レクサスが世界初公開した『NX』にブランド初のPHEVを導入

2021年6月12日、トヨタはレクサスの新型『NX』を世界初公開。ブランド初のプラグインハイブリッド車(PHEV)となる『LEXUS NX 2.5L PHEV E-Four』のコンセプトモデルを発表しました。日本での発売は2021年秋頃になる予定です。

レクサスが世界初公開した『NX』にブランド初のPHEVを導入

2.5LエンジンとTHS IIの組み合わせは『RAV4 PHV』と同様

レクサス(LEXUS)ブランドは2019年10月の東京モーターショーで、「Lexus Electrified」として今後の電動化の方向性を示しました。コンセプトは「電動化技術を用いた車両基本性能の大幅な進化」です。

この方針に沿って、今回、レクサス初のPHEVが新型『NX』のラインナップに含まれることが発表されました。『NX』はレクサスブランドの売れ筋SUVで、ここに従来からあるハイブリッド車だけでなくPHEVを投入するのは、それなりの台数になることを意味すると思います。

公表された新型『NX』はコンセプトモデルなので、実際に発売される時には詳細は変更になるかもしれませんが、公表されているスペックなどを紹介します。

新型『NX』のPHEVは、2.5Lエンジンとトヨタのハイブリッドシステム『THSⅡPlug-in』を組み合わせ、前後輪にモーターを配置した全輪駆動(E-Four)になります。パワートレインの型式は、すでに発売されている『RAV4 PHV』と同じ『A25A-FXS』で、2.5L直列4気筒エンジンのプラグインハイブリッドシステムです。

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公開されている写真を見る限り、バッテリー配置やバッテリーの形状も同じように見えるので基本構造は変わらないと思われます。ついでに言えばホイールベースも変わらないので『RAV4』のレクサス版という位置付けになりそうです。

もともとレクサスブランドはエンジンそのものよりも足回りを含めた車体の違いが大きいので、『NX』のPHEVと『RAV4 PHV』の基本構造は同じでも、乗り心地は違ってくるのではないかと思われるのですが、さてどうなるでしょうか。

『RAV4 PHV』とのサイズ比較表

 新型レクサス『NX』RAV4 PHV
全長4660mm4600mm
全幅1865mm1855mm
全高1640mm1695mm/1690mm
ホイールベース2690mm2690mm

そういえば、プラグインハイブリッド車の呼称を「PHEV」とすることを表明したトヨタですが、いったん発売したRAV4 PHVはそのまま「PHV」です。しばらくは少しややこしい状況が続きそうです。

日米英で電費データが違って困惑

ところで、新型『NX』のPHEVについて詳しい情報はないかと、トヨタの日本のメディアサイトを見てみたのですが、残念ながらとても限られた情報しか出ていません。仕方がないので、アメリカとイギリスのサイトを見てみることにしました。すると、少しだけ詳しい情報が出ていました。

まず車のグレードの呼称ですが、日本サイトには出てないのですがアメリカ、イギリスでは『NX 450h+』になります。

最大出力は、イギリスのリリースでは302bhp(306PS)で、加速性能は0-62mphが6秒強です。アメリカのリリースでは最高出力は出ていませんが、0-60mph加速は約6秒となっています。この数値は『RAV4 PHV』と同じです。

バッテリーの容量は18.1kWhです(これは日本のリリースにも出ています)。バッテリーのみでのEV走行可能距離は、日本語のリリースには「クラストップレベルのEV走行可能距離」とあるだけで具体的な数字は出ていません。

ということでアメリカのリリースを見ると36マイル(57.6km)、イギリスのリリースでは40マイル(64km)と記載があります。数字の違いはアメリカはEPA、イギリスはWLTCが基本の測定モード(国際基準WLTPに基づく測定法=WLTC。日本はイギリスを含む欧州と同様にWTLCを採用していますが、高速走行などの条件が異なります)の違いと思われますが、型式の承認はまだとっていないのでどちらの数字も推定値となっています。

EV走行時の最高速度はイギリスのリリースに出ていて、84mph(約135km/h)となっています。

さて、よくわからないのはEV走行での航続距離です。同じバッテリー容量で同じシステムを使っている日本の『RAV4 PHV』は、EV走行可能な距離が95kmなのです。つまりアメリカの『NX』の57.6kmより30km以上も長いことになります。測定モードの違いだけでここまで差が出るものなのかと思いました。

もちろん、日本で発売される『NX』がどういう数値になるかにもよりますが、念のため、アメリカの『RAV4 Prime』の仕様を確認してみました。すると、推定値で42マイル(67.2km)となっていました。日本では95kmなので、3割ほども違います。

