テスラが「Tesla Energy Tech Talk」を日本初開催〜持続可能なエネルギーへの移行を加速せよ

世界の電気自動車シフトをけん引するテスラの日本法人である「Tesla Motors Japan」が「Tesla Japan」に社名変更。グローバルで展開しているプロモーションイベント「Tesla Energy Tech Talk」を日本で初めて開催しました。名古屋で開催された2日目のレポートをお届けします。

テスラが「Tesla Energy Tech Talk」を日本初開催〜持続可能なエネルギーへの移行を加速せよ

自動車メーカーの枠を超えた事業展開へ

2024年5月21日、テスラの日本法人である「Tesla Motors Japan合同会社」が、5月20日付けで「Tesla Japan合同会社」に社名変更したことを発表しました。変更点は一目瞭然。社名から「自動車」を意味する「Motors」がなくなりました。

アメリカの本社では、すでに2017年2月1日付けでTesla Motors, Inc.から「Tesla, Inc.」に社名を変更しています。社名から「Motors」を消し去るのは、テスラがただの自動車メーカーではなく、「持続可能なエネルギーへ、世界の移行を加速する」というミッションを掲げた企業であることの明確な意思表示です。

テスラではかねて、自社EV用の急速充電ステーションである「Super Charger」ネットワークや、家庭や目的地充電のための「ウォールコネクター」を自社製品として提供。さらに家庭用蓄電池「Powerwall」や産業用蓄電池「Megapack」といった蓄電池製品を展開。日本では未発売ながら「Solar Roof」と名付けた太陽光発電パネルも自社製品にラインナップして、蓄電池制御のプログラム開発も手掛けつつ、世界各地でVPP(Virtual Power Plant=仮想発電所)プロジェクトにも注力しています。

つまり、テスラはただの自動車メーカーではなく、エネルギー関連事業をミッション達成への「軸」として展開している企業であるということです。前年同期比で減収減益となり「EVシフトも踊り場か?」などとあまりEVを好まないメディアにいじられた2024年第1四半期の決算でも、エネルギー関連事業が堅実に成長しているのは既報の通りです。

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家庭用蓄電池などを紹介するトークイベント

日本法人の社名変更とともにアナウンスされたのが、Tesla Japan(テスラジャパン)のエナジーチームによるトークイベント「Tesla Energy Tech Talk」の開催です。グローバルでは以前から開催されていたものの、日本では初開催。5月30日(木)に大阪・心斎橋、5月31日(金)に名古屋・栄のテスラストアで実施されると知り、名古屋でのイベントに行ってみました。

会場の「テスラ名古屋栄」は、名古屋随一の繁華街である栄の中心部、広小路通という大きな通りに面した「マルエイガレリア」というショッピングモールの1階にあります。イベント開始は18時から。金曜夜の無料イベントで、会場にはケータリングの軽食なども用意されていました。

内容は、テスラジャパン、エナジーチームのスタッフによるプレゼンテーション。パワーウォールがどういう製品なのかの説明をはじめ、太陽光発電とパワーウォール、そしてテスラの電気自動車を組み合わせることによって得られる恩恵や、日本国内での導入事例などが紹介されました。

EVsmartブログでパワーウォールの日本上陸をお伝えしたのは2019年10月のこと(関連記事)でした。あれから5年、すでに日本でもたくさんのパワーウォールが活躍しており、沖縄県の宮古島ではパワーウォールによる日本最大級のVPPプロジェクトが進展していること(関連情報 ※テスラ公式サイト)なども紹介されました。

宮古島のVPPプロジェクトは2021年から始まっているもので、一度取材に行かねばと思いつつまだ記事にできていなかったのですが……。コロナ禍も落ち着いたことだし、ぜひ一度足を運んでみたいと決意を新たにしたのでした。

プレゼンで感じた「テスラとそれ以外」の違い

プレゼンの骨子は前述のようにパワーウォールによる再エネ電力活用ソリューションの紹介なので、ここで改めて詳報することは割愛。イベントに参加してみて実感した「テスラとそれ以外のEVメーカーの違い」を挙げてみたいと思います。

参加者の意識が高い

Tesla Energy Tech Talkの内容は、パワーウォールを中心とした製品やサービスの紹介ではありますが、いわば、蓄電池と太陽光発電、電気自動車を組み合わせた再生可能エネルギー活用の「お勉強」です。

たとえば、国産自動車メーカーのディーラーで同様のイベントを開いても、あまり人は集まらないだろうなぁ(そもそも、こんなイベント聞いたことないなぁ)と想像してしまいました。でも今回、花の金曜日の夜のイベントに集まった方々は、その雰囲気や表情もいたって真摯。イベント中の挙手によると、テスラオーナーは参加者の半分くらいという感じでしたが、オーナーはもとよりテスラに興味を抱いている方々が、持続可能なエネルギーへの関心や意識が高いことを実感しました。

自社製品でミッション達成を目指す底力

あと、これがテスラの底力だよなぁと感じたのが、紹介された製品やサービスを、テスラではことごとく自社で展開していることです。

引き合いに出して恐縮ですが、たとえば、地方のSDGs関連イベントに地元の日産ディーラーなどが「走る蓄電池」とアピールするのぼりを掲げてリーフやV2L機器を出展しているのをよく見ます。

