テスラ「モデル3」で陸前高田へ〜冬のスタッドレス長距離ドライブ【速報往路編】

EV好きの仲間が、岩手県陸前高田市でEVだけの『三陸おもてなしレンタカー』を開業しました。復興途上&交通アクセスがいいとはいえない町で、はたしてどんなビジネスを展開するのか。スタッドレスタイヤを装着したEVsmartブログチームのモデル3で、冬のロングドライブレポートを兼ねて遠征してみることにしました。

テスラ「モデル3」で陸前高田へ〜冬のスタッドレス長距離ドライブ【速報往路編】

まずは、ロングドライブ速報、往路編です。
※冒頭写真は2018年に訪れた際に撮影した「奇跡の一本松」。

EVだけのレンタカーサービスを陸前高田市でスタート

2020年1月25日、東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市で、全車EVの『三陸おもてなしレンタカー』が開業しました。設立メンバーのお一人、堤健一さんは私(寄本)とは日本EVクラブでともにEV普及(遊び?)に取り組む長年の仲間であり、2018年5月、EVスーパーセブンで東京〜大間へ太平洋沿岸を駆け抜けた『電気自動車で東北被災地を巡る旅』で、一緒に旅をした友人です。

2018年5月31日、本州最北端、青森県の大間崎にゴールした時の写真です。左が堤さん。二人とも日に焼けすぎ。

ここはひとつ、開業を祝いつつ、2018年の旅の際には私が仕事の都合でいったん一人帰京したため行き損ねた、陸前高田の『鶴亀鮨』を堤さんと一緒に訪ねたい! ということで、EVsmartブログチームの秘密兵器、テスラ モデル3 パフォーマンスで取材がてら駆けつけることにしました。

充電計画は、ざっくりだけど、慎重に。

電池容量75kWhで、10月に淡路島まで走った時には、東京から浜松スーパーチャージャーまでの約230kmを残量41%で余裕だったモデル3パフォーマンスですが、季節は真冬で、スタッドレスタイヤも履いています。ここは、慎重に充電計画を考えておくことにしました。

まず、Googleマップで検索した全行程(往路)は、こんな感じです。

距離は519km。所要時間は6時間50分と表示されました。

今回のロングドライブは、走りやすい夜中にスタートして、以下のようなタイムスケジュールを想定しています。

03:00●東京出発
09:00●スーパーチャージャー仙台
10:00●仙台出発
13:00●三陸おもてなしレンタカー到着

ちなみに、東北方面のテスラスーパーチャージャーの状況を、テスラウェブサイトのマップ表示で確認すると、こんな感じです。

すでに稼働しているのは仙台と盛岡のみ。途中、福島県(郡山)にも計画されていますが、まだ準備中なので利用できません。盛岡までは行かないので、使えるスーパーチャージャーは仙台だけ、ということですね。

スタート地点の世田谷区三軒茶屋から仙台スーパーチャージャーまでの距離は約390km。条件がよければなんとか辿り着きたいと思う距離ではありますが無理は禁物。途中、東北道SAPAのCHAdeMOを利用することを想定して、EVsmartでβ版を試用中の経路検索機能で、95%からのスタートで設定して、途中の充電スポットを確認してみました。

電池残量に余裕を残して(25%以下になる前)充電する設定にしたこともあり、仙台までに那須高原SA(栃木県)と、安達太良SA(福島県)の2回×30分充電する検索結果になりました。40kW出力のCHAdeMOなので、30分充電しても24%程度しか回復しない計算です。

仙台スーパーチャージャーでは、朝食を兼ねて1時間しっかり充電する予定。電池容量は99%まで回復して、約140km先の陸前高田に到着しても、58%の残量がある、ということになっています。

今回、『三陸おもてなしレンタカー』では、取材終了後、このモデル3の同乗試乗会を開催する予定にもなっています。ま、このくらいの残量があれば大丈夫でしょう。

さてこの後は、真夜中のスタート後、充電時間などを活用して速報的にロングドライブレポートをお届けしたいと思います。

2時30分に出発しました。

午前2時に起床。シャワーを浴びて、出発準備整いました。いざ、陸前高田へ、まずは仙台スーパーチャージャーを目指します。

法定速度でオートパイロットをセットして東北道を北上。Spotify でミスチル聞きながらのんびり行きます。

走りながら同乗者に撮ってもらったのでブレ気味ですが。
エネルギー画面の残量予測では、仙台SCに1%残しで到着可能。。。無理せず、どこか途中で1回チャデモ急速充電をしていきます。

