思いますが、急速充電器の整備は望めないかな。
こういうベンチャーは頼もしいが、
まだ大手のノウハウと資金力に負けてしまうことが多いのが日本の現実
テスラは説明不要なレベルですが、BYDやNIOなど、既に日本の大手メーカーの大半(世界レベルでも)より時価総額の高い中国EVメーカー(バッテリーメーカーか?)を見ると、こういう場所に資金調達できる仕組みがないのがやはり日本の敗因ではないかと
例えばテスラもそうしたように、既存字度車メーカーが撤退する工場をEV専用工場として再利用するとかね
既存の仕事を守るよりも新しい仕事を作り出したほうが結果的に経済は成長するのではないか?