ジャガー I-PACE(アイペイス)で長距離実走レポート:東京〜兵庫【往路編】

いよいよ日本国内でも納車が始まっている(はずの)ジャガー I-PACE(アイペイス)。今年GWには電池容量30kWhの日産リーフで実走レポートをお届けした「東京〜兵庫」の同じコースを、今回は電池容量90kWh(3倍!)のアイペイスで実走します。まずは、往路編。スマホで写真撮りながら、速報形式でレポートしてみたいと思います。【2019年8月10日】

ジャガー I-PACE で長距離実走レポート:東京〜兵庫【往路編】

満充電の走行可能距離表示は402km

今日は、南陽さんのアイペイス試乗記を公開したばかりですが、立て続けにアイペイス攻撃です。

実は私、電池容量12.3kWhのEVスーパーセブンで日本一周したり、i-MiEV や初代日産リーフ、初期の BMW i3 などでさんざん東京-兵庫を走ったことはあるのですが、リーフZE1以降、つまり40kWh以上の電池に抱かれて片道300km以上の実走をしたことがありません。GWに30kWhのAZE0で走った時には、名神や東名で急速充電器が設置されたSAを飛ばし飛ばしに走れることだけでさえ「便利だぁ、これで十分じゃないかぁ」と感嘆したほどです。

【参考記事】
日産リーフ30KWHで長距離実走レポート:東京〜兵庫【往路編】
日産リーフ30KWHで長距離実走レポート:兵庫〜東京【復路編】

品川区にあるジャガー・ランドローバー・ジャパンで広報車を借用し、渋滞気味の中原街道〜環七経由で世田谷区内の自宅までに数%のバッテリーを消費したので、自宅でさっそく普通充電しておきました。

黄色いケーブル、いい感じです。

満充電に復活。航続距離は402kmと表示されています。

この後、もう一仕事片付けて少し仮眠を取り、兵庫に向けての出発は午後8時とか9時ごろを予定しています。渋滞情報はまだ確認していませんが、こうした長距離ドライブは夜走るほうが好きなので。

自分の30kWhリーフであれば、念のために充電計画を再確認しておくところですが、今回は90kWhのアイペイス。正直言って油断しまくっています。

兵庫の目的地(実家)までは約630km。大好きなJFEの充電器が2基設置されている新東名の岡崎SA(約300km)で充電。あとは……、様子を見ながらどこかでもう1回休憩がてら充電すれば到着できるだろう、程度の思惑です。2回の休憩で到着できる(体力的にもう1回くらいはどこかで休む気もしますが)のであれば、エンジン車時代と変わりません。

さて、どうなることか。

今回の実走レポートは、EVsmartブログチームリーダーの安川さんがモデルXで時々やっているように、実際に走りながらスマホで写真を撮って速報をアップするスタイルでやってみたいと思います。では、出発まで、おやすみなさい。

アイペイスで長距離ドライブ〜充電速報!

結局、なんだかんだで仮眠時間はまったく取れませんでしたが、何はともあれ出発です。

※随時更新していきます。

【20:25】

カーナビ設定完了。
伊勢湾岸道じゃなく、日本海側、舞鶴経由になってますが、無視して新名神に回るから適宜修正されるでしょう。
出発します!

【22:04】

駿河湾沼津サービスエリアで緊急トイレ休憩。アイスコーヒー飲みながら出発したのがまずかった。というか、もともとトイレが近いのに、岡崎まで休みなしは無理でした。

電池残量は、まだ内緒にしておきます。

ちなみに急速充電器は1台待ちでした。余裕でパスだけど。

【24:35】

岡崎SA到着。

到着した時には2基ともに新旧リーフが充電中だったけど、あとどのくらいですか? を声を掛けようとしたあたりで相次いで終了。ここには予備を含めて4台分のEVスペースがあるのですが、フロント左側に充電口があるこのクルマを停めたい区画にエンジン車のワンボックスが停まっていた(車内にドライバーさんいたからまだマシ)ので移動してもらいました。

到着時の電池残量は31%。残り航続距離表示は123kmでした。

前車追従式オートクルーズを98km/hに設定して、それなりに追い越し車線を活用しながらの走行で、ここまでだいたい300km。残り121kmを足すとWLTC値に近い423kmになりますから、アイペイスでの高速道路巡航はなかなか素敵な印象です。

30分の充電で51%、204㎞まで復活。

うっかり、記事書いてるうちに充電終了してて、充電電力量表示を確認しそこないました。

先を目指します!