那須高原SAでトイレ休憩&QC

午前5時4分。那須高原SAにピットイン。

電池残量は見事に経路検索β版の予想通り39%でした。仙台までの余裕を考えれば、もうひとつ先の安達太良まで頑張ってみる手もありますが、クルマの電池より人間が限界。充電器前にクルマを停めて、まずはトイレに駆け込みました。

トイレから戻る時、モデル3を横目に見ながら恨めしそうに通り過ぎるリーフの姿も。通りすがりのリーフユーザー様、充電始める前に少しばかりクルマから離れて失礼しました。

ちなみに、チャデモでの充電にはEVsmartブログチームのNCSカードを使うのですが、うっかり自分のZESP2カードで認証して、充電スタートしてしまいました。充電中はこのブログアップ作業でひぃひぃ言いつつ、終わってケーブル外すときにハッと気付いたのですが、時すでに遅し。日産さん、ごめんさい。

那須高原で39%から57%まで回復。仙台SCには12%を残して到着できると表示されました。

計画ではチャデモ2回も想定していましたが、これ1回で仙台を目指します。

仙台スーパーチャージャーは、ノーブルなホテルの駐車場に

泉PAのスマートインターで高速を下り、スーパーチャージャーがある「仙台ロイヤルパークホテル」へ向かいます。テスラ車でのロングドライブを体感する以前は、一度高速を下りなきゃいけないのは「面倒くさっ!」と思っていましたが、そんなことよりスーパーチャージャーの便利さがありがたいことは、昨年の淡路遠征で痛感しました。

途中、ちょっと巡航速度を上げたりしたので、残量は10%で到着。

立派なホテル。周辺はアウトレットモールでした。

スーパーチャージャー4区画のうち、2区画にエンジン車。スーパーチャージャーはひとつの元電源を2つのチャージャーでシェアするので、こんな風に埋めてくれるとフルパワーでの充電が約束されるので、ありがたい、なんてわけもなく。ほかの区画もガラガラなのに、どうして、あえてここに停めるのか、謎です。
【追記(2.28)】
テスラユーザー、一般のエンジン車のゲストがスムーズに駐車場とスーパーチャージャーを利用できるよう、あえて社用車を駐車していることがあるそうです。利用時、区画が埋まっていたらフロントに一声かけてみてください。(追記ここまで)

この駐車場は、NISSAN e-シェアモビのステーションにもなっていました。200Vの普通充電器もずらり。現場では数えなかったけど、EVsmartのページで確認すると、20台の普通充電器が設置されているようです。
EVへの理解が深いホテルなんですね。

ホテルのレストランで、ビュッフェの朝食をいただきました。2500円と安くはなかったですが、ライブクッキングしてくれるオムレツや、郷土料理の「セリ汁」など、たいへんおいしゅうございました。

ここでは、ブログの更新作業などもしながら1時間程度しっかり充電。98%まで充電できました。

気仙沼

若柳金成ICで東北自動車道を下りて、下道で陸前高田を目指します。

宮沢賢治の世界を想起できる田園地帯を抜け、気仙沼で太平洋にぶつかります。スムーズに充電&走って来られたので、時間はまだ11時。震災後、何度か訪れた気仙沼の町の様子を見てみることにしました。

漁港近くの「海の市」3階からの風景。まだまだ荒れ地も目立ってはいるものの、2013年に訪れた時と比べると「町」が戻りつつあるのがわかります。漁業、そして水産加工業という、しっかりした「柱」がある気仙沼。復興は着実に前進しているんだな、ということは感じられます。

魚市場の建物には、3.11の津波が到達した高さにプレートが掲げられています。

ちょっとしたお土産などの買い物を済ませてお昼が近付きましたが、ホテルでがっちり朝食を食べたので、まったくお腹は空いていません。90kWの充電器を設置したとEVsmartで確認していた、日産プリンス宮城 気仙沼店で、軽く充電しておくことにしました。

スーパーチャージャーでは時に130kW以上の出力(受け入れ)値を叩き出すモデル3ですが、アダプターを介したチャデモでは、最大50kW以下に抑えられます。充電し始めの出力を確認すると、384V×125A=48kWでした。

15分ほどで、64→78%に回復。15分経って80%近くになっても、398V×125A=49.75kWを維持しています。電池温度のマネージメントがしっかりしてるからでしょう、ね。

なんともスムーズに、陸前高田到着!