でも、リーフやアリア、サクラなど日産のEV車種から100Vの電気を取り出すためには、おもにニチコン製の、高価な専用機器が必要です。でも、自社製品ではないので、展示に立ち会っているディーラースタッフの方にしてみれば、V2LやV2H機器をたくさん売ろう、普及させようという熱意をもって取り組むのはなかなか難しいだろうと感じます。

UIを含めたデザインが秀逸

さらに、リーフ&V2H機器からテスラパワーウォール&モデルYに置き換えた飯田哲也さんにヒアリング(関連記事)したところによると、「以前のV2H機器はスマホでの操作などUIの使い勝手が悪く、パワーウォールに変えて本当に使いやすくなった」ということでした。

EVのUIにしても、従来の物理スイッチを廃してディスプレイでの操作に集約したり、車両システムをオンラインで更新するOTA(Over The Air)を世界に拡げ、「SDV(Software Defined Vehicle)」なんて用語を生み出したり。

なにより、パワーウォールが家庭用蓄電池として魅力的なのは、あまたの他社製品に比べて圧倒的にカッコいいことだと、イベントのプレゼンを聞きながら改めて痛感。テスラの大きな魅力とは、UIを含めた「デザイン」、そしてEVや蓄電池はかくあるべしという理想を具現化した「パッケージング」にあると再確認できたのでした。

吉野彰博士のモニュメントに遭遇

テスラジャパンのエナジーチームによると、今回の大阪、名古屋を皮切りに、全国各地のテスラストアなどで「Tesla Energy Tech Talk」を開催していく予定とのこと。もちろん、テスラやEVのオーナーでなくても参加OK。次回開催が決まったら、テスラ公式サイトでアナウンスされるはずなので要チェック(メール配信登録も可能)です。

ところで、栄のテスラストア前の歩道に、リチウムイオン二次電池の発明でノーベル賞を受賞した吉野彰博士の手形モニュメントがありました。カラーの肖像画も埋め込まれていて、吉野博士の優しい笑顔がテスラの躍進を祝福しているようでもあり。

とはいえ日本男児としては、吉野博士がノーベル賞まで獲得したリチウムイオン電池の産業が、日本では先細り気配なのが気になるところ。あえて「テスラを見倣って」とはいいません。蓄電池やEV製品で、日本ならではの志高いビジョンを示した製品やサービスが登場してくれる日を待望したいと思います。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 飯田哲也氏と同様に太陽光発電を行っており、現在それをメインに生計を立てている者です。

    飯田氏を弁護する訳ではないですが、FIT価格が高く設定された背景を一応それなりに知っているので言わせて頂くと、彼一人だけを悪者にするのはどうかと思います。

    また現在、太陽光パネルが安くなってるのは、FITで最初に高い買取価格を設定していたため、日本で太陽光発電の導入量が急増したからです。太陽光パネルを製造している中国メーカーの多くが、熾烈な競争で値下げしてきたからということもありますが。

    あと、経産省も原発に前のめりなので、メーオさんが原発推進に賛成なのは分からないでもないですが、東日本大震災によって東京電力の福島第一原発で起きた事故などを考えれば、活断層や地震の多い我が国で安易に原発を増やすことには賛成できません。

    原発の問題点:
     ①過酷事故の起きる可能性・危険性(上述の通り)
     ②放射性廃棄物の処理(「トイレの無いマンション」とよく言われます)
     ③O&Mで作業者が被爆(原発推進賛成の人、自分で出来ます・やりますかね?
      基本、「誰か他の人」が、命がけの3K仕事やるって前提ですよね)

    こういった問題がすべて解決するのであれば、原発を推進しても良いと思います。

    最後になってしまいましたが、「Tesla Energy Tech Talk」は興味深いですね。
    可能なら次の機会に参加してみたいです。

  2. 先端部分が切れてしまったので、再アップします。先のコメントは削除願います。

    そろそろ飯田哲也氏を持ち上げるのは止めた方が良いと思います。
    震災後に固定価格買取42円20年と言う国際価格の2倍の制度を当時の民主党政権に入れ知恵し、自らも太陽光発電所を所有して原発に代わる新たな既得権益を持っている方ですよ。
    太陽光発電所からの利益を最大限に得る為に原発再稼働反対しているとしか思えません。原発再稼働したら日中の余っている時間帯は抑制されて収入減りますからね。
    当時のバカ高いFIT買い取り価格のせいで、多額の造成費を掛けても採算があうような事態を作った為にハゲ山が生じたり、国民に高い再エネ賦課金を払わせている張本人です。だからこそ家に導入した蓄電池を買い替えるなんていう贅沢も出来るのです。
    現在はパネルの値段も安くなり、再エネを普及させなければならないし、原発再稼働もして電気代を安くしないといけないのに、国民に再エネアレルギーを植え付けてしまった彼のような太陽光利権を持った人を持ち上げるのは正直いただけないと思います。
    恐らくですが、八重さくら氏も同様に思っていると思いますよ。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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