【2:10】

できて間もない鈴鹿PA。
岡崎で入ったのが20%100km弱分だったので、あと1回の充電だけで到着するのはギリギリ。どうせなら50kWで気持ちよく入れたいから、ここと新名神の宝塚北SAで休憩&充電することにしました。

真夜中のPAなのに明るくて賑やか。コンビニや食堂も営業してました。

到着時、35%144km。

30分しっかり充電できて、63%256kmに。

さっきの岡崎では107Aだった充電し始めの電流が、この充電器は111A流れてました。後で追記しますけど、蓄電式の岡崎SA50kW、今日のような混む日は出力が落ちるようです。

【4:15】

29%118kmで宝塚北SA、だけど先客リーフさんがあと20分以上。先へ進みます。

【4:50】

朝焼けの舞鶴道西紀SA。
ゴールの実家まで70kmくらいで、残り17%65km。

ここの充電器は出力控えめだけど、さすがに眠いので30分休んでいきます。

隣の待機区画には、BMW Z3。。。

それにしても、この時間にこんなに人がいる西紀SAは初めて。もしかして、今日はお盆移動のピークなんですね。

30分で36%139km。

【6:15】

無事到着。
電池残量20%、74km。

すっかり朝。まずは眠って、書き足りなかったことなど追記します。

大出力の急速充電は公共インフラというより高級車のサービスか

東京〜兵庫の約610kmを、休息4回、急速充電3回で走りきることができました。所要時間はおおむね9時間半。デフォルトメーター表示の電池残量表示は4分割の電池マーク目盛りと航続距離だけ。残り4分の1、つまり25%を切ると、30kWhリーフであればそろそろ真面目に心配し始めなければいけないですが、90kWhの25%は22.5kWh。24kWhリーフのほぼ満充電状態。ほとんど、いや、まったく不安感はありません。

今回、いくつか感じたことを書いておきます。

高出力の急速充電は大容量電池搭載車のために設置されるべき

I-PACE で長距離を走り、高出力急速充電があると本当に便利だということは痛感しました。岡崎SAの50kW器がちゃんと50kW出ててくれたら、次も50kWで繋いで、たぶん充電2回で少し余裕を残して完走できたと思います。

100kWまで対応可能といわれているI-PACEが、実際は84kWまでだったというアメリカのニュースがありました。たとえば30分で40kWh入れば航続距離にして200㎞近く走れるでしょうから、何も問題はないと思います。

でも、今後増えていくのではないか、いや、増えて欲しいなと思う30〜40kWhの大衆的なEVであれば、50kWで文句はないし、高出力への対応というよりも、電費性能や電池耐久性の向上により大きな進展を望みたいと感じます。

つまり、テスラが独自の高出力充電網を整備している戦略は至極もっとも、とても正しい方向なんだと実感することができました。高出力対応は、大容量電池を搭載する高級車の「性能」のひとつであり、サービスなんだと思います。

チャデモ新規格で150kWを分割して運用、というのであれば、同じ充電器本体を一緒に使う複数のEVに不公平感が生じることは絶対にあってはならないでしょう。

現状、I-PACE は日産ディーラーの急速充電器と相性が悪いということを広報の方から聞きました。国内、とくに地方に行くほど日産ディーラー充電網が頼みの綱状態なので、これはこれで早急に解決していただきたいところです。なにより、拠点都市については、ジャガー・ランドローバー独自の100kW(84kW?)対応の充電網を用意するのが、ユーザーの満足度に繋がるだろうな、と思います。

なにはともあれ、高速道路の急速充電器が全然足りなくなっている

今回、充電しなかった駿河湾沼津を含めて、充電スポットでは必ず他の方のEVと遭遇しました。先客はなかった鈴鹿PAでも、私が充電を始めているところに新型リーフがやってきて「ああ、もう」って感じで先に進んでいきました。いつもは明け方孤独に充電する西紀SAでも、ちょうど私が充電し終えるときにアウトランダーPHEVがやってきて、充電ノズルをそのまま手渡し。お盆移動のピークだったとはいえ、これからますます、普通の土日でも高速道路の充電スポット競争率は激しさを増していくでしょう。

待機スペース確保してあるスポットでは、その待機スペースにこれまた必ずエンジン車が停まっていました。中途半端な隅っこ(目立ちにくい場所)に充電スペースをちょこっと作るから、EVを知らない人の「まあ、いいだろ」感が増幅されるのだと思います。

日産&三菱が軽自動車EVを発売すれば、EVの販売台数は一気に増えて、電池容量もそれほどは大きくないでしょうからロングドライブ時の急速充電頻度も高くなるはずです。トヨタがさらにPHEVを出してくればなおのこと。先だって何かの記事にも書きましたが、高速道路のSAPAには10基以上の充電器がずらりと並ぶスペース(知らない人に対するEVの存在感もさらに増す!)を、一刻も早く整備していって欲しいものです。