日米の違いは、アメリカでは厳しいEPA推定値を使っているためとも思いますが、基本的にWLTCを使うイギリスの数字も大きく違うので、やっぱりよくわかりません。PHEVのEV走行の測定基準は各国で基準がバラバラなので、国交省の測定モードだけが、他国と少し違っているのかもしれません。

同じシステムを使っている『NX』と『RAV4 Prime』でEV走行可能な距離が微妙に違う理由については、タイヤサイズの違いも影響しているかもしれません。『RAV4 Plug-in Hybrid』が19インチなのに対して、『NX』は20インチです。大きくなれば重量が増えますし、停止/発進があれば負担は増えます。

いずれにしてもわかりにくいことは間違いなく、とくに日米のデータの違いや、PHEV特有のデータの算出の仕方については、できればメーカーさんに整理して説明してほしいところだなあと思いました。

海外ではオプションで6.6kWのオンボードチャージャーも

充電方法は、今のところ普通充電のみに対応となっています。充電対応出力は、標準装備だと3.3kWですが、オプションで6.6kWのオンボードチャージャーもあります。6.6kWだと、カラから満充電までの時間は2時間半になります。ただトヨタ広報によれば、6.6kWのオンボードチャージャーは今のところアメリカ、欧州、中国のみのオプションとのことです。

ということで新型『NX』PHEVは急速充電に対応していないのですが、個人的にはPHEVは普通充電だけで十分ではないかと感じます。とくに今後、急速充電器の出力が上がるようなことがあれば、PHEVのバッテリー容量に対しては完全にオーバースペックになります。電池の劣化を早めるだけで、あまりいいことはなさそうです。走行しながら充電可能なモードもあるので、余計なコストのかかる急速充電対応にする必要性は低いのではないでしょうか。

装備として気になるのは車から100Vのアウトプットがとれるかどうかですが、この点、リリースでは明示されていません。トヨタ広報にも確認したのですが、まだコンセプトモデルということもあり、情報がないそうです。

ちなみに、『RAV4 PHV』では車内のアクセサリーとして100Vのコンセントがついている広報写真があるのですが、『NX』PHEVでは同じようなカットの写真が12Vのソケットになっています。その代わりというわけでもないのでしょうが、USB-Cの給電口がついてます。

また車内のアクセサリーとは別に、『RAV4 PHV』や『プリウスPHV』は普通充電の給電口に変換コネクターを差し込んで100Vの外部給電ができるようになっていました。

アクセサリーの100Vコンセントといい、100V給電用のアダプターといい、『NX』もシステムは同じなので使えるのではないかと思いますが、まだ公表されていないので、できるようにしてほしいなという願望を記しておきます。

『NX』に特有の機能としては他に、過去の運転状況や場所から加減速を予測して、回生ブレーキの回収量を最適化することでエネルギー効率を高める機能があります。アメリカのリリースでは『Predictive Efficient Drive』という名前になっています。日本のリリースでは、ナビの目的地を設定すると、交通情報や電池残量などのデータをもとにエネルギー効率を向上させる『AUTO EV/HVモード』があるのですが、この2つが同じものかどうかは確認できていません。

車の機能も仕様も細かな部分でいまいち統一性がなく、ちょっと困惑気味です。繰り返しですが、まだコンセプトモデルの段階なので、仕様は変更になる可能性があります。価格も出ていませんし、詳細は続報をお待ちください、というところですね。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 現在、PHEV に乗っています。
    次もこれしか乗れないなと思っているのですが、
    このレクサスじゃ選考外となりそうです。

  2. アリアにもコンセントないですよね。Evsmartでの中嶋さんへの独占インタビューでもあれだけ言ってくれてるのにね。ガッカリです。技術的に難しいものではないでしょうし、EVやphevには必要なものだとおもいますけどね。どうして付けないのか理由を教えてほしいですね。アリア予約しているんですが、NXにコンセントついてたらNXにするかも。

  3. WLTPサイクルには4つのフェーズ(低速、中速、高速、超高速)があります。
    この内の”超高速”は160km/hを継続するようなフェーズで、日本のように法律上ありえない地域ではやらなくても良い事になっています。
    なのでおなじWLTPでも日本での表示燃費には超高速のものが含まれないので、欧米よりも良い燃費になりがちです。

    1. いもけんぴ様、コメントありがとうございます。はい、ご指摘の通りです。超高速フェーズ(ExH=Extra-high)は各国の判断で除外できることになっているので、日本は採用していません。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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