約束の13時までにはまだ30分ほどありましたが、ボーッとしててもチコちゃんに叱られるだけなので、陸前高田復興の中心地ともいえる「アバッセたかた」前にある『三陸おもてなしレンタカー』のオフィスを訪ねました。

【関連サイト】
『三陸おもてなしレンタカー』

所要時間は、寄り道なども入れて10時間。高速道路ではおおむね100km設定のオートパイロットに任せきり。追い越しでも「ウインカーを倒すだけ」の自動車線変更機能をできるだけ使うようにしてました。ちゃんと休憩も取れたからでしょう。自分でも不思議なくらい疲れはまったくありません。

75kWhの電池とスーパーチャージャーがあれば、ロングドライブもこんなに楽ちんなんだ、と、改めて確認できました。

取材レポート、モデル3同乗試乗会のレポートなどは、後編でしっかりお届けします。

(取材・文/寄本 好則)

【関連記事】
テスラモデル3で津波被災地探訪〜冬のスタッドレス長距離ドライブ【復路編】
全車EV:陸前高田の『三陸おもてなしレンタカー』が目指すビジネスモデルとは?

この記事のコメント(新着順)6件

  1. 仙台スーパーチャージャーに止まっているのはホテルのスタッフさんの車のようで、空いている2台のスペースが埋まってしまった場合すぐ移動できるようにだそうですね(口コミやYoutuberの方からの伝聞ですが…)
    コーンなどを置いて自由にユーザーが移動できた方が便利なのですが、クレーム等もあるらしく、EV充電器が発展していく上での難しさを感じました。

    1. tell さま、コメントありがとうございます。

      また、興味深いご指摘、ありがとうございます!
      念のため、ホテルに電話して確認してみました。いろいろ試行錯誤しながら、今は、ご指摘のようにホテルの社用車を停めておき、テスラユーザー、一般のエンジン車ユーザーがともにスムーズに駐車場&SCを利用できるよう工夫しているとのことでした。
      充電中のホテル施設利用(朝食おいしかったなど)など世間話的にご担当者と少しお話ししました。テスラのみならずEV普及へのご理解が深く、ホテル利用者の利便に配慮されていることが実感できて、好感度さらに上昇です。また、テスラで東北行って、ロイヤルパークホテルのガーデンでコーヒー飲みたい(復路編レポートで紹介します)な、と。

    2. 寄本様
      丁寧なご返信と、ファクトチェックありがとうございました。
      EVsmart blog様のようなSC設置者にお金を落としたり、設置の感謝を伝えるなどのことでも、草の根運動的にEV充電器の普及の促進に役立っているのではないかと思います。

      私も現在はガソリン車ですが、EVsmart様などの影響で、次に買うときはそのころには出ているであろうモデルYなどの魅力的な電気自動車に乗り換えることを検討中です。

      ありがとうございました。

  2. モデル3の同乗試乗会、貴重な体験ありがとうございました。
    まさに「百聞は一見にしかず」でした。
    加速体験はNISMO大森ファクトリーBNR32以来の衝撃でした。
    息子もハンドルを使ったゲームが気に入ったようです。
    24kwリーフで福島から往復440km走りましたが、休憩を兼ねて8回充電しました。テスラのスーパーチャージャーが羨ましいです。

    1. 福島のリーフ乗り さん、コメント、そして遠くから同乗試乗会へのご参加、ありがとうございました。

      今、東京に帰着しました。詳しくは後日「復路編」レポートしますが、往路同様、陸前高田から2回の充電で自宅まで帰り着くことができました。やっぱり、遠出にはある程度の電池容量があると、いいですね。
      息子さんが、今回の体験を通じて、電気自動車の魅力を再発見し、安全運転の大切さに目覚めてくれる(ゲームで事故っても大丈夫なんですけど)ことを期待しています!

      また、何かの機会でお会いできますことを!

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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