大好きだったJFEの50kW器も、大容量電池だと微妙。。。

岡崎SAを最初の充電スポットに決めたのは、JFEの急速充電器が好きだからと書きました。岡崎SAなどに設置されているJFEの50kW器は蓄電池を備えていて、系統電力への負担、つまり設置者のデマンド料金は44kW器と同等(出力などは受電契約次第です)ながら、蓄電池でブーストして50kWを叩き出す仕組みになっています。工夫を凝らし、ユーザーにうれしい50kW器を少しでも増やそうというコンセプトに、不自由なEVしか知らなかった私はとても共感できたのです。

他メーカーとひと味違う、ユーザーを舐めてるのか! と笑っちゃうほどシンプルさを志向した表示パネルや、グレーを基調にしたクールというか無骨なデザインにも、好感をもっていました。30kWhリーフに電気がぐいぐい入っていく様子には、思わずほおずりしそうな愛おしさを感じていたのですが。。。

今回、混雑して利用頻度が高かったせいでしょう。岡崎SAの50kW器は、ただの30kW器になってました。いえ、いつもの小さな電池のEVで充電してれば何も感じなかったかも知れません。でも、90kWhの大容量電池で充電していると、この数kW(数A)の違いを、とても非力に感じてしまいます。

逆に、ちょっとスリムなのに、しっかり50kWを叩き出す高岳(タカオカ)の新しいヤツが、ちょっと好きになりました。

地元の道の駅で、I-PACE 納車関西第一号(未確認)のオーナーさんと遭遇

実家でひと眠りしてオヤジの墓参りとお昼ご飯を済ませ、復路のために少しでも充電しておこうと最寄りの道の駅『ようか但馬蔵』で充電していると、なんと、目の前に黒いI-PACE が! 私は車内で電子書籍を読んでたんですが、思わずドアを開けて飛び出しました。

大阪市内からいらした早川さんご夫妻(中央の女性は別のクルマで同行されていたご友人?)。少しお話しを伺うと、納車されたのは7月半ば、ディーラーさんからは「関西第1号納車」と告げられているそうです。

電気自動車で取材していると、こういう「神さまのお導き」みたいなことがしばしばあるので止められません。

おそらく、日本初(未確認、というか誰も確認できないですね)の、I-PACE 同士で充電待ちの様子も撮影しちゃいました。

ご主人は今、アストンマーチンの12気筒と I-PACE の2台持ちらしいです。同じ裕福な方でも、テスラオーナーさんとはちゃんと個性というか趣味嗜好が違うな、って感じ。

とくに電気自動車に興味があったわけではなく「ジャガーのニューモデルとして魅力的だった」のが購入を決めたポイント。

「ポルシェのタイカンも気になるけど、まだ先になりそうだから。これ来てからは、アストンマーチンじゃなくて I-PACE ばかり乗ってるよ」(ご主人)

「もちろん気に入ってますよ。だって、とてもいいクルマだから」(奥さま)

もう、どんなに専門的な説明よりも、I-PACE の魅力を端的に現す言葉だと思います。うっかり踏み込んだ電気自動車ライフ、これからいっぱいお楽しみください!

【シリーズ記事】
『ジャガー I-PACE で長距離実走レポート:東京〜兵庫【復路編】』

(寄本好則)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. I-Paceの実走レポート、とても楽しく、興味深く拝見しています。

    大容量電池のおかげで、最初の充電までの足の長さはさすがですが、それ以降の急速充電での航続距離の伸びが、30分充電しても100km前後というのはいただけないですね。電池の重さ故の電費の悪さが目立ってしまいます。

    重量級の大容量電池のBEVは、大容量充電器と足並みが揃わないと重い足かせを付けられたままみたいな感じになってしまい残念です。そこが分かっているテスラはさすがと思いますし、IONITYのような動きがない日本の自動車業界には失望を感じてしまいます。

    ところで、欧州仕様のI-PACEが100kW充電対応(実際は84kWとしても)なのは発表されているのですが、日本仕様のCHAdeMOのI-PACEは本当に100kW充電に対応しているのでしょうか?ディーラーは50kW機の事しか話しませんし、CHAdeMOインターフェースが古い仕様の代物だと50kWまでしか対応しない可能性もあるのではないでしょうか。

    機会がありましたら、是非90kW機での全力充電も試してみて戴ければと思います。
    それでは、帰京の道のりもお気をつけて。

    1. MZYさん、コメントありがとうございます。

      復路編でも書きましたが、そういえば、ジャガー関係者の方から「CHAdeMO対応は50kW」と聞いたことがありました。

      実際、90kW器に対応しているのか、改めて確認してみます。

  2. お疲れ様でした。
    岡崎SAで、お声をかけさせて頂きましたリーフ乗りです。写真に写っているリーフです(^^)
    EVsmartブロガーさんだったんですね。
    びっくり!
    その後、無事充電繋いで航行されたようで良かったです。私はその後、吹田まで走り、仮眠を取っていました。また、復路も楽しみにしています。

    1. KAKUさん、お疲れ様です!

      私もあとひと頑張りです。この先もお気をつけて!